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同棲したのに!


第四話  美麗の深淵
 
         
 

直江が出張で2泊するそーだ。寂しくない。
なんでかってゆーとオレと千秋と綾子ねーさんでお泊り会があるからだ。

たまには横浜まで出て来いと行ったねーさんちに泊まることにしたんだが、どこで聞きつけたか千秋も行くことになったらしい。
そんなわけでオレは千秋と一緒にねーさんが待つ横浜市に向かった。

 

「えー!あんたまだ直江とやってないの?!」
「そーなんだよ!あいつ、学生のうちは何もしないって言うんだぜ!いい大人のくせにさー!」

夜叉衆のメンバーの中でも直江はいい悪口のネタになる。あいつが一番頭固くて使えないから。
そんなヤツと付き合ってて、同棲までしてるオレもどうかと思われてるには違いないんだけどさ。

「どうしたらあいつが落ちると思う?!」
「あんたが全裸でも裸エプロンでもダメだったんでしょ?そうね~」
「ああー!俺様にナイスアイデアが!ほらほら、あいつって元は女好きだったろ?」
「そうか!景虎が女みたくなったらいいんじゃないの?!」
「女みたくなるだと~?!絶対にイヤだ!」
「そんなだから直江もやりたくないんじゃないの?ほら、景虎~!試しに女っぽくなってみなさいって!」

二人に押し切られて体をいじられた。

 

 

「いてててて!なんでこんなことまで!」
「ガマンよ、景虎!今時のおねーさんたちはこれをガマンして男を釣ってるんだから!」

まずは眉毛だ。毛抜きで一本一本抜かれた。こんな痛さは生まれて初めてだ。たぶん景虎の記憶があったとしても、こんな痛さは知らないに違いない。

「ほーら、キレイになった!大丈夫よ、整えただけだから」
「ヤンキーみたいな眉毛にはなってないだろうな!」
「鏡で見てごらんなさいって!」

鏡を渡されて見てみたら、瞼にあったまばらな眉毛がなくなってスッキリしてた。凛々しいんじゃね?

「おー、いいじゃん、景虎ァ。抜いただけで印象変わるんだな」
「どうよ、千秋!直江も欲情するよーな顔になったか?」
「なったけどなあ…まだ詰めが甘いな」
「そうか?」
「体もいじらないとダメそうだな」

何をするのかと思ったら、ねーさんが「キレイなお姉さんは好きですか」を持ち出してきた。

「抜くのよ、景虎。いらない毛は全部抜くの!」
「…イヤだ!!痛いんだろ?!涙がちょちょ切れるくらい痛いんだよなあ?!」
「女はそれを根性でガマンして毎週抜いてるのよ!」
「オレは男だ~!」
「…直江とエッチ」
「う」

痛いのは脱毛じゃなくて、そのへんを突かれたオレの心だ。

「さー、やるわよー」
「晴家!それ俺にやらせろ!」
「え~、長秀が~?いいけど、けっこう時間がかかるわよ~」
「望む所だ!」

まずはシェービングでスネ毛を短く切ってから、いよいよ脱毛と相成りました。

「でででで!!半端じゃねーぐらい痛てえ!」
「ガマンでしょー。景虎さま~。直江とエッチしたいんだろ~?」

どうも千秋はオレが毛を抜かれて痛がってるのが楽しいらしい。マジで痛いってのに。

「うおー、すげー!抜ける抜ける!」

15分ぐらいだろうか…ようやく膝下の脱毛が終わった。毛も抜けたけど、気も抜けた。

「膝上もやんべ」
「いい!膝上は薄いから自分で剃る!腕も剃るからやらない!」

これ以上は拷問だぜ。なんでも白状したくなっちまいそうだ。

「じゃ、お次はこれね♪」
「もしかして、それは…」
「お化粧よ~。直江に見せられるぐらい上手にマスターして帰るのよ!」
「マジかよ~!!」

化粧はねーさんの特訓を受けた。女みたくならないよーに、地味な化粧を強制的に教えられた。
そして道具もくれた。
さらにねーさんの服も着せられたが、ここまでしたらただのオカマになるから強く辞退させて頂く。
けど千秋は面白がってねーさんのスカートを履いて「オホホホ」とか笑っていた。オレは千秋ほど神経が太くないんでな。

それからはねーさんと千秋で「男の誘い方」を実演してくれた。しなだれかかり方、流し目の使い方、手の添え方、顔の角度から直江に触るタイミングまでバッチリと。

「よーし!これであいつも落ちたも同然!本懐を遂げさせてもらうぞー!」
「よ!ガンバレ大将!」
「気合よ、景虎!」

 

 

「おかえり、なおえ~」

直江が出張から戻ったその時点でオレの直江陥落作戦は始まった。

「ただいま帰りました」
「寂しかったよ~」
「すいません、どうも風邪を引いたようなので寝かせてください」
「風邪だと?!」
「熱っぽいので…申し訳ありませんが体温計を出しておいてください」
「わかった」

直江は荷物をリビングに置くと、フラフラと寝室へ行ってしまった。体温計を持って部屋に入ったらすでにベッドに寝ていた。

「パジャマ着たか?」
「着ましたよ。体温計は?」
「ほれ」

熱を計ると38度あった。完璧な風邪だ。
顔も赤くなってきたし、目も涙目になっててツライんだなーってのがわかった。

「高耶さん、すいません…」

本当に申し訳なさそうな顔をして、オレを見ながら手を握ってきた。
…おや?このしぐさは…昨日千秋とねーさんが実演してくれたのと同じじゃねーか!直江、色っぽいぞ!
その火照った頬も!ウルウルした弱気な視線も!オレの腕に添えた熱を持った手も!

はっ!もしかしてこれって直江にお誘いを受けてるってことじゃねーのか?!
なんだ、そうか!
直江はオレをやりたいんじゃなくて、オレにやられたかったのか!

「そうならそうと言ってくれればいいのに!直江!いつでもオレが抱いてやるぞ!」
「は?」
「そうか、直江は受けだったのか!だから今までなかったのか~!」
「あの、話が見えてこないんですが…とにかく寝ますから静かにお願いします」
「静かにか?優しくじゃなくて静かに、か。わかった。痛くないようにするから!」
「はあ?注射してもらうほどではありませんよ?」
「注射だなんて!もう、直江ったら積極的なんだな~!やっぱ大人は違うなあ」

もう今すぐにでもオレに入れて欲しいってか!

「高耶さん!いい加減に黙ってもらえますか!こっちは熱で苦しんでるというのに、あなたときたらまったく意味不明な話をして!私は風邪で苦しいんですよ!」

……………何?オレの勘違い?

「抱くだの、受けだのと…またくだらないことを考えてたんですか。私が高熱を出してるのに、あなたはソレしか頭にないんですか」
「ない」
「う~」

だってエッチしたいんだもんよ。

「とにかく出て行ってください!ゆっくり寝かせてください!明日の朝まで寝室には一歩も入ってはいけません!出入り禁止です!」
「なおえ~…」
「私の睡眠を邪魔したら、学生が終わってもエッチはナシにしますからね」
「えええ?!そんなのないよ!」
「わかったら出て行きなさい」
「…は~い…」

ち。オレがせっかく習得した技も披露できずに終わったか。

 

 

直江の熱が引いて。

「なんです、その足は。どうして毛がないんですか?」
「うっせー」
「男にスネ毛がないのってマヌケですね。ププ」

スネ毛どころか脇毛も腕毛もねーんだよ!くそ、直江の毛も抜いてやる…。

 

 

END

 

 
   
あとがき

脱毛はとても痛いです。
そんなわけで永久脱毛をすることに
なりました。
それを記念してのSS。
くだらないのは高耶さんの頭の中じゃなく
私の頭の中ですな。