行間読み小説 |
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夜 ※原作パラレルみたいな感じの設定 |
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今日は昼から雪だった。 それからコタツに入ってテレビを見て、ミカンを食べてぬくぬくして。 そういえばあいつの靴は皮底だった。 約束はしてないけど、後で迎えに行ってやった方がいいかもしれない。 さっそく携帯電話にメールを入れた。 すぐに返事が戻ってきた。 なるほど。8時か。そうか。ふーん。8時か。
午後7時半。 雪が積もった坂道を下るのは難儀だけど、松本から持ってきたスノーブーツはすごい役に立つ。 雪国の人には信じられないかもしれないけど、東京じゃ雪が積もっても女の人はハイヒールだ。 そんな靴で坂を上るサラリーマンを横目に見ながらオレはサクサク坂道を下って駅に行く。 あいつが改札から出てくるまでにはまだ10分以上あるだろう。 何度目かの人の群れが流れて行って、時計の長針が10を指した時、改札奥の階段からベージュのトレンチを着たあいつの姿が見えた。 ようやくカバンを脇に抱えて、その手に箱を持ち直し、空いた手でポケットの中からパスケースを取り出してやっとのことで改札を抜けた。 「直江」 近寄って行ったらあいつは嬉しそうな笑顔になった。 「どうしたんですか?買い物帰り?」 コイコイと手で招き寄せて、駅構内の人の少ない場所まで移動させた。 「これはめろ」 直江の皮の手袋を出して、ブリーフケースと箱を受け取ってはめさせた。 「履き替えろ」 確かに履き替える姿はカッコ悪いかもしれないけど、雪道を転ぶよりマシだ。 「傘は持ってきてくれなかったんですか?」 直江が傘を差して、片手にブリーフケースを持つ。 「高耶さんの片手が余ってますけど」 坂道を登りながら傘を持つ直江の腕に空いてる自分の手を添えた。 「ほらな。余らないだろ」 静かな雪の中を二人で歩く。 「今日の夕飯はなんですか?」 帰ったら電話してみよう。 「配達できない時はどうするんですか?」 オレの手にあるこの箱はクリスマスケーキ。直江が今日買ってくるのがわかってたケーキ。 「じゃあお迎えはクリスマスプレゼントってところでしょうか?」 直江は声を上げて笑った。 「なかなか楽しいクリスマスですね」 坂道の途中で直江は立ち止まって傘を傾けて、誰にも見られないようにキスをした。 「メリークリスマス、高耶さん」 ゆっくり歩いて家に帰った。 今日の聖夜は雪の空。
END |
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1日遅れですが。 |
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