ラブ☆コメ




10

 
         
 

あれから直江の部屋で一緒に寝た。
風呂に入ったのが深夜だったから、眠ったのは明け方近く。直江の腕の中でまどろみながら話してるうちに熟睡してたらしい。
直江の腕の中は温かくて居心地良くて、もしかしたらオレはずっとこの中に収まるのを待ちわびてたんじゃないかと思うぐらいだ。

オレも直江も疲れてたせいで目が覚めたら日曜の昼過ぎになってた。

「夢じゃないんですね」
「夢なわけあるか。あんなにリアルだったのに」
「ですね」

昨夜のセックスを思い出してオレは赤くなり、直江は蕩ける笑顔になる。そこらへんは経験の差か?違うな。本質の差だ。
その本質が暢気な兄貴は幸せそうにオレにキスした。

「両親にバレないようにしなくてはいけませんねぇ」
「けどさ、そのうち話さないといけなくなるよな?」
「いいんじゃないですか?言わなくたって。どうせ家族ですから、私と高耶さんがずっと一緒にいたって不自然ではないんだし」

不自然だと思うけど。男兄弟、しかも義理の兄弟なのに結婚もしないでずっと一緒にいるなんて。

「まあ、考えても仕方ないですね。もしバレた時はふたりで必死の説得をしましょう。たぶんわかってくれますよ。なんたって私たちの両親なんですから」

説得力がないわりに、なぜだか納得させられた。
だよな。オレたちの両親なんだから、その息子同士で愛し合うのも当然てゆーか。ちょっと違うか?
でもいいや。直江の暢気を少し分けてもらおう。それだけでオレは幸せな気分になれるんだから。




夕方に帰ってきたお母さんと親父はたくさん土産を抱えてた。
お母さんがついつい「これを高耶くんに食べさせたい」って買ってるうちにこんな量になったんだって。

直江と一緒に土産を見せてもらってたら、お母さんが嬉しそうにしてた。
仲直りできたのね、って目で合図してきたから小さく頷いて、笑いかけた。
お母さんは旅行をプレゼントされた時よりも嬉しそうで、親父は海産物を袋からガンガン出して直江と晩酌の約束を楽しそうにしてた。
ふたりとも幸せなんだ。だけどオレと直江はもっと幸せかもしれない。
だって新しい家族が出来て、オレは初めての恋人が出来て、直江は最後の恋人が出来て、順風満帆なんだから。

「お母さん。いい旦那様と再婚できて良かったですね。末永く幸せでいてください」
「ありがとう、義明」
「親父も。お母さんみたいな人は二度と現れないんだからな。大事にしろよ」
「生意気なヤツだな、おまえは」

オレと直江を引き合わせてくれたふたりに感謝だ。

いつもありがとう、親父。お母さん。
オレは直江と幸せになるから、ふたりもずっとずっと幸せでいてくれ。

そうだろ?直江。




後日。

「ねえ、あなたたち。洗面所にあった私の美容液しらない?オリーブオイルの」

リビングで話をしてたオレと直江は同時に凍りついた。

「オ、オレは知らないよ!」
「義明は?」

頼む!直江!どうにかしてくれ!中身は残ってるけど、オレのケツに入ったものなんかお母さんに返せないぞ!

「……すいません。私がうっかり落としてビンを割ってしまったんです。弁償しますよ」

うまいぞ!

「もう、義明はいつもこれなんだから。うっかりが多すぎよ」
「気をつけます」

マジでビビッた!どうしよう!直江の部屋にあるあのビン、どうにか見つからないように処理しといてくれ!

翌週、あのビンは空になって会社のゴミ箱に入ってた。それがゴミ箱に入る直前まで、オレと直江は資料室にいた。
意味、わかるよな?



おわり

 

 
 

おわりです!お付き合いありがとうございます!
最終話はオマケみたいな短さで申し訳ないっす。

 
   
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