闇戦国はソッコーで終結した。和睦だ。
信長が「わしはアメリカでデビューするんじゃ」と言って、日本を武力で制覇するのをやめて、音楽で世界を酔わせる方向で決定したそうだ。
蘭丸が謝りに来た。
他の怨将も信長の考え方に感銘を受けて、それぞれの持ち味を生かした世界制覇(支配じゃなくて)を目指している。
武田は「信玄餅」を世界中に。(SHINGEN-MOCHIとかいう商品名にするのかな?)
伊達はセンスを生かして映画の衣装制作に。(さすが「伊達男」って言葉を作るほどの奴らだ)
最上は「じゅんさい」の人工栽培をするらしい。(そんなに難しい山菜なのか?)
他にも色々な怨将がそうやって戦線から離れ、上杉全員はこの先の人生をエンジョイしていいことになった。
それでオレは普通の高校生活を送り、優しい直江にほだされて晴れてお付き合いということに相成った。
今は高校を卒業して大学に通うため、東京に上京して直江と同棲してる。
千秋も同時に上京してきた。ねーさんは相変わらず横浜だ。
景虎の記憶ってのはほとんど無いけど、たまに癖のように出るそうだ。自覚は無い。
直江がそう言うからそうなのかな?って思ってるぐらいだな。
直江はお兄さんの不動産屋に入って営業をしている。不動産屋の仕事なんかわからないけど、部長待遇だそうだ。
毎日定時に出かけていって、残業はあるけど月の半分は定時に帰ってくる。
オレは大学に行って、帰りは夕飯の材料を買う。バイトはしてない。
親の仕送りが小遣いで、家賃や光熱費や食費は直江負担。当たり前だろ、家事やってんだから。
それで、だ。
どうもオレと直江の間には認識の違いってのがあるらしい。
これは同棲であって、同居ではない。
でも直江は同居ですって言い張る。
オレはこの生活を結婚生活同然だと思ってるが、直江にとっては同居だそうだ。
「いや、オレたち付き合ってるわけだし」
「そうですが、あなたが学生のうちは同居という姿勢を崩したくないんです」
律儀なのはいいけど、なんだかな。
「だから今までチューしかしてくれなかったんか…」
「はい?」
「高校ん時は遠距離だったからエッチはないんだと思ってた。けど同棲始めてもエッチがないからおかしいな、と思ってたんだ。そうか。直江は学生には手を出さないってことなのか」
「…あなた、そんな恥ずかしいこと考えてたんですか?」
「別に恥ずかしいことじゃねえだろ。好きな相手とエッチしたいってのはさ」
「そうですが…」
直江が困ってる。本気でオレに手を出すつもりはないらしい。
けどそれじゃこっちが困る。なんのために同棲したかわからない。オレは直江とエッチがたくさんできるから同棲したんだ。言いだしっぺもオレだ。
「もう18歳になったんだから、淫行じゃねーだろ。な?エッチ有りきの生活にしねえ?」
「しません。学生のうちはダメです」
むー。頑固なやつだ。
「じゃー、おまえがしたくなるようにしちゃる!」
「無駄ですよ。私の考えは変わりません」
「ほー、よく言った!一回でもその無淫行を破ったら週3でエッチしてもらうからな!」
「いいでしょう。私はあなたの色香には負けませんよ」
「吠え面かくなよ」
「ええ。あなたこそね」
こうしてオレの誘い受け生活が始まった。
直江が買ったマンションは3LDK。
直江の寝室、オレの部屋、直江の書斎、とこんな感じだ。
今まで直江が実行してきたように、オレたちの生活にエロスを感じさせるような部分はない。
オレは毎日自室で寝るし、直江もそうだ。
色々と直江が仕掛けてくるチャンスはあったにも関わらず、そうしなかったのは学生のうちはダメという直江の勝手な決まりごとがあったせいだったんだ。
じゃあこのエロスのない生活をまずは改善だ。
「高耶さん、まだ寝ないんですか?」
書斎で仕事をしてた直江がリビングに来た。
ご苦労なことに今日は仕事を持ち帰ってパソコンで表を作成してたらしい。えらいもんだ。
「直江と寝たいなーって思って、待ってたんだ」
「…さっそく来ましたね。いいですよ。あなたと同衾しても私は平静に眠れますから」
「だといいがな」
戦闘開始だ。
直江が歯磨きをしてる間に、寝室のベッドに入った。
せっかくのダブルベッドなのに有効に使わないなんてもったいない。今日からオレが有効に使ってあげようじゃないの!
「…本気なんですね。まあ、いいでしょう。さあ、寝ますよ」
寝室に入ってきた直江がランプを消した。部屋の中は真っ暗。さて、どうしてくれようか。
「な・お・え〜」
「なんですか、もう」
まずは手始めに直江にくっついて、足を絡ませた。それから首にチューして、手を股間に。
「手馴れてますね。どこで習ってきたんです?晴家からですか?」
「違う!」
股間を触ってるのに、直江は全然反応しない。どころかアクビしやがった。
「眠いんですが」
「なんで立たないんだよ。もしかしておまえ『いーでぃー』ってやつか?!ペレか?!」
「ペレではありません。これは頑強な意思の恩恵です」
「ににんがし、にさんがろく、とかって考えてるんじゃないだろうな!」
「いいえ。フェルマーの定理です」
誰だ、ふぇるまあって。エルマーと竜なら知ってるぞ。
「なあ、マジでする気ねーのか?」
「ええ」
「なんで?学生だってやってるやつはたくさんいるぞ?」
「そうですけどね。いいじゃないですか、他人は他人、私たちは私たちで」
「良くねえ!みんなやってるんだ!オレだけなんてやだ!」
学校の友達はみんな経験者だ!ドーテーなのはオレだけだ!
早くオレの処女(?)を奪ってくれ、直江!
「…浮気、してもいいんだな?」
「それだけは許しません。あなたは私のものです」
「じゃー、エッチしよう!」
「エッチが愛のバロメーターじゃないのは知ってますね?あなたをずっと愛してた私が理解できてますよね?」
「愛されてるのは理解してるけど!でもエッチもしたいんだ!」
直江が真剣な目でオレを見つめる。何?
「とにかく、しません」
「バカー!バカバカバカ!!うわーん!」
オレは直江のベッドを飛び出して、自室に戻って泣くふりをした。本気で泣くほどガキじゃない。
落としのテクだ。
「ドアを開けっ放しで泣くなんて、あなたが本気で泣いてないって証拠じゃないですか」
一応追いかけてくれたのは嬉しいが、見破られているとは。
むむむ、あなどれん、直江め。
「卒業したらエッチしてあげますよ」
「最低でもあと4年はダメってことじゃんか」
「そうなりますね」
「だったら大学は留年含めて最大8年間行ってやる。その後は大学院だ。それから就職しても専門学校の夜間コースに行く」
「いいですよ」
「それまで待てるのかよ」
「いつまででも」
負けた。今日は負けを認めてやる!
明日からはもっと大掛かりな直江誘惑作戦を実行だ。
「おぼえてろ、直江!」
「受けて立ちますよ」
エッチしたいよー!直江ー!!うわーん!!!(マジ泣)
END
|