実家に帰るかどうしようか迷ったあげく、直江が泣いて「お願いですから帰らないで!」つーもんだから結局東京にいることにした。
確かに今のオレじゃ正月に松本に帰ったら寒くて寒くて凍死するかもしれないしな。
そんでどうせ譲と家でぬくぬくしてたりして、帰る意味がないって事態になる可能性大。
「そんで、直江は正月のプラン立ててあんの?」
「……いえ、まったく」
「オレを引き止めておいてプランなしかよ〜。ん〜、じゃあ今から決めるか?」
正月も差し迫った27日。オレは直江のマンションでいつものごとくぬくぬく(ぬくぬくすんのが好きなんだ!)と過ごしている。
お気に入りのココアと大好きなスナック菓子と大事な直江を手元に置いて。
「どこか行きたいところなどは?」
「タヒチ」
「それは今からじゃ無理ですねぇ……じゃあ何かしたいことは?」
直江の顔に「高耶さんとマンションでまったりしたい」と書いてある。最初からそのつもりでプランを立ててなかったんだろう。
憎ったらしい。だから少し意地悪をしてやるつもりだ。
「女の子と遊びたい」
「はい?!」
「可愛い彼女と遊びたい〜」
「ちょ、ちょっと待ってください、高耶さん!!」
困った大型犬はオレの肩を掴んで大袈裟に揺さぶり始めた。
「どういうことですか、それは!あなた、私の他に誰かいるんじゃないでしょうね!」
「さあね〜」
「……さては、嘘ですね……?」
あ、バレてら。
「まったく、心配させるのが楽しいなんて悪趣味な」
「直江がプラン立てる気が全然ないからじゃんか」
「はいはい。立てるつもりはありません。ここでのんびりしたいんです。去年のようにね」
「進歩ねえな」
せっかく直江と連休を何日も過ごせるのに何もしないなんてもったいない。
クリスマスの温泉旅行だってダメになったのにさ。プンプン。
「どこか行きたかったな〜」
「どこか、ですか……じゃあ私の実家なんかどうでしょう!」
「はぁ?!なんで!」
「大晦日から行けば鐘も突けますし、私の部屋は離れにありますから二人きりで過ごせるのも間違いありませんし、宇都宮は高耶さんの大好きな餃子が名物ですから!」
どうしてこう、直江ってやつは突飛なんだかな。
実家なんて行けるわけないじゃんか。秋にお兄さんから「同居の従兄弟って誰だ?」って疑われて、ついでに笑われてんのにさ!
しかもオレと直江のお姉さんは対面済みなわけだし!
「イヤだ!」
「そうですかぁ……。あ、そうだ、今から上杉社長に聞いてみますよ。温泉付きの別荘を貸せって。クリスマスの貸しを返してもらいます!」
「そんな卑劣な真似すんなー!!」
「じゃあどうするんですか。そんなにどこかに行きたいなら高耶さんが計画したらいいのに」
「オレが計画したって健康ランドぐらいしかねえよ!」
「あ!いいですね、健康ランド!」
直江はバカだ!!こいつが健康ランドなんか行ったら周りがドン引きだろうがよ!
底なしのバカだったのか!!
「健康ランド却下。もういい。マンションでグータラするに決定」
「……だったら最初からそれでいいじゃないですか……」
「ああ?何か言ったか?」
「いえ、別に何も」
こうしてオレは今年も直江とマンションでのほほんと年月を重ねた夫婦のように過ごすことになった。
なんかちょっと不毛。
「あけましておめでとうございます」
「はい、おめでとさん」
「何か怒ってます?」
「いいえ、怒ってません。オレの彼氏が正月の計画を立ててくれて驚かせてくれるのかな〜なんてギリギリまで期待してたから、何もなくて残念だとか、何してやがんだとかまったく思ってないから大丈夫」
直江は「しまった!」って顔をした。
正月早々ケンカはしたくないけど、オレはこのいつも期待に添ってくれる彼氏をアテにしてたんだ。
だから昨夜の年越しエッチだってサービスしてやったのに。
「それはすいませんでした……あの、代わりと言っては何ですが、昨日、業界の新年会の招待状を貰ったので一緒に行きますか?」
「業界って?」
「モトハルのところの新年パーティーです。今夜8時から。ええと、デザイナーさんやモデルもたくさん来ますし、ビンゴ大会の景品で2日から3日にかけての温泉宿泊券もあるそうなんですが……」
どうやら直江はそのパーティーに行くつもりはなかったらしい。
高耶さんと二人きりで一緒に過ごす正月の方がいいからって。
「行く」
「え?」
「宿泊券当てる」
「ま、まあ当たればいいなって感じですけどね……」
「今夜だな。よし、気合入れて行くぞ!いいな、直江!宿泊券当てるぞ!」
「は、はい!」
夕方まで直江とのんびり&イチャイチャして過ごしてから、パーティーのための服を選んだ。
直江はいつもの服装でいいですよって言うけど、業界のパーティーで普段着なんて恥ずかしいからイヤだ。
で、去年の、いや、もう一昨年か。一昨年のクリスマスに直江に買ってもらったスーツを着て行くことにした。コートは直江のお下がりをサイズを直してもらったものを着た。
「………………」
「なんだよ」
「キレイですねえ……」
「何が」
「おめかしした高耶さんて、色っぽくてキレイでかっこいいんですね……」
誉められたんだよな?微妙な心境だけどさ。
「こんな高耶さんをみんなに見せるんですか?もったいない……」
「もったいないって、わけわかんねえ。行くぞ、ほら」
「あ、待って!」
腕を取られてチューされた。いつもだったら玄関でするんだけど、今日の直江は玄関でするチューよりも濃いやつをする。
わかんなくもない。今日は直江もかっこいいから。オレも独り占めしたいぐらいだし。
「気は済んだか?」
「まだです」
「遅刻するぞ?」
「もう少し」
「正月早々、こんなんじゃ1年間ずっとこうなっちまうぞ?」
「望むところですよ」
で、遅刻するって時間になってもチューしてた。オレもノリノリだったけどさ。
30分以上も遅刻して入ったパーティー会場は広尾の香港ガーデンって店だった。
有名で広くてキレイな店で飲茶料理の貸切ビュッフェパーティー。
モトハルブランドの関係者がやっぱり多くて、モデルだとかタレントなんかは思ったよりも少ない。
直江に聞いたら「まあそんなものですよ」だって。
モトハルに気に入られてショーとかに出たいモデルや、恩恵に与りたいタレントばっかりなんだって。だから直江も来たくなかったんだそうだ。
一応挨拶をするって言って直江がモトハルさんのところに行った。
奥にいるモトハルさんは1年前に見たあの人で、相変わらず親しそうに直江と話してる。
それからオレの方を二人揃って見た。
たぶん『1年前に付き人のバイトをした高耶さんと来てるんだ』とか話してるんだろう。だからオレはお辞儀をした。
すぐにまた二人で話し始めたからオレはキッチン前(厨房がガラス張りで作ってるとこが見えるんだ!)の大きなテーブルに乗ってる料理を皿に取って、杏のお酒をソーダ割りにしてもらって、厨房から離れた空いてる壁際のテーブルに座って食べ出した。
そのテーブルの隣りのテーブルの男二人が直江の話をしてた。
「タチバナが来てるじゃん」
「そりゃモトハルの広告塔だから」
「いいな〜。オレもカタログで使ってもらえないかな〜」
口ぶりからするとどうやら二人はモデルらしい。
「けどタチバナってこうゆう来なくてもいいパーティーには最近来ないらしいよ?」
「じゃあ今回はなんで来たのかな?」
「アレかな、あの噂」
なんの噂だろ?すっげー気になる!!まさか直江とオレが付き合ってるってゆー噂?!なわけないか。
「モトハルが来年か再来年あたりに新部門創設するってやつ?」
「そう。そのお披露目が今日あるんじゃないかって話だよ。だからタチバナも来たんじゃないか?」
なーんだ。直江の噂じゃなくてモトハルさんの会社の噂か。
聞き耳を立てて話を聞いてたら目の前に大きな影が出来た。
「もう食べてるんですか?高耶さん」
「あ、直江。うん、すっげーうまいよ。直江も食ったら?」
「そうしましょうかね」
直江が料理の置いてあるテーブルに行って皿を取ろうとした時に、女の人に話しかけられた。
握手をしてくださいって言ってるみたいで、直江に手を差し出してる。それを軽く握ってニッコリ笑って握手した。
それが発端になったのか男も女も関係なく直江の周りにワラワラと集まりだした。
なるほど、あいつがパーティーに来たがらないのはこういうことがあるからか。
せっかくの料理も食えなくて、酒も飲むヒマなくて、話したい相手とはなかなか話せなくて、見ず知らずの人とばっかり挨拶して。
やっぱ連れ出したの間違ってたのかな。せっかくの正月だからって直江は言ってたのに。
ちょっと罪悪感だ。
ようやく波が収まって、直江が皿を取ってあのでかい図体で小さな点心を取り始めた。こうして見ると可愛いな。
それからバーで紹興酒を貰ってこっちに戻ってきた。
「お疲れさん」
「どのぐらい待たせましたか?」
「10分ぐらいだよ。いいって。オレは食い放題を楽しんでるから」
さっきモトハルの噂をしてた二人は直江が近くに座ったことと、オレの連れだってことでビックリしてるみたいでヒソヒソ声になった。
モデル同士の警戒心みたいなもんか?
「なんかさ、ごめんな」
「どうしたんです?」
「んー、直江がマンションでのんびりしたいって言ったの、こうゆうのがイヤだったからだろ?」
「そうですね……こうして人と話したりするのは嫌いじゃないんですよ。ただあなたを退屈させたりするでしょう?それが申し訳なくてこういう場には連れて来たくなかったんです」
「退屈してないから大丈夫」
「それにあなたが気になる女の子がいやしないかとかね、余計なことを考えるわけです」
わざとらしくハアと溜息をついてオレを見た。
そんなわけないじゃんか。オレは直江とラブラブなんだぞ。
そういう意味を込めて直江の皿からエビ蒸し餃子を取り上げて食った。オレがそんなことするなんて思わなかったのか、直江はすごく驚いてる。
「少し酔ってるでしょう?」
「ほんの少しな〜」
「あんまり飲まないでくださいよ?あなたは酔っ払うと驚異的に色っぽいんですから。誰かに攫われたら大変です」
「アホか」
どこにいても直江はオレにこうゆう甘い言葉を言ってくる。困る時もあるけど、今日はなんだかいい気分だ。
どうしてだろうって考えたら、さっき直江が握手攻めにあってる間、ちょっと遠い存在に感じたからだと思う。
「そろそろビンゴ大会みたいですね。モトハルがプレゼンターらしいですよ」
ビンゴのあの丸いカゴみたいなやつが常設されてる低いステージに出てきた。
このステージは普段、大道芸や音楽のショーをやって客を楽しませるためのものだそうだ。
今日はモデルらしき女の人がマイクを持って司会をするビンゴ大会。
キーンてゆう音がスピーカーから聞こえてきて、ビンゴ大会が始まった。
司会の声でみんなが受付で貰ったカードを出した。オレと直江もポケットから出して真ん中の穴だけ開けた。
「当たるかな、温泉宿泊券」
「これで当たったら今年の運を全部使い果たしそうで怖いような気もしますけどね」
二人でクスクス笑いながら大袈裟な効果音と最初の当選番号を聞いてた。
「22番!」
美人モデルさんから発せられた声で直江が端っこの穴を指で押して開けた。
さっそく当たったんだ。
それから聞こえてくる番号に一喜一憂して、ちょっとずつカードに穴が開いていく。
「あ、直江、おまえリーチだ!!立ってリーチって叫ばなきゃ!」
恥ずかしいとか言いながら直江はあのいい声でリーチって叫んで立ち上がった。その時の顔がモデルになってた。
そしたら会場にいた全員が直江を見る。タチバナさんだ、って声が聞こえる。
直江と同時にリーチをかけたのは4人。モトハルさんの社員の人と、どこかで見たことある男性タレントと、もう一人はOL風の女の人。
「リーチが4名出ました!じゃあ次の番号!76番!」
「ビンゴ!!」
そのビンゴの声は直江だった!!なんつー強運だ!リーチイッパツじゃんか〜!
麻雀で言ったら2ハンつくぞ!
「高耶さん!当てましたよ!温泉!!」
「エライ!!さすが直江!!」
「これであなたをのんびりと温泉旅行に連れていけます。独占しますよ?」
オレにそう耳打ちしてから直江は賞品を受け取りにステージへ。こうやって堂々と人前に出て、しかもその歩き姿がキレイだと直江がモデルなんだな〜って実感する。
自慢したくなる。オレの彼氏だー!って。
司会がインタビューするみたいに「お名前は?」って言いながら直江にマイクを向けた。
マイクを向けられるのは慣れてない直江だから、ちょっとだけ照れながら「タチバナです」って答える。
そのマイクを通した声はいつもオレが聞いてるのとは少しだけ違って篭った声だった。またさっきと同じ感覚がした。
直江が遠いな。
「一等賞品は明日から1泊の温泉宿泊券です。おめでとうございま〜す!」
「ありがとうございます」
モトハルさんが出てきて苦笑いで直江に賞品を渡した。直江も苦笑いしてる。まさか直江に一等が渡るとは思ってなかったんだろう。
司会からマイクを奪ってモトハルさんが直江に苦笑いのまま質問した。
「で、タチバナ。おまえ誰と行くんだ?」
「大事な人と行きますよ」
だだだ、大事な人ってそーゆーことをおまえは人前で堂々と!!
「みなさん、この幸運な男は正月から一等賞品を奪って、しかも大事な人と1泊旅行だそうです。こんなイヤミなやつですが
我がモトハルブランドの看板でもありますからお許しください。拍手を!」
一等が出たことと、その当選者がタチバナだってことで大きな拍手が起こった。
ありがとうの意味を込めてタチバナが会場に手を振って、目録の熨斗袋を持ってステージから降りた。
こっちに戻る間にも何度か握手を求められて、流れ作業みたいに握手しながらようやくテーブルに辿り着く。
「やりましたね!」
「見せて!」
ビンゴはどんどん進んでいくけど、オレはもう温泉宿泊券が手に入ったからカードを放り出して目録を見た。
「わ、本当に宿泊券が入ってる!」
「明日からの予約が入ってますね。3時にチェックインですか」
「すっげえ!おまえ超ラッキー!」
って、喜んでるのは本当だけど、心の奥では寂しいって思ってた。タチバナって本当に知られた名前なんだなって。
「一緒に行きましょうね?」
「うん」
小さな声で約束をして、直江が熨斗袋をオレの前に置いた。あなたのものですからね、って。
直江が一等を当てられたのは、オレが一緒にいたからだって言う。小さいころから懸賞のひとつも当たったためしがないのに、今日は一番でかい賞品をもらえたのは高耶さんがそばにいたからですよ、って。
ちょっと遠くに感じていたタチバナが、一気にオレの直江になった。
「楽しみです」
目をうつろにさせて頬を少し赤くさせて、うっとりと天井を眺める直江。
何を想像してるか一目瞭然なのはオレだけなんだろうな。
ビンゴで賞品を当ててから直江は夢心地のまんま食事をして、酒を飲んで、ご機嫌さんだった。例の隣りのテーブルのモデル二人が話しかけてきてもニッコリニコニコして「いつかタチバナさんとショーに出たい」とか言われて「頑張ってくださいね」なんて愛想笑いまでして。いや、本心から言ってたのかも。
そんでパーティーはモトハルさんのシメの言葉で終わった。結局、新設部門の話は出ないままだったからやっぱり噂なんだな。
帰り際にオレもモトハルさんに挨拶をして、スーツ似合ってるな、勉強ガンバレよって握手もしてもらった。
握手してる時、直江は保護者の目でオレを見てた。
んで、タクシーを拾ってマンションに向かったんだけど、その車中、ずっと直江と手を繋いでた。
チェックインは3時だから車で正午に出て、どこかでお昼ご飯を食べて、宿に着いたら夕飯まで観光して、って話しながら。
マンションに着いてエレベーターの中でも手を繋ぎながら、明日からの旅行のことを話してた。
二人とも子供みたいにウキウキだ。
玄関に入って鍵をかけると熱烈なチューをされた。
「やっぱりあなたが幸運を運んでくるんですね」
「そうかな?逆じゃん?直江がオレに運んでくるんだろ?」
「いいえ、あなたが、ですよ」
「うーん、じゃあ、お互いにってことにしよう?」
「そうですね」
たぶんオレと直江が揃えば何でも出来る、つーか、叶うんだと思う。
お互いにお互いを、どうか幸せでいて欲しいって願ってるから。
寒さでオレがブルッと震えると、直江は大変だとか言いながらリビングに走ってエアコンをつけた。
はいはい、こちらへどうぞ、って一番あったかいソファに連れて行ってくれるんだけど、その際に直江の膝に座るように促される。
「まだスーツだぞ」
「大丈夫。モトハルのスーツはシワになりにくいんですよ」
「ん」
あんまり好きじゃないエアコンの暖房も、直江の腕の中にいればそんなに気にならない。
エアコンの風から直江が守ってくれるから。なんてな。
「直江がさ、ステージの上で『大事な人と行く』って言ったとき、すっごく恥ずかしかったけど、それ以上に嬉しかったよ」
「あなた以上に大事な人なんていませんからね。本当だったらこの人ですって見せびらかしたかったんですけど、それは出来ませんからね。まあ、いつか堂々と言えるようにはしたいと思ってますが」
「ん〜、そうだな。いつか堂々と……直江の家族にも、オレの家族にも恋人ですって紹介できるようにしよう?今年の目標にはちょっと無理だけどさ、ちゃんといつかはな」
「はい」
今は直江が手の届くどころか体を密着させられるぐらい近い存在で、すごく大切で、オレの直江だって思える。
タチバナってゆーのは外の顔。直江は直江。だけどタチバナでいる時もオレの直江だ。
たくさん不安はあるけど、直江に愛されてるのは絶対で、その絶対はきっと一生続くものだからどんな状況になっても大丈夫。
自信が湧いてくる。
「あのさ、今度……来年の今頃は就職も決まってると思うんだ。そしたら次の正月は直江の実家に行こう?んで、その後すぐにオレの実家に行こうよ。親父も美弥も、直江だったらきっと歓迎してくれると思うんだ。ええっと、オレの恋人として」
「高耶さん……」
「まあ、オレが直江の家族に歓迎されるかはわかんないけどな」
「……大丈夫ですよ。あなただったら誰だって歓迎してくれます。もし反対されたって私は諦めませんしね」
「うん!」
あと1年のうちにオレはもっと大人になって、もっと直江を大事にしよう。
こんなに愛してくれる直江とならどんなことだって乗り越える自信があるんだ。頑張ろう。
「明日が待ち遠しいですね」
「うん。直江と初めての一泊旅行だもんな」
「一晩中愛してあげますからね」
「……な、なにそれ……」
「純和風旅館であなたと……うくくくく」
いつもだったらここで「エロ親父!」って言うところなんだけど、今日に限っては「それもいいかも」なんて思っちまう。
旅館の魔術か、それとも賞品を当てた興奮か、はたまた直江の愛情ゆえか。
「オレなら一晩中どころか最初から最後まで愛してやるよ」
「……高耶さん!」
「直江〜♪」
明日の出発に間に合う程度に、オレと直江は最初から、つまり今のこの瞬間から『愛し合い』始めた。
合体、てわけ。
最後まで、は、永久にってことなんだからな、直江。
聞いてよ、直江、直江、直江。
正月からこんなこと言ったら変かな?
オレは金輪際おまえを手放す気はないからな。
だからおまえもオレを離すなよ!
END
あとがき
やっぱ正月から甘甘な二人でした。
直江と高耶さんは二人で一人だから
宿泊券をゲットできたのだと思います。
ところで香港ガーデンは確かに
キレイでオシャレっぽいんですが
あまり私好みの味ではありません
でした。・・・でも食べ放題だから。ほら。