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奥様は高耶さん |
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「お兄ちゃん、大変だよ!!」 そう叫びながら美弥がウチにやってきた。見れば制服姿で学校帰りなのがよくわかる。 「俊介になんかあったのか?!」 なんだ、俊介には何もないのか。良かった~。 「じゃあ何?」 直立不動で美弥が敬礼しながら言った。上司に報告する兵士のつもりらしい。 「直江が狙われてるって誰に?」 設定にノッてこないオレに白けたのか、軍隊モードを終了した美弥は勝手に冷蔵庫を開けながらオヤツを物色し始めた。 「橘先生のクラスの実習生なんだよ。だから授業も橘先生と来るわけ。甘ったれた声出しちゃってモロバレ~」 美弥が言うには今の時代は結婚してる男ってゆーのが魅力的なんだそうだ。いい年こいて結婚も出来ない男は『欠陥がある』ってゆう認識なんだって。 「マジでか?!」 コホンと咳をしてから仰々しく美弥が言った。 「義明さんの元教え子だそうです」 先を促したら手を出してきた。なんだ? 「ここからは有料。お小遣いくれたら教えてあげる」 たくさん小遣いをもらってるわけじゃない。そりゃ父さんに貰うよりは増えたけど。 「千円でいいよ」 金より直江の情報の方が大切だからな! 「毎度あり~」 千円札を財布に入れて、美弥は真剣な顔で教えてくれた。 「どうやら橘先生と一緒に働きたくて教職を選んだらしいんだ」 そ、そんな女が今、直江のクラスの教育実習生? 「義明さんは何も言ってないの?」 そうかも!!だからオレには話さなかったのかも! 「帰ったら問い詰めてやる!」 そして美弥は冷蔵庫で発見したなめらかプリンを食って帰った。俊介にも持って帰るって言うからうっかり残りを渡そうとしたんだけど、よく考えたら俊介はまだ母乳。
「ただいま」 玄関で旦那さんに噛み付いた。オレに内緒で教育実習生とイチャコラしてたんじゃねーのか?! 「浮気者ってなんの話ですか?私のことですか?」 直江は少~しだけ考えてから「ああ」と言った。浮気肯定してるみたいに。怪しい……。 「もしかして山田先生のことでしょうか?」 旦那さんはいつものようにオレにチューをしてから家に入った。 「美弥さんの言うとおり、山田先生は私の教え子です。でもそれだけですよ」 そこで直江は黙ってしまった。もしかして知ってたんじゃねえのか? 「高耶さんは奥さんですから。正直に話します。山田先生が在学中に何度か告白されました。でも私は生徒に手は出しません。全部ハッキリと断りました」 着替え終わった直江と一緒にリビングへ。今日はムカムカしてたから夕飯作ってないって言ったら、あとでガストに行こうって。 「もしかしたら自分が生徒だから先生に断られたって思って、そんで自分も先生になっちゃえばどうにかなるかもって考えてるかもよ?」 直江はオレの頭を撫でて、それからギューって抱きしめてきた。 「そのつもりがあっても、私は高耶さんに夢中ですから浮気なんてしませんよ」 ん~、じゃあホントなんだな。疑って悪かったかな。 「ガスト行きましょうか」 少し離れたガストまで車で出かけることになった。オレも直江も腹の虫が限界だって鳴いてるから。
それから数日して日曜日。直江とジャスコにやってきた。 「あ、いっけね。ぱんつ買わないと」 古くなったのを捨てたばっかりだから新しいのを買っておかなきゃ。 「たまには海外ブランドのぱんつも良くねえ?直江みたくさ」 直江は『高耶白ブリーフマニア』だ。他の男子生徒が白だろうが赤だろうがふんどしだろうが気にしないけど、高耶さんだけは白ブリーフじゃないとダメっていっつも言う。 「え~。でもたまにはオシャレなの穿きたいじゃん」 ぱんつの話題でちょっとだけ言い合いになった時、横から女の声がした。 「橘先生!」 ここでしょっちゅう会う門脇先生かと思って振り向いたら知らない若い女が手を振ってた。 「山田先生じゃないですか」 大きな目をクリクリさせてオレを見た。これがオレのライバルか~。ほほう~。 「従兄弟の高耶です。同居しているもので」 ええ?!奥さんですって紹介してくれないの?!結婚じゃなくて同居?! 「えっとぉ、橘先生って結婚してるんじゃなかったっけ?」 ヤツは直江と親しかったのをアピールしたいのか、タメ口で話し出した。 「奥さんと従兄弟さんと3人で?」 直江が結婚発表したのは今年の3月春休み。オレが卒業してからすぐだった。 「怒りませんよ。色々事情がありますから。ね、高耶さん」 出来た奥さんてのは直江の中だけの架空の人物なのか、それともオレのことを言ってるのか。 「ところで山田先生は男性の衣料品売り場で何をしてるんですか?」 愛想笑いみたいのをしながら二人の会話を聞いてた。直江は慎重に言葉を選んでるっぽかった。 「ねえ、橘先生、3人でお茶しない?」 ええ?!マジか、この女!オレと同席したいだと~?! 「買い物したら下のコーヒーショップで待ってるから。じゃあね、先生、あとで」 勝手に決めていなくなりやがった!なんつー強引な女だ!! 「おまえ……あんな女に狙われてんのか……」 あの山田って女は高校の頃から美人で人気者で成績も良くて、学校中のアイドル的存在だったそうだ。 だから新発田はお嫁さんにしたい生徒ナンバーワンだけど、山田はそういうランキングには登場しなかったんだって。 「大学生になって合コンとか行きまくってモテてる、って感じの態度だったな」 それでパジャマとぱんつと直江の下着を買ってからジャスコの1階へ。 「高耶さん」 従兄弟ってのを前面に出して接する約束をさせられた。もしバレて結婚生活が危うくなるよりはマシだとオレも思う。 これ知ってる。パワーランチとかって欧米で言うようなやつだ。 「教育実習はどうですか?もう慣れましたか?」 このへんの話は美弥から聞いてる。 「高校1年生の女子は繊細ですからね。扱いが難しいかもしれません。大人でもあり子供でもあるわけだから、ちゃんと様子を見て接してあげないと傷つけてしまうんですよ。だから警戒しているだけでしょう。あと10日間あるんですから大丈夫ですよ」 そうなんだ?直江ってそういうの考えて生徒と接してるから人気があるのかも。 「高耶さんは高1の頃はどうでした?」 山田がオレの言葉をバカにしたように小さく叫んだ。 「男子って単純で可愛いですよね~」 可愛子ぶって舌をペロっと出して直江に謝る。なんかムカつくんですけど……。 しばらく直江と山田で学校のことについて語り、その話が一段落つくと山田がとんでもないことを言い出した。 「ねえ、先生んち遊びに行きたい」 なんて図々しい女だ!もしかして奥さんと対決するつもりなんじゃねえだろうな! 「いいじゃん、先生ったら」 務まってんじゃねーか!こうしておまえの話を大人しく聞いてやってんじゃねーか! 「なお……義明さん、そろそろ買い物終わらせて帰らないと奥さんにちょー怒られるんじゃねえの?」 オレのこめかみに血管浮いてるのを発見した旦那さんが顔色を青くした。 「先生の奥さんてそんなに怖いの?ちょっと遅くなっただけで怒ったりするの?」 ひどいのは貴様だ、山田~!オレと直江の夫婦生活を邪魔しやがって! オレの下唇が突き出てきて、むくれてるのが分かったのか、直江は少しだけ笑って言い直した。 「とても可愛い奥さんですよ。怖くはありません。ちょっとでも遅れると心配してしまうから怒るんだと思います。優しくて可愛くて、私にとっては天使のような存在です」 こうして直江がノロケるのを見るのはいい気分だ。オレのことすっごい愛してくれちゃってるんだな~って思える。 「ですよね、高耶さん」 ヘッヘッヘ。直江はオレのものだから諦めろ~。 「じゃあ夕飯の買い物して帰りましょうか、高耶さん」 山田を置いてけぼりにしてオレたちは店を出た。そんでまたジャスコ店内に入って食料品売り場へ。 「どうでした?いい切り替えし方だったでしょう?」 ジャスコじゃ手を繋げないけど一緒にカートを押してそれでいいやってことにした。 「まだ10日間あるけど、直江は浮気しないよな?」 アメーバに生まれ変わるのはちょっとどうかと思うけど、その時はきっと直江もアメーバに生まれ変わってるんだろうからそれでいいや。
「高耶さん、新品のぱんつ穿いてください」 さっき山田と話してた時の面影もないアホな旦那さんは新品のぱんつを手に持ってオレに迫る。 「おまえが家ではそんな変態だって知ったら生徒どころか山田だってドン引きだぞ!」 そんでオレは結局直江の毒牙にかかって新品のぱんつを子供みたいに穿かされて、10分後に脱がされて。
END
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あとがき |
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