続。ダメな直江&ヘンな高耶さん

TAKさんサイトリンク記念頂き物

chant no.2 ヒロセ様から頂きました

まずはこちらのTAKさんのサイトを見てからだと
楽しさ10倍増しです。



 
   

ぱこぱこぱこ。

しんとしたリビングにキーボードを打つ音が響く。
ノートパソコンを開き、メールチェックを始めた高耶は

「?」

直江からのメールに首をかしげた。
直江がメールを寄越すのがめずらしいわけではない。が、ただいま本人は在宅中、自室にいるのだ。

(なんでメール?)

さらに加えて、添付ファイルがついている。これは非常にめずらしい。その上それは

「9KBもあんの?」

反対側に首をかしげながら、高耶はそのメールを眺めた。

 

その日直江は疲れて帰宅した。
ここしばらく仕事が立て込んでいて、どうしても会社では根を詰めてしまうし、家にも仕事を持ち帰らざるをえない状況だ。
あまり忙しいそぶりを見せると高耶が心配するので、なるべく明るい顔をするように心がけているのだが。
すでに11時を回った金曜の夜。明日は休みだと思っていたところに、今日のうちに書類を作って明日の朝一で取引先に届けなければいけなくなってしまった。

(明日もゆっくりできないか)

そう思うとどっと疲労が身体に蟠って、ただいまという声にも勢いが出なかった。それでも高耶は耳ざとくそれを聞きつけて、キッチンから顔を出す。

「お帰り、おつかれさま〜」

こちらの声は朗らかで、ほっとする思いで直江はコートを脱いだ。

「ただいま、高耶さん」
「すぐご飯にするから、座ってろ」

そういって再びキッチンに戻る。その後姿を見ながら、今日はやっぱり、と直江は僅かに眉を寄せた。
高耶は自分より11年下だ。芳紀まさに20歳、ぴちぴちの学生さんである彼は、いうなればしたいやりたいお年頃である。もともと直江は淡白というのか、最愛のこの恋人の隣にいるだけで心が安らぎ、それ以上などなくてもいいとさえ思う。もちろん誘われれば当然のこと愛の営みへとなだれ込むのだが、めったなことでは直江から、というケースはない。それ以前に高耶のほうからおねだりして来るのが常だった。
そんな積極的な高耶も、ここしばらく帰宅時間の遅い自分を慮ってか、求めてくることはなかった。
だが今夜は金曜。いつもなら若い高耶の要求を、手練手管の限りを尽くしたっぷりと満たしてやる、お約束といっていい晩なのだ。

「直江ー、できたぞー」

着替えを済ませてテーブルに着くと、目の前には山海の珍味ならぬスタミナ料理が盛りだくさん。にんにくドレッシングのサラダにうなぎにニラタマ、鮪のやまかけだのと取り揃えられては、これはやはり今晩ひと勝負かと思わず直江がめまいを感じたとて仕方あるまい。

「……どした?」

自分も食べずに待っていた高耶が、箸を取り上げながら心配そうに見つめてくる。
高耶は本当に直江の様子に敏感だ。愛されていると思うし、もちろん直江だってこれ以上ないほど彼を愛している。できる限り彼の期待には応えたい、それでも今日は―――。

「あの、高耶さん」
「なあ、直江」

同時に喋り始めてしまい、はっと目が合う。思わず直江が視線でどうぞと高耶に促すと

「えーと。もう、風呂も沸いてるから」

えへ、と愛らしい笑顔を見せてぽっと頬を染めると

「ご飯食べたら入れよな」 

そう小声で言って照れくさそうにラッキョのつけたのに手を伸ばした。

「直江はなに言おうとしたんだ?」

ぽりぽり。上目遣いに尋ねてくる姿の愛らしさ。

(………言えない)
「なおえ?」
「なんでもありませんよ」 

直江はいささかうつろな瞳で高耶に微笑みかけた。

「お風呂はいりたいなーと思ってたんです」

にっこりと嬉しそうに、高耶が微笑みを返す。

「よかったー!」

直江もまたラッキョに箸を出しながら、心の中で肩を落とした。

(今日はやめときましょうなんて、死んでも言えない!)


かくて夕食が終わると、手伝うという直江を強行に阻止して、高耶は鼻歌まじりに片付け物を始めた。
直江は隙をうかがって書類を仕上げてしまおうと仕事用のパソコンのある自室に行きかけたが

「適当なところで風呂はいってこいよ!」

すかさずキッチンから声をかけられて、すごすごとソファに戻った。

(このままではじきに一戦始まってしまう)

それはマズイ。書類の作成には1,2時間はかかりそうだったし、明日9時に先方に行くには8時に家をでる必要がある。さっさと仕事を片付けて、せめてそれからコトに励みたい。直江は意を決して

「あの高耶さん、実はですね」
  そう話しかけたが
「なんだ?」

この後の展開をバラ色に想定した高耶の意気揚々とした声が聞こえると、お風呂に入ってきますねという以外どうにもできなかった。


それではと考えを改め、直江は急ぎ風呂に入った。
(こうなれば速攻で風呂から上がり、高耶さんが入ってる間に少しでも仕事を!)
そそくさと身体を洗い始めたとたんに

「直江、一緒にはいろう」

タン、とドアを開いて真っ裸の高耶が乱入だ。

「うあ」
「背中、流してやる」

唖然とする直江からタオルを奪うと、フンフンフン〜ンとなにやら歌いつつザカザカ背中を洗い始める。

「直江の背中って、すっごい広いよな」

などといわれて、思わず風呂イスの上で前かがみ(別に怪しい意味ではない)になる直江。

(これは……これは最悪のパターンだ!)
こうして高耶が風呂に一緒に入ってきた場合、その晩の夫婦生活(なにそれ)はこってりと充実したものになることが通例である。
直江の誠心誠意がモットーの奉仕はもちろんのことだが、高耶のほうからも『このままではアカダマが…っ!』と、直江が討ち死にの不安に駆られるほどの熱のこもったワザが繰り出される。意識も身体もどろどろになって、翌日昼過ぎまでふたり枕を並べてほぼ腹上死状態? などということも間々あるのがこの『お風呂でイントロダクションエッチ』なのである。

なんてコトを直江がひとり脳内で誰にともなく解説していると、とうの高耶は直江の背に湯を流しかけ、密着するように身体をすりよせてくる。

「こうしてるのって気持ちいいよな」
「あのあの高耶さん」

ん? 高耶は生返事をしつつ泡の残るその手を直江の股間に回す。

「た!」
「タってねーの? 疲れてる?」
「ちょ」
「タたせてやるから、ダイジョーブ」

浮き出た背骨に舌を這わせながら、高耶は直江のそれを掌に弄んだ。そこはやはり男のサガ、まずいと思いながらも愛しい高耶の手にかかれば、あっという間に反応を示してしまう。

「待って、高耶さん」
「いいから任せとけ。ちゃんとヨくしてやるから」

直江の眼下、高耶のしなやかな指が艶めかしく動き、あまり愛らしいとは言えない己がイチモツを目的意欲を持って育てていく。限りなく淫猥な眺め。

「その、高耶さん」
「なおえ……おっきく、なってきた」

コク、と高耶が唾を飲む。背中に当たったすべらかな胸の先が尖ってきているような気がする。直江は煩悩に流されまいと、懸命に口を開いた。

「たか、やさん、……私、明日仕事で」
「ええっ!?」

この驚き方、今夜の秘め事にさぞや期待していたのだろう。ごめんなさいと心で呟き、直江はさらに

「朝、いつもくらいに家をでなくちゃいけないんです」
「そんなあ、それじゃあんまできねえじゃん」

  ガクリと力の落ちた声。

「それでですね、このあとまだ」

書類作りもあるので、『あんまできねえ』どころではなく『今日はシない』方向にもって行かねばならない。高耶を怒らせないように説諭しようと直江は言葉を選んだ。が、一瞬早く

「このあとまだ時間あるよな」

高耶はそういうと直江の前に回り、8分立てくらいにまで成長したブツをせわしく擦りあげる。

「ちが、高耶さん」
「急いでシよ、な」

雄雄しく立ち上がった直江のそれにざっぱんと湯をかけ、いきなりそこに顔を伏せる高耶。

「あの、書類」
「とりあえずここで一回、そのあとベッドで一回でいいや」
(一回でいいや、って。その一回ずつがすっごくこってり長いんじゃないですかー!)
「ああ……。直江の、やっぱすげえ」

反り返るものからゆっくり顔を上げ、上気した顔にうっとりした笑みを浮かべた。なにがどうすごいのかわからないが、直江はぐいと高耶を引き寄せ、下腹を探る。高耶のそれは直江に愛撫を加えたことですでに昂ぶりを見せている。緩く握るとびくりと身体を震わせた。

(こうなったら仕方ない。一分でも一秒でも早く高耶さんにイっていただいて、それから書類を仕上げよう。そのあと何時間か眠ればOKだし)

逞しくそそり立つ二本のモノを重ねて両手で擦り上げ、直江は、この健全で健康な恋人を一刻も早く満足させる以外に道はないと、そう覚悟を決めたのだった。

かくして直江は必死になって高耶に応えた。
そのせいあってベッドでの2ラウンド後、高耶はぐったりとかつ満足げに眠りに落ちていった。
しかし直江もまた同様に―――夢の世界へと旅立ったてしまったのだった。


「なおえ。起きろ。朝だぞ」

そんな声で目を開くと、すぐそこに花のような高耶の笑顔があった。

「ほら、仕事行くんだろ? そろそろ起きねえと間に合わないからさ」

艶やかな薔薇色の頬。しっとりとした肌。どこか潤んだ瞳。赤らんだ唇。
情事の色濃く残す愛らしい恋人。あまりのかわいらしさにうっとりと見惚れ、肩を引き寄せて口づけようとして、直江は正気に返った。

「いま……何時、ですか」
「え? いま? えーと。7時回ったトコ。もうご飯もしたくできてるし」

思わず高耶をつきのけるようにしてベッドから跳ね起き、自分の部屋に飛び込むなりパソコンをつける。

「どうした直江?」
「書類、書類作って持ってかなきゃならないんです!」
「えッ?」
「先方に9時に届けに行かなくてはならなくて。ああ、すいません、朝ごはんは食べてる時間がちょっと」

がさがさと資料を引っ張り出しながらそういうと、高耶は青ざめてうろたえた。

「ごめん、知らなかったんだ、オレ、知ってたら昨夜あんな」
「言ってないんですから知らなくて当たり前です。あなたのせいじゃありません」

彼が怖くて言い出せなかったとはいえないし、実際高耶に責はない。直江は固いながらも微笑を浮かべてみせた。

「ごめん」

高耶はひとことそういうと部屋を出て行った。引き止めて慰めるだけの余裕もなく、直江は仕事に取り掛かる。とにかく少しでも早く仕上げて届ける以外にすべはない。
しばらくすると高耶がそっと部屋に戻り、直江の傍らに静かにコーヒーカップを置いた。

「スーツとシャツとネクタイと、オレの見立てじゃセンス悪いかも知んないけど。ベッドの上に置いといたから」
「―――高耶さん」
「ほんとに、ごめんな」 

それだけいってまた直江に背を向ける。耐え切れず、その腕をつかんで抱き寄せた。

「30秒だけこうしていさせて」
「な…おえ、怒って、ないの?」
「なにを怒るんです? あなたがかわいすぎること?」
「オレが、すぐ……その、いつも。欲しがる、から」
「嬉しいと思ってますよ、私は」

高耶がきゅうと身を縮めて直江に縋りつく。

「あなたがいると力がわいてくるから。大丈夫」

こく。胸の中で小さく高耶が頷いて、30秒立ったぞ、と、はにかむように告げてきた。

「頑張りますから!」
「うん! 応援してる!」

かくて直江は怒涛の勢いで書類を仕上げ、高耶のバイクを借りて得意先へと爆走し、ようやくのこと指定に時間までにそれを届けることがかなったのである。

それからしばらくの間、高耶からのおねだりはすっかりと影を潜め、それはそれで寂しいような、ちょっとほっとしたような気分を直江は味わったのであった。

オシマイ


ぷるぷるぷる。
添付ファイルを読み終わった高耶の指は震え、顔は青ざめ、瞳は燃え立っていた。

「な……なおえーーーっ!!」
「はいっ!!」

嬉しそうに返事をして直江がリビングにやってくる。

「読んでもらえましたか高耶さん!」

明るいその声に高耶はいっそう顔を引きつらせた。

「こ、こッ、これはいったいなんだ、なんのイヤミだ?」
「イヤミってそんな」

高耶の怒るのが理解できないように直江は問いかける。それがまた火に油を注ぐようなものであった。

「ざけんじゃねえぞッ!」

怒髪天をつく勢いの高耶だ。

「誰が淡白だ。誰がやりたいお年頃だ。誰が積極的だーーーーーー!!!」
「いえそのあの、別にですね」
「てめえいつもこんなこと考えてオレとシてたのか!?」
「そうじゃなくて」 
「事実とまったく逆のことをどうしてこんなに書けるんだ。いっつもいっつもやりたがってオレを押し倒すのはおまえの十八番だし、翌朝ヘロヘロで困り果てるのはオレの十八番だろうがーーーーーッ!!!!!」
「すすす、すいませんっ!」

直江はコメツキバッタのようにアタマを下げた。

「悪気はなかったんです!」
「悪気がなけりゃいったいどういうつもりでこんなもんオレに送りつけてきやがった!」
「えと、あのTAKさんのサイトに」
「オレのサイトだあ!?」

ドスの聞いた声でそう怒鳴られて、直江はビビリ上がりつつも必死に言い訳を口にした。

「はい、使っていただけたらと思ったんです!」
「―――使って、って。どういうことだ」

いぶかしげに高耶は直江を見つめた。いささか怒りの殺がれたその表情に、直江は慌てて言葉をたす。

「つまりですね、TAKさんのサイトにも頂き物のページがあるといいな! なんてちょっと……」
「頂き物のページ?」 

厳しく問われて、直江の声が怯む。

「お客さんも、よ、喜ぶかな……と、NAOさんが…TAKさん……に―――」
「もしかしてこれはフィクションか?」
「あたりまえですよ」

ひとまず高耶が話を聞いてくれてほっと息をついた直江である。

「だってこんなこと、過去になかったでしょう」

なんとなく調子を狂わされて、高耶は苦虫を噛み潰したような顔を見せた。

「これをオレのサイトに載せろってのか。この、どこどう読んだってオレが変態のスキモノのシテシテおにいちゃんになってる小説を。オレのサイトに」

ウッと直江は言葉につまり、次の瞬間にはまたもや頭を下げていた。

「も……申し訳ございませんっ! 読み物としておもしろいかなと思ったんです!」
「これ読んでおもしれーのはてめえだけだ、エロオヤジ!」

高耶にそこまでののしられ、直江は情けなくて悲しかった。確かに少々筆がすべるというか、調子に乗って書きすぎたかもしれない。それでも決して悪意はなかったし、高耶だって笑って許してくれるんじゃないかと思っていたのだ。
何しろ、立場を逆転させれば、これはそのまま普段直江の感じているジレンマをそのまま表したものだったのだから。
それでも確かに高耶への配慮が足りなかったのは否めないだろう。彼の覚えるだろう不快感を思いやる気持ちが自分には足りなかったのだ。

「ほんとに、申し訳ないと思ってます」

  直江の声は力なかった。出したメールを取り戻す術があるのなら。
  頭を机に擦り付けんばかりにして謝る直江を睥睨し、高耶はふんと鼻息も荒く立ち上がる。

「しらねえ!バカ!」

  だんだんと足音も荒く部屋を出て行く高耶。
  あとに残された直江は自分の文才のなさと軽挙妄動をそれはそれは後悔したのだが。

『更新しました』

 そんな件名とともに高耶から直江のパソコンにメールが入ったのは、数時間後のことであった。

『頂き物のページを作りました。
よかったら見にきてね!
TAK’S DIARY URL http://www.**************

待ってまーす!』

 ご丁寧にURLまで記入してあるそのメールを、直江はそれはそれは幸せそうに、なんどもなんども読んだのだった。

 

 

 

END

 

お礼

TAKさんのサイトにリンクさせて頂いたら
このSSをもらっちゃいました!
私がヒロセ様のファンなので
とっても、激、超、嬉しいんです!
みなさんも是非TAKさんサイトchant no.2さんへ
行ってくださいね。