奥様は高耶さん |
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直江が衝撃的な事実を伝えた。 「来月、4日間いませんから」 オレが卒業した学校、要は直江が先生やってる学校は春に修学旅行がある。 「直江って2年生の担任だろ?なのに3年生の修学旅行に行くわけ?」 そーいえばオレの修学旅行にも別の学年の先生が補助で来てたっけ。 「一応生活指導ですから、何かあった時の対応をしなくてはいけないんですよ」 直江もオレも寂しいのに学校ってやつはなんて非道なんだ!オレの結婚生活をなんだと思ってるんだ! 「やだ〜」 譲と旅行か……そういえば親友なのに一回も旅行に行ったことなかったな。 「うん、そーする。1泊ぐらいなら譲も出られるかも」 譲と旅行か〜。どこに行こうかな。
で、直江の修学旅行当日。 「さてと、オレも旅行の支度するか」 着替えをカバンに詰めて明日からの旅行準備。譲も2泊ぐらいできるって言ってくれて、直江のお金で新幹線もホテルも予約できたしこれで明日に備えるだけだ。 どこに行くかって?ふふふ、聞いて驚け。直江が修学旅行で行ってる京都だ!! なんでこんな話になったかってゆーと、譲に電話して旅行に誘ったら家に来いって言われた。 『ストーカーみたいだからやめなよ!』 なんて言う譲の意見は無視だ。だってオレが行けば旦那さんは嬉しいし浮気の心配しなくて済むし、オレも旦那さんが女子生徒にセクハラされてるのを守ってやれるだろ? 『その代わり、橘先生に迷惑かけたらソッコーで連れ帰るからね!』 迷惑なんてかけるわけないじゃーん。オレと直江は心の底から繋がってるんだし〜ぃ。 「ああ、楽しみだ!」 直江と京都♪
「……た……お、仰木くん……と、成田くん……」 翌日、直江に会ったのはホテルのロビー。 「どうしたんですか、こんなところで……」 直江ってやさしーからな!いいって言ってくれてるし! 「仰木くん、ちょっとこちらへ」 直江に連れられてホテル内のお土産物屋さんのお店でヒソヒソ。 「どうして京都なんですか!」 なんか怒ってるのかな? 「とにかく修学旅行の邪魔はしないでくださいね。私と高耶さんの関係がバレたら大変なことになりますからね」 だったら女子生徒にはベタベタされないってことかな?心配しなくて良かったのか〜。 「高耶さんはどこに行くんですか?」 やっぱ怒ってら。 ロビーに戻ったら譲がイライラして待ってた。謝ってから部屋に行って、荷物を置いて、近くにある二条城にでかけることに。 「あ!」 旦那さんの部屋がどこか聞くのだけなのにな〜。それでも離婚原因になっちゃうなんて、そんなおかしな話はないだろーに。 「それと、橘先生がダメって言ったらダメなんだからね。いくら高耶が奥さんだからって、先生は修学旅行であって遊びで京都にいるわけじゃないってこと覚えておいてよね」 ぶーたれながら二条城へ。出かけにロビーで直江に会えるかと思ったらいなくて、残念な気持ちを抱えて出た。 「直江にメールしよっと」 今日は一回しか直江に会えなかったからきっと寂しがってる。オレもちょっと寂しい。 『オレの部屋505号室だから、会いたかったら来てもいいよ』 なのに直江は来なかった。そりゃ直江が夜中まで先生の仕事してるってのは知ってるけど。 「高耶、俺もう寝るよ〜」 直江のバカー!! 翌日の朝、ホテルのバイキング形式の朝ご飯で直江に会えるかと思ったのに会えなかった。 「さてと、今日はどこに行く?」 比叡山か……勉強が苦手なオレにはまったく縁のない場所だよな。
比叡山から帰ると直江からメールが来た。 『今日はどこに行ってきたんですか?メールぐらいならしてもいいんですよ』 って。 「高耶、今日の夕飯どうする?」 譲が出てってしまってますます寂しくなった。 携帯を出して直江にメールの返事を出そうか出すまいか悩んで、ベンチに座ってたら声をかけられた。 「おにーちゃん、いくら?」 何が? 「まあいいや。おごるから酒でも一緒にどう?」 ガテン系の男の人で、いい人そうで、ちょっと顔もよくて、何かゴチしてくれるらしい。 「高耶さん!!」 直江だ。なんだってこんな所にいるんだ? 「帰りますよ!」 そしたら直江はキッと顔を男の人に向けて強めの口調で言った。 「この子はうちの生徒です。私は修学旅行の引率で来ているんですが、それでもこの子を連れて行く気ですか?」 そう言って男の人は走っていなくなった。なんだったんだ? 「こんなところのベンチで座ってたら間違えられて当然なんですよ!」 ダッシュで逃げて夜の川原へ。追いかけてきたけど振り切って隠れて、ようやく川原にたどり着いた。 「あ、高耶、おかえり〜」 譲は何も知らないみたいだ。直江も譲には言ってないのか。 「明日はチェックアウトしたらすぐ帰るよ。俺、午後の授業には出るんだからね」 逃げてから電源を切った携帯には直江からのメールと着信がバカみたいにたくさんあった。
「ただいま」 旦那さんが修学旅行から帰ってきた。 「高耶さん」 溜息をついた直江はそのまま着替えに寝室に。旅行のバッグから自分で洗濯物やその他を片付けて、全部終わらせてからオレが座ってるリビングの床に座った。 「どうして電話にも出ないんですか?」 しばらく無言で向かい合ってて、とうとう我慢できなくなって泣いた。 「ひーん」 直江にギューしてもらって仲直り。 「あなたがあんなところで男に声をかけられてるのを見て、つい怒鳴ってしまって……ごめんなさい」 そーだったのか……まったくわかんなかった。 「成田くんに高耶さんがいなくなったって話を聞いて、それで携帯のGPSを使って探したんです。成田くんには逐一報告していたから心配はかけていないと思いますけど」 何も知らないふりして暗躍してたのか、あいつは……。 「本当は川原にいるのも知ってたんです。しばらく離れて見守ってたんですが……学校のこともあって早く戻らなくてはいけなくて、とても心配しましたよ」 ずっと出来なかったチューをして、そのままお姫様抱っこされて寝室行き。 そう言ったら来年の修学旅行は「高耶さんに気を使う余裕がないと思うから来ないでください」って。 それに修学旅行の時期には必ず直江が1泊でどこか連れてってくれるって約束してくれたし。 来年はどこをリクエストしようかな〜。
END
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あとがき |
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