同棲したのに! 第十三話 闘争の本能 |
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まったく直江のヤロー、どんな手を使っても全然ダメじゃん!なんで落ちねーんだろ? って、思いながら久しぶりにひとりで繁華街を歩いてみた。直江がムカつくからちょっと心配もさせてやろうってこともあって夕方過ぎてもゲーセンに入ったりしてウロウロしてた。 「景虎じゃないか!久しぶりだねえ!」 道で背後から背中をバチンと叩かれて怒りマーク全開で振り向いてみたら。 「らららら蘭丸!!!」 ハロー!って、なんで蘭丸がここに。こいつ信長にくっついてアメリカに行ったんじゃなかったのか?! 「なんでこんなとこにいるんだよ!」 そーいえば信長が東京ドームでライブやるってテレビで言ってたような気がしなくもない。 オレと蘭丸はまあイザコザもあったけど、信長が音楽に路線変更して蘭丸が謝りに来た時から今までのことはスッパリ忘れて仲良くしようってことになったんだ。 「謝りに行ってからだから、2年ぶりぐらい?」 手近にあったコーヒーショップで1杯180円のコーヒーを飲みながら蘭丸と同窓会だ。 「景虎は相変わらず直江と付き合ってんの?」 いいなあ。ラブラブか〜。オレの方は相変わらずエッチできないってのに…。その前にラブラブもありゃしねえ。 「景虎もラブラブなんじゃないの?」 本当は良かないんだけどな〜。 「来週一杯までいるからさ、景虎んちに遊びに行ってもいいかな?」 そんなわけで今度の土曜日は蘭丸が遊びにくることになった。
「蘭丸ですか?ええ、かまいませんけど」 それが直江の回答だった。直江は信長には警戒してるけど蘭丸にはそうでもないらしい。「あいつはオマケですし」だって。 直江と二人で玄関まで出迎えに行ってドアを開けると、そこにケーキ屋の箱を持った蘭丸が立っていた。 「の……信長〜〜〜〜!!!」 直江は蘭丸には寛大だけど、信長だけはダメだそうだ。今まで何度も信長の悪口を聞かされた。 「あ、とにかく入って。信長も直江のことは気にしなくていいから」 スリッパを勧めて中に入ってもらった。すると玄関で一言、信長がこう言った。 「狭い家じゃのう…まるでウサギ小屋じゃ」 言いたい放題だな。けど確かに信長が住んでる家なんかに比べたらそうだし、気にすることないか。 「景虎も可哀想にのう。こんな甲斐性のない男なんぞと暮らすはめになるとは。のう、お蘭。お蘭はわしの小姓で良かったのう」 信長と蘭丸は玄関先でチューし始めた。アメリカンナイズドってやつか? 「私たちは慎ましくとも幸せ満載な生活をしてるんです、ねえ、高耶さん」 直江が久しぶりに闘争心をむき出しにした。番犬みたいに厳しい目をして信長を睨んでる。 「ほう、そうか。そりゃ良かったの」 その信長の気のない返事にムッとした直江が急にオレの肩を抱いてチューしてきた! 「んー!!」(急に何するんだよ!) チュポンと音を立てて離れた直江はニヤリと信長に向かって笑ってからオレをムギューっと抱きしめた。 「こうやって毎日毎日高耶さんとの愛を確認しあって暮らしてるんだ。信長殿にはこういった温かみのある抱擁はないでしょう?」 そんでまた蘭丸とチューし始めた。でぃーぷなやつを。ぶちゅうぅぅぅっと。いいな〜。そんなチューしたことないぞ。 先にバカバカしくなったのは信長たちの方で、いい加減腹が減ったから早くメシを食わせろって。 「高耶さんが作った料理は美味しいでしょう?心のこもった愛情料理ですからね。蘭丸は食事は作ってるんですか?」 そしておかしな昼食は終わり、オレと蘭丸で片付け物をしていた。 「しかし何だの。お蘭からは景虎と直江がラブラブだと聞いておったが、実はそうでもなさそうじゃのう」 貰ったケーキとコーヒーを持ってリビングへ行くと向かい合って座った信長と直江はデッドヒートの真っ最中だった。 「いや〜、やはりお蘭が一番いいのう。アメリカで浮名を流してはみたものの、結局はお蘭が一番だと思い知らされた」 マジかよ!直江ったらいつのまにオレを観察してたんだ!しかも凄絶な色気だなんて!そんな風に思ってたなんて〜! 「高耶さん、こちらへどうぞ」 直江がオレを隣りに座らせて腰を抱いた。ひー!こんなカッコしたことないってば! 「ケーキ、食べますか?」 直江にあーんしてもらえるのか?!ああ!何度これを夢みたことか!!何度ってたぶん5000回ぐらいは確実に!! 「あーん」 うわ〜!!やったー!!オレの人生捨てたもんじゃねえな!これがラブラブってやつか!! 「なんの、お蘭。こちらへ来い」 ああー!!いいな、いいな!そうゆうのもやりたいんだよ!「もう、直江ったらァ♥」って!! 「なおえ〜」 直江が食べた後に、オレの口の端っこについたクリームを掬って舐めた。 「おのれ、信長……高耶さん、このイチゴ、半分こにしましょう」 オレの口にイチゴを半分だけ入れて、残りの半分を直江がチューする要領で半分かじった。 「甘くて美味しいですね」 そうそう!これがやりたかったんだよな〜!!いい響きだ〜!! 「お蘭よ。今夜はおまえのイチゴを食べてやるからのう。期待して待っておれよ?」 おまえのイチゴって何?!もしかしてアソコのことか?!そっかー、信長たちはラブラブなんだもんな〜。 チラっと直江を見たら硬直してた。どうやってこの信長に攻撃を仕掛けていいかわからなくなったようだ。 「高耶さん……」 グッと目を瞑って直江が搾り出すように言った。 「あなたのサクランボを……私に下さいね……」 ……サクランボってなんだよ!!直江!! 聞きたかったけど聞いたら信長と蘭丸にオレたちがエッチしてないことがバレそうでやめた。
ケーキを食べ終わった信長は直江を見て「勝った」って顔をした。 「はあ……疲れた……」 直江はいつもの余裕綽綽な状態はどこへやら、見るからに疲れたオジサンになってた。 「疲れたか?オレはけっこう楽しかったけど」 そう言ってソファの背もたれに寄りかかって目を閉じた。疲れたオジサンぽい直江も色気があって好きだな〜。 「なおえ?」 ガバッと体を起こして目を見開いてオレを見た。 「直江!」 くっそー!もう限界だ!襲ってやる襲ってやる襲ってやる〜〜〜!! 「あんなことされたらオレだってその気になっちまうだろうが!」
そして……そしてオレは直江とのめくるめく快楽に身を委ね……って、ダメだった!! 「な〜、本当はいつもあんなふうにラブラブしたいんじゃねえの〜?」 ぃやったー!!どうせラブラブしてるうちにしたくなってくるもんだよな、男なんて! 「ただし」 そんなの!オレのライフワークなのに! 「どうします?ラブラブを取るか、今までと同じか」
だけど一日で後悔した。やっぱラブラブにしておけば良かった……。 でももう勝負は始まってるんだ!オレのよりでかい後悔をさせてやるぞ、直江!
END
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あとがき |
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