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奥様は高耶さん |
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今日も直江はかっこいい。 「なんですか?」 突然言い出したもんだから照れたらしく、ちょっと赤くなりながら困った顔をした。 「旦那さんをこんなに褒める奥さんはあまりいませんよ?」 チューしてやったらもっと赤くなってオレの頭をグチャグチャしてから学校に行った。 なんで歴史の先生なのにあんなに逞しいかってゆーと、独身時代からスポーツクラブに通ってるからだ。 ん?なんでいきなりそんな設定にしたかって?昔からそうゆう設定だったんだけど、管理人が出し忘れてたんだよ。
そんな日曜日。 「直江、今日一緒にスポーツクラブ行こうよ」 かっこいいジャージを持って直江の車でスポーツクラブへ。 「初心者ヨガだって。これやりたい」 オレが手を振ってスタジオに入ったとき、スタジオの外から大きな声が。 「タカヤー!!」 発音のイマイチ良くないオレを呼ぶ声。もしかしたら!! 「トーマス!!」 ベッカムに似てるトーマスの登場だ。まさかこんなところで会うなんて!! 「タカヤもヨガやるノ?僕も通ってるんだヨ!」 いつの間にか直江がスタジオの中に入ってきてて、オレをトーマスから守ってくれた。 「なんだ、橘先生もいたの?ま、いいか。タカヤ、僕の隣りでヨガやろうよ、ね?」 周りからジロジロ見られてるけどトーマスの勢いに飲まれて動くこともできない。そのうちインストラクターが入ってきてとうとうオレはトーマスと直江に挟まれてヨガをすることに!! 狭いスタジオにギリギリまで人数を入れてるから、直江ともトーマスとも手を伸ばせば触ることができる距離。 直江に場所を変わってもらってからはちょっと安心して集中できたからまあまあ楽しかったかな。 「高耶さん、もう帰りましょう!」 怒った直江がオレを引っ張って更衣室に行こうとしたときだ。 「橘先生~ぇ!」 黄色い、いや、ショッキングピンクな声がした。誰だ、オレの旦那さんをそんな声で呼ぶのは!! 「山田先生、どうしてここに?」 なんでそんなこと教えるんだ、直江……。もしかしたら今までもこうして直江を待ち伏せしてたとか? 「橘先生、一緒にウォーキングマシンやろっ、ね?」 そう言ってオレを無視して直江の腕に手を回しやがった。 「いえ、私たちは今から……」 山田はオレと直江の関係を知らないから、どうやって山田をかわしていいかわからなくなった直江は、なんと掴んでいたオレの腕を離してしまったのだ!! 「……トーマス、行こ。橘先生はミス山田とトレーニングだってさ」 山田に腕を取られた直江はそれを無理矢理引き離すわけにもいかず、オレがトーマスとマシンのある方に行ったのに追い駆けてもこなかった。 「冷たいハズバンドだね」 そんでトーマスになんじゃかんじゃと触られそうになりながら10分ぐらいマシンをやってたんだけど、遠くに山田と直江が並んでウォーキングマシンをやってるのが見えて不愉快極まりなくて、つまんないから一人で更衣室に行って着替えた。 「タカヤ~?」 5分もかからずにトーマスは着替えてきて、一緒にスポーツクラブを出た。 「……暇つぶししたい」 オレを優先させてくれて超人気作品のアクション映画を見ることにした。 でも暗い映画館で手を握られたりお触りされたらたまんないから、トーマスとオレの間に1席空けて荷物を置いた。
「次はどこ行く?」 トーマスにそう聞かれたけどどこも行きたくない。 「橘先生からメール来てたの?」 奥さんよりも山田を取ったんだもん。そんな旦那さん許せるわけないじゃん。 「うーん、じゃあ僕の知り合いのパティスリーでケーキでも食べる?」 トーマスの車でケーキ屋に行くことに。 「こんなとこあったんだ~。へ~」 せっかくだから中庭で食べようってことになった。中庭は冬の間はサンルームになるから寒くないんだって。 小難しい名前のフルーツたくさんのケーキを食べて、ブランドものの紅茶を飲んで、少しだけ気分が良くなった。 「そろそろ帰る?」 ……いいヤツ……トーマス、さすがベッカムに似てるだけあって紳士だ。 「僕が送って行くから帰ろうか」 直江め。今回はトーマスに免じて許してやるぞ。
「ただいま」 玄関に一緒に入ってきたトーマスを見て直江が止まった。まるで石になったかのように。 「直江、あのな」 ト、トーマス?!いったい何を言い出すんだ?! 「タカヤよりテイサイなんかを大事にしてる橘先生なんかもうイラナイって!というわけで僕が今日からタカヤのハズバンドになるからね!さあタカヤ!荷物をまとめて引越ししようネ!」 そういうことか!! 「おい、トー」 オレがトーマスを怒鳴る前に、直江がキレてしまった。 「僕はハイスクールでボクシングやってたんだヨ!そんなヘナチョコパンチ当たるわけナッシング!」 直江は玄関でぶっ倒れ、星とヒヨコをクルクル回して伸びてしまった。 「直江、直江!!」 ボクシングがなんだってんだ!!オレは小さい頃から父さんとおかずの取り合いで鍛えた必殺チョップがあるんだぞ! 「てぇい!!」 人中(人間の体の急所で、鼻の下だ!)めがけて必殺チョップを入れたら、今度はトーマスがうずくまった。 「オレの直江をぶん殴るなんて100万年早いんだよ!!出てけ!!」 うずくまってるトーマスを玄関から蹴り出して、ドアには鍵とチェーンをかけた。 「大丈夫か?!」 とりあえず旦那さんに肩を貸してリビングのソファまで。氷と水をビニールに入れてタオルで包んで顎に当ててやった。 「あの野郎、ぜってー許せねえ」 うう……直江こそ紳士だ。さっきは狂犬だったけど今は紳士だ。 「直江!!ちょー愛してる!!」 チューしようとしたら顎がゴツンと当たって直江が「いー!!」って叫んだ。 「あ、ごめん」 気をつけながらチューして仲直り。
「で、私が探している間にトーマスと何をしてたんです?」 デートになるのか?あんなもんで。 「直江こそ山田といつまでイチャイチャしてたんだよ」 次の日、顎に湿布を張って出かけた橘先生は、学校でヒソヒソ噂されたそうだ。 「オレ、そんな奥さんじゃないぞ」 ……オレがトーマスに必殺チョップをしたのは直江には一生内緒にしておかなくちゃ……。
END
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あとがき |
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