高耶さんは18歳 |
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今日は卒業式。 「高耶さん、支度できましたか?」 今日の直江は卒業生担任な上に司会をやるから黒いフォーマルスーツ。 「制服姿を見るのもこれで最後なんですねえ」 不敵に笑った旦那さんはいやらしいことを考えてるっぽかった。バカだ。 「オレだって橘先生の授業が受けられないって思うと寂しいよ」 おでこをくっつけて笑ってからチューして家を出た。 「なあ、帰りも一緒に帰れる?」 バスに乗るとすぐに橘先生目当ての女子が近寄ってきてオレと直江の間に入ろうとした。
直江司会の蛍の光も終わって教室へ。 「仰木くん」 名前順でオレが呼ばれて教壇へ。 「3年間ありがとうございました」 直江はちょっと目を潤ませてオレを見た。恋する男の目だな、こりゃ。 「卒業おめでとうございます。これからの生活、大事にしてくださいね」 これからの生活って、直江との結婚生活のことだよな。 人気者の橘先生は男子生徒にまで好かれてたからクラス全員半泣きで貰ってた。 「せんせー!!」 まるで金曜八時の中学生ドラマのような光景。みんなで直江に群がって抱きついて。 「うわ〜ん!」 仕方なしなのかどうなのか顔を見なかったからわかんないけど、背中に手を回してポンポンやってくれた。 「先生ー!アタシもー!」 そこでバイタリティ溢れる女どもに突き飛ばされてオレは直江から離れてしまった。 そんで違う意味で床に座り込んで号泣した。 「高耶……おまえな……」 譲は最後まで呆れてた。
校庭でみんなと写真撮ったりしてたら料理部の後輩たちがやってきた。 「仰木先輩!卒業おめでとうございます!」 彼女たちはオレに小さな花束をくれた。部のみんなで贈ってくれたらしい。 「あの!先輩、ボタン貰えますか?!」 女の子たちの中でもオレとよく話してた子が顔を赤くしながら言った。 「ボタン?ああ、制服の?」 これってよく一昔前のマンガやドラマで見かけるシーンだ。 「あ、でも……」 直江が家で制服着て欲しいって言ってたっけ。んじゃボタンなくなったら困るなあ。 「いいよ」 一番上のボタンをちぎって渡した。一個くらい無くなっても予備があったはずだから大丈夫。 「ありがとうございます!!」 そこで周りで見てた女の子たちがソワソワしはじめた。 「あの〜、二番目のボタンはやっぱり新発田先輩にあげるんですか?」 新発田タマミと?オレが? 「付き合ってないけど……」 と、言ったところでタイミング良くなのか、悪くなのか新発田が来た。 「仰木くん」 かー!来たか!女子ってのはどうしてこうゆうのが好きなのかね?! 「いいよ」 どうせ新発田はオレに好きな人がいるの知ってるし、あげたって誤解されないんだからいいや。 「あ、ありがとう……いいの?二番目のだよ?」 学校イチの美少女の笑顔はとんでもなくキレイだった。 新発田とはそれで別れて、譲を含めたクラスの男子と一緒にダラダラ話してから帰った。 と、見せかけて、オレはみんなと別れてから学校に戻って直江がいる歴史準備室に行った。 「橘先生〜?」 歴史準備室にはもう他の先生はいなくって、直江だけが書類の整理をしてた。 「……高耶さんが告白してくれたのって、この部屋でしたね」 1年生の修了式後にここに来て告白したんだよな。あれから2年。オレと直江は夫婦になってる。早いもんだ。 「あの時はまさか結婚出来るなんて思ってなかったんですけどね。なんだか感慨深いですねえ」 色んな思いを込めてチューして、ギューってされて、もう二度とここで直江に会えないんだな〜って思ったら寂しくなってきた。 「なあ……ここでエッチしようか」 あれ?直江、ノリノリ? 「夢だったんです!あなたと校舎でエッチ!しかも準備室!」 そんで禁断の校内エッチをした。
エッチの後処理をしてから、まだポヤンとしてる頭のまま廊下に出た。 準備室でのエッチを思い出しながら歩いてバス停に向かうと、直江が誰かと話してた。 「あ、仰木くん。ちょうど良かったです」 直江?ちょうど良かったって何?? 「今、山本先生と話してたんですけどね、本当に仰木くんとは何もないんですか、って聞かれてたんです」 山本先生、母さんにあんなにひどい目に遭わせられたのにいい根性してるよな〜。 「私の妻です」 直江のヤツ、何をトチ狂ってやがる!!バラしてどーすんだ!誤魔化すんじゃねえのか! 「ですから高耶さんは私の奥さんなんです」 ちゃんと話すってそーゆーことなのか?! 「直江、そんなこと言っちゃったら先生続けていけなくなるよ!」 よく見れば温和な直江のこめかみやおでこに青い血管が浮きまくってる。 「高耶さん」 そこまで言ったところでバスが来た。 「おまえな〜……先生クビになったらどーすんだよ」 堂々と言う旦那さんはすごいかっこよかった。 「ま、いいか」 バスの座席で橘夫妻は仲良く手を繋いで家に帰った。
翌日。 たぶん母さんのことがあるから山本先生は誰にも話さないだろうな。 てことでこの件は解決だ。 「高耶さん、制服のボタン、購買部で買ってきましたよ♪」 そーゆーわけでオレと橘先生の結婚生活はいつまでも続くのだ。 「愛してますよ、奥さん」
END
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あとがき |
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しかし微妙にまだまだ続きます(笑) |
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