落語パロディ小説 |
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まんじゅうこわい ※ 落語のまんじゅうこわいを知らない人は 調べてから読んだ方がよろしいかと。 |
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晴家と直江と景虎と色部のとっつぁんと俺様の5人でバーベキュー大会をしに富士山の麓の西湖にキャンプをしに来ていた。 「どうだかな〜」 って顔をしてやがった。だいたいウィンダムはアウトドアに使われる車じゃないっての。 「なんでバーベキュー大会なのよ」 直江はバーベキューの用意をするために腰の背丈ほどのコンロに炭を入れている。景虎はその脇で野菜や肉を切って、とっつぁんはテントを張っていた。俺と晴家はふたりでひとつのテントを張ってる。 「なんか景虎とデートの予定が入ってたらしいんだけど、あんたがバーベキューって言ったら景虎ったらこっちに飛びついてデートがおじゃんになったんだって」 どーりで直江の機嫌が悪いはずだ。どうせ景虎が「おまえよりバーベキューの方がいい」とか言ったんだろうな。 「直江、野菜が切れたけど、もう火つける?」 ほとんど終わってたところに景虎が手伝いに来た。直江はとっつぁんを。 「おまえ、直江とのデートキャンセルしてこっち来たんだって?」 こりゃ直江の機嫌も悪くなるわけだ。最近の景虎はなんでか直江を怒らせるような真似ばっかりしてやがる。 『だってあいつ、すっげーしつこいんだもん。出かけりゃすぐに「あなたを他人に見せたくない」だの「あの娘たちがあなたを見てまし と、まあ、こんなところだ。 「よし、テントはこれでいいな。えーと…割り振りはどうする?」 やっぱりそこは譲らない。さすが(?)直江だ。でも景虎も譲らない。 「若者チームと中年チームでいいじゃねえか」 有無を言わさず命令を出した景虎。直江の機嫌は急降下だ。可哀想にな〜。あっはっは。 直江と景虎で準備をしたバーベキューセットでさっそく肉や野菜を焼き始める。直江は景虎の機嫌を取ろうと甲斐甲斐しく皿に焼きあがったものを乗せていく。 「もっと野菜を食べなきゃダメですよ」 勝手にしてろ。 バーベキューが終わると、酒を飲みながらキャンプ定番の怖い話大会になった。ちなみにビールから日本酒に移って飲んでる。 「あたしは蛾が嫌い!あれって逃げるとついてくるじゃない?もー、気持ち悪い!」 キムチ? 「辛いものとか苦手なんだよな。わさびもダメだし、からしもダメだし、マスタードだって好きじゃないし。キムチなんか目の前に出されたら食ってもいないのに汗が噴出してくる。無理矢理食わされたら死ぬかも」 そういえば今日は一滴も酒を飲んでない直江。ビールにも手をつけなかったな。 「ええ、そうなんですが…。実は先日、兄の接待にお供で行きまして。どうも取引先の方と兄は犬猿の仲のようでしてね。高級クラブだったんですが、場違いなほど大きな声を出したり、バニーガールを触ったりしていたのでハラハラしたせいか悪酔いしたんです。それでまあ色々ありまして、怖いな、と思うようになったんです」 けどせっかくのキャンプで直江が酒を飲まないってのが気に入らない。 「なあ、なあ、景虎。ちょっとイタズラしてみねえ?」 そんなわけで景虎は直江に酒をガンガン勧める。俺も勧める。直江は「もう本当にやめてください」なんて言って断固拒否だ。 「しつこいですよ。いい加減にしてください。もう先に寝ます」 本気で怒ってテントに入ってしまった。もうちっとからかいたかったんだけどな〜。 「あーあ。怒っちゃった」 酔った景虎は俺たちが思ってたよりタチが悪くて、直江のテントに一升瓶を抱えて入って行った。 「飲まなきゃ別れる」 ちょっと覗き込んでみたら紙コップ片手に直江が固まってた。その前で眼を据わらせた景虎がじーっと見てる。さながら蛇に睨まれた 「では少しだけ…」 一升瓶を抱えながら、景虎が手拍子を始めた。あの景虎がだ! 「ハイハイハイハイ!」 しかも掛け声付き〜! 「わかりましたよ…」 直江は紙コップの中の酒(越の景虎大吟醸だ)を一気に飲んだ。おお、直江がやると豪快だな。 「飲みました。もういいでしょう?」 何度か景虎の「ハイハイハイハイ!」が続いた。直江はって言うとハイハイ言いながらも直江にしなだれかかる景虎に気を良くして
「酒、怖くなくなったか?」 少し考え込んだ直江。 「次は、高耶さんが怖いです」
END |
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