私が守るのは、あなたの身体。
あなたの心。
あなたの魂。
あなたの、精神。 あなたという人は、とても美しいとは言えない。善良だとも、正しいとも。
しかし私はあなたという人の本質を知っている。
泥に、血に、穢れに塗れながらもあなたはとても、そう、とても愛おしい人であることには違いない。 桜守り、という仕事がある。
神に捧げる桜を守る、代々受け継がれている職だ。 ある日、私は桜守りが桜の種を拾っているのを見た。
聞けばそれはいつか枯れるであろう桜の子孫を残すためだと言う。
小さな種をひとつずつ、丁寧に和紙に包んで持ち帰る。彼はとても愛おしそうに包みを懐に入れた。 もしもあなたの桜に種が出来たら、私はそれを余すところなく拾って大事に懐に入れるだろう。
そしてその種を万人の胸に蒔くだろう。
あなたの精神、あなたの心、あなたの魂、あなたの体が世界中に行き渡るように。
惜しみなく。 あなたのそばに一番いた私が、あなたの望みをわからないわけがない。
そうして手離し、しかしやはり私があなたの一番そばに居続ける。 あなたを愛しています。
桜の花びらを包むように。
散った花びらの数と等しく。
満開の桜の醸し出す、猛烈な激しさ、圧倒的な優しさ、奇跡に近い美しさのごとく。
花を、天が愛したごとく。
私の愛が、あなたの桜を守るから、あなたは万人に愛されてください。
愛でられてください。
美しいと、言われてください。 もしもこの思いが届くなら、あなたの種を私に与えてください。
願いをすべて叶えてあげる。
私があなたの桜守り。 END |