hold on me, squeeze

オマケ・その後

   
         
   

調査書

     対象者 : 株式会社ウエスギ 営業外商部 仰木高耶
     対象日時 : 2005年2月13日
     調査レベル : C

     午前8時25分
      対象者・仰木高耶 徒歩で世田谷区用賀の自宅マンションを出る。
      服装は グレーのスーツ、黒革靴、ダッフルコート、深緑バーバリーチェックのマフラー。
      持ち物は 小さめの四角いナイロンバッグのみ。

     午前8時34分
      用賀駅に到着。

     午前8時55分
      株式会社上杉工業本社内にかまえる株式会社ウエスギ本社・販売営業所に到着。

     午前9時32分
      株式会社上杉工業1階の販売店舗へ移動。店舗にて商品整理を始める。当社調査部直江課長訪問。

     午前10時23分
      社用車にて同営業所千秋修平を伴い社を出る。26分後、学校法人建築理工専門学校に到着。1時間13分後出てくる。

     午後12時17分
      千秋修平とピザ専門店にて昼食。注文品はイタリアンピッツァ、オレンジジュース、ベイクドポテト。
      52分間昼食時間として利用。

     午後1時41分
      有限会社カドワキデザインに到着。49分後に出てくる。

     午後3時02分
      株式会社ウエスギに帰社。

     午後6時09分
      株式会社ウエスギを退勤。地下鉄に乗り表参道駅にて降車。

     午後6時37分
      原宿クエストビル・デメルに到着。
      4分後出る。
      その後、徒歩にて原宿から渋谷まで散策。渋谷駅にて午後7時55分、田園都市線に乗車。

     午後8時21分
      帰宅。
      その後11時27分まで張り込み。特に動く様子はないのでレベルCとしての調査は終了。

                                                                    以上

 

 

 
         
  「そうか、デメルか…」
「直江課長?」
「いや、なんでもない。下がっていいぞ」
「はい」

今日はバレンタインだ。高耶さんがチョコレートをくれるかどうか不安だったが、その心配はなさそうだな。
しかしデメルとは…。
何を買ったかこの調査書ではわからないが、ザッハトルテだったらちょっと食べられないかもしれない。
甘すぎる。
仕方ない。今日だけはガマンしよう。苦いコーヒーでも作ってもらえばいい。

 

 

「ただいま、高耶さん」
「おかえり。もうすぐ夕飯できるけど、すぐ食う?」
「ええ。もう腹ペコです」

着替えて戻ると美味しそうな夕食がダイニングテーブルに並んでいた。

「美味しそうですね。でも、なんだかいつもより量が少なくないですか?」
「ああ、ちょっとな」

楽しい夕飯が過ぎると、高耶さんは恭しくデメルの黒い箱を出してきた。

「今日ってバレンタインだろ?だからチョコレートのケーキ買ってきたんだ。一緒に食お?」
「…ありがとうございます!!」

しかしそれは予想通り、ザッハトルテだった。しかも小さなザッハトルテではなく、直径15センチ。

「これさー、一回浅岡さんが買ってきてくれたんだけど、もうオレ、虜になっちゃってさあ」
「そ、そうですか…」
「美味いから!直江も絶対に気に入るから!」
「ええ…」
「これだけあれば明後日ぐらいまで楽しめるだろ?あ、飲み物は何がいい?コーヒー?」
「はい。できるだけ苦めのをお願いします」
「苦め…って、オレが飲めないじゃんか。でもいいよ。オレは紅茶にするから」

 

 

そして私は3日間連続で甘いザッハトルテと格闘した。
どうやら調査をしているのは私だけらしい。高耶さんは私の調査をする気はないようだ。
もう少し理解してくれないだろうか。私の好みを。
好きなものだけじゃなく、嫌いなものも聞いてくださいよ…。

一番好きなものはあなたですけどね。

 

 
         
   

高耶さんと直江が同棲して
初めてのバレンタインが舞台。
今更バレンタインて…

しかし一緒に住んでるのを
会社の調査部の皆さんは
わからなかった のだろうか?
住所一緒じゃんか!