ラブホでゴー
|
||||
直江とラブホに行きたい!これが当面のオレの目標だった。
「このまえ行ったラブホがさ〜、すっげえ変わってて〜」 ちょっと前の話だ。同じゼミの友達数人で昼飯の時に、そんな話題が出た。 「どんな?」 答えに詰まった。行ったことないから。 「あー、オレ、ラブホ行ったことねえんだよ」 車の中とか、夜中の公園とか、ビルの屋上とか。って、なんだこれ、変態か、オレたちは! 「たまには気分変わっていいからラブホ行ってみれば?」 話を聞いてみたら面白そうだからすっげー行きたくなった。プールがある所もあるそうだ。 「イヤです」 頑固な直江にムカついてケンカになった。そんで、家庭内別居したわけ。
家庭内別居翌日、オレは怒ってるふりして朝飯も弁当も作らずに、しかも顔を合わせないようにして大学へ行った。直江よりも先に家を出て、余った時間を構内のカフェで過ごしていたら売店の雑誌に目が行った。 最近ではテレビゲームやカラオケが充実したラブホもあれば、コンセプトをちゃんと作って楽しめる部屋ばかりをそろえてる 直江とエッチするならどんなのがいいかな〜って考えて、あのエロ魔人のことだから和風なんか燃えるんじゃねーかと探していたらあった。ありましたよ! そうやって時間を潰していたら直江からメールが入った。 『今朝はどうしたんですか?まだ昨日のことを怒ってるんですか?』 って。当たり前だ。オレがあんなに行きたい行きたいって言ったのに頑なに断り続けてたんだから。 「というわけで、拒否とは肯定の裏返しでもあるわけです。一度肯定してしまったら二度と拒否できないから、という理由で拒否を続ける心理というものがあり、そしてそれと一見反対に見えますが同じ作用として、一度拒否したら肯定できなくなってしまうのも引きこもりの特徴です」 なるほどな。もしかしたら直江の心理状態を当てはめられるかもしれない。一度肯定させたらハマるってわけか。
この家庭内別居を利用して直江をビクビクさせることにした。オレを怒らせたらどうなるかあいつが一番わかってるはずなのにまだわかってないのか。駄犬め。 「高耶さん」 風呂場に向かう途中で直江に呼び止められた。よし、ここで直江が謝るのを待って… 「どこに行ってたんですか。こんなに遅くまで」 まだ10時だけど。いつもオレは直江が帰るまでには家にいて夕飯を作って待ってるからそりゃ10時つったら遅いかもしれないけどちょっと心狭すぎねえ? 「どこだっていいじゃん」 やっべー!グルグルしてやがったのか!ああ、忘れてた!直江はグルグル回転野郎だったんだっけ! 「高耶さん…!」 うわ〜、めんどくせえ!うぜえ! 「なんです、その顔は!俺に浮気がバレたのを失敗したって顔ですよ!」 そしたら直江はオレの服を脱がせにかかった。バカじゃねーのか、こいつ!すぐコレだ! 「おい」 オレは久しぶりに景虎様になった。おとなしくしてりゃいい気になりやがって。 「てめえ、どっちが主人かわかっててやってるんだろうな?」 急に景虎様になったオレに気付いて、直江はシャツを脱がせようとしていた手を止めて固まった。 「いいか?おまえが浮気するのは許さないが、オレが何をしようがおまえが口出しする権利はないんだぞ」 そこでオレは思いついた。直江への罰を。うっひっひ。 「だったら……そうだな…ラブホに連れていけ」 よっしゃー!ラブホゲット!! 「んじゃ決めようぜ。ほらほら、コレ」 購買部で買った雑誌をテーブルに広げてページをめくっていく。直江が好きそうな和風とSMはなるべく見せないようにして。 「もしかしてラブホがどんなとこか知らなかったわけ?」 そういえば直江はオレが火サスとか見てても風呂に入ったり、隣りで本とか新聞とかオレとか見てるからドラマ自体はそう見てないんだな。 「ちょっと貸してください」 雑誌を取り上げられてしまった。どうやら興味津々になってきたみたいだ。やったね! 「ああ、ここなら行ってもいいですよ」 そう言って見せたページはやっぱり和風だった。 「この牢屋にあなたを閉じ込めて一晩見つめるだけっていうのもいいですね。もちろんあなたは全裸ですけど」 その部屋は予約ができるとか書いてあったからさっそく直江が電話した。最近のラブホは進んでるな、ってオレは行った事ないけど! 「どうします?」 そして決戦は明日に持ち越された。
決戦の土曜日、夜。チェックインは夜8時。 「なかなか似合いますね」 直江は家を出る前からクスクス笑ってやがる。気に入らないがそれでもラブホは魅力的なわけで! フロントのオバちゃんをうまく誤魔化して(身長は直江のおかげで遠近感が出て気にされなかったようだ)部屋に到着。 「直江、茶入れろ」 直江が茶を入れてる間に奥の部屋を探検した。襖を開けるとそこにはダブルの婚礼布団が敷いてあった。行灯タイプのランプがあってその光が赤ってゆーかピンクってゆーか、とにかくエロい色に灯ってた。 「牢屋だ…マジであったんだな」 その牢屋は雑誌で見たよりも小さくて男がひとりで座って入れる程度だった。で、かんぬきがかかってた。安全のために鍵は使ってないみたいだ。格子もかんぬきも赤くてエロい〜!! 「直江、直江、おまえここ入れ!」 無理矢理押し込んだら犬小屋みたいになった。まだ服を着てるから赤い牢屋に入っても滑稽なだけでエロくもなんともなかった。 「あっはっは!」 そしたら直江は内側からかんぬきを抜いて出てきてしまった。つまんないの〜。 「で、どうします?一晩中笑いますか?」 とりあえず雰囲気のあるヒノキの風呂に入ってシャツだけ着て戻った。次は直江。 「……コレは」 マジックミラーっつーやつだった。中で直江が裸んぼになって体を洗ってる。直江はコレに気付いてないようで鼻歌なんか歌いながら丹念に隅々まで洗ってた。 直江が風呂から出る時に慌てて雨戸っぽいのを閉めた。直江のシャワーシーンを見ちゃったもんだからもうやりたくってしょうがなくなって、オレは再び慌てて牢屋に入った。そこで直江を待つ! 「高耶さん?」 返事はしない。だって囚人だもん。色っぽく、悲哀に満ちた顔で囚人やってないと。 「どこですか?高耶…さん…」 ようやくオレを見つけた直江はビックリして目を丸くして頭を拭いてたタオルをハラリと落とした。いいぞ、いいぞ〜! 「なおえ…」 シャツだけ着てるからお尻丸出しで、牢屋に閉じ込められてるオレ。それを見た直江がどんな反応するのか楽しみだったんだけどオレの予想を上回ってエロモードに入ってくれたようだった。
その後は布団の中だとか窓際だとか風呂場だとか玄関だとかでして(やっぱ変態みたいだ)大満足の週末が終わった。 「今夜は六本木のあのホテルですよ♪無理言って銭掴ませて予約しちゃいました」 ……もうイヤだ……。
END
あとがき いりこさんからのリクエスト。 |
||||
|
||||
|
||||