同棲したのに!


第三話  虚実の衝撃
 
         
 

こないだは失敗したけど、今回はうまくいく自信がある。
なぜなら!
直江は本当はオレの裸に反応するってのを知ったからだ!

話は一昨日に戻るぞ。
オレが風呂に入ってる時、滑って転んだ。
でかい音を出して、「いってー!」ってでかい声で喚いたら直江が飛んできた。

「どうしたんですか!」
「転んだ…いててて。手ぇ貸せ。立てない」

直江に立たせてもらったはいいが、歩くことはできなかった。どうやら捻挫したみたいだ。

「歩けませんか?じゃあ、すいませんが失礼して」

そう言ってオレを抱っこした時!!!
なんと直江はオレの裸の体を舐めるように見て、恥ずかしそうに目を逸らしたんだ!!
こりゃイケるぞ、おいおい!

微妙な誘惑よりも、マッパの方が直江は好きなんじゃねーのか?!それがわかったらこっちのもんだ。
捻挫なんぞ屁の河童。ダイレクト誘惑だ!

 

 

つーわけで、オレがマッパになるのは風呂オンリーだから、狙い目は風呂だな。
ベッドでマッパになって直江をお出迎え、だと逃げられてしまう可能性もあるから、逃げられないように風呂場におびき出して、密室にしてしまおう。寝室より狭いしな。
フッフッフ。

「おーい」

風呂場から直江を呼ぶ。まだ捻挫はぜーんぜん良くなってないからあいつは呼べばすぐにどこにでも来る。

「なんですか、高耶さん」
「足が痛くてうまく洗えないんだ。背中流してくんねえ?」
「はい」

部屋着の袖と裾をまくって、直江は風呂場に入ってくる。
まずは本当に背中を流してもらおう。
それから…

「バスタブに入りたいんだけど」
「支えましょうか?」
「そうじゃなくて…抱っこ」
「服が濡れます」
「じゃあ脱げよ」
「いいですよ、濡れても」

そんで抱っこだ。
オレだってそんなに軽いわけじゃないのに、こいつはどうして平気で持ち上げられるんだろう?
すげーよな。それにこーゆー男ってセクシーだ。

「やっぱ入るのやめた」
「そうですか?足が痛い?」
「直江にこうしててもらいたいなーって思って。それからあんなことも、こんなことも♪」

抱っこしたまま直江が固まった。直江の眼下にはマッパのオレ。抱いてる腕にもオレのスベスベの素肌。
こりゃたまんねーに違いない!

「あの、高耶さん…」
「なおえ〜v」

首に腕を巻きつけて、しがみつくようにしてスリスリした。
反応しちゃってる?!なあ、どうよ?!

「無理して抱き上げた私の身にもなってくださいよ。腰が抜けそうなんですけど」
「…ああ?!」
「降ろしますよ。もう腕も力が抜けて…あ!」

ずどん。

オレはバスマットの上にケツから落ちた。
しかも捻挫した足はマットからはみ出して、タイルにダイレクトに打ってしまった!
ダイレクト誘惑どころかダイレクト激痛だ。

「どわー!!!」
「あああ!すいません!高耶さん!大丈夫ですか?!」

痛さで口が利けずにパクパクやって、涙がとめどなく溢れてくる。

「高耶さん、しっかりして!」
「な……なお……」
「ああ、高耶さん!可哀想に!」

おまえがやったんだー!!

それから直江はなんと《力》を使って念動力で自分の腕を支えて、オレを抱っこして、オレの、オレの!寝室に運んだ!
屈辱だー!
だったら最初から《力》を使っておけ!!

「痛い〜」
「本当にすいませんでした。お詫びは腹を掻っ捌いてでも!」
「腹なんぞ捌かなくてもいいから手当てをしろ!」

あれ?いいんじゃないか?
足はともかくケツも手当てが必要だ。オレの桃尻を晒すわけだろ?
それにムラムラしてくれるんじゃないかー?うっひっひ。

「これはまた…たいした…ププッ」
「何、笑ってやがんだ。この可愛いケツを見て」
「だって高耶さん。お猿さんみたいになってますよ。プププ」

がーん。
桃尻じゃなくて猿尻になってるとわ!

「湿布を貼っておきましょう…プププッ。湿布貼ったら今度はミニ座布団みたいです」
「もういい!もう見るな!直江のバカー!!」
「あっはっはっはっ」
「バカー!うわーん!」

 

 

「そんで、直江。捻挫した時、オレを抱き上げて目を逸らしたのはなんでだ?本当は反応したんじゃないのか?」
「あれは…あなたの毛の中に白髪があったものですから…若いのに白髪なんてショックかと…」

あったよ、白髪。一本だけチョローっと。
なんだよ、オレのマッパにときめいたんじゃないのかよ。ケ。

今回も負けだ。
どうしたら直江をその気にさせることができるんだ!

「やっぱいーでぃーじゃねえの?」
「違います」

 

 

くそう!!捻挫が治ったら襲ってやる〜ぅ!!

 

 

END

 

 
   
あとがき

可哀想にね。
高耶さんはまだ直江が本気で禁欲してる
なんて考えられない様子です。
毛の中に白髪なんて
高耶さんファンの皆様には
平謝りです。
土下座。