奥様は高耶さん |
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今年のクリスマスこそ二人きりで過ごすんだと意気込んでる直江。 「私の計画はこうです!まず22、23、24日は高耶さんと旅行に行きます!残念なことに25日は学校の終業式があるのでクリスマス当日は夕方からになってしまいますが、4日連続で高耶さんと二人きりのクリスマス気分を味わえるようにしました!」 だそうだ。 「旅行ってどこ行くつもり?」 松本?長野の?なんで? 「クリスマスと何か関係あんの?」 歴史オタクめ〜〜!!! 「あ、でも松本だけじゃないですよ!他にも色々と計画してあります!」 クリスマス旅行って雰囲気じゃねえじゃんか!! そこで家電話が鳴った。しょんぼりする直江を放置して出てみたら、久しぶりに譲からの電話だった。 「お〜、元気にしてたか?!」 譲が大学生になってから会った回数はほんの10回。たいがい学校帰りに駅前で会ったりウチに来たりしてる。 『そんでね、今年もまたみんなでクリスマス会やろーって言ってるんだ。今年は俺んちで。ええと、みんなと予定合わせるから22日の土曜日なんだけど、どうかな?22日なら橘先生も許してくれるだろ?』 おお!いいタイミングだ!! 「行く!泊まりは無理だけど譲んちだったら自転車で帰れるし大丈夫!」 22日の予定が埋まった〜♪これでクソつまんない城巡りから解放された! 「高耶さん……」 それでも直江はメゲずに23、24日を泊まりでどこかに行くように頭の中で変更し始めた。 「た〜かやっ!」 我が家の庭に面した窓から勝手に入ってきたのは千秋。いつものこったから気にしないけどたまにはピンポン押して玄関から入ってこい。 「おまえ23日空いてる?綾子が独身彼女ナシの俺のためにケーキ作りに来てくれるんだけどさ、どうせならおまえに教えたいって言うんだよ。橘センセーんちだと色々口うるさいから俺んちなんだけど、どう?」 一回キチンと門脇先生からケーキを習ってみたかったんだよな〜。 「んじゃ午後1時からな。昼飯食ってから来いよ。あと口煩い橘センセーは出入り禁止だから。じゃな!」 そんで千秋が帰ってった。 「……連休が……」 23日はケーキ作りに決定だな。実家のクリスマスケーキにしちゃえばいいか。 「せめて24日だけは私のために……」 そう直江が必死の訴えを始めたところでまた家電話が。 「もしもし。あ、母さん?何?え?今年の24日は父さんと二人きりで食事に行くって?去年オレたちが行ったホテルのレストランで?中華街なんかじゃなくて?へ〜。美弥は?美弥は彼氏とクリスマスデートなの?ふうん、じゃあ俊介の世話はまかせてくれ」 仲良し夫婦で食事か〜。まああの夫婦だったらそれもアリなんだろうな。 「……高耶さん……あの、今の会話ですが……24日はもしかして子守に……?」 でも俊介の初クリスマスイブを過ごせるなんてお兄ちゃんは幸せだな〜。 「クリスマス連休が……」 オレだって直江とロマンチックな旅行がしたかったさ。でも城巡りってどうかと思うわけ。 「25日のレストランだけは譲りませんからね……」 今年のクリスマスは賑やかだぞ〜!!
そんで譲、千秋との約束を普通にこなした。直江はずっと落ち込んでた土日だったけど城巡りなんて言い出す方が悪い。 「俊介さんのミルクは冷凍庫ですか?」 直江が俊介のミルクとオムツを担当。オレはあやすの担当。 「最近やっと俊介さんに泣かれなくなって安心しました。そんなに私の抱っこは怖かったんですかね?」 俊介を抱っこしてソファに座ってる直江の隣りにくっついて座った。クンクンやってみたら今日は無臭だった。 「なんか本当にパパみたい」 ……直パパか……こっちはいまだに慣れないネーミングだ。 そんでその日は俊介連れて買い物しに行って、テキトーに夕飯作って食っておしまい。 「俊介さんと過ごすクリスマスイブなんて素敵ですねえ……」 夕飯後、ちょっとビールを飲んで気持ちよくなった旦那さんはしみじみそう言った。 「大きくなったら私たちより彼女と過ごす方がいいって言い出すんですから、今のうちですよね」 直江はオレより子煩悩タイプらしい。 「ただいま〜」 もう少し遅くなるかと思った父さんたちが帰ってきた。まだ10時にもなってないのに。 「早かったな」 その父さんは俊介にチューして泣かせてるし。直江は俊介を取り戻されて寂しそうだ。 「ところであなたたち」 嫌な予感が……。 「……ええ、二人きりでクリスマスですが……」 はっ!そういえば忘れてたかも!つーか毎年そんなものあげてないじゃん! 「きっと明日、サンタさんが届けてくれるに違いないのよね〜。もしサンタさんが来ないのであればサンタの家に押しかけるしかないんだけど〜」 帰り道で直江と相談して、プレゼントは直江が学校帰りに買って届けておくことになった。
「高耶さん!!今から出かけますから用意して!!」 直江が学校から帰って来たのが午後4時。今日は終業式だから早めに帰ってプレゼントを買ってオレんちに届けたそうだ。 「早く!!」 黒サンタってゆーと……オレの家族か!!また邪魔する気か!! 「だってプレゼント渡したんだろ?!」 今日、レストランに着て行くつもりだったスーツ2着を車に放り込んで、家の戸締りを厳重にして車で出た。 「どこ行くの?」 今日行くレストランから少し遠くなるけど、いいホテルだから我慢してくれって。 「……スイートルーム……?」 リビング、寝室、でかい風呂場……こんな部屋オレ、テレビでしか見たことないぞ…… 「高耶さんの実家の帰りに急いで兄に電話して、部屋を確保してもらったんです。あれでも兄は顔が広いので多少の無茶はどうにかなるんですよ。やっと今年は二人きりのクリスマスになると思ったのに邪魔されそうだって泣いて頼んだら、コネを利用して部屋が取れたと、こういうわけです」 たぶん城巡り二人旅に3回は行けるぐらいの値段だ。 「せっかくのセミスイートですから楽しむことだけ考えましょう!ね?!」 そう考えないとやってらんねー!みたいなヤケクソ丸出しで直江が乾いた笑いをした。 「レストランまでに時間あるからイチャイチャしよーぜ!」 部屋の値段分だけでもイチャイチャしてやる! 「こうなりゃヤケだ!メリークリスマス!直江!」 レストランの予約時間になるまでオレたち夫婦は全力でイチャイチャした。 んで。 「3年目にしてようやく二人きりで過ごせましたね」 あ、直江のヤツ、エロい笑いかましてる。 「でもまだ夜はこれからですよ?」 やっぱりいつまで経っても直江のこーゆー恥ずかしいセリフには慣れないもんだな。 「これからも一緒にクリスマスを過ごしましょうね?高耶さん」 セミスイート大奮発&奥さんのワガママ聞いてくれる優しい旦那さんでよかったな〜。 「来年のクリスマスはどうしよっか?」 そーゆーこと言ってんじゃねえって何度言ってもわからないらしい。 「やっぱ来年もオレが決める!古墳も城も古戦場も寺も神社もナシだ〜!!」 歴史マニアの旦那さんなんか持つもんじゃねえな!!
END
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あとがき |
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