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行間読み小説 |
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春 ※原作パラレルみたいな感じの設定 |
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たまには夜のドライブでもしよう、と高耶さんが言うのでその日は仕事を終えてから二人で出かけた。 「どこに行きたいですか?」 七里ガ浜から茅ヶ崎にかけての海岸あたりへ行けば深夜でも洒落たレストランが開いているはずだ。 車が横浜を過ぎたあたりで高耶さんのお腹が限界を迎えたようだった。 「腹減った」 八景島付近に知っている店があったのを思い出し、そこの駐車場に車を入れた。 「へ~、こういうの好きかも」 からかうように私を覗き込んでニヤニヤ笑っている。高耶さんの意地悪は小学生の男子のようで可愛い。 「たくさん食うぞ~」 案内された席はホールの真ん中あたり。洒落てはいるが敷居が高い店ではないので若者からお年寄りまでいる。 「肩肘張らなくて済むからいいよな」 1時間ほど料理を楽しんでからドライブを続けた。
ドライブは続いた。赤い電車を横目に見ながら逗子を通り、鎌倉へ。そして七里ガ浜に出た。 「海岸だ~!」 本当はどんなところか行きたいくせに、しょうがないふりを装って子供っぽく笑う。 茅ヶ崎の海岸は昼間はサーファーで年中賑わっているが、夜ともなれば散歩をするカップルや友達同士のグループがまばらにいる程度だ。 「足元が暗いので気をつけて」 国道134号線沿いの駐車場に車を停めて、海岸へ向かう細い道を入っていった。 「おお~、マジで海だ」 ザザと波の音がする。空気も一気に潮っぽくなる。 「波打ち際まで行こう」 砂に足を取られそうになりながらも高耶さんは走って波打ち際へ行ってしまった。私を置いて。 「冷たいな~」 当然のように私が看病すると思っている。甘えられているのか、それとも弄ばれているのか。 「直江が行きたい場所ってどこ?」 指差した先は防波堤。コンクリートで出来た大きな岩が積み上げられて、海を分断しているかのように見える。 「上りませんか?」 もうどうでもいいのか足元など気にせずに砂を蹴り上げて走って行ってしまった。 「早く来いよ!」 防波堤の下まで行くと暗さで上れないのではないかと思ってしまった。しかし高耶さんはそんなことを気にせずにどんどん上がって行ってしまう。 「おっせーな。だからオッサンて言われんだよ」 防波堤の先端へ向かって岩を渡って歩いていくと、遠くに江ノ島が見えた。 「あれが江ノ島?じゃああの明かりは葉山?」 ふと寂しそうな表情をした。故郷は小田原なのだったと、大昔のことを思い出す。 「なんとなくこの風景、感じたことがある」 突然、甘えるように寄りかかってきた。 「今日の直江はぼやけてる」 彼はまたいたずら小僧のように笑って、体に巻きついていた私の腕からすり抜けた。 「教えない」 ニヤリと意地悪く笑ったのが小癪で愛しくて、気が付いたことをやってみることにした。 「……真っ暗に?こうですか?」 月明かりが照らす高耶さんの顔を、自分の顔で影を作って真っ暗にした。 「……正解?」 え? 「まったくあなたは」 あなたが月だと言ってくれるなら。
END |
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「月」の続きみたいな |
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