山本先生は3ン歳 |
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教師になってン年。女に年齢なんか聞くものじゃないわよ。 濃い琥珀色の瞳、キメの細かい肌、スラリと伸びた長い足、厚い胸板、そして整った顔立ち。黄金率に則ったまるでアポロンのような顔立ちだった。 それ以来、私は橘先生にアタックしまくり、デートにまで漕ぎつけた。 橘先生は歴史の教諭だから歴史同好会とやらの顧問をしていて、日曜日は同好会で日曜研究と称して出かけることがあるためなかなか日にちが合わなかったのだけれど、誘い続けて数ヶ月、ようやく約束を取り付けることができた。 午後に待ち合わせて映画館へ行き、終わった後で軽く食事。 しかもたまに上の空になることもあり、私はなんとなく寂しい思いをしたっけね。 そんなある日、橘先生が『結婚指輪』を学校にしてきた。 私は橘先生が結婚しなくて良かったわ〜vなんて思ったのだけど、ホワイトデーのお返しがなんと「婚約者の手作り」のクッキーだったのよ〜〜!! な、な、なんですって〜〜!!婚約者?!いつのまに!出し抜かれたわ!! だけど教師山本、めげないわ!!
「橘先生、どうぞ」 初日の夜は懇親会があって大広間での宴会が催される。数校の教師が集まって宴会場は賑わっている。 「あ、すいません。いただきます」 橘先生は言いにくそうにしながら私を見つめた。なんて男前なのかしら!! 「うちのクラスの仰木くんなんですけど、山本先生の授業はちゃんと受けてますか?」 な!なんて生徒思いの先生なのかしら!! 「あの、橘先生?」 思い切って婚約者との進展を聞こうかと思ったのに、橘先生の携帯電話が鳴ってしまった。 「あ、はい。今ですか?懇親会の最中ですよ。心配しなくても浮気なんかしませんてば」 どうやら相手は婚約者。 ……そうだ。ちょっと意地悪してやろうかしら。うふふ。 婚約者に聞こえるように「橘せんせ〜ぇ」って呼んでやろうと私もコッソリ外へ出たら。 「わかってます。大丈夫。私が愛してるのはあなただけですから。本当に心配しないで。あなたこそ気をつけてくださいよ?言い寄られても無視してくださいね。もし何かあったら飛んで帰ります」 ラブラブなのね……。ああ、憎い。橘先生の婚約者が憎い〜〜!! 「部屋ですか?シングルですけど……ええ、もちろん約束は守りますよ。明日、ね」 明日?明日何をするのかしら? 「ダメですよ。学校はちゃんと行かないと。そんなこと言わないで」 あら?もしかして橘先生の婚約者って女子大生なの?じゃあ大学卒業したら結婚てこと? 「愛してますよ。……心の底から。だからいい子にしてて」 もう聞いていられない!! 「橘せんせ〜ぇ」 甘ったるい声で呼んだら慌てて携帯の通話口を押さえた。聞かれたら子供の婚約者のこと。 「山本先生……」 また携帯を耳に当てて、橘先生は婚約者とやらに別れを告げた。 「じゃあ、呼ばれているようなので切りますね。え?違いますよ。ええ、愛してます。おやすみなさい」 チ。最後までソレなのね。ふん。 「ささ、戻りましょ」 今はアナタの婚約者じゃなくて、教師としての橘先生なんですからね!!
ところが橘先生はその懇親会以来、夜は部屋に閉じこもって研修のおさらいばかりしているらしかった。 チャンスを伺って抜け駆けをしたり、何度か艶っぽくお誘いをしてみたものの、やっぱり先生は出てこない。 ところが橘先生は携帯にメールが入ったとたん、そわそわし始めた。 チラッと覗いてみたら……。 『明日、帰ってきたら思いっきり甘えるから。裸で待ってるぞ♥』 ですって〜〜〜!!! 「どうしたんですか、橘先生?」 また女に電話かしら?と、思ってコッソリあとをつけると自分の部屋に入ってしまった。 「あんなメール寄越すなんて、あなたもオトナになりましたね……そんなに上手に誘って、私をドキドキさせて。早く帰りたいですよ。あなたの中に……。待ちきれないの?じゃあ……」 そこから先は聞こえなかったけど、卑猥な話をしてるってことは確かね。 諦めないわよ、私は!! 橘先生!いつか振り向かせてみせるわ!!
END
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あとがき |
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