橘義明として兄の不動産屋に入社してから数ヶ月経つ。
今まで兄を手伝っていたからそれなりの待遇かと思いきや、本採用の社員として働くのなら一からやれと兄からの命令で平社員として毎日営業に駆け回っている。
おかげで高耶さんに会うヒマがない。
松本方面に不動産を買おうと言ってみたが、もちろん宇都宮と東京にしか会社がないので却下された。
もしも松本に営業所を作るなら私が行こうと思っていたのに。
私の休みは今のところ火曜と土曜だ。土日は休むなと言われていたのだが、そんな要求が呑めるはずがない。
法律専門学校の学生である高耶さんの休みは土日なのだから。
土日のどちらかに休みをくれないのなら、浮気を義姉さんにバラしますよ、と脅して無理矢理奪った。
お互いに最大の譲歩だったと言ってもいい。
そして私は毎日毎日駆けずり回り、ある時は東京にも出張し、一日2往復などもザラだった。
そんなさなか、土曜に松本で会った高耶さんは私を気遣って「月に2回ぐらいでいいぞ」と言ってくれた。
「そんなの私が耐えられないんですよ」
いつも二人で行く喫茶店のテーブルで、私は憮然として答えた。
「だけどさ、なんか疲れてるみたいだし。金曜の夜に来て、土曜の夜に帰るってのを毎週繰り返してたら体力もたないぞ。いい加減自分の年齢も考えたら?」
「年齢など関係ありません」
「でも昨夜はソッコーで寝たじゃんか」
高耶さんとの一夜を台無しにするほど疲れていた。食事をしてホテルの部屋に入って30分ぐらい。
スーツを脱いでホテル備え付けの浴衣を着て高耶さんがやっている勉強の進み具合を聞いているうちにウトウトし始めて、気が付いたら深夜2時。
ちゃんとベッドに入って、掛け布団もかけて、枕に頭を乗せて寝ていた。
隣りのベッドには高耶さんがスヤスヤと……。
どうやら高耶さんが私を寝かせてくれたらしいのだ。
正直言って、これは大変ショックだった。もったいないことをしてしまった、と、深く悔やんだのだ。
「オレに会う時間を、自分の疲れを取る時間にしてくれって頼んでるんだよ」
「あなたに会わずして何が癒されると言うのですか」
「でもさ〜」
心配してくれているのは重々承知だ。とても有難いことだと思う。
「結局午前中いっぱい寝て、今こうやって喫茶店にいるけど、おまえはすぐに無理するからこうしてたって疲れなんか取れないんじゃねえの?」
「……そんなことは……」
「目の下、クマが出来てる」
昨夜あれだけ寝たのに、まだ疲れが取れてなかったとは。
「毎週クマが出来てるって知ってた?」
「いえ……」
高耶さんは「う〜ん」と考えてから、よくありがちな「あ!そうだ!」という手の打ち方をした。
右手で拳を作って、左手の平で叩く、というアレだ。
「今からウチ来い。夕方までのんびりさせてやるから」
「でも、お父さんと美弥さんもいるでしょう?」
「オヤジは仕事だ。美弥はいると思うけど、おまえだったら別に何とも思わないはずだから大丈夫」
さあさあと袖を引っ張られて、喫茶店を出た。
そこから歩いて10分程度のところに高耶さんの住んでいる団地がある。車はその近くのパーキングに置くことにして団地へ向かった。
302号室。高耶さんの家だ。
鍵を開けて入った高耶さんは玄関に美弥さんの靴があるのを確認すると、奥に向かって「ただいま」と言った。
ついでに「直江が来た」とも。
「いらっしゃい、直江さん。……直江さん、目の下にクマが出来てますよ?」
「さっき高耶さんにも同じことを言われたところです。最近仕事が忙しくて」
「直江、こっち」
高耶さんの部屋に連れて行ってもらった。相変わらず物が少なくて、少々散らかっている部屋だった。
「そこ、クッションあるけど……もしまだ眠かったらベッドで寝てていいぞ」
「いえ、そこまで疲れているわけじゃ」
「ま、いいや。とにかく座れ。正座なんかすんなよ」
お言葉に甘えてクッションに座って胡坐をかいた。美弥さんがドア越しに声をかけてコーヒーを運んでくれた。
「珍しいね、直江さんが来るなんて」
「疲れてるんだって。だからのんびりさせてやろうと思って」
「じゃあお兄ちゃん、あんまり困らせるようなことしたらダメだよ?」
「するかっ」
相変わらず仲のいい兄妹だ。
美弥さんが出て行くと高耶さんは私の隣りに座って一度だけキスをした。
「オレの部屋、何にもないけど」
「いえ……何もなくてもあなたのいる空間というだけで癒されますから」
「アホか」
特に何かを話すわけでもなく、寄りかかってきた高耶さんの温もりを感じていたら、いつのまにか眠ってしまった。
あの土曜の私の様子を見た高耶さんは勝手に「第一、第三土曜以外は来るな」と帰り際に言い放ち、いくら電話をしても、メールをしても、その決定は覆らなかった。
私が静かに憤慨したのは言うまでもない。
というわけで、私はひとつ作戦を立てた。
絶対、何が何でも、意地でも、松本に橘不動産を立ち上げてみせようじゃないか。
そしてそこの支店長になってやる。支店長になれば休みは自由自在、自分の仕事さえこなせば高耶さんに会い放題だ。
鬼になってでも松本支店を出してやる。
そう決めてここ最近、松本へ行った時に見たもの、人から聞いた話を思い出してこじつけを考えた。
「兄さん、いえ、社長」
「なんだ?」
「先日、松本へ行って来たんですが、なかなか穴場でしたよ」
「穴場?」
「ええ。土地は宇都宮と同等ぐらいの値段でしょうけど、やはり歴史ある街なだけに古い家屋も多くて」
それがどうしたと兄は興味なさそうに言った。
「今はロハスだなんだと古いものを壊さず使う、という傾向があり、老若男女から興味を持たれている時代です。そのせいか繁華街の近くにある古い家屋や蔵を店舗に、というニーズが増えているそうで」
「で?」
「その家屋を貸し出して、自分は郊外に住んで家賃で生計を立てたいというニーズもあります」
「ふうん」
少しだけ兄は話を聞き始めた。
「今は建物ごとの買い取りばかりだそうで、内装を工事してからの貸し店舗というシステムは少ないそうです。このシステムはまだ少ない市場ですから、どうでしょう?やってみませんか?」
「しかしなあ……」
「私が責任を持ってやってみますから」
「平社員のおまえに責任なんか与えるわけないだろう」
これだ。これがネックなのだ。平社員……確かに。
「だけどまあ、おまえがせっかく持ってきた案だ。今度の休みに俺とおまえで視察に行くか」
「はい!!」
しかし今度の休みは土曜。高耶さんと会う日だ。二週間も会えないでいる私にとっては会社よりも高耶さんなのだがそうも言っていられない。
とにかく電話をしなくては。
「そういうわけで、今度の休みは兄と松本へ行くことになりまして」
「……てことは?会えないってこと?」
「いえ、時間を作ります。金曜の夜に先乗りします」
「そうかぁ。おまえも大変だなあ」
「高耶さんに毎日会うためなら何だってしますよ」
そう言ったら電話を切られた。もちろん家の電話だからガチャンと音を立てて。可愛い人だ。
そして金曜日。定時の6時を過ぎてからそのまま車で松本へ。
高耶さんと待ち合わせたホテル前の公園へ行き合流。すぐにホテルに向かってチェックインし、レストランに入って食事をしながら明日の兄との視察を詳しく話すとともに、高耶さんからの情報も貰った。
「蔵が一番人気なんじゃねえかな?その次は木造建築とか、昭和の初期に建てられた鉄筋だとかかな?」
「兄を連れて行って見せるにはどの店がいいでしょうかね?」
「中町の蔵を改造した喫茶店がいいかも。あと夕飯で行くならその向かいの居酒屋だな」
よし、土曜はその2軒を見せて、あとは家屋からのニーズを聞くことにしよう。
「そんで?最近は疲れが溜まることなくなったか?」
「おかげさまで。でも代わりに寂しいですけどね」
「じゃあ今夜はたっぷり慰めてやるよ」
「本当ですか?!」
「声がでかい!」
その夜はたっぷり慰めてもらい、私は久々に満足して就寝できた。
翌日に兄を案内して、リサーチした内容を必死で、しかし冷静に伝えつつ、松本の物件を見せて回った。
時間が経つごとに兄は松本の美しさに心を惹かれはじめ、そして不動産に興味津々になりはじめた。
とある一軒の家と話をつけてあったので、兄に引き合わせて仲介をするにあたっての希望や条件を話した。
その家に住む老夫婦は新しく出来上がったバリアフリーのマンションに住むことを希望しているが、息子夫婦と孫のために家賃収入を望んでおり、家屋と小さな蔵を貸し出したいと思っていた矢先だった。
「家屋はいつか息子たちが住めるように内装を変えずにいたいのですが、蔵が問題なんです。古くて老朽化していますが、やはり松本には蔵。壊したくないんですよ」
その話を聞いた兄は私からの案を思い出し、おまえから話してみろ、と命令をした。
「私たちの案はこうです。家屋は住宅として貸すとなるとこの繁華街では値段が高くて貸し手がいませんから内装をこのまま使うという条件で料理屋として貸します。その際、やはり台所などはリフォームしなくてはなりませんが、家庭用に戻すことができるリフォームを橘不動産で行い、それから貸し出します。それと蔵ですが、蔵もこちらで修繕と改装、改造を行います。貸し出す相手にはまだ箱の状態で見せ、相手の計画に添って橘不動産が内装の費用を負担し、改造する。代わりに家賃は少しだけ高くなります。ですが確実に借り手は現れますし、改造費や維持費を考えれば妥当な家賃になるはずです」
それから他のこまごまとした話もした。
老夫婦はそんなうまい話があるのかと疑っていたが、具体的な金額を弾き出して、細かい内容を伝えると納得してくれた。
その時、兄が口を挟んだ。
「しかしこの話はまだ計画段階で、実際にお宅様からお借りして・・・というまでは話を進められません」
ところが老夫婦はこの計画が気に入ったらしく、ぜひともお願いしたいのでどうか実現させてください、と頼んできた。
これが私の松本移住計画の第一歩になった。
こうして私と兄の松本視察は終了した。
「義明。まさかおまえがここまでやるとは思ってなかったぞ」
帰りの車の中で兄が溜息混じりに言った。
あの後、老夫婦は熱心に兄を口説こうとしていた。まるで立場が逆だ。他の地元不動産屋よりも条件がいいだけではなく、私の熱心さにも評価を出してくれたようだった。
当然だ。高耶さんに毎日のように会えるのならば、この頭も体も口先も全部を総動員できる。
「週明けにまた松本へ行って、住まいと兼用の事務所になりそうな部屋を探せ」
「はい」
「おまえだけじゃ色々と面倒だろうから、誰か松本営業用につけるぞ」
「そうですね……宇都宮で私との連絡を担当する人を兄さんが選んでおいてください。松本では地元のアルバイトを雇うだけで結構です」
「一人でいいか?」
「充分です」
アルバイトには高耶さんに来てもらおう。
「来週はまず計画を練る段階からだ。予算だの手続きだの、面倒が増えるな」
「すべて私がやりますよ」
来週は忙しくなりそうだ。
私は他の物件も抱えていたので、代役で新入社員を松本へ事務所探しに行かせた。
ところが「部屋がなかなかみつからない」と電話で泣きついてきた。
事務所と住居と兼用にできる部屋がないらしい。
「知恵を絞れ。ウィークリーマンションでもなんでもいい。当座の事務所さえあればいいんだ。計画が進んできたらちゃんとした事務所を借りればいいだろう」
内心、そんな知恵もないのか!と怒鳴りたくなった。
この『松本事務所』の計画を本決まりにするまでは気を抜いてなどいられない。
もしも手違いがあってあの老夫婦に失礼をしてしまえば、松本で営業所を作る話自体がなくなってしまうのだ。
電話を切ってからまた抱えていた仕事に戻ると、今度は事務所内の近くの席から声がかかった。
「橘さん、戸祭町のアパートの仲介の件なんですけど、ちょっと難航してて、お願いできませんか?」
入社して5年目の社員が私にそう言ってきた。この戸祭町の物件は最初は私が取ってきた仕事だった。
しかし今はこの社員が引き継いでいる。
「難航?何でだ?」
「家賃の更新の件なんですよ。学生が入居してるんですけど、更新代をまだ支払っていないそうで、大家さんから連絡を取ってくれないか、という話なんですが」
「連絡すればいいだろう」
「それが学生がいつも居留守を使ってるようなんです。携帯にもつながらないし」
たかがそれだけで私を引っ張り出そうとしているその社員の甘えに腹が立った。
社長の弟だからと今まで謙虚な態度で勤務していたが、このタイプの社員にはいい加減、腹も据えかねた。
「その場合の対処方法が5年目になってもわからないのか?」
普段と違う私の怒気を含んだ言葉にその場にいた全員が固まった。
「た……橘さん……」
「……その程度のトラブルなら今まで何度もあったはずだ」
「あ、あの、でも俺自身は対処したことないんですけど」
「何のために毎週ミーティングがあるんだ。対処をしたことがなくても人の対処法報告を見ていればわかるようにしているんだろう。やってみろ」
しんとした空気が流れる。
数秒するとヒソヒソと話す声が聞こえた。
知ったことか。
今までの甘ったれた空気が元々おかしいんじゃないか。
働くのなら性根を据えて働け。
数日間、そんな態度で仕事をしていた。このままなあなあでやっていては橘不動産の名も落としてしまう。
毎日忙しい中、ひとりで残業をしていたら兄がデスクにやってきた。
「おい、おまえ、最近評判が悪いぞ」
「どんな評判ですか?」
パソコンから目を離し、目頭を押さえながら兄に向き直った。
「いきなり人格が変わったように厳しくなった、だそうだ」
「それの何が悪いんですか?甘えているから厳しくしたんです。もし私がここから松本へ行ってしまったら甘えられる相手がいなくなるでしょう?困るのは本人だけではなく、お客さんも、兄さんも、なんですよ?」
「それはまあ、そうだが」
「仕事をしてそれに見合う金額を給料としてもらうなら、それなりの働きをしなくてはいけない。違いますか?」
「だったらおまえの給料はもっと上げないといかんな」
「そうしてもらえると有難い、と言いたいところですが、そんなものよりも松本事務所の実現にもっと力を入れられる立場に昇進させてもらう方がいいですね」
兄はなるほどな、と言って苦笑した。おまえが厳しくなったのは忙しいからではなく、松本事務所への転勤と昇進のためか、と。
「松本に女でもいるのか?」
「……そういう言い方はやめてください。正解ですけど、『女』ではなく『愛しい人』……です」
「じゃあ転勤したら結婚か?母さんが寂しがるな」
「大事な人を寂しがらせているところですから、そうなって丁度いい割合になるんじゃないですか?」
兄が拳でコンコンコンと何度か机を叩きながら思案顔をし、それから「ほどほどにな」と言って帰って行った。
何が「ほどほど」なのか知らないが、私は残った仕事も、松本事務所の計画も、社員教育も、怠るつもりはない。
カタカタとキーボードを打っていたら携帯電話が鳴った。
ディスプレイに仰木高耶、という表示が出ている。
「どうしたんですか、高耶さん?」
『……なんか……最近、メールも電話も少ないからさ……忙しくて死んでるんじゃないかって思って』
「過労死までにはまだまだ時間がかかりそうですよ。大丈夫。ちゃんと食べて、寝てます」
『本当に?』
「ええ、最低でも5時間は寝るようにしてますし、食事もバランス良く食べてますから」
大きな溜息が聞こえてきた。安心してくれたような、そんな温かい溜息。
そうだ。アルバイトの話をしなくては。
「今度の土曜は松本へは行かれないんですが、代わりに月曜から2日間、行かれます」
『なんで?なんで月曜……って、もしかして、松本営業所とかゆーやつのことで?』
「ええ。まだ仮事務所ですけどね。それであなたにお願いしたいことがあるんですけど……」
『言ってみろ』
「OKという言葉しか聞きたくないんですけど」
『いいから言えッ!』
松本の仮事務所で雑用のアルバイトをして欲しい、と頼んだ。時給は千円。曜日は不定だが午後1時から6時までの間で週に約3日間。その他に臨時で電話番を頼むかもしれないこと。
『学校が早く終わる日だったらいいけど』
「無理に出る必要はありませんよ。主に私が行っている間だけ雑務を頼みたいだけですから」
『ふーん、わかった。ま、おまえも覚悟しとくんだな』
「何を、ですか?」
『……本当に無茶してないかどうか、チェック入れるからな』
そのためにOKしたんじゃないかと思ってしまった。いや、絶対そのためにOKしたのだろう。
まったく可愛い人だ。
「がんばります。高耶さん」
『おう。そんでガッツリ松本事務所を立ち上げろ。ただし体だけは大事にするって約束しろ』
「はい」
少し荒んでいた気持ちがゆるやかに解けていった。
こだわりや仕事に対する姿勢を変えるつもりはないが、それでも忙しさのせいで得ることを忘れていた安らぎを与えられたために緊張は解けた。
明日はもう少し心に余裕を持って働こう。
「高耶さん」
『んん?』
「ありがとうございます」
『どーいたしまして』
いつものようにまたな、と言って電話が切れた。
松本の仮事務所にする部屋も見つかり、私の仕事は松本、宇都宮、東京と、今までにないほど忙しくなった。
松本の事務所には荷物を送り、それを高耶さんに受け取ってもらっただけでまだ一度も行けていない。
抱えている仕事をこなすことで手一杯だ。
しかし社内での評判は少しずつ回復している。
「すいません、橘さん。不動産の登記のことで司法書士のところへ行くんですけど、書類はこれでいいですか?」
「ああ。これなら問題ないだろう」
私に対する質問の種類が変わってきた。
以前は私に頼るつもりでの質問や頼みだったのが、みんな確認の質問に変わっている。
兄は「みんな自覚が出てきたんじゃないか?」と言う。そうかもしれない。
多少の厳しさで自覚を促す。これは高耶さん、いや、景虎様のやりかたではなかったか。
こんなところでも影響を受けている自分も、まだまだ自覚しなくてはいけないことだらけだ。
「明日から松本なんですよね」
女性社員が差し入れのクッキーを持ってきてくれた。それをブラックのコーヒーで食べながら一息入れる。
「最近、橘さんが厳しかったおかげでみんなも疲れてたみたいだけど、逆にいい方に向かってる気がします」
「そうみたいだな」
「あの、松本事務所が本決まりになったら何人ぐらい行くんですか?」
「5人ぐらい、という話だが」
「私も行きたいです」
その言葉には仕事だけが目的ではないニュアンスがあった。
社長が決めることだからどうだろう、と誤魔化した時に携帯メールが届いた。
『とっとと来い。退屈だ』
それだけだったが私の顔に笑みを乗せるには充分だった。
「どうしたんですか?」
「ああ、恋人からの催促だ。早く会いたい、と」
牽制しつつ、のろけてみた。
厳しい命令ですね。高耶さん。とっとと来い、だなんて。
まだ仕事が残っています。
だけど、必ずあなたに会いに行きますよ。松本まで。
そのためならばどんなことだってしてみせますから、もう少し、待っていて。
END
あとがき
くろすけ様よりリクエスト!
直江が偉そうな感じに、という
ことなのですが・・・
偉そうなのはほんの少し・・・
しかもあんまりかっこよく
できませんでした。
ごめんなさい。