奥様は高耶さん |
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夏だ!!海だ!山だ!プールだ!! オレの目の前にあるのは庭に置かれたビニールプールと可愛いシマシマの水着を着た俊介だ。 「水遊びだ!おー!」 暑くて茹りそうな日曜の今日、俊介が遊びに来た。 お隣さんに貰ったお古のビニールプールに水を張って、冷たくないようにお湯も入れていざプールだ! 「本当に高耶さんも着替えたんですか……」 サンダルで庭に出てきた直江は軒下の日陰でしゃがんで見てた。 「直パパは付き合い悪いな〜」 最近の俊介は喋ろうと頑張ってて言葉尻を真似したりする。可愛いなあ。 「付き合いが悪いとかそういう問題じゃないでしょう」 付き合いの悪い直パパを無視して水遊び用のオモチャと俊介をプールに入れた。 「お兄ちゃんも入るぞ!」 入って俊介が嫌がらない程度に水をパチャパチャかけて遊んだ。俊介もやり返してくる。さすがオレの弟。水だってへっちゃらだ。 「直パパにもかけろ!」 オレがやってみせると真似して何度も何度もしつこく直江に水をかけた。 「ああもう!高耶さんがやるから真似するんですよ!」 洒落にならないぐらいびしょ濡れになった直江はどうでも良くなったのかプールのそばまで寄ってきて、オレたちにバッシャバッシャかけた。手がでかいから水がたくさんかかる。 「やり返せ!」 直江も楽しくなってきたのかな〜と思ってよく顔を見たら全然笑ってない。逆に怒ってるっぽい。 「ほら、もうやめろ。直パパはもうイヤなんだってさ」 抱っこして膝に乗せて、オモチャで気を引いてやめさせた。そしたら直江はびしょ濡れのまんま家に入ってっちゃった。 「なあ、直パパ怒ってたぞ」 言葉はもう理解してるらしく、「怒ってた」って言うと心配そうな顔をする。 「そろそろ出るか。直パパにごめんなさいしような?」 庭で俊介の水着を脱がせて出してあったバスタオルで拭いてリビングに戻した。直江に俊介の着替えを頼みたかったんだけど、不貞腐れてるらしくてリビングから出て行ったままで呼んでも来ない。 「ここで待ってろ。兄ちゃんも体拭かなきゃいけないからな」 軽く体を拭いてから家に入って素っ裸になって、もう一回俊介をよく拭いてオムツして服を着せた。 「兄ちゃんの服は二階なんだよ。一緒に行くか?」 床に転がってた俊介に言ったら寝てた。水遊びで疲れて服来たら気持ちよくなって眠くなったらしい。 「えーと、あの、ごめんな?」 無言だ。これちょっとヤバいくらい怒ってないか? 「なお……」 もう一回謝ろうとしたらギューされた。怒ってないのかな? 「直江?」 あ、裸だからか。拍子抜けってやつかな?違うか? 「俊介さんも可愛いですけど、やっぱり高耶さんが一番可愛いです」 そう言いながらいつもみたいにお尻を触ってきた。でも今は裸だからエッチなことになる前に離れなきゃ。 「服着るから待ってろ。あとでチューたくさんするから」 オレにぱんつを穿かせたいそうだ。今までも何度かされたけど、なんでぱんつだけは何度穿かされても恥ずかしいんだろうか。 「ヤダ」 やっぱり直江は変態だ。変態のくせに水かけられて怒るなんて生意気だ。もう謝らねーぞ! 「いいから出てけ!!」 渋々出て行った変態の旦那さんが階段を下りるのを見届けてから、寝室の鍵を閉めて着替え。 服を着てからリビングに戻ったら出しっぱなしだったタオルや水着がなくなってた。 「あ、片付けてくれたのか。ありがと」 変態だけど優しい旦那さんだから超好きだ。隣りに座って抱きついてチューした。 「俊介さん、ぐっすり寝てますよ。布団に寝かせる時に抱っこしても起きなかったし。幸せそうな寝顔です」 俊介の寝顔を見たら、せっかく遊びに来たのに一緒に遊んでやらなかった上に、機嫌悪くして寂しい思いをさせたのを反省してるんだそうだ。 「趣味で和裁教室に通ってるんだけどね、赤ちゃん用の浴衣を作ったから俊ちゃんにどうかと思って」 直江が庭で育ててる野菜をいつもあげてるからそのお礼だって。 「ありがとう!俊介今お昼寝中だから、あとで着せて見せに行く!」 小さくて可愛い浴衣だ。きっと似合うぞ〜。 「あ、そういえば俊介さんの帯がないですね。ちょっと買って来ますよ」 直江は駅前商店街にある呉服屋さんに行った。橘家のお寺でもお世話になってるお店だそうで、直江も小さい頃にそこで帯を買ってもらったらしい。 「俊介〜、直パパがおまえに帯買ってくれるってさ」 オレも俊介の隣りに寝転がったら、すごい眠くなってそのまま夢の中へ。
直江に起こされて目を開けたら俊介が浴衣姿で立ってた。新しい紺色の帯で男の子っぽい恰好で。 「なんで直江まで?」 直江に浴衣を着せてもらってまず3人で撮影。親子でお揃いみたいな写真になった。 「女性の浴衣姿は華やかでいいですね。とてもお似合いです」 こういうところを見ると直江が昔は女ッたらしだったってのを思い出す。後でオレも褒めてもらわないとな。 んでお隣さんの庭で写真を撮った。オレと直江と俊介の3ショットも撮ってくれた。でもその写真に自分が写ってないのに超嬉しそうなのはなんでだ。 「この写真、近所の奥さんたちにあげてもいい?」 それもそうだな。俊介は近所のアイドルだし、直江ファンも多いことだし。 んでせっかくだから俊介に浴衣を着せたまま実家に帰しに行った。 「あら俊ちゃん可愛いじゃない!」 自分がどのぐらい可愛いのかをわかってるみたいに自慢げに母さんに見せてる。みんなに可愛い可愛いって言われて有頂天になってるように見えなくもないけど、実際に可愛いんだからいいんだ。 「お隣さんが和裁教室で作ったのをくれたんだ」 いつもだったらもっと俊介といたいってゆって直江が寂しそうな顔をするんだけど、なぜか今日は全然そんな素振りはなかった。 「じゃあ帰ります」 俊介が直江と別れるのを惜しんでまとわり付いても、頭を撫でて「また来てくださいね」つって終わりだ。 家に着いてからすぐに直江にギューされた。なんなんだ?さっきからおかしいぞ。 「我慢できそうにないんですが」 ああ、そういうことか。 「今日は奥さんが水着になったり裸になったり浴衣になったりで……」 もう我慢が出来ないってことでカーテン閉めてその場でゴーだ。 まあ、たまには誘ってやってもよくなくなくない。
数日後、オレは浴衣と写真のお礼として、美味しいと評判のケーキ屋さんの焼き菓子をお隣に持って行った。 「そういえば俊ちゃんと撮った写真を他の奥さんに見せたらやっぱり欲しいって言われてプリントして渡したのよ」 オレと直江と俊介の3ショットの話だ。 「あの写真なんだか親子って感じだったわ〜」 んー、まあステキって言われるんだからそれでいいのか。悪い気はしないもんな。 帰って直江にその話をしたら「ああ、やっぱり」って言った。 「何がやっぱりなんだ?」 たくさん愛してるって言ってチューしてくれたから今夜はご褒美に浴衣で誘ってみよう。 「直江はぱんつ穿いてるオレと穿いてないオレとどっちが好き?」 ちょっと考えてから直江が真面目な顔して耳打ちした。 「じゃあそれで」 直江がなんてリクエストしたのかは想像に任せる。
END
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あとがき |
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