同棲したのに! 第九話 奏効の恢復 |
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バイ●グラのせいで胃を壊してしまった私は不本意ながらイカルガカムイ医院を再度訪れた。 「あら、橘さん。どうだった?バイ●グラは。おっ立ってられた?」 先日も思ったが、この医院の女医であるイカルガ医師は何でもストレートに物事を言うから腹が立つ。 「それのおかげで胃が荒れたようなんです。胃薬を出してください」 ええ、その通りです。でも早く乗っかりたかったわけではありません。高耶さんの期待に答えたかっただけです。 「じゃ、胃薬を処方しとくから。それとさあ、あんたのいーでぃーは根が深いかも知んないから、精神科へ行った方がいいかもよ?」 この調子の良さは長秀なみだが、威勢の良さは晴家のようだ。
そうして紹介されたのはまたしても女医さんの病院だった。地図と紹介状を貰って帰宅した。 「そんで直江はそこに通うわけ?」 高耶さんはなぜそこまでシたいのだろうか?口を開けばエッチしろと言うようになってから2ヶ月。 「また女医か〜。おまえ変に誘惑されても浮気は許さないからな」
翌日、外回りの時間を利用して紹介された『秋葉クリニック』を訪れてみた。外観は白い壁の洋風な一軒家だ。 「こんにちは。はじめまして。私が院長の秋葉志歩です。これからよろしくお願いしますね」 院長の秋葉先生はスレンダーで優しい笑顔が魅力的な女性だった。毒舌のイカルガ先生とは正反対だった。 「症状を教えてもらえますか?」 妙齢の女性の口からインポ●ンツなどとは!!医者とはいえなんて恥ずかしい!! 「最近はインポ●ンツの男性が増えてきたんですよ〜。主に家庭でのストレスでなるんですけどね、案外難しい病気なので時間と 連発しないでください、先生。インポ●ンツ、インポ●ンツって!! 「まず今日は何が原因でインポ●ンツになったかを聞かせてください。それから治療に入りましょうね」 俺は本当にシたくないと思ったんだがな。 「そんな中で恋人がシろ、シろ、と迫ってくる。それでさらに抑制が働き、さらに思い込みが激しくなった、と」 やはりイカルガ先生の友人なだけあって、診断は間違っていない。さすがだ。 「そんなわけでインポ●ンツになったんですよ。おわかりですか?」 だからインポ●ンツって連発しないでくださいよ。 「紹介状によると向精神薬と漢方薬が出されてますね。この向精神薬はインポ●ンツには有効ではありませんから、変えましょう。 た、高耶さんにも協力を求めるだと!!それだけは勘弁してくれ!! 「これは立たせたらいけない、と思い込み、それを逆に利用して血液を集中させる訓練を行います」 なんだ、そんなことか。高耶さんに協力、なんて、毎日裸エプロンが待っているのかと想像したものだから恐ろしくなったが、高耶さんが「させない!」と言うのだったら大丈夫かもしれない。 「ええ、では今日はこの訓練方法をお教えしますから、お家に帰ってから訓練をしてみてください」 どうやらこの先生はイカルガ先生と違って信用できるみたいだな。
「はあ?!ノン・エレクト法?なんじゃ、そら」 秋葉クリニックで貰った説明書きを高耶さんに渡す。しばらくは興味深そうに見ていたが、みるみるうちに眉間のシワが深くなって 「オレは誘惑できないってことか?」 さらにシワを寄せて考え込んだが、どういうわけか「いいよ」と言った。 「反対しないんですか?」 高耶さんはソファの上に寝そべったり、四つんばいになったりしながらひとり芝居を始めた。どうやら四つんばいになっているのは 「『何が出来ないんです?あなただってしたいんじゃないですか?』 『違う!そんなんじゃ…!ああ!そんなとこ触ったら!』」 まだまだ続く高耶さんのひとり芝居を呆れ果てて見ていた。景虎様の面影もないこのバカバカしい芝居は一体何だ? 「『ほら、あなたの坊やは正直だ』 『だって…そんなに触ったら…直江のバカ…』」 あなたがバカなんじゃないですか!!! 「いつもそんなふうに妄想してたんですか…それがあなたの夢なんですね…」 小さい!小さすぎる夢だ!しかもアホらしい!目の前のテーブルをひっくり返したい! 「まあ、夢っちゅーか、そうなったらいいな〜、なんて♪」 そんなわけで、高耶さんに押し切られる形で寝室に直行だ。これを治療と言うのか?ただの高耶さんの夢を叶えるシミュレーション 「ほら、セリフ、セリフ!」 く…くだらない…。こんなのでいーでぃーが治るわけなかろう。 「なおえ〜」 どうしてこんなくだらないことにこの人は真剣になれるのだろうか?愛しているのは揺らがないが、これではいーでぃーは一生治らないかもしれない。 「あの…やめませんか、コレ」 しかたなく続けていた。しかしまったく何の解決にもならなかったため、そのうち高耶さんが飽きてしまって1時間で終了になった。 「なんでこんなにオイシイ状況なのにおまえの精神注入棒は役立たずなんだよ!ちょー使えねえ!」 これではただのコントだ。自分が思い描いていた高耶さんとの初夜はもっと厳粛でムーディーでなくてはならないのに。 「とにかくこれは訓練なんだからな!明日もやるぞ!立つまでやるぞ!」 その気合を勉学へ向けてくれたら良かったのに…。 「もーやめよっか…直江…」 良かった!やっと弱音を吐いてくれた!!これでこの拷問から逃げ出せる! 「オレ、わかったよ。直江とエッチできなくても、毎日愛されてるのはわかったから」 しおらしい高耶さんは可愛らしくて素敵だ。毎日こうだったらいいのに。 「あ」 俺の精神注入棒がしおらしい高耶さんに反応した。 「直江!おまえ!治ったんじゃないのか?!」 どうもコレは『しおらしい高耶さん』にしか反応しないらしい。なるほど、そういうことだったのか。 「治ったってことで今日は良しとしませんか?ね、そうしましょう!」
いーでぃーは秋葉先生のおかげで回復した。 「頑張って早く卒業してくださいね♪」
END
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あとがき |
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