高耶さんは18歳 |
||||
ザ☆夏休みだ!ワンダホー!マーベラス!サマーホリデー!! 「ダメですよ」 そんな!結婚1年目の夏休みだってぇのにどうして旅行しないんだ! 「受験生でしょう、高耶さんは。もう夏期講習の申し込みしてありますから」 直江の話は延々と続いた。毎日朝から昼過ぎまで受験のための講習会に参加しなきゃいけないらしい。 「……旅行、したかったのに」 直江のクラスになりたいばっかりに3学年を進学コースにしたオレの甘さがここで出たのか。 「頑張ってくださいね?」 うがー!!
そんな8月。 雨が降ったある日、講習に行くために傘を出して靴を履いた。 「どうしたんですか?」 直江はいいのかな?オレと夏休みを満喫しなくても。 「早くしないと遅刻しますよ?」 雨の中をトボトボと駅前に向かって歩き出した。 「仰木くん」 予備校で友達なんか出来てないのに誰だ?と思ったら新発田タマミだった。 「なんでここにいんだ?」 このまえ、新発田から告白めいたことを言われた。彼女はいるのかって。 確かに新発田は可愛いし、美人だし、頭もいいし、性格もいいし、話してると楽しいから気も許せる。 「仰木くんのコースはお昼まででしょ?じゃあ一緒にお昼ご飯食べない?」 たまには直江の昼飯作らないでもいいか。毎日講習会と主婦業じゃ滅入っちまう。 「じゃあロビーで待ち合わせね」 講習が始まる前に直江にメールした。昼飯は予備校の友達と食って帰るから、って。
講習が終わって新発田と待ち合わせのロビーに行ってみたけど、まだ来てなかった。 『たまにはゆっくり楽しんでらっしゃい。私のことは心配しなくてもいいですよ』って。 心配なんかいたしませんよ。どうせ直江はオレが勉強してりゃ満足なんだろうが。 「お待たせ!行こうか!」 新発田は元気良く走ってきた。二人で雨の中を傘をさして出て、駅前の繁華街を店を探しながら歩いた。 「仰木くんは何が食べたい?」 並んで歩いてたら人ごみの中で傘がガンガンぶつかって、新発田が何度かよろけた。 「オレの傘、でかいから二人で入るか?」 新発田は女らしいデザインの傘を閉じて、オレの傘の中に入ってきた。これでぶつからなくて安心だ。 「ここ?……マジで?」 牛丼屋だった。お嫁さんにしたい女生徒ナンバーワンが入りたい店ってここなのか? 「だってなかなか入る機会がないんだもん。男子とじゃなきゃ絶対に無理でしょ?」 新発田は食券の販売機の前でどれにしようかとガキのように悩み、生タマゴをかけたオレの牛丼に目を輝かせてまた販売機でタマゴの食券を買って追加し、目の前に置いてある紅ショウガをおどおどしながらケースから取り出して丼に入れたりして面白かった。 「おいしかった!」 それから駅までまた一緒の傘に入って、新発田は電車に、オレは歩いて家まで帰った。
「ただいま〜」 リビングには直江が食べたらしきコンビニ弁当が置いてあった。旦那さんにコンビニ弁当なんか食わせちまって申し訳なかったかな。 「今日はちゃんと講習に行ったんですか?」 どうも怒ってるらしい。なんでだ?メールで楽しんでこいって言ったのは直江のくせに。 「それで、牛丼は美味しかったんですか?」 ……あいあいがさ?カップル? 「あ、そっか。新発田といたの見たんだ?」 それで怒ってるのか。くだらない。オレが浮気なんかするわけないってどうしてわからないんだろう? 「同じ予備校だったんだ。帰りに一緒にメシ食ったっておかしかないだろ?」 バッカじゃねーの?!そんなので怒ってるのか?!アホくせえ!! 「あはははは!なーんだ、そんなことか!」 そうだ。いいこと思いついた! 「じゃあもう夏期講習行かなくてもいいんだったら直江と相合傘してやるぞ?」 旦那さんは頭を抱えて悩み出した。 「夏期講習がなくなればオレは愛する旦那さんとラブでメロウでエロな夏休みを過ごせるな〜。それに旅行にも行けるかも〜。ビーチで旦那さんの背中に日焼け止めを塗ったり、夕焼けの海岸でチューしたり、天の川の下で寄り添って歩いたり、ホテルのベッドであんなことやこんなことしたり……。ま、直江がダメだって言うならオレは毎日新発田と同じ予備校でお勉強ってこったな。どうする?」 やった♪
そんなわけで今オレと直江は沖縄にいる。 「今日は滝を見に行くぞ!」 西表島に来てから4日目。初日は海でシュノーケリング三昧。2日目は体験ダイビング&水牛に乗って由布島へ。 「あの……」 なんて楽しい夏休み!新発田、ありがとう!! 「早くしろってば、直江!」 でも可哀想だから部屋の玄関でチューしてやった。 「な?夏休みは楽しむもんだろ?」 やっぱ楽しい夏休み!ワンダホー!マーベラス!サマーホリデー!!
END
|
||||
あとがき |
||||
ブラウザでお戻りください |
||||