奥様は高耶さん |
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「手作り〜チョッコ〜♪旦那さんに手作り〜チョッコ〜♪」 今年のオレは一味違う!今までのバレンタインはことごとく失敗に終わったが、今年はそんな失敗はしねえ! 直江の愛してるものは一番がオレ、二番が俊介、三番が歴史という歴史マニアだから、今年は歴史チョコ、略して歴チョコをあげることにしたんだ。 橘不動産でのバイト代で材料を買い求め、オレはこの決戦の場であるキッチンに立った。 まず市販の赤いパッケージのチョコレート8枚を湯煎で溶かした。ちょっとコクと柔らかさを与えるために生クリームを少々追加でグルグルしながら湯煎で溶かしまくった!! そしてそれを大きな四角いバットに入れて、冷蔵庫で一晩固めた。 翌日は固まったチョコを出して、クッキングペーパーに描いたデザインを竹串を使って精密にチョコに写す。 こんなものどうするんだ?って聞かれたから今回の計画を話したら感心してた。いいアイデアだなって。 そのデザインをクッキングペーパーにボールペンで写して、チョコ用ペーパーの出来上がりってわけだ。 慎重に慎重に竹串でそのデザインをうまく固まったチョコに写していって、ここからがオレの腕の見せ所。 デザインにそって立体的に削りとったり(削ったチョコはオレが食う!)、線を入れたりした。 直江が帰ってくる前にまた冷蔵庫にしまって知らん顔。 「今年のバレンタイン、また高耶さんがチョコなんですか?」 前にトリュフを作ったんだけど、あまりのうまさにオレが全部食ってしまった。 「じゃあ今年はちゃんとしたチョコを貰えるんですか?」 楽しみにしてる直江はきっと今度の土曜、学校から帰ったら嬉しい悲鳴を上げるに違いない。
そんでまた翌日。今日が土曜のバレンタイン。直江が学校に行ってから彫刻の再開だ。 英語で言うとラブ、日本語で言うと愛。 彫刻したチョコの上にそれを書いて、また冷蔵庫で冷やして完成だ。ラッピングはしないまま、大きめの皿に乗っけて夕飯の後に出して驚かせるんだ〜。 なーんて思いながら夕飯を作ってたら愛しの旦那さんのお帰りだ。 「ただいま、高耶さん!」 玄関でチューしてギューしてスリスリして。 「着替えて夕飯にしよう?」 旦那さんが着替えてる間に夕飯をテーブルに並べてウキウキ待ってた。 「今日は銀鱈ですか。油が乗ってておいしそうですね」 美味しい美味しいって夕飯をたくさん食べてくれた。直江は和食が好きだからオレも自然と和食が得意になる。 そして直江が待ちに待ったチョコレートだ。 「高耶さん、早くチョコレートくださいよ」 冷蔵庫からレースの紙ナプキンがかかったチョコを出した。 「お、大きいんですね……今年のチョコは……」 部屋の明かりを消して、スタンドの明かりとリビングのローテーブルに置かれたキャンドルだけになった。 「どうぞ、旦那さん。開けてみて」 直江が大事そうにフワッとナプキンを外すと、そこにはオレの努力と愛の結晶のチョコレートが!! 「おおおおお!!これは!!高耶さん、ありがとうございます!!素晴らしい!!」 ほらな!!オレの作戦どーり旦那さんは大喜びだ!!! 「愛が満載なのもよ〜〜〜くわかりました!!すごいです!!これをバレンタインに旦那さんに渡すなんて天使のような高耶さんぐらいしかいませんよ!!」 超抱き合ってチューしまくって、直江にたくさん愛してるって言われて橘夫妻は爆裂に幸せだ。 なんとオレが作ったのは大河ドラマでやってる直江の兜を彫刻して、ホワイトチョコででっかく「愛」って書いたんだ! 「なんか……こう……高耶さんの愛がひしひしと伝わってきますね……なんて幸せなんでしょう、私は」 直江は素晴らしい作品ですと言って何枚も写真を撮った。 「一緒に食おう。愛のホワイトチョコは直江が全部食べていいからな」 味はすっごく良かったみたいで、食べた瞬間直江の顔がパッと輝いた。 「美味しいです!」 ナイフで切りながら兜も食べてくれた。二人でチョコまみれになってチューもした。
「ダハハハハ!なんだこりゃ!!大河ドラマの直江の兜じゃんか!!」 直江は学校で千秋と門脇先生に写真を見せたらしい。もちろん自慢のつもりで。 ところが……オレの兜チョコはいろんな意味で都市伝説になって、見知らぬ人にも写メで送られて回ったらしい。 オレがそんな話を知ったのは譲から来たメールだった。 オレ、なんか……バレンタインには縁がないんだな……。うう。 「くそ〜」 歴チョコ作戦は成功したのか失敗したのかイマイチ自分でもわからないけど、直江が喜んでくれたならヨシとしよう!
END
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あとがき |
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