同棲したのに!


最終話  後悔の繚乱
 
         
 

クリスマスだ!
もうすぐクリスマスだ!
聖なる夜が性なる夜、なんつってな!
ここらで一発、直江を落としてみせようじゃねえの!ガッツだ、オレ!ファイトだオレ!メリークリスマスだ、オレ!

 

「なあなあ、クリスマスって何か企画してる?」
「ええ。してますよ」

毎年直江はクリスマスにどこかに連れてってくれた。初めてのクリスマスは松本のホテルでディナーデート。
食べ終わってから直江の泊まってる部屋でちょっとだけチュー。

去年は東京の直江のマンション(本当は橘不動産の東京事務所)に呼んでくれて、一日東京観光してから銀座のフレンチレストランでディナーして、マンションでたくさんイチャイチャしながらチュー。

以上だ。

今年はもう高校生じゃないし、同棲だってしてるんだからエッチしてくれたっていいと思うんだけど、相変わらず直江は「学生のうちはダメです」なんて言いやがる。
馬券買うのと一緒にされたらたまんねーよ。おまえは場外馬券場かっての。

「夕飯、オレが作る?」
「いえ、もうレストラン予約してあります」
「ほほう」

今年も美味しいご馳走が待ってるのか〜。これはこれで楽しみなんだよな〜。
だけどご馳走で騙されちゃいけないぞ、オレ!
その後だ。今年こそチューだけじゃ終わらないクリスマスにしなきゃな!

「メシ食ったら帰るの?ここに?」
「どこか行きたいところがあるんですか?」
「今年はクリスマスが連休じゃん?だから旅行もしたかったな〜って少し思ってたんだ」
「旅行は夏で懲りました」

オレの誕生日に騙して行かせたラブホを相当根に持ってるらしい。陰湿〜。

「そうでしたね、連休なんですよね……じゃあ高耶さんの実家か、私の実家などはどうでしょう?」
「はあ?何言ってんの?そんなとこじゃエッチでき……」
「高耶さん……?」
「あ!しまった!」

オレの計画がモロバレだ。

「そういうことですか。まだ諦めてないんですか?」
「だって〜。オレが一番美味しいのは今のこのフレッシュな時期だけだぞ?二十歳過ぎたら年々老けて行くんだ。大学卒業するころには体も出来上がって可愛い桃尻も、サクランボな乳首も、青い果実なチ×コもサヨウナラだ。マッチョな男になってたら直江が後悔するんだからな」
「…………しませんよ」

眉毛を思いっきり寄せて深いシワを作って、軽蔑したような目でオレを見た。

「あなたがどんな姿でも後悔しません。前の前の前ぐらいに換生した時のあなたは垂れ目で短足な上にハゲ上がってて志●けんソックリでしたけど、それでも愛してましたよ?」
「うーん……記憶にございませんなあ」

本当にないんだからしょうがないだろ。

「まあ、確かに高耶さんは今が食べごろなんでしょうけどね」
「……もしかして、たまにエッチな想像とかしちゃってんの?」
「してません」

直江の言うことにゃ、オレを思い浮かべてひとりエッチなんか絶対にしないんだって。じゃあどうしてるんだって聞いたら「さあね?」なんて言いやがった!
わかってるんだぞ〜。おまえがオレでモヤモヤしてるのは〜。今まで何度もオレの姿で欲情してたじゃんかよ〜。
裸エプロンだって全裸だって好きだって言ってたのはどこのどいつだ〜。

「クリスマスに初エッチなんてロマンチックでいいと思うんだけどな〜」
「それとこれとは話が別です」
「くっそー」

 

 

そしてクリスマスは直江の予定通りにレストランで食事とプレゼント、家に帰ってクリスマス特番を見て就寝。
チ。また失敗したか。
こうして年末は過ぎて行き、正月になった。
オレの今年の目標は相変わらず「直江とエッチ」だ。絶対に達成してやる!
初詣でも「直江とエッチできますように!それがダメだったら女になりたい!」ってお願いしてきたしな!

初詣で熱燗を貰った直江はほろ酔いで家に帰った。オレは甘酒を。

「直江、せっかくの正月だからたくさん飲んでいいぞ。ちゃんと日本酒買ってあるから」

当然のことながらオレが選んだ日本酒は『景虎大吟醸』だ。
だって直江は何かあるとすぐに『景虎様は』って言うんだもん。

「気が利くじゃないですか。ではいただきます。高耶さんは?」
「オレは日本酒はちょっとなあ」

正月の雰囲気ってのはいいもんだ。直江がどんどん崩れていく。
しかもオレが横にくっついてお酌してるもんだから直江は酔っ払って、ちょっとだけラブラブモードに入ってる。

「高耶さん……」
「ん〜?なんだ〜?」
「今年もよろしくお願いします……」
「なんだ、そんなことか」
「本音を言いますと今年は……と、私も思ってるんです。だけど高耶さんとそういうことになったら、きっと制御が利かなくなる。あなたを花開かせたい!でもつぼみのままでいてほしい!この私の葛藤がわかりますか?!」

ええ?!なんつった、今!!

「本当は毎晩あなたの恥ずかしい姿を思い浮かべているんです。そして自分で自分を慰める……情けないことです」
「ちょ、ちょ、ちょっと!それっておまえもオレとエッチしたいってことか?!」
「当たり前じゃないですか!こんなに美味しそうなフレッシュ高耶さんを目の前にして、したくないって嘘を言う私の気持ちはあなたにはわからないでしょう?どうして男の子は可愛い時期が短いのか!私は悔しいんです!」
「じゃあ食え!フレッシュなオレを!」
「……それはやっぱり……」

なんだそりゃー!!

「しかたねえ!そうとわかればオレももう遠慮なんかしねーぞ!」

遠慮なんかしたことないけど、一応そう言ってみる。
来てる服をガバーッと脱いで、スッポンポンになって直江に纏わり着いた。

「ほらほら、美味しい時期は短いぞ!まだ新鮮なうちに食わないと!」
「でも果物は腐りかけが美味しいですからね〜」
「オレは果物じゃねえ!」
「そうですけど……」
「ええい、面倒だ!脱がす!」

酔っ払いの服を脱がせるのは簡単かと思いきや、直江は図体がでかいから大変だった。でも全裸にしたぞ!

「さあしろ!今しろ!すぐしろ!」

直江は喉をゴクリと鳴らしてオレをじっと見つめた。やっぱ本音はしたいんだろーが!

「コタツでするのはちょっと……私の理想の初夜ではないので……」
「ゴチャゴチャうるせーなー!じゃあどこでならいいんだ!」
「やはり寝室が」
「寝室!行くぞ!」

足取りがおぼつかない直江を連行して寝室へ。

「これでいいんだな!」
「はあ……まあ、いいですけど」
「レッツ初エッチ!!」

 

 

 

翌朝、オレは泣きながら目覚めた。
だってひどいんだもん、直江。
あんなこともこんなこともされたんだもん。

「高耶さん?」
「うわーん!もう直江とエッチなんかしない!」
「すいません……長年の欲望が溜まりに溜まってたもんですから……ついしたい放題してしまいました……」
「この家出てく!もう直江とは暮らせない!」
「そんな!」

これから毎晩あんなことやこんなことをされるのかと思うと怖くて!
やっぱエッチすんじゃなかった!
どうしてオレ、こんなことしたがってたんだろ?!
オレのバカバカバカー!!

 

 

その後、直江はオレを必死に引きとめ、オレは必死で出て行こうとし、1日かけて話し合いをしてようやく元の鞘に収まったわけだけど、これからは警戒しながら暮らさなきゃいけない。

神様、初詣のお願いを変更してもいいでしょうか?
直江から身を守る…………これがお願いだ!よろしく頼む!お願いだから〜!!

「たーかーやーさんっ」
「来るな!寄るな!触るなー!」
「だってフレッシュな高耶さんを味わうには今しかないんでしょう?あなたが言ったんですよ?」
「オレは腐りかけが美味いんだ!」
「いいじゃないですか、どっちでも。ね?」

神様はいなかった。
オレはこうして直江の毒牙にかかって、体中にエロ毒を注ぎ込まれてしまうんだ……失敗した……。
こんなことならいーでぃーのままで良かったのに!

「ね?気持ち良くなってきたでしょう?」
「うわーん、悔しい!!」

 

 

同棲なんかしなきゃよかったのにー!!

 

 

 

END

 

 
   

あとがき

これにて『同棲したのに!』は
終了です。
やはり直江には勝てなかった
ようです、高耶さんは。
お付き合いいただき
ありがとうございました。