同棲したのに! 第十一話 生誕の饗宴 |
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今日は直江の誕生日だ!気合入れて誘惑しちゃる! 「な・お・え〜」 まだ寝てる直江のベッドに素っ裸で入って、チューしまくりながら股間に手を伸ばす。 「…な!!何やってるんですか、高耶さん!」 起きた直江はそれでオレを一蹴だ。がーん。そんなもの、だって。 「…いらないのか?」 ノソノソ起き出して、背中を向けてベッドから出てく。ショックを受けてるオレを置き去りにして洗面所へ。 「オレがいらないってことは、もう好きじゃないってこと?」 そんなー!! 「たまには心の平安が欲しいわけです。わかりますね?」 愛する直江のためにオレは一日おとなしくすることにした。せっかくの誕生日に、せっかくオレから誘ってやってんのに。
いつもと変わらないグレードの目玉焼きとトーストの朝飯を食って、直江は新聞を読み出した。 「お散歩しませんか?いい天気ですし」 ほらな。 「おはようのキスしてませんでしたからね」 誘惑できないってのはこんなに辛いものだったのか!おとなしくしてるよーなガラじゃないのはわかってんだよ! 「行きましょうか。途中でお昼の買い物してもいいですね」 近所の川の土手を歩きながら散歩。ああ、つまんねー!!なんで愛し合う若い二人が年寄りみたく土手なんぞを散歩しなきゃなん 「たまにはボートでも乗りましょうか。風が気持ちいいですよ」 言ったな。確かに言った。聞こえたんだぞ。 「オレが漕ぐ!!」 ボート乗り場に行ったらおじいちゃんが店番してた。ボートを一隻貸してもらって、オレがオールを握った。
「だから言ったじゃないですか…」 あやうく転覆は免れたものの、ボートに水が入ってきて直江もオレも足元がビチャビチャになった。 「おまえの体重が重すぎるんだよ!だからバランスが崩れたんだろ!そのでけえ体、一体何キロあるんだ?!」 直江がデブじゃないのは知ってる。筋肉が重いからその体重なだけで。でも悔しいんだよ! 「オレは80キロもあるよーなヤツに乗っかられるのはイヤだからな!ダイエットしろ!」 う。確かに妄想かもしれない。 「…もういい…帰る。帰ってふて寝してやる〜!!」 今度はオレが直江を置き去りにしてマンションに帰った。
自分の部屋でふて寝してたら直江が帰ってきた。2時間後に。 ノックの音がしたけど答えてやんない。 「高耶さん、入りますよ」 返事もしてないのに入ってきた。だから布団に潜ってシカトしてやった。 「お昼ごはん買ってきました。一緒に食べましょう」 その言葉に誘われて顔を出してみた。直江の手にはデパ地下で1時間待ちして買うカツサンドとケーキ屋の箱があった。 「だから布団から出てらっしゃい」 そろそろ腹も減る時間だったから布団から出て、直江にくっついてリビングに行った。テーブルに広げられるものを見てヨダレが出てくる。 「どうぞ。たくさん食べてくださいね」 直江、ごめん。いつもエッチしたいって言って困らせて。 「ご機嫌は直りましたか?」 聞こえたぞ。確かに聞こえた。 「エサって言ったな…」 直江の顔から血の気が引いたのを確認。
そしてその夜。 「今日は誘惑しないって約束じゃないですか!」 結局直江は落ちなかった。でも体重80キロがどのぐらいなのかわかったもんね。
END
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あとがき |
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