同棲したのに!


第十一話  生誕の饗宴
 
         
 

今日は直江の誕生日だ!気合入れて誘惑しちゃる!
と、ゆーわけで朝から大胆にお誘いしてみた。

「な・お・え〜」

まだ寝てる直江のベッドに素っ裸で入って、チューしまくりながら股間に手を伸ばす。
そしたら息子さんがおっ立ってた。もういーでぃーは完治したんだな〜。

「…な!!何やってるんですか、高耶さん!」
「んー?ほら、今日って誕生日じゃん。だからプレゼントはオレ♪」
「いりません、そんなもの!」

起きた直江はそれでオレを一蹴だ。がーん。そんなもの、だって。

「…いらないのか?」
「いりませんよ。まったくもう…」

ノソノソ起き出して、背中を向けてベッドから出てく。ショックを受けてるオレを置き去りにして洗面所へ。
ひげも剃ってさっぱりした顔でベッドルームに戻ってきた。息子さんはもう平常状態だった。

「オレがいらないってことは、もう好きじゃないってこと?」
「好きですけど、エッチはしたくないって言ってるんです。誕生日に自分をプレゼント、なんて、安っぽい歌謡曲じゃないんですから
やめてくださいよ」
「むー、じゃあ何が欲しいんだよ」
「そうですねえ…平穏な一日が欲しいです」
「平穏?」
「そう。あなたが誘惑してこない一日、なんてどうですか?」

そんなー!!

「たまには心の平安が欲しいわけです。わかりますね?」
「…わかった…じゃあおとなしくしてるけど…チューぐらいはいいよな?」
「それぐらいなら」

愛する直江のためにオレは一日おとなしくすることにした。せっかくの誕生日に、せっかくオレから誘ってやってんのに。
どうしてこの男はそれを断るんだかな。わかんねーな。

 

 

いつもと変わらないグレードの目玉焼きとトーストの朝飯を食って、直江は新聞を読み出した。
淡白だよな〜。
自分の誕生日だってのに日課の新聞ときたもんだ。
たぶんこれから休日の定番、お散歩しましょうか、が来るんだよな。

「お散歩しませんか?いい天気ですし」

ほらな。
オレは直江に平安を与えるために大人しく頷いた。玄関で靴を履いて立ち上がった時、直江がチューしてきた。

「おはようのキスしてませんでしたからね」
「うん…」
「どうしたんですか、浮かない顔して」
「別に」

誘惑できないってのはこんなに辛いものだったのか!おとなしくしてるよーなガラじゃないのはわかってんだよ!
だからもうストレス溜まっちゃって溜まっちゃって!!

「行きましょうか。途中でお昼の買い物してもいいですね」
「ん」

近所の川の土手を歩きながら散歩。ああ、つまんねー!!なんで愛し合う若い二人が年寄りみたく土手なんぞを散歩しなきゃなん
ねーわけ?!しかも片方は今日が誕生日!若い夫婦だったら朝から晩までエッチしまくりだろうによ!

「たまにはボートでも乗りましょうか。風が気持ちいいですよ」
「ボート?直江が漕ぐのか?」
「そりゃそうでしょう。あなたに漕がせたら転覆…いや、バチが当たりますよ」
「今、転覆って言わなかったか?」
「言ってませんよ!」

言ったな。確かに言った。聞こえたんだぞ。

「オレが漕ぐ!!」
「ええ?!」
「誕生日だからオレが漕ぐんだ!直江は何もするな!」
「…はあ…」

ボート乗り場に行ったらおじいちゃんが店番してた。ボートを一隻貸してもらって、オレがオールを握った。
ちくしょう。こうなったらこのストレスをボート漕ぎで発散してやる!

 

 

「だから言ったじゃないですか…」

あやうく転覆は免れたものの、ボートに水が入ってきて直江もオレも足元がビチャビチャになった。
これでオレのストレスはさらに積もった。イライラするぅ〜!!

「おまえの体重が重すぎるんだよ!だからバランスが崩れたんだろ!そのでけえ体、一体何キロあるんだ?!」
「80キロぐらいでしょうかねえ」
「はちじゅっきろ〜?!デブ!!」
「…デブ?」

直江がデブじゃないのは知ってる。筋肉が重いからその体重なだけで。でも悔しいんだよ!

「オレは80キロもあるよーなヤツに乗っかられるのはイヤだからな!ダイエットしろ!」
「…あの、乗っかる気はないんですが」
「なんだと〜!オレが乗れっつったら乗るんだよ!」
「言ってることが矛盾してますが」
「帰る!」
「帰りますか。服も濡れてしまったことですし」
「そうじゃない!実家に、いや越後に帰るんだ!義父上に言いつけてやる!直江がエッチしてくれないって!」
「謙信公にですか?そりゃ聞き入れられないと思いますが…」
「そんなことねーもん!この前夢に出てきて言ったんだもん!」
「なんて?」
「可哀想に、景虎。直江には私からエッチしろと言っておく、って」
「それは妄想というものなのでは…」

う。確かに妄想かもしれない。

「…もういい…帰る。帰ってふて寝してやる〜!!」

今度はオレが直江を置き去りにしてマンションに帰った。

 

 

自分の部屋でふて寝してたら直江が帰ってきた。2時間後に。
2時間も一人で何をしてたんだか知らないが、長い時間オレを放っておくなんてもってのほかだ。

ノックの音がしたけど答えてやんない。

「高耶さん、入りますよ」

返事もしてないのに入ってきた。だから布団に潜ってシカトしてやった。

「お昼ごはん買ってきました。一緒に食べましょう」
「いらない」
「高耶さんが好きなカツサンドですよ?あと、前から食べたいって言ってた限定プリンも買ってきましたよ」

その言葉に誘われて顔を出してみた。直江の手にはデパ地下で1時間待ちして買うカツサンドとケーキ屋の箱があった。
しかも今日は休日。そうとう並んだに違いない。

「だから布団から出てらっしゃい」
「…うん」

そろそろ腹も減る時間だったから布団から出て、直江にくっついてリビングに行った。テーブルに広げられるものを見てヨダレが出てくる。

「どうぞ。たくさん食べてくださいね」
「うん。いただきまーす」

直江、ごめん。いつもエッチしたいって言って困らせて。

「ご機嫌は直りましたか?」
「うん」
「良かった。やっぱりエサで…いや、お腹が減ってると怒りっぽくなりますからね」

聞こえたぞ。確かに聞こえた。

「エサって言ったな…」
「言ってませんよ!」
「覚えてろ…直江」

直江の顔から血の気が引いたのを確認。

 

 

そしてその夜。

「今日は誘惑しないって約束じゃないですか!」
「もう昨日の話だ!時計を見ろ!つーわけで誘惑再開だ!エサって言ったの、後悔させてやっからな!」
「ああ…正直な自分が恨めしい…誰か俺に平安をくれー!!」

結局直江は落ちなかった。でも体重80キロがどのぐらいなのかわかったもんね。
惜しい!!

 

END

 

 
   

あとがき

せっかくの直さんBDなのでギャグで
一本作ってみましたが、はやり
高耶さんファンには怒られそうな話。
最近甘いのばっかり書いてたから
ギャグ書きたくてしょーがなくて!
知ってます?ここってギャグサイト
だったんですよ!