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奥様は高耶さん



第32


クリおめとオレ

 
         
 

 

クリスマスはイブは家で旦那さんと手作りディナーでお祝いして、翌日のクリスマス本番は予約してあるレストランで豪華ディナーの約束をしてる。
直江は学校があるけど学校が終わったらずーっとオレが独占していいって言ってたし!
今年こそは二人きりで誰にも邪魔されないクリスマスを送るんだ!

 

 

んで23日、オレは翌日の夕飯の食材を直江とジャスコに買いに行った。直江のリクエストを何でも作るって言ったのに、直江は奥さんが作るものならどんなものだっていいんだってさ。うひゃー愛されるなあ!
てことで明日の昼間は母さんと俊介とドンキに行って愛する直江のプレゼントを買う予定。

そんな23日の夜。直江と夜のイチャイチャをしてるところに電話が来た。

「も~、いいところで~」

いつもいいところで電話が鳴るのは悪い予感の前触れだ。

「私が出ますよ」

直江が電話に出るとどうやら橘のお義母さんからみたいだった。

「は?!結婚式は28日だったでしょう?!」

師走ってことで橘のお義父さんと次男のお義兄さんは忙しくて行かれないから、直江が親戚の結婚式にお義母さんと一緒に新幹線で行く予定だったんだけど。

「25日ってなんですか!間違えた?嘘でしょう?!」

……もしかして。
直江は電話を切ってオレに悲しそうな顔をしながら事情説明した。
やっぱり28日は間違いで、25日が結婚式らしい。
オレの想像だがお義母さんはわざと28日って直江に言っておいて、オレに意地悪するために突然25日って言い出したんだと思う。絶対そうだ。

「24日は高耶さんと過ごせますが……25日は終業式が終わり次第宇都宮に……」

がーん!レストランが!!
あのババア……!!

「ごめんなさい、高耶さん!でも24日はしっかり旦那さんとしての勤めを果たします!」
「うう~」
「一緒に楽しいクリスマスイブにしましょう!ね、高耶さん!」
「うん……」

レストランなんかより直江と一緒のクリスマスが大事なのに~。
でも仕方ないか……結婚式だもんな……。

そーゆーわけでオレは諦めて24日にすべてを賭けることにした。
ところが!!
24日のお昼過ぎに母さんとドンキに行くために実家に行ったら俊介の大きな泣き声が。

「どーしたの?」
「た……高耶……」

母さんがリビングでぶっ倒れてた。横で俊介がギャンギャン泣いてる。

「熱が……もうお母さん死んじゃうかも……」
「ええ?!」

とりあえず俊介を抱っこしたらオムツが重たくなってた。それで泣いてたのか。
母さんは超高熱でヤバそうだったから慌てて病院に連れて行ったらインフルエンザだった。
寝てるしかないってことで、薬を飲ませて寝かせた。
ドンキは?直江のプレゼントは?

「ただいま~」
「美弥!いいところに!」

学校から帰ってきた美弥に俊介を渡して後を任せて帰ろうとしたら拒否られた。

「だって美弥、俊ちゃんのことほとんど出来ないもん」
「ええ~」
「お母さんは美弥がみてるから、お兄ちゃんは俊ちゃん連れて帰ってよ。インフルエンザうつったら大変だし」
「……うう」

そうだよな~。赤ちゃんがインフルエンザになったら生死に関わるもんな~。
つーかなんで母さんは予防注射しないんだっての。オレも美弥もしてるのにッ。

「んじゃ母さんのこと頼むぞ」
「はーい」

俊介を連れて商店街に行って、直江のプレゼントを探した。ドンキで健康グッズ一式を買う予定だったのに。
は~、何にしよ。

「くちゅんッ」
「う、可愛い……!」

俊介がくしゃみをした。なんて可愛いくしゃみなんだ!そうだ!直江のプレゼントは防寒グッズにすっか!
俊介とお揃いで手袋かマフラーなんてどうだろう?そーしよう!喜ぶぞ~!
さっそく子供服も置いてる洋品店に入って『親子フリース手袋』を買った。ちょっと直江には派手かもしれないけど休みの日ぐらいは使えるだろ。

家に帰ってから俊介をベビーチェアに座らせて夕飯の支度。今日はエセフレンチだ。
魚のソテータルタルソース添え、ジャガイモとコーンのポタージュ、彩り野菜のサラダ、ガーリックトースト。
それとケーキとシャンパン。

「俊介のぶんもちゃんとあるからな~」
「バブー」

夕飯の支度をしてると直江の帰宅。玄関に迎えに行ってギューしてチューした。

「ベビーカーがありますが」
「あ、うん。俊介が来てる。母さんがインフルで寝込んだから預かったんだ」
「じゃあ今夜は俊介さんとクリスマスですか!」
「うん!」

直江は急いで着替えてきて俊介を抱っこした。俊介も直パパに抱っこされて嬉しそうだ。

「もうすぐ夕飯できるからな~」
「はい」

ロマンチックとは程遠いクリスマスになったけど、親子(?)でほんわかムードのクリスマスになった。
プレゼントも喜んでくれたし良かった良かった。
直江はさっそく俊介にも手袋をはめさせて二人でお揃いとか言いながら写真撮ってた。本物の親子みたい。
さて、じゃあそろそろ寝るか。

「……あの、高耶さん」
「ん?」
「ええと、クリスマスエッチは……」
「ああ、ダメダメ。俊介がいるのにエッチなんか出来ないよ。当たり前だろ」

それに今日は母さんを病院に連れて行ったり、プレゼントの買い物でウロウロしちゃったり、ディナーの用意で頑張っちゃったし、疲れてんだもん。
エッチはまたの機会ってことで。

「おやすみ~」
「うう……おやすみなさい……」

ちょっと可哀想だったかな?ま、いいか。

そんで直江は翌日は学校終わってから宇都宮に。オレは俊介と留守番だ。
いや~、一人寂しくクリスマスかと思ってたけど、俊介がいるだけで楽しいもんだな~。俊介様様だな。

 

 

それから直江は冬休みに入ったけど、相変わらず学年主任は忙しいみたいで毎日学校だ。
赤点の生徒の補習だとか、冬休みに入ってすぐに急性アルコール中毒で病院に担ぎ込まれた生徒がいたりとか、バイクでスピード違反した生徒がいたりとか、なんか毎日疲れて帰ってくる。

「ヘトヘトだな」
「はあ……まさかこんなに大変だとは……」
「明日から先生も休みなんだからゆっくりしなよ」

明日は大晦日。直江とオレのお正月はもうすぐだ。

「そうですね。しばらくお預けだったエッチもできますね」
「うん」

いい雰囲気でチューしようとしたらまた電話が。
嫌な予感……。

「居留守使いましょうか」
「ダメだよ。大事な用かもしれないし」
「……ふー」

直江が電話に出るとまたもやお義母さん。

「今度はなんですか。え?インフルエンザ?誰がですか?お父さんと兄さんですか?二人とも?」

おいおいおい!

「ええ、わかりました。行けばいいんでしょう」

今度は何を直江にさせる気なんだよ~!!

「高耶さん……実家の寺がインフルエンザで壊滅状態だそうです……」
「で?」
「私が行ってお札を作ったり除夜の鐘を突くことになりました……」

直江は先生だけどお寺のことも色々できる。お経も読めるから法事ぐらいならできる。
そんで除夜の鐘も突ける。
だからって。

「……で?」
「明日から2日まで実家に帰ります……」
「……オレは?奥さんはどうすんだ?」
「一緒に……来ませんよねえ……?」

行くわけねーだろ!!お義母さんに意地悪ばっかりされるんだから!!
頼まれたって絶対行かない!!

「奥さんはお正月は実家に帰らせてもらいます。旦那さんも実家で楽しく過ごしてくださいマセ」
「高耶さ~ん……」
「オレの旦那さんはお姑さんの意地悪から守ってくれない時があるし~。行ったって意地悪されるだけだし~。ウチの大掃除しなきゃいけないし~。てゆうかなんで長男もお寺のこと出来るのに三男が行くのかわからないし~。それに長男が出来るのわかってるのに行くって返事する三男の気が知れないし~」

直江なんか実家でこき使われて、ついでにマザコン全開でヘコヘコしてくりゃいいんだ。
そんな旦那さん知ったことか。

「あー、俊介と初詣行ったりすんの楽しみだな~。クリスマスもお正月もお兄ちゃんと一緒で俊介もきっと嬉しいだろうな~。クリスマスも!お正月も!なんて!!」
「たかやさーん!!」

とうとう直江が泣き出した。マジ泣きだ。

「私も高耶さんと過ごしたいんですよ!でも仕方ないじゃないですか~!」
「そーだな、仕方ないな。だから実家に行ってこい」
「うう……」
「ま、3日に帰ってきたとしても奥さんはいないから。奥さんは7日まで実家にいるつもりだから。橘先生の学校が始まるまで実家でのんびりさせてもらうから」

これは結婚生活のピンチってやつかもしれない。だけど奥さんはメチャクチャ怒ってるからピンチだろーがなんだろーが知ったこっちゃねえ!

 

 

超怒ってたけど実家で大晦日とお正月を過ごしてみたら案外楽しかった。
なんていっても俊介がいるからな。毎日毎日可愛い姿を見せられればささくれ立ってた気持ちもなごむってもんだ。
それにクリスマスやお正月を小さい俊介と過ごせるなんてこれから先あるかわからないもんな。
そのうち大きくなったら兄ちゃんなんかいなくていい!とか言い出すかもしんない。
そうなったらお兄ちゃんは悲しいぞ。

「高耶、今日義明くんが帰ってくるんでしょ?」
「うん。3日に帰るって言ってた」
「じゃあそろそろ戻ったら?出迎えてあげないと可哀想よ」
「いいよ、別に。こっちに迎えにくるのが筋ってもんだ」

放置してたら夜に直江が迎えにきた。7日まで一人でいることに耐えられなくて迎えに来たそうだ。
オレは迎えに来てくれただけでもう満足。帰る気でいたんだけど……

「すみませんでした……」
「うん、いいよ。オレ俊介と過ごせて楽しかったから」
「……寂しくなかったですか?」
「全然?」

オレの答えに直江は愕然とした。この世の終わりを知ったときみたいな。なんで?

「なに?」
「私は寂しかったですよ?」
「でもお寺のことで忙しかったんだろ?オレのこと考えてる余裕なんかあったんだ?」
「……ずーっと高耶さんのことばかり考えていましたが……」
「へー、坊さんの仕事って意外と暇なんだな」

直江の顔色がどんどん悪くなっていく。どうしたんだろ?

「直江?」
「もう私のことは愛してないんですか?」
「え?どうしてそうなるの?」
「だって私のことなんてどうでもいいみたいな返事ばかりで……」

そうか?普通に受け答えしたつもりなんだけど。

「このまま別居で、そのうち離婚なんてことは……」
「え?え?え?」
「ですよね……クリスマスもお正月も奥さんをほったらかしにしたんですからね、私は……。旦那さん失格ですよね」
「ちょっと待って」
「わかりました。このまま帰ります。高耶さんもお元気で」

ええー!!なんで?!
オレの話、全然聞いてねえし!!つか聞く気もなさげだし!

「直江、待て!」
「いえ、もうわかってますから……離婚でいいです……」

グスンと鼻を鳴らして出てってしまった。ちょっとどうゆうこった!!

「直江!!」

急いで追い駆けて直江の背中に貼り付いてギューってした。

「離婚しない!!」
「でももう私のことは愛してないでしょう?」
「愛してるよ!大事な旦那さんだもん!」
「だってさっき……」
「うるさい!オレは直江の奥さんだ!ずっと奥さんなんだ!これからも一緒に暮らしてチューもギューもイチャイチャもするんだ!直江は黙ってオレの旦那さんでいればいいんだ!!」

ようやく理解というか、オレの話を聞いたようだ。
すっかり忘れてたけど直江は思い込みが激しくて、いったん落ち込むと人の話も聞けなくなるんだったっけ。

「本当ですか?」
「本当だ!」
「高耶さん!!」
「直江!」

道端でギューしてチューした。
お正月の夜だから人がいなくて良かった。

「帰りましょうか」
「うん」

いったん実家に戻って家族に帰るって言ってコートを着て、直江と手を繋いで帰った。
そんで家についたら直江は玄関で靴を脱ぎながら突然寝てしまった。

「直江?」
「げ、限界です……クリスマスからずっと疲労がたまってて……」

あ、そうか。25日の結婚式から直江はほとんど休みなく働いたりしてるんだっけ。
お寺の仕事に先生の仕事、それに旦那さんとしての気苦労も重なって過労になっちゃったのか。

「ごめんな~」

眠った直江をリビングに引きずっていって、ラグの上に寝かせてから布団をかけてやった。
とりあえず今はこれでいいだろ。

「もしかして疲れてたから妄想グルグルが始まったのかな?」

それもあるんだろうな。じゃあオレは奥さんとして直江を癒してあげなくちゃな!

直江が寝てる布団に一緒に入って頭を撫でたりチューしたりしてみた。いつも俊介にしてやってるみたいに。
そしたら直江は寝ながらニヤニヤして嬉しそうだった。

「でかい赤ん坊だな」
「たかやさ~ん……」

寝言でもオレのことばっかりだ。なんて可愛いやつだ。俊介なみだ。

「明日はたくさんイチャイチャしよーな」

クリスマスもお正月も二人きりで過ごせなかったけど、普段は毎日二人きりで暮らすんだから今回はもういいや。
困らせてばっかでごめんな?
でもちょー愛してるからな!

 

 

1月4日。ぐっすり眠って元気になった旦那さんとようやくお正月イチャイチャを始めたとき、また電話が。

「………………居留守でいいですか?」
「居留守で頼む」
「今日こそは高耶さんを独占ですから」
「オレも旦那さん独占だ」

ガンガン鳴る電話をシカトして旦那さんとチューだ。
そろそろ寝室へ、って時、旦那さんは電話線を抜いてニヤリと笑った。

「もう邪魔はさせません」
「うー、直江かっこいい!!」

やっぱ旦那さんと過ごす時が一番幸せ。
久しぶりのエッチ頑張るぞー!!

 

END

 

 
   

あとがき

クリスマスとお正月と
いっぺんにやってしまう
ズボラなお話でした。

   
   
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