同棲したのに!


第二話  傾倒の如何
 
         
 

うーん、直江をその気にさせるにはどうしたらいいのか。
そのためだけに大学を辞めるってゆーのはバカらしいし、あからさまに裸になって股を広げるのはオレが恥ずかしい。
こう、なんてーのかな?さりげなく?そうそう、さりげなく!
そんで直江が「高耶さん!もうガマンできません!」 そこでオレが 「うわあ!直江ヤメロ!」みたいな?
こうでなくちゃ!

そうなるには何を参考にしたらいいんだろう?新婚さんかな?それとも夜の蝶かな?
どっちもオレには縁遠いものだ。
そうだ!いい教師がいるじゃねーか!ザッツライト!
イッツァ〜〜〜〜千秋!!

 

「で?俺に用事ってなんだよ。景虎から頼みごとなんか珍しいよなあ。嫌な予感がするぜ」

千秋の家はうちから電車で3駅だ。わざと行き来が微妙にめんどくさい場所にしたそうだ。何かあったら助け合えるが、そうじゃない時は顔も見ないような場所。
そんな所に住むからオレが相談に来ちゃうんだよ!バーカ!トンマ!

「エロビデオ見せろ」
「はあ?そんなことか?レンタルすりゃいいじゃねーか」
「千秋の意見も聞きたくてな。直江が好きそうなのってあるか?」
「直江〜?」
「そう、直江」
「なんで直江の好みのエロビデオなんか見たいんだよ。わけを話せ」
「直江にエッチしてもらうためだ」
「まだしてねーのか!はー、あの直江がなあ」

千秋がそう言うってことは直江はオレとじゃなければエッチできるってことになるんだろうか?それは悔しい。

「直江の趣味って?」
「こーゆーのは元々見ないと思うけど…まあ、このへんだな」

そう言って出してきたのは『奥さん系』というやつだ。
しかもちょっとスレた感じの奥さん。

「景虎と暮らしてるくせに、あいつ全然しようとしないなんてなー」
「そうなんだよ!オレがしたいって言ってんのに、学生のうちはダメです、とか言っちゃってさあ」
「いーでぃーじゃねえのか?」
「いーでぃーでもペレでもないらしいぞ」

ビデオデッキに『奥さん』を入れて千秋と一緒に見た。なるほど、こうやってさりげなく誘惑すりゃいいのか。
恥ずかしいけど今日、直江が帰ってきたらやってみよう!!

「おまえ…もしかしてコレ実践すんのか?」
「おうよ!直江がその気になるまで研究に研究を重ねるぞ!」
「マジかよ…」

待ってろよー!直江ー!
「ガマンできませんよ、高耶さん!」が目標だ!!

 

 

「…それでお腹を壊したと言うんですね?」
「ええ、そーですよ、そーですともよ」

夕飯の支度をしてる最中に直江から帰るコール(古いな)があって、万全の準備をして直江を待ったんだけど、駅からマンションまでの道のりで事故があったらしく、迂回しなきゃならなかったんだと。
そんでついでにオレのためにケーキを買って帰ろうとしたらすごい混雑してて、予想外に時間がかかったそうだ。

「だからって裸にエプロンなんかしなくても」
「だってこーゆーの好きそうだって思ったんだもん」

そうなのだ。
オレは裸になってエプロンをして、直江を待った。
そしたら意外に寒くて直江が帰ってくる頃には腹を壊してしまった。真っ青になりながら玄関にその格好で迎えに出たら、直江は裸エプロンよりも顔色に驚いてしまったんだ。
大失敗。

「迎えに出る瞬間に服を脱ぐとか、毛布を被ってるとか、何か防寒すれば良かったじゃないですか。まだ4月なんですよ?そんな格好でいたら寒いに決まってるでしょう」

今はパジャマを着てベッドの中だ。ちなみに腹の立つことにオレのベッドだ。

「何か暖かい飲み物でも作りますよ。治ったらケーキ食べてくださいね」
「むむー」
「なんですか?」
「オレが腹を壊すぐらいまで直江とエッチしたいって思ってるのにぃ!」
「お腹を壊したのはあなたがバカな考えを起こしたせいですよ。私に非はないじゃないですか」

正当な意見でさらにムカつく。
くそう。こうなったら。

ココアを作って持ってきた直江がベッドに座った。よっしゃ!

「なおえ〜。寒い〜」
「寒いですか?風邪まで引いたんじゃないでしょうね?大丈夫?」
「まだ体が冷えてるんだろうな…」
「どこが冷えてますか?」
「お尻」

直江はオレの意図がわかったみたいに目を細めると、挑戦的に笑って手を布団に潜り込ませた。
いいぞいいぞー!
パジャマの中に手を入れて、直江のあったかい手がお尻を触る。
どーだ、オレの桃尻は!

「あ、本当に冷たいですね。大変だ。確か電気毛布があったはずですから出しますね」
「おいおいおい!」
「わかってますよ。高耶さんのお尻は可愛いですってば。はいはいはい」
「ケツ触っといてそれはねえだろ〜!」
「いいですか?あなたは!この寒い季節に!裸にエプロンなどいう!バカな格好をして!それで!そ・れ・で!お腹を壊して寝てるんですからね!」
「うー」
「反省なさい!」

今日も負けた…。どうして勝てないんだ…。

 

 

「で?直江は裸にエプロンは好きじゃないのか?」
「…嫌いではありません」
「ほほお」

次回は夏にチャレンジだ!!!

 

 

END

 

 
   
あとがき

裸にエプロンは男のロマンだと
言われまして、それまでは
本当かと疑ってたんですがどうやら
本当らしいです。
ここの高耶さんはバカ丸出しですね。
高耶さんファンの皆さん、
ごめんなさい。