高耶さんは18歳 |
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あけおめ!今年でオレと直江との結婚生活も3年目に突入する橘家からお送りします! 「高耶さんたらオトナになりましたね」 だって! そんなわけで直江と幸せ満載なお正月を迎えたのであった♪
そんなラブラブ正月の午後、お義母さんがやってきた。 午前中はポカポカした日差しが入るリビングで直江とチューしてイチャイチャして、穏やかな一日になりそうだな〜なんて考えてたんだけど、正午ピッタリにドアフォンが鳴って直江が出たらお義母さん。 「えっ!お母さんですか?!」 素っ頓狂な声を出した直江。直江だって母親が急に来るなんて思ってもみなかったんだ。
「ごめんなさいね〜、突然来ちゃって。ちょっとこの近所にご挨拶するお家があったものだから」 絶対違う。用があっても寄り付かなかったんだから。これは要するに『突撃!息子のお昼ご飯!』だ。 「いらっしゃい、お義母さん」 ウチで食う気でいたくせに。食えないババ……いや、お義母さんだぜ。 「ああ、そんな時間ですね。まだお昼は食べてませんか?」 コートを直江に預けて疲れた感を出しながらソファに座った。 「じゃあうちで食べて行ってください。高耶さんのおせち料理、おいしいですから」 なんだよ。塩分が多いとか言いたいのか。しょうがないだろ、我が家の味付けなんだからさ! 「ね?高耶さん。いいですよね?」 本当はヤダ。絶対に何か文句言われるもん。 「んじゃ今から雑煮作りますから、お義母さんは直……義明さんとゆっくりしててください」 本当に悪いと思ってるのか?なんて疑問はまったくない。悪いなんて思ってないよ、このお義母さんは。 直江がお義母さんのぶんのお茶を淹れてリビングで二人で談笑し始めた。 雑煮に入れる三つ葉を切ってた時、直江がオレの進路について話し出した。 「高耶さんは高校を卒業したら専業主婦になってくれるそうですから、これからは今までかけていた負担も減りますし、私も余裕を持って教師が出来そうです」 チ。そうやってオレを悪者にして! 「いえ、そうではなくて。高耶さんには高校生と主婦という二足の草鞋で大変な負担をかけていますから、そのぶん私も心配してしまってるんです。でも専業主婦になれば家事に専念出来ますから、高耶さんに余裕が出るでしょう?奥さんの余裕が私の余裕に繋がる、という意味です」 お、いいこと言うじゃねえか。さすが直江。 「そう、専業主婦……男の子がねえ……男子は仕事を持つものなのにねえ……」 う!オレだって好きで専業主婦やるんじゃねえぞ!大学受験を諦めざるを得なかっただけなんだ! 「専業主婦だって立派な仕事ですよ、お母さん。結婚してみてわかりましたが主婦業って大変だなっていつも思うんです。それをこなしてくれている高耶さんは誰よりも立派です」 直江がオレを褒めるとお義母さんはどーでもよさげな返事をする。 「ちょっとお手洗い借りるわね」 すまし顔でリビングから出て行った。 「直江」 もしもお義母さんとオレがケンカになった場合、直江は何が何でもオレの味方をしなきゃいけない。 「わかってるなら今から洗面所に行ってこい。お義母さん、絶対に風呂場とかのチェックしてるはずだから」 雑煮が完成して、おせち料理を冷蔵庫から出して漆のプレートに乗せて、白菜の漬物を切って出した。 直江とお義母さんはなかなか戻ってこない。どうしたんだろ?と思って洗面所に行ったんだけどいなかった。 「お母さん!いい加減にしてください!」 二階から直江の大きな声がした。二階……寝室!! 「いくらなんでも夫婦の寝室に勝手に入るなんて!」 頼む!ゴミ箱と枕元のケースには触らないでくれ! 「お義母さん!そんなことより昼飯できたから食べましょう!」 渋々とベッドから遠ざかって直江に引っ張られるようにして一階に降りたお義母さん。 「ほらほら、高耶さんのお雑煮、おいしそうでしょう?」 うるせえっての!! 「高耶さんがご実家のお母さんから習って一生懸命作ったんですからそんなこと言わないでください」 なんでこんなに文句言われなきゃいけないんだ?! 「あらまあ、数の子もこんなにお醤油に浸して……」 もうダメ!オレ泣いちゃいそう! 「いい加減にしてください、お母さん!高耶さんの心のこもったおせち料理がそんなに食べたくないなら食べなくて結構です!もう帰ってください!お正月から私の奥さんを泣かせるような真似をして!」 直江がこんなに怒ったの初めてみた。 あ!ダメじゃん!オレ! ダッシュで外に出てトボトボ歩いてるお義母さんを引き止めた。 「待って、待って、お義母さん!」 これがきっかけで仲良くなれるかもしれないんだし。 「ね?お義母さん、仲直りして食べてって?」 言い捨ててお義母さんはカツカツと靴を鳴らして帰って行った。 なんじゃそりゃ〜〜〜〜〜〜!!!
呆然としながら家に入ったオレ。 「ちょっと言いすぎましたかね……どうでした?落ち込んでました?」 家に戻ってからちょっと反省してる直江に全部話した。 「そうですか……そんなことを……」 軽く直江の腕をポカスカ殴って、直江がそれを笑顔で受け止める。 「いい夫婦すぎて妬ましいんでしょうね。可愛い奥さんと、奥さんを大事にしてる旦那さんですから」 ソファに座った直江の膝に乗ってギューッと抱きついて甘えた。 「しばらくの間は母が来ても家には入れません。また電話で叱っておきますから、高耶さんは今のままでいいですよ」 モヤモヤは消えないけど、直江が優しいから許すとしよう。
そして。 「…………しゅ……就職情報誌……」 なんちゅーお義母さんだ!! 「こうなったらキッチリカタつけてやらぁ!嫁姑大戦争だ!マザーゴーホームだ〜!!」 かくしてオレの嫁姑バトルも3年目に突入だ!
END
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あとがき |
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