同じ世界で一緒に歩こう それから |
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家庭教師最終日。明日からロンドンに行く直江は夜8時ぐらいに帰ってきた。 「今日は家庭教師やらないのか?」 これでヤツと直江との縁が切れたわけだからちょっと危険は減ったかもしれない。 「襲われてないか?」 笑ってギュッと抱きしめてからまたチューしてきた。 「一週間イギリスですから今夜はよろしくお願いします」 夕飯食って風呂入って準備していざって時に直江の携帯に電話が。 「無視しましょう」 超不機嫌で携帯を見て苦虫を噛み潰したような顔をした。 「イアンです」 でも何度も何度もかけてくる。せっかくのラブラブな時間が!! 「電源切れ!!」 やっぱ今夜はこうなるだろうってのを見越して電話攻撃かよ。よっぽど直江に惚れたんだな。
イギリスに滞在中の直江から写真つきのメールが入った。 仕事の性質上、時間に余裕もあるらしく、お土産を買ったり夜はホテルでぐっすり寝たりしてるようだ。 さすがに商品である新車の写真はまだ極秘で見られなかったけど、それ以外の写真がたくさん来た。 何か困ったことはないかと返事を出したら、高耶さんがいなくて寂しくて困ってるって。 『イアンから毎日メールが来てて、なんだかあからさまに誘ってくるようになりました。ちょっと困ってます。まさかとは思いますがイギリスに来たりはしませんよね』 だそうだ。 『また苦情?』 ということは都合さえ合えばイギリスに行くのも可能ってことか……。 「直江があいつに狙われてんだよ」 ねーさん、わかってない。 「今から苦情電話だ。オレの彼氏におかしな家庭教師つけやがって、もし襲われたらねーさんを訴えるからな」 とりあえずは付き添いで行ってる一蔵さんを直江に貼り付かせるからそれで我慢してくれってことだ。
そして直江が帰国。 「ただいま帰りました!!」 玄関で抱きついてチューして久しぶりの直江を味わった。 「もう高耶さんに会いたくて会いたくてたまりませんでした。高耶さんがいないと元気が出ませんよ」 一緒に荷物を持ってリビングに行って、コーヒーを淹れるから座って待たせた。 「飛行機はファーストクラスで快適でしたけど、やっぱり家が一番リラックス出来ますね。高耶さんの顔を見ただけでも疲れが吹き飛びます」 イアンがイギリスに突撃してないことは知ってたけど、やっぱりメール攻撃は継続してたそうだ。 「いい加減頭にきて全部のメールを無視したら、ちょっと前からメールも来なくなりました。もう大丈夫でしょう」 甘い!! 「おまえはオレのアパートの前で何日も待っただろうが」 もうあの時は直江のこと好きだったからストーカーだとは思わなかったけど、今になって考えるとものすごいストーカー具合だったと思う。 「もし直江に何かあったらねーさんと一蔵さんを訴えるって言ってあるからな。だから直江も色々と気をつけろよ?」 そんな話をした後で、直江からイギリスのお土産を貰った。紅茶に刺繍見本帳、高級ブランドの服、若者向けの人気アクセサリー屋のピンバッジ、その他色々。 「高耶さんと一緒に行く機会があったらセビルロウでスーツをオーダーしましょう」 直江は個人的にスーツとコートをオーダーして帰ってきたそうで、出来上がったら航空便で送られてくる 「高耶さんとロンドンですか……霧の中に佇む高耶さんなんてさぞかし魅力的なんでしょうね……」 霧の中のオレよりも直江の方がずっと様になっててかっこいいんじゃないかと思う。 「で、仕事はうまくいったのか?」 直江は努力の人だなあ。いつもいつも尊敬するよ。 「う〜、直江だ〜」 直江の匂いと感触がする。やっぱりオレも直江がいないと元気が出ない。 「直江、チューする」 もう今日は直江を独り占めだ。携帯の電源を消して、ずっと直江とチューしてた。
今日は直江にとって3週間ぶりの休日だ。オレも土曜日だから休み。 何度かその顔にチューして唇に辿り着いたとき、いきなり抱きこまれて押し倒された。 「起きてたのか!」 今度は直江がチューしてきて、朝だっていうのにやばい雰囲気に。 「やめとけよ」 昨夜はエッチするつもりだったのに直江は途中で寝た。 「すみません……」 でもベッドでチューして甘えたりしてオレとしては最高にいい朝だ。1時間ぐらいそうしてイチャイチャ 「なに?」 携帯の電源を入れたら電話とメールが10件ずつあったそうだ。イアンから。 「どうすんだ?これってけっこうな迷惑行為だと思うんだけど」 オレがブランチを作ってる間に直江はねーさんに電話してた。 「直江の携帯ナンバーやメアド知ってんだから注意したところで終わるとも思えないけど……」 オレにメールを見せなかったのは忙しいこともあるけど、と前置きをしてから見せてくれた。 「なんでそんな気持ち悪いメール保存してんだ?」 もっと証拠を残すために携帯の電源は入れておくんだって。でも音がしない設定にしてた。 「今日はずっと高耶さんと過ごすわけですから、携帯なんか使いませんしね」 だそうだ。本気で言ってるんだとしたら直江の携帯はオレ専用で、他の人はどうでもいいことになる。 「ねーさんや鮎川さんが電話してきたら?」 てことは一日中家の中にいるってことか。 「久々に高耶さんと過ごせる休日なんですから、ずっと隣りにいてください」 今日は面倒臭いこと全部忘れて直江と過ごそう。
やっと直江の仕事が落ち着いた今日この頃。 なんだかこのカフェに来るの久しぶりな気がする。店内に入ると奥の席で直江が待ってた。 「悪い、遅れたか?」 座ってアイスカフェオレを注文して、お互いに今日の出来事なんかを話してたら千秋とねーさんが来た。 「テーブル一緒にいい?」 オレが着いた途端に満席になった店内。直江はあからさまに嫌そうな顔してたけど、まあ仕方がない。 「せっかくの高耶さんとのデートなのに。気が利かないやつらだ」 どっちもどっちだ。それにしても直江って親しい人には遠慮なく物事言うよな。オレ以外には。 「ついでに直江に報告があったんだからいいじゃない」 ロンドンから帰ってきてすぐに、ねーさんが最初の警告をしたらしい。電話をして「タチバナが困っていますのでご遠慮ください」とハッキリ言った。 鮎川さんの判断で内容証明を作って、メールをプリントした紙と、内容証明をコピーした紙と、あと鮎川さん直筆の手紙を入れてイアンに送った。 「それで?」 ひどい言い草だな〜。やってもらって当たり前だと思ってやがる。 「直江、こういう時はちゃんとありがとうって感謝しろよ。オレまで恥ずかしくなってくる」 あれ?ねーさんから聞いてないのか? 「しかも2回も!」 それを聞いて直江はほんのちょっと驚いてからねーさんに「ありがとう」と普通に言った。 「うわ、直江が素直に感謝してる。不気味すぎ」 それもひどい言い草だよ……。直江だってたまには素直になったっていいじゃんか。 「失礼なやつらだ」 今度はオレが標的に。こんな男をかばうなんて信じられないって。 「じゃあ今度同じことがあったら訴えるからな!絶対に訴える!内容証明送ってやる!」 恥ずかしいからやめてくれって直江がオレを引きずって外に出た。外に出て冷たい空気に当たったらいつもと逆だと気づいた。 「ちょっとヒートアップしちゃった……ごめん……」 く〜、あの直江に笑われてるよ〜。失敗した〜。 「でも2回も苦情入れてたなんて知りませんでした。自分で思うより高耶さんに愛されてると思っていいんですよね?」 直江が思うより、ってゆーか、たぶん直江が思ってる以上にすごく直江を愛してると思う。 カフェから早く離れようって言って直江が六本木ヒルズの方向に歩き出した。 「今日は何を食べますか?」 やっぱり何度考えてもオレにとっては世界一かっこよくて頼りがいあって優しい彼氏だ。 「今度から苦情は私に言ってくださいね」 本当は苦情なんかないけど、それを理由に甘えよう。
おわり
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アストンマーティン様 |
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