ラブ☆コメ |
||||
直江がうまそうにタバコを吸ってる。いつもみたくベランダじゃなくてベッドの上で。 「なあ、マジでなんで貯金してるのか教えてくんない?」 そんな!直江が出てく?!せっかく家族仲良くやってると思ってたんだけど、オレの勘違いなのか?! 「そうじゃないんですよ。深夜に帰ってくることが多くて、生活が不規則になったりしてるでしょう?夜中に何か食べたり風呂に入るのが両親や高耶さんに申し訳なくて」 なんか……ショックだ。そんなふうに思ってたのか。 「……そりゃオレだってお母さんに気を使うことはあるけど、そーゆーもんじゃないのか?迷惑かけても許しあうとか、疲れてるのを察知してフォローするとか」 オレとお母さんは今となっては言いたいこと言い合って仲良くやってる。 「……出てったら別れる」 脱ぎ捨てた服を拾って直江の部屋を出た。追いかけてきたけど突き放して自分の部屋にこもった。
夕方になって親父とお母さんがマツタケを持って帰ってきた。 「義明は?」 親父は直江がいないことは気にしてないみたいで、風呂に入りに行った。 「さてと、夕飯に取り掛かろうかしら。手伝う?」 お母さんの料理を手伝いながら色々教えてもらって作った。 「いい匂いがしますね」 そこに直江の登場だ。オレが台所にいるなんて思ってなかったらしくて一瞬固まった。 「まだしばらくかかるから、お父さんの後にお風呂に入っちゃいなさい」 オレのこと見たけど無視してやった。料理に夢中なふりをして。 「お兄さんてさあ、昔からあんなに家族にも気を使うタイプだったの?」 親父が風呂から出て、キッチンに来て夕飯のつまみ食いしてお母さんに怒られて、仕方ないわねってお土産に買ってきた漬物を出してビールを飲ませておいてた。 「高耶、おまえも飲め」 お母さんはオレの迷惑顧みず、オレにビールを持たせて親父のとこに行かせた。 この家じゃ直江だけ、そう思えてないだけで。
夕飯を食べながら、親父が直江に「最近忙しいみたいだな」って言った。 「なんだかお父さんにも迷惑をかけてしまっているようで……」 親父は酔っ払ってるのも手伝って言いたい放題だった。 「ゲームやって深夜まで起きてるんだもんなあ?俺がトイレに起きてくるとだいたいそんなことばっかりやってるみたいで『おっしゃ!』とか『くそ〜』とか聞こえてるんだぞ」 知ってたのか……クソ親父め……。 「それにリビングで使った食器は流し台に置いておけばお母さんが洗ってくれると思ってそのままだし、風呂だって真夜中に平気でバシャバシャやってるし、階段だってドスドス足音立ててるしな。だからってそれが不快かと言えばそんなことはない。一緒に生活して、色んな音をさせて、たくさんやることあって。そんなもんだろ、家族ってのは」 酔っ払うと親父は恥ずかしげもなくこーゆーことを言って説教する。 「もっと言ってやれば?」 いい気になった親父は食事しながら延々と直江に説教した。 「……いいわねえ、父親と息子って……」 お母さんはそんな親父にウットリだ。まだ新婚なだけにアバタもエクボとかいうやつなんだろう。
風呂から出たらもう居間には誰もいなくなってて、灯りも消えてた。 ドアをノックしたらすぐに開けてくれた。 「どう?考え直した?」 パジャマ姿でベッドに座った直江はなんだか楽しそうだった。部屋にビールを持ち込んで飲んでる。 「とっても迷惑でした」 もう直江はこの家を出て行くなんて考えてなさそうだった。柔らかい笑顔で部屋の中を見てる。 「高耶さんのお父さんだから、母の旦那さんだから大事にしよう。そう思ってたんですけど違いました。ああしてお説教されて……自分のお父さんだから大事にしたいって、思ってる自分がいたんです。いくら迷惑をかけたってお父さんは私を嫌いになったりしないんだって、わかりました」 まあな、同じようなパンツ買ってくるぐらいだからな。 「それと同時に、私も何があってもお父さんを嫌いにはなれないんだと知りました」 ……そーいえば……そうかも。 「まあ、もう少し貯金してこの家のリフォームか何かすればいいですね。そのうち両親のためにバリアフリーにしなくてはいけませんし、床も軋んで音がしますし。あなたとエッチしてるのがバレる前に軋みをどうにかしないと。それに3階建てとはいかなくても、何をしててもふたりで気兼ねなく過ごせる部屋も欲しいですしね」 まあな。ちょっとボロい家だからな。なんたって爺さんが建てた家だからな。 「高耶さん」 カーテンがちゃんと閉まってるか横目で確認してからキスをした。 ちょっと普通とは違うけど大事な家族だ。 「愛してます。ずっと一緒にいましょうね」 ちょっと早まったな、オレ。
END
|
||||
あとがき |
||||
ブラウザでお戻りください |
||||