ウチの近所に大きなお寺がある。
そこの住職さんとウチの親父は小さい頃からの幼馴染で、親父の面倒をよく見てたって住職さんは豪快に笑う。
住職さんは小さい頃のオレの面倒もよく見てくれたんだけど、それよりそこの兄ちゃんたちが良く遊んでくれたんだ。
テル兄ちゃん、ヒロ兄ちゃん、それと、ヨシ兄ちゃん。
ヨシ兄ちゃんはまだオレが小さいころに「直江」ってアダナがついて、それからは直江って呼んでる。
小さすぎてなんでそんなアダナが付いたのかは覚えてないけど、オレだけが直江って呼んでるからちょっと嬉しい。
呼ぶと「なんですか?高耶さん」て返事をしてくれるのがすっげー嬉しい。
なんか、オレだけ特別みたいじゃん?
学校に行く前に必ず直江んちのお寺の前を通るんだけど、だいたいオレが登校する時間には直江が外の掃除をしてる。
寺をやってるのは住職さんとヒロ兄ちゃんで、直江はお手伝いしながら修行なんだってさ。
「おはよー!直江!」
「おはようございます、高耶さん。今日も元気ですね」
「おう、あったりまえ!あ、あのさあ、もうすぐ中間試験なんだ。また家庭教師やってよ」
「いいですよ」
「サンキュー!んじゃ行ってきまーす!」
直江は11歳年上で、小学生の頃は毎週水曜に家庭教師に来てくれてた。まだ大学生だったから毎週。
今は修行中だけど頼めば来てくれて、ウチの親もオレの成績のためならってバイト代も弾んでくれるんだってさ。
それにオレがお願いすれば映画も連れて行ってくれるし、遊園地も付き合ってくれるし、行きたいとこ全部一緒に行ってく
れる。
そりゃ直江はやっぱ大人だから、それなりの「付き合い」ってゆーのがあって、たまに断られるけど。
でも、それでも約束したらちゃんと守ってくれるからオレは全然いいんだけどさ!
「こんばんは、高耶さん」
「直江〜!待ってた!」
部屋で試験勉強してたら直江が来た。今日は約束の家庭教師の日だ。
「また英語ですか?」
「そう。どーしても英語が苦手でさあ。読んだり訳したりはなんとかできるんだけど、文章を作るのがダメなんだよなあ」
「じゃあ作文からやってみましょうか」
直江が勉強机のはじっこに椅子を持ってきて座る。いつも寺の白か黒の着物姿だけど、こんな時は普通にジーンズとかで
モデル並みにかっこいい。
「じゃあまず、参考書から例題を出しますね。声に出して作文してみてください」
「おう!」
「簡単なのから。『あなたのお父さんが私に質問をしたことは、あなたの学校生活についてでした』さあ、どうぞ」
「……ゆあ、ふぁーざー、いず…」
「is?」
「ち、違ったか…わず?」
こんな感じでオレはまったく英語の作文ができない。結局直江の出した問題も解けなくて、呆れたみたいに直江は笑った。
「じゃあこうしましょう。あなたのお父さんが質問しました。これなら?」
「ゆあ、ふぁーざー、わず、くえすちょんど」
「wasはいりません」
「なんで?」
「questionedで過去形になってますから」
過去形とbeについての講義が3分ぐらいあって、やっと納得した。直江はこうしてオレにわかりやすく教えてくれるからいつもいつも助かってる。でも英語は相変わらず苦手だ。
そんなこんなで2時間ばかり英語を教わって、夜10時。目標を立てようって提案された。
「中間テストで英語が70点以上取れたら、どこかに連れて行ってあげますよ。ああ、でも保護者付きで出かけるのは高校生の高耶さんには退屈ですね。お友達とどこかに遊びに行く方が楽しいですよね」
「え!…ううん、直江とどっか行きたい」
「鎌倉なんかどうです?歴史の勉強にもなるし、海も近いし、美味しいものもたくさんありますけど」
「行く!!鎌倉行きたい!」
「じゃあ頑張って英語の作文をマスターしましょう。明日、土曜はどうしましょうか」
「土曜もやってくれる?!んじゃ、日曜も!!」
「あ…っと。日曜は予定が入ってるんです。英語のテストが水曜ですから、月、火と来ますよ。それでいい?」
「…うん」
日曜か。そうだよな。直江にだって予定はあるんだろうな。彼女とかもいて、そっちと出かけるのかもしれない。
なんか、直江を取られたみたいで悔しい。
「高耶さん?どうかしましたか?」
「へ?ううん。何でもない。じゃあ、明日も夜から?」
「夕方6時すぎれば空きますけど、今日と同じ時間がいいですか?」
「…6時からがいい…」
「では6時に来ますね」
オレの頭を撫でて、ニッコリ笑う直江はすっごくキレイな顔だった。つい見とれてしまう。
だいぶ前からわかってたんだけど、オレは直江が好きだ。いっつも一緒にいたいなって思う。いつのまにかヨシ兄ちゃんが
直江になって、お兄ちゃんから好きな人へ。
こんなの変だって思う前から、ずっと直江が好きだった。だから今はもう自分の気持ちは自然なもので、全然おかしくない
んだって思える。
ただ、直江はそーゆーのどう思うのかわかんねーけど。
土曜に直江が来て、2時間みっちりシゴかれて英語を勉強した。完璧までもう一歩。いや、10歩。
母さんが終わりにしなさいって言ってお茶を持って部屋に入ってきた。
「義明くんは明日、お見合いなんですってね」
「おばさん…そんなのどこで聞いたんですか…?」
「お母さんからよ。なんでもお寺の一人娘さんなんですってね。今はお坊さんが余ってて、そうやって婿養子に入らないと
お寺の住職にはなれないって言うじゃない?気に入られたら義明くんも住職さんなのねえ」
お見合い?お寺の娘さんと?婿養子?
「直江、結婚、すんの?」
「まあ、お互いに気に入ったらすることになるでしょうね…両親の希望でもありますからね」
「そうなんだ…」
「そうねえ。結婚したらこうして高耶の家庭教師もしてもらえなくなるけど、もう高耶も高校二年生なんだから大丈夫よね?」
「…うん…」
「まだわかりませんよ。向こうさんが気に入ってくれなければこの話は破談になるんですから」
「そんなことないでしょう?義明くんなら気に入られるわよ」
たぶん、直江を気に入らないって言うような女はいないだろうな。優しいし、男前だし、頭もいいし。
きっと直江は気に入られて、その娘さんと結婚して、お寺を継いで…。
「高耶さん?」
「ん、がんばれよ、お見合い!!」
「…ええ…」
結婚なんかしないでよ。
そんな話を聞いちまったから何もかも左耳から右耳にスルーしっぱなし。
何度も直江にどうしたんですか?って聞かれてしまった。ウチで夕飯を食べて行けって両親が言うから直江と久しぶりに
夕飯を食べることができたんだけど、それでも落ち着かなくて、食べ終わったらすぐ部屋に引っ込んだ。
なんにも集中できなくて、ゲームやっててもすぐゲームオーバーになって、コントローラーを投げ出した時、ノックがした。
「高耶さん?」
直江…もう帰ったんだと思ってた。
「入りますよ」
「うん」
静かに直江が入ってきて、オレの隣りに座った。
「勉強はしないんですか?」
「息抜きしてんだよ。まだ帰らなくていいのか?」
「もう少しね。あの、明日の見合いのことなんですけど…」
聞きたいわけないだろ!そんなの!
「うん、頑張って。成功したら住職になれるんだもんな。ずっと実家で坊さんやってるわけにもいかないんだろ?」
「そうですけど…あの、高耶さんはどう思いますか?見合いって」
「オレにわかるわけねーだろ。でも、直江が気に入りそうな人だったらいいな」
「…ええ…」
「オレ、もうちょっと勉強するからさ。直江も帰っていいぞ。ひとりで出来る」
「わかりました。じゃあ、月曜にまた来ます」
「うん」
月曜に直江と一緒に勉強なんか出来ないかもしれないけど、それでも会えるうちはたくさん会いたい。鎌倉も行きたい。
最後のデートになるかもしれないけど、鎌倉行きたい。
だから勉強頑張るから、もう少しだけ。
日曜は直江のことが気になって朝早くからお寺の周りをウロウロしてた。30分ぐらいそうしてたらスーツ姿の直江が家から出てきて、おばさんをベンツに乗せて出かけて行った。
本当にお見合いするんだな。もし本当にすっげーいい娘さんで、直江も気に入って、向こうも気に入って、お付き合いって
ことになったら、やっぱ最終的には結婚するんだろうな。しかも、そんなに遠くない未来。
そしたらウチも両親が披露宴だとかに出席して、オレと美弥は留守番かな。
こうやって直江に置いて行かれて、いつかオレも直江を忘れて彼女とか作って。
そんなの、今は考えられない。
「お見合い、どうだった?どんなことすんの?」
月曜に直江が来て、勉強する前に聞いてみた。なんだかその日の直江は困ったような嬉しいような顔をしていた。
「まあ、普通なんでしょうね。ホテルの懐石料理店で食事をして、後は若い者同士でって言われてドライブして、そんな感じですよ」
「どんな人だった?」
「感じのいい娘さんでしたよ。おっとりしたタイプの」
「付き合うの?」
そこで少しためらいながら、直江は笑った。
「まだわかりませんよ。会ってすぐ付き合うなんて、昔のお見合いじゃあるまいし。何度か会ってからってことになりますね」
「そっか。また約束したんだ」
「…約束はしてませんが…都合が合えば会うことにはなりました」
じゃあお互いに気に入ったってわけだ。そうか、そうなのか。そーゆーことか。
「じゃあさ、結婚したら遊びに行くからな!」
「え?」
「子供が出来たら子守してやるから!」
「…いえ、あの…」
「さーてと!早く始めよう!英語で70点取って直江に美味いもんゴチしてもらうんだから!」
もうそれからは直江の顔なんかまともに見られなくて、勉強も頑張ってもイマイチ頭に入らないし、それでも頑張ってるふりして怪しまれないようにした。
だって直江はオレなんか好きじゃないんだ。
お見合い相手が気に入って、たぶん好きになって、結婚するんだもんな。
「じゃ、今日はここまでですね。明日もこの時間でいいですね?」
「あの、明日はもういいよ。ひとりで大丈夫そうだし。直江だって忙しいんだろ?もし明日さ、お見合い相手がヒマだったら誘ってやれば?な?そうしろよ!せっかく気に入った相手だったらアタックしなきゃ!」
「高耶さん…」
「応援してやっから!」
「そうではなくて、あなたは…」
「オレ?だいじょーぶ、だいじょーぶ!英語だけしっかりやっとけば心配されるような成績は取らずに済むぐらいの学力はあるんだぞ」
「そうですね…あなたなら大丈夫でしょう。英語、ちゃんとやってくださいね」
「まかせとけ!」
笑顔で直江を送り出した。泣きたかったけど、泣かなかった。
やっぱり英語をやっておかないと70点取れないだろうから、月曜も夜遅くまでやって、火曜も自分で予定を立ててちゃんとやってた。
そーいえば本当だったら直江が来る時間だなーって思って時計を見て、なんだか虚しくなってまたノートに目を落とした。
だって今頃は、お見合い相手とデートしてるはずなんだ。
泣きそうになったら妹の美弥が部屋にやってきた。
「お兄ちゃん、ヨシ兄ちゃんが来たよ」
「え?」
「今日も家庭教師頼んだの?しっかりやんないとヨシ兄ちゃんに怒られるよー?」
「うるさい!」
今日は来ないって言ってたのに。
直江がいつもみたく静かに部屋に入ってきた。
「どうしたんだ?今日はいいよって言ったじゃん」
「ええ…そうだったんですけど、なんとなく心配で来てしまいました」
「心配いらないってのに。今ちょうどノリノリでやれてたんだぜ」
「本当に?心配なかったんですね」
「うん」
なんだか、それから会話が続かなくてお互いに黙ったままだった。気まずい。
「見合い相手と、出かけなかったのか?」
恐々切り出して、こんな話したの失敗したなーって後悔。そしたら、
「ちょっと、散歩しませんか?」
「えー…だってコレやっちまわないと」
「息抜きですよ。行きましょう」
ちょっと強引に家から連れ出して、近所を散歩した。児童公園まで来て、販売機でコーヒーを買ってもらってオレはブランコに
座った。直江はオレが座ったところの正面のブランコの柵に腰掛けた。
「この公園でよく遊んでもらったよな」
「そうでしたね。高耶さんはブランコが好きで、いつも私に漕がせてましたよね。一度ブランコから落ちて怪我をさせてしまって…あの時は焦りましたよ」
「あんまり覚えてないけど、膝にまだ傷が残ってるのがそれだって母さんが言ってた。直江が抱いてウチに連れ帰ってきたって」
「抱っこしたらすごい力でしがみついて、大泣きして…」
「なんか昔っから直江に迷惑ばっかかけてたんだな、オレ」
「迷惑ではありませんけど、高耶さんが赤ちゃんのころから一緒にいましたから、弟のように可愛がってたんですよ。私は
末っ子でしょう?弟が欲しくてたまらなかった時に、あなたが生まれて、毎日遊びに行ってましたね。中学に入ってからも
高耶さんが私に懐いてくれるから、友人と遊ばないで高耶さんとばっかり一緒にいた気がします」
「そうだったんだ…」
「今はもう高耶さんも高校生だし、私といることも少なくなってきましたけど…」
これからはもう会えなくなる。毎朝直江におはようって言って学校に行くこともなくなる。
「もし結婚したとしても、たまにこうして会ったりしてくださいね」
そんなの無理に決まってる。直江はオレにお別れを言いたくて、今日、来たんだ…。
イヤだ。イヤだ。イヤだ。
「イヤだ!!!」
「たか、やさん?」
「ヤダ!!そんなのヤダ!!」
「どうしたんですか?」
「結婚すんな!!」
ブランコから立ち上がって、直江が座ってる柵に歩み寄って、抱きついてキスした。
持ってたコーヒーの缶二つが地面に落ちて、砂に染み込んでいく。
「たか…!!」
「直江が好きだから結婚して欲しくない!」
「………………」
「そんなの無理だってわかってるけど、結婚して欲しくないんだ!直江がオレなんかただの弟みたいに思ってても、でも結婚
して欲しくない!オレは直江が好きだから!!」
「………それは、どういう意味ですか?」
「オレが直江と結婚したいんだ!!」
「高耶さん………」
「………もういい!もう嫌われたっていいから!言わなきゃ、もうなんにも出来なくなる……」
直江は何も反応を返さなかった。黙ってオレの背中に手を添えてるだけだった。
驚いて体を動かせないだけかもしれない。
「直江が、好きなんだってば………」
もう一度、キスして終わろう。これで諦めよう。
唇を重ねた。ゆっくり。直江の目はいつもと同じく茶色くて、でもこんなに近くで見たのはすっげー久しぶりで。
じゃあこれで、終わり。
そう思って唇を離そうとしたら、力強く背中を抱かれて、同時に舌がオレの口の中に入ってきた。
「ん……」
聞いたこともない音が、オレの口の中でしてる。なんかが口の中を蠢いてる。そっか、直江の舌が……。
直江の?!
驚いて目を開いたら直江も目を開けてて、すごく真剣な目でオレを見てた。そのくせ舌がオレの舌を捕まえようとして動いて
た。
離れようとしたら頭をあの大きな手が押さえ込んでて、動けなかった。
息が苦しくなった頃にようやく離れた。
「はあ………」
それでも直江は何も言わなかった。
ただ真剣な目でオレを見てるだけ。
何を考えてるかも全然わからない表情で。
悔しいから、このまま直江を自分のものにしちまおうと考えた。
柵に座ってる直江の足元に膝を付いて、チノパンの前を開けた。
それでもされるがままになってる。
触ったら固くなってた。
これが直江なんだ………。
顔を見られないように、そのまま下を向いて直江のを引っ張り出して、キスした。
「結婚なんかさせない」
でかくて怖かったけど、それを口の中に入れた。そうしたらもっと大きくなった。
誰かに見られたってかまわない。みんなに見られて、直江がこの町にいられなくなったら、オレが遠いことまで連れてってやればいいんだ。
どうやるのかなんてわかんなかったけど、一生懸命直江のを頬張った。
「う……」
一回だけ、直江が呻いて、オレの頭を乱暴に掴んで離すと、砂地の地面に白いものが飛んだ。
「あ……」
「たかや……さん」
やっと!やっとオレの名前を呼んでくれた!!
直江の腿に手をかけて、顔を見上げた。
「ダメでした。やっぱりダメですね。諦めようとしたのに、諦めるなんて無理でした」
「なおえ?」
「知ってたんです。あなたが私を好きだって。でも、そんな関係は許されないから、無理して結婚しようとして。でもダメです
ね。心はそう簡単にできてなかったみたいです。私もあなたが好きですよ。ずっと前から」
「ほんとに?」
オレの顔を両手で挟んで、立ち上がれって言ってるみたいに引き上げる。促されて、立ち上がった。
「ええ。たぶん、あなたが私を好きになった時、同時に私も好きになってたんだと思います。それ以前からかもしれない。
気が付いたら、あなたを誰にも取られたくない、離したくないと思ってました。あなたの気持ちを知って、悩んだんですけど
やっぱりダメでした」
「オレのこと、好き?」
「好きです」
「直江〜!」
抱きついてワンワン泣いた。
小さい頃みたく、しっかり抱いてくれて、すごく安心しながら泣いた。
それから家まで送ってもらって、親の手前、少しだけ英語を教えてもらって、明日のテストに備えた。
「お見合い、どうするんだ?」
「断りますよ」
「でも、住職になれないんじゃ…」
「あなたといられるなら、そんなものどうでもいいんです」
帰り際、玄関でこっそりキスして、直江は手を振って帰って行った。
そして数日後、オレはテスト結果を持って直江のいるお寺まで突っ走った。
息せき切ってたどり着いたオレを、直江は着物姿で座敷に迎え入れてくれた。
「71てーん!!」
「ギリギリじゃないですか……」
直江に返ってきた答案用紙を大袈裟に見せたら笑いながら呆れてた。
「いいじゃんか。約束の70点は取ったんだから!」
「そうですね。じゃあ、鎌倉行きましょうね」
「やったー!」
「そういえば…」
「ん?何?」
「公園でしてくれたこと、気持ちよかったですよ」
「え?」
公園で……って!!アレか!!思い出したら恥ずかしいことしたんだなー、オレ!!
「そういうわけですから、鎌倉は一泊で行きましょうね」
ニッコリ、ってこうゆう笑い?
「ね?」
「え?え?え?」
「約束ですよ?」
「えー!!」
無理矢理承諾させられて、あれからお見合いの件はどうなったかを聞いたら直江んちは大変だったそうだ。
直江も向こうさんも乗り気に見えたから、仲人さんが色々と手はずを整えてたんだそうだ。でも急に直江が断りの電話を入れたから、詮索もたくさんされて、うまく誤魔化せなくて相手さんを納得させるのに手間取ったんだって。
相手の娘さんは直江をそーとー気に入ってて、しばらくの間は何度も直江にメールや電話を寄越したそうだ。見合い当日に
携帯の番号を交換するとそうゆうことにもなるらしい。
「じゃ、おまえだってその娘さんのことそーとー気に入ってたんじゃんか」
ふくれて言ったら「そうじゃない」って。
「高耶さんを諦めるためにそうやって自分を追い込んでただけです。今はもう高耶さんだけ愛してます」
「うひひ」
「鎌倉旅行、楽しみですね」
「うーん、そうだな。楽しみだな!」
ちょっと怖い気もするけど、楽しみだ。
こうしてオレは直江と幼馴染から恋人になって、毎朝お寺の前を通る時に「おはよう」だけじゃなくて「だいすき」も言うように
なった。
先のことなんかわかんないけど、直江がずーっとオレのそばにいてくれるからそれでいいんだ。うん!!
@オマケ@
「なんで直江ってアダナになったんだ?」
「あなたが6歳の頃、私につけたんですよ?覚えてませんか?」
「へ?そうだっけ?なんで?」
「あの児童公園にいた黒い犬が『直江』って名前で、それに似てるからって」
「…オレってもしかしてヒドイヤツだった?!」
「いえ、可愛らしかったです。あなただけに直江って呼ばれるの、嬉しかったです」
「やっぱ大好き、直江〜!!」
END
あとがき
じゅりんさんからのリクエスト。
幼馴染、切なくて
甘甘、ちょいエロ、他。
切ないってどんなの?!みたいな
感じで書きましたけどこんなんで
いいんでしょうか?
リクエストありがとうございました!
書いてて楽しかったです。うひ。