続・景虎ちゃま。
「こうちてくれるわ!」 おもらし攻撃発動中。
「直江が見つかったぞ」 晴家が嬉しそうに景虎に詰め寄った。 「ここから半刻ほど歩いた牛鍋屋の息子だった」 戦力としての期待は出来ない、とハッキリ告げられて3人は肩を落としたが、それだけで終わるような奇特な人間は夜叉衆にはいない。 「今度はいつ来るって?」
翌日、また家を抜け出して直江がやってきた。 「景虎ちゃま!」 子供の声が聞こえた、と晴家&長秀が縁側にやってきた。 「直江だ!本当に子供になってたのね!可愛いわ〜!」 縁側で草履を脱いだ直江を抱き上げて長秀は床の間に上げた。 「ひー!可愛い!直江らしくなーい!」 長秀に高い高いをされ、その足の裏を晴家がくすぐった。 「降ろちぇ!やめんか!わたちはこのような目に遭うために来たのではないじょ!」 長秀が頭の上に直江を掲げたとたん、シーという音と共に、生暖かい水が頭に垂れた。 「わー!きったねえな!何、漏らしてんだ!直江!」 景虎がその光景と、畳に落ちた直江のシッコを見て激怒した。 「直江を貸せ!折檻してやる!」 無言のまま勝長が雑巾を持ってきて、畳を拭いている。しかしこめかみには怒りのマークが出ていた。 「すまん、勝長殿。直江にはきつく言い聞かせるから」 シッコしたせいで濡れた着物が、直江を横に抱えた景虎の手にもつく。 「直江、今からお前の躾を開始する。言い訳は聞かん。黙ってケツを出してオレの膝の上に乗れ」 いそいそと直江は着物の裾をめくり、蒙古斑が残る尻を景虎に向けた。 「座るんじゃない。寝そべるんだ」 直江はお尻ペンペンの刑を景虎直々に賜った。
「景虎ちゃまの手はゴチュゴチュちてまちたから、おちりがまだ痛いでちゅよ」 押入れの中の葛篭に小さな着物があった。今の直江にとってはちょうどいいサイズかもしれない。 「誰じょ!?」 驚いて後ろを振り返ると、雑巾を手にした勝長が立っていた。まるで仁王像のようだ。 「おのれ、直江。なぜおまえの不始末を私がしなくてはならんのだ」 勝長の殺気を本物だと感じた直江は退散するかのように床の間に向かった。 「…景虎ちゃま?」 小さいために力がない。そのため帯を結ぼうとしても力が入らず、どうしても袂が緩くなってしまう。 「しかたないな…着せてやるから、こっちに寄れ」 袖を通しただけの着物をヒラヒラさせ、帯を引きずって景虎の元へ行く。 「身が引き締まる思いでちゅ」 ようやく着物を着れた直江は、景虎に「もう帰れ」と言いつけられ、縁側にあった草履を履いた。 「さびちいでちゅ」 長秀は直江のおもらし攻撃のせいで汚れた頭と体を風呂で洗っている。 「あの…また手をちゅないで家まで送ってくれまちぇんか?」 今日こそは甘くしないと心に決めた景虎は縁側から直江を見送った。
「な・お・え〜」 たったひとりの帰り道、背後に複数の殺気を感じた。 「今から俺達がおまえの躾をする」 逃げようと走り出すが、直江の足と長秀たちの足では差は歴然。 「たちゅけてくだちゃい、景虎ちゃま〜!!」
直江からの思念波が聞こえたが、回路切断して勝長たちにまかせた。 「あいつのシモの躾は数人がかりでやらないと無理そうだな」 そう言いながらのんびりと茶をすすり、庭の小鳥を眺める景虎ちゃまであった。
END
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あとがき
子供の躾は3歳までが肝心です。
それにしてもなんてことを
しでかすんだ、直江よ。
洗い張りとは、着物のクリーニングです。
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