ラブ☆コメ


親戚の女の子



 
         
 

父さんの勤めてるスーパーマーケットが支店を増やすらしく、その立ち上げに父さんが抜擢された。

「すげーじゃん!」
「確かにすげーんだけどな、仕事の量も面倒もかかる時間もすげーわけだよ。ストレスだってすげーわけだ」

ウザい親父だ。オレに対しての嫌味か。

「山形でのオープンなんだがな、約1ヶ月ほど出張だ」
「今の店は?」
「基本的には副店長が回すようになる。たまに帰ってきて、あとは山形だ」
「……ええ〜」

別にうちに父さんがいないのは全然かまわない。オレと直江はまったく平気だけど、お母さんが。
もう新婚ではないけど、いまだに月に2回のデートは絶対してるし、仲良く過ごしてるし、二人とも離れて暮らすのかなりつらいと思うんだけど。

「お母さん、いいの?」
「何が?」
「父さん単身赴任だろ?」
「そこなんだ、高耶。俺もそれはちょっと厳しいと思って、お母さんを連れて行くことになった」

は?お母さんを?

「自腹でマンスリーマンションを借りるなら母さんを連れて行ってもいいと許可をもらったんだ」
「そこまですんの?!」
「1ヶ月だぞ?たまに帰ると言ってもたぶん2日間ぐらいしか帰れない。そんな過酷な状況でどうやって1ヶ月過ごせって言うんだ」
「だって父さん、自炊できるじゃん。家事全般できるじゃん!」

なんで出張にお母さんまで連れて行くんだ!
オレだって働いてるのに!!
お母さんいなきゃメシだって作らなきゃいけないし、洗濯だってしなきゃいけないし、掃除だってやんなきゃいけないし!
だってオレのお兄さんは家事なんかひとっつも出来ないんだから!!

「おまえはお母さんを家事に使いたいだけか?ああ?」
「……う、そうじゃないけど……父さんがいなくても全然いいけどさ……お母さんがいなくなるのは寂しいっつーか」
「言っておくが、おまえのお母さんの前に、俺の奥さんだからな。誰がおまえなんぞにお母さんを譲れるか」
「くそ〜」

そんなわけでお母さんが出張について行くのは決定になった。
直江はそのやりとりを黙って見てただけでオレの援護はしなかった。お母さんは父さんと二人きりで暮らせるのがちょっと嬉しそうだった。
そりゃそうか。結婚と同時にオレとも暮らさなきゃいけなかったんだから。初めて新婚気分を味わえるんだもんな。

「じゃあオレはお兄さんと1ヶ月間も二人きりなわけ?」
「そうだ。義明くん、悪いが高耶の世話を頼むよ」
「いえ、お父さん、逆に私が世話してもらうと思いますので……よろしくお願いします、高耶さん」
「……は〜あ」

家事できない兄貴のために、オレは1ヶ月間毎日毎日メシ作って洗濯もするのか〜。
こりゃ何かプレゼントでもしてもらわないと割りに合わないな。

 

 

父さんが出張に行く5日前の夕飯後、電話が鳴った。
電話は父さんのお姉さんからだった。

「伯母さん、なんて?」
「おまえのイトコのミホちゃんているだろ?あの子が東京でルームメイトと住んでたらしいんだが、その子が結婚することになって今のマンションを出てったそうなんだ。で、ミホちゃんの給料じゃ今の部屋を借りてるのが大変てことで、新居を探すそうなんだが、もう5日後には部屋を出ていかないといけないそうだ」

嫌な予感が……。

「だったら俺の部屋が1ヶ月間空くから、家財はいったんレンタル倉庫で預かってもらって、うちに泊まって部屋探しをしたらどうだってことになった」
「ええ〜!!」

マジかよ!!
ミホちゃんていやあ、オレの2歳年上のOLだ。ついでに言うとミスナントカってゆーやつにもなったほどの美人だ。
しかもメチャクチャ性格良くて、子供の頃のオレの初恋の相手でもある。
でも!!この家には直江っつーとんでもなくかっこいい男が住んでる。オレのお兄さんでもあって恋人でもある。
そんでとんでもないエロ課長でもある。
直江のやつは「1ヶ月間は気兼ねなくイチャイチャできますね」って言ってたのに、それがミホちゃんによって阻止されるのは……たぶんすごい残念がる。

直江の顔を見るのは怖かったけど、横目でチラッと見てみた。
うん、やっぱし固まってる。

「義明くんとは初対面になるのか。ふーん」

ふーん、て何だよ……どうせ父さんのこったから、直江のお嫁さんにでもどうかって考えなんだろ。
そーうまくはいかないんだよ。

「ミホちゃんは俺と入れ替わりに来るから、おまえと義明くんで出迎えてやってくれ」
「はい、わかりました」
「俺とお母さんの部屋に寝泊りすればいいよって言ってあるから。ついでに家事もやってくれるってことだから」
「それは助かりますね」
「ミホちゃんは美人だぞ〜」

余計なこと言うな、クソオヤジ。
直江はオレの彼氏なんだから!

 

 

そしてミホちゃんがやってきた。
父さんとお母さんが出かけた日曜の午後、ミホちゃんはでかいバッグに着替えをつめて。

「いらっしゃい、ミホちゃん」
「久しぶり〜!男らしくなったね、高耶くん」
「そう?入って、入って」

リビングに通すと直江がいることに気が付いた。バッグを廊下に置いて挨拶した。

「はじめまして、ミホです。えっと、義明さんですよね?」
「はい。よろしくお願いします」

本心とは裏腹な笑顔でミホちゃんを迎え入れて、重いだろうからって荷物を持って部屋まで運んであげたり。
これって……ヤバいよな。父さんがああいう態度だったってことは、伯母さんも直江とミホちゃんをくっつけたいと思ってるかもしれない。
ミホちゃん本人がその気になったらどうすんだ。

「直江、ちょっときて」
「はい?」

オレの部屋に直江を連れ込んでキスした。

「どうしたんですか?」
「美人だからって惚れたりすんなよ?」
「ヤキモチですか?」
「……だって」
「私の心はあなたのもので、私の目はあなたしか見ません。世界一の美人が現れても、あなたしか愛しません。確かにミホさんは美人ですけど、あなたとは比べようもないでしょう?高耶さん、愛してますよ」

安心させるためなのか、ゆっくりキスして抱きしめてきた。オレも直江の背中に手を回して強く抱いた。
オレが女だったら直江と結婚できるのに。
なんとなくブルーになったオレを直江は腕から出して話を変えた。

「お昼ご飯はファミレス行くんですよね。リビングに戻りましょう」
「……なんか、直江……いつもよりそっけなくない?」
「そんなことないですよ。あなたとキスして抱き合ったらこんなことになるから、我慢してるんです」

オレの手を取って直江の股間に。でかくなってる。

「高耶さんと二人きりで1ヶ月も過ごせるって期待してたぶん、コッチの我慢がきかなくなってるんですよ」
「……バカだ……」
「わかったでしょう?じゃあ行きましょう」
「うん」

階段を下りてリビングに行くとミホちゃんがお昼に行く準備をしてた。
家の中のことは小さい頃からよく遊びに来てたから、今更話すことはないけど、あとで洗濯機や何やらの話はしないと。

「遅いよ、も〜。お腹ペコペコだよ。ほら、高耶くん、行こう」
「うん」

3人で近所のファミレスへ。ミホちゃんは直江にオレとの思い出をたくさん話した。
オレも直江にミホちゃんがどれだけ良くしてくれたかを話して、ミホちゃんにも直江が家族になってから楽しいって話をした。
直江はオレの小さい頃の話が気に入ったみたいでニコニコしながら聞いてたけど、オレとしては恥ずかしい思い出が多かったから聞き流してほしい。

「高耶くんね、私にラブレターくれたんだよね?」
「そんな話すんなよ!」
「ラブレターですか?」
「ミホちゃんと結婚したいですって書いてあったよね」
「幼稚園のころの話だ!!」

こういう恥ずかしい話がたくさんある。なんてったってオレは6歳まで本気でミホちゃんと結婚する気でいたんだから。
小学校に入って友達が増えたらそんなの忘れたけどさあ。

「……ミホさんは、高耶さんと結婚したいと思ってたんでしょうか?」
「私としては可愛い弟だって思ってたから」
「そうですか」

あからさまにホッとした直江。バレるからそーゆー顔すんな。バカ。

「義明さんは結婚しないんですか?」
「ええ、今のところは。相手はいるんですけど」
「へえ!」
「うッ」

それ誰だ!って、オレか。
今の所は結婚できないもんな。日本の法律変わったら結婚する予定とか言いたいんだろ。
頼むからこれ以上バレそうなことすんなよ!

昼ごはんが終わってミホちゃんは住みたい町の不動産屋に出かけて行った。
オレと直江は家に戻った。

「高耶さん」
「ん?」
「本当に彼女と結婚する気でいたんですか?」
「ああ、小さい頃な。世間が狭い小さい頃はそーゆーもんだろ」
「今は……?」
「今はない!全然ない!」
「……本当に?」
「オレには直江がいるんだぞ?優しくて大好きな直江が」

手を繋いでキスをした。ミホちゃん、しばらく帰ってこないよな……。

「私の部屋、行きますか?」
「うん……」

シャワー浴びて準備して直江の部屋に行った。直江はすでに裸になって待ってた。

「いらっしゃい」
「ん」

こんなのミホちゃんにバレたら大変だよな。血は繋がってないけど兄と弟でセックスしてるなんて。
いくら愛し合ってるからって言っても男同士だしさ。

「直江、愛してる」
「私も、愛してます。あなただけを」

でもオレも直江もやめられない。愛し合うのは止まらない。

 

 

その日の夜はミホちゃんの手料理で夕飯になった。お母さんとは違った味付けだけどうまかった。
直江も若いのに感心だとか言いながら食ってた。ちょっとオッサン臭いな。

「義明さんと高耶くんて、本当の兄弟みたいに仲がいいんだね〜。ここに来る前は本当はうまくいってないんじゃないかって疑ってたんだけど」
「え〜、普通じゃないの?子供じゃないんだから普通に仲良くできると思うんだけど」
「相性もあるでしょうね。高耶さんが細かいことを気にしない人だから私も気にしなくて済んでいるという部分もありますよ」

確かにオレは細かいことは気にしない。気にしなさすぎるって親父に注意されたこともあるぐらいに。
だから部屋もイマイチ片付いてないし、会社の机の上も整理されてないし。さすがに会社の机は直江が見かねて注意してきたけどさ。

「高耶くんと同じ会社ってホント?」
「うん、偶然そうなっただけだから配置換えもなくてさ。今は逆に同じ部署でいるのを強制されてる。機密がうんたらとかで」
「会社の人たちは知ってるの?」
「いえるわけないじゃん!課長と兄弟なんですよって?無理だろ、そりゃ!」
「そうだよね。あたしマヌケだわ〜」

美人なのに気取ったところがないミホちゃんは本当に好きだ。いや、親類って意味で。直江とは別の意味で。
小さい頃から遠慮なく接してたから、今でもそうやって接することができる。

「……高耶さんとミホさんも仲良しですね」
「うん、だって高耶くんて素直でしょ?話してて楽しいもの」
「そうですか……」

直江がちょっと落ち込んだ。オレとミホちゃんの間に入りづらいみたいで。
でもそんなふうにしてるつもりはないんだけどな……直江が気にしすぎなんだよ。あとでちゃんと言わないと。

「ご馳走様でした。私は仕事が少しあるので先にお風呂に入りますけどいいですか?」
「うん、いいよ」
「あ、片付けはあたしがやるからそのままにしておいて」
「……すみません」

あ〜あ、本格的に落ち込んだぞ、こりゃ。
やばいな〜。

「義明さんて、もしかして人見知りするの?」
「うーん、どうだろ。オレの時はなかったけど」

たぶんミホちゃんにだけだろうけど。

「あたし、嫌われたかな?」
「違うと思うよ。初対面で一緒に暮らすとなったら、やっぱ女ってのが気になるんじゃね?」
「そうか〜」
「別にいいじゃん。ここに住むのって1週間ぐらいなんだろ?」
「うん、今日行った不動産屋で決めてきちゃったから。部屋のクリーニングがあるから来週に引越し予定だよ」

けどあと1週間。直江がその1週間をどういう気持ちで同居するのかが問題だよな。
いくらオレとミホちゃんの間に何もないって言ったって、直江がミホちゃんに嫉妬してるのはアリアリとわかる。
冷たくしたりしなきゃいいけど。

「でもさあ、義明さんてモテるんでしょ?私も今日、初めて会った時ビックリしたもん。あんな超ハンサムな人が世の中にいるのかって」
「オレもビックリしたよ、初対面の時は」
「……彼女ってどんな人?」
「……さあね」

もしかして、ミホちゃん……直江に惚れたか?
もし惚れたんだとしたら大変だぞ。親父や伯母さんに直江との縁談を進められるかもしれない。
断りきれない直江は仕方なく……、いやいや、そんなわけない!オレの彼氏だ!絶対に渡さない!駆け落ちしてでも渡さない!!

「ねえ、デザートあるけど食べる?」
「う、うん、何があんの?」
「プリン買ってきた。義明さんの分もあるよ」
「ああ、じゃあ風呂から出たら……」
「そうだね、あたし、持っていくよ」

……ミホちゃん???

 

 

それからオレはイライラしっぱなし。
直江の部屋にプリンを持って行くって言ってたからわざと自分の部屋のドアを少し開けて待ってたり。
直江にそのことを先に言っておきたかったんだけど、わざわざ仕事の邪魔してまで言うことでもないから黙ってた。

そしたら本当にミホちゃんは直江にプリンを持ってきた。コーヒーも添えて、だ。

「義明さん、入っていい?」
「ええ、どうぞ」

廊下から聞こえてきた声に聞き耳を立てた。
うちは普通の住宅だから耳をすませば隣りの部屋の声ぐらいは聞こえるんだ。

「仕事遅くなりそう?」
「そうでもないですけど、どうしてですか?」
「もう少し話したいな〜と思って」

ちょっとミホちゃん!それってマジで?!直江に一目惚れしちゃったんじゃねえの?!

「終わったらリビングで少しビールでも飲もうと思ってるんですけど……ミホさんはお酒は?」
「ビールなら少しは飲めるかな」
「じゃああとで一緒に飲みましょうか」
「うん、あとで」

直江!なんで一緒に酒なんか!!
そんなことしたら気を持たせちゃうじゃんか!バカなんじゃねえの?!

こうなったらオレが説教してやる!!

「直江」
「あ、高耶さん。もう終わりましたから入ってください」
「……終わったの?でもさっき、まだかかりそうなこと言ってたじゃん」
「時間稼ぎですよ」

時間……稼ぎ?
プリンを食いながら何事もなかったように話した。いつもと違うのは笑顔が怖いって感じるところ。
必要以上にニコニコしてる。

「これ食べ終わったら高耶さんとキスする時間を作って、それからリビングに行くんです。もちろん高耶さんも一緒に。それで3人でビールを飲んで話して、頃合を見て部屋に戻って、ベランダから高耶さんの部屋に行ってキスしてから寝るんです」
「……オレはその方がいいけど……ミホちゃんが」
「ひとつ聞いてもいいですか?いや、ふたつ」

急に笑顔が消えて、ちょっと真剣な目でこっちを見て聞いてきた。

「高耶さんはミホさんと仲がいいですけど、今は私のことが好きですよね?」
「うん、直江が好き」
「じゃあもうひとつ。あなたは私をミホさんとくっつけたいんですか?」
「は?!そんなわけないじゃん!そんなの絶対ダメ!」
「それならどうして私が高耶さんと二人でいたいと思うのをあなた自身が阻止してるんですか?ミホさんにばかり気を使って。今もそう。あなたは私と一緒にいたいけど、ミホさんのことばかり気にしてる。どうしてですか?」

自分でもそう思うよ。でもそれって、なんつーか。

「ミホちゃんが落ち込むの見たくないんだもん」
「だから私にミホさんの相手をしろと?」
「そうは言ってない。いい距離感でいろってことだよ」
「いい距離感て何ですか?ミホさんがこのまま私を気に入って、縁談が持ち込まれてもいいと?」

あ、直江、不機嫌なんだ。
オレとミホちゃんが仲いいのとか、二人で過ごせる時間が減ったのとか、いい親戚関係が続けられなくなるのを心配したりとか、そういう色んなこと考えて機嫌悪くしてるんだ。
だから時間稼ぎなんかしたのか。

「直江はミホちゃん嫌い?」
「……今は嫌いですよ。確かに私は最近になって家族になった新参者ですけど、もうずっとこの家にいたかのように馴染んでます。そこに……ミホさんと高耶さんには悪いですけど、初対面の他人が入ってきて、自分の居場所を荒らされたように感じてるんです。高耶さんとお父さんに感じる親近感のカケラもない女性と同居なんて、居心地悪くてたまりません。しかもその女性は私の知らない頃の高耶さんの話ばかりする。高耶さんが自分を好きだったなんて話ばっかりを。私がどれだけ不愉快かわかりますか?だけどミホさんをないがしろにしたら高耶さんは悲しむでしょう?どうしていいかなんて私にもわからないんですよ」

一気にまくし立てて話した。いつもの暢気なお兄さんじゃないみたいだ。
でもこれが直江の本当の気持ちで、オレを恋人としても家族としても信頼してくれてる証なんだと思う。
ちょっと言い方や顔が怖いけど、遠慮しないで気持ちをぶつけてくれるんだからいいことなのかもしれない。

「ごめん。直江の気持ちわかってなかった。ミホちゃんにはオレが言っておくから。直江にはあんまりかまうなって」
「それを言ってもらえたら有難いですけどね。でもあなたはミホさんが落ち込むのは嫌なんでしょう?」
「ううん。ミホちゃんより直江が優先だから。本気で直江を好きになってない今ならいい機会だよ」

オレが本当に言うつもりだってわかったのか、直江は正気に返ったみたいにいきなり低姿勢になった。
自分の言葉に罪悪感も感じてるんだろうな。

「いえ、やはり言わなくてもいいです」
「違うって。直江を誘惑しないようにオレからも牽制しておきたいんだよ」
「……本当に?」
「本当だ」

抱きついてキスして、さっき直江が言ってた時間稼ぎの時間を使って抱き合った。
風呂上りの冷たい髪の毛をサラサラさせながらオレの髪にこすりつける。いつもの直江だ。

「そろそろリビング行きますか?」
「もう少しだけ」

しばらく目を閉じて抱かれてた。だってすごく気持ちいいんだもん。直江の腕の中はいつも優しい。

 

 

 

リビングに2人で行って、軽い世間話を3人でして、直江は一時間もしないうちに部屋に戻った。
ミホちゃんは残念そうだけど、直江はうまく状況をまとめることができたから良かったんだと思う。
それにいくらミホちゃんでも直江を渡すわけにいかないし。オレとしても安心した。

直江がミホちゃんに飲もうって言ったのは、オレへの気遣いもあったけど、ちゃんと自分には大事な人がいるんだってことを話しておくべきだと思ったからだそうだ。
少し酒が入ってればミホちゃんも聞きやすいんじゃないかって。
実際、直江は恋人がどれだけ大事かをミホちゃんに話してた。ミホちゃんの方は顔色は変えなかったけど声のトーンが少し落ちてたから、失恋した実感があったんだと思う。
でもその日一目惚れしただけの相手なわけだから、次の日からは普通に接して直江とも「いい親戚」みたいな感じに見えた。

それから1週間しないうちにミホちゃんの引越しが決まって、オレと直江が会社に行ってる間に出て行った。
家に帰ると「また遊びにくるね」ってゆうメッセージと新しい住所が書かれたメモが残ってた。

「ようやく二人きりですね」
「ミホちゃんを邪魔者扱いしてるみたいな言い方だな」
「邪魔者だなんて思ってませんよ。恋愛感情がないならミホさんはいい親戚ですから。ご飯も美味しかったし華やかで楽しかったですよ」
「ふーん」
「でも高耶さんのご飯の方が美味しいし、高耶さんの方が華やかだし、高耶さんと話してる方が楽しいですけど」

直江のこの微妙な物言いが恥ずかしいけど、嬉しかったから寄りかかってみた。
当然のようにキスされて、そのまま甘い雰囲気に浸って……。

あと3週間、オレと直江は二人きりで暮らす。今までじゃ考えられなかった時間だ。
せっかくだから親父たちが帰ってくるまで毎日遠慮なくイチャイチャしてやろう。

「愛してるよ?」
「高耶さんッ」
「ちゃんと直江も言え」
「愛してます!!」

兄弟に戻らなくてもいい時間を大事に過ごそうっと。

 

 

END

 

 
   

あとがき

家族がテーマなので
親戚も出してみました。
直江は毎日オオカミ状態に
なることでしょう。

   
   
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