奥様は高耶さん |
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直江が担任してるクラスで占いが大流行してるらしい。 「クラスのみんなで私の占い結果を教えてくれたんです」 雑誌やインターネットで橘先生の星占いや姓名判断、あとは手相や顔の相を調べてくれたんだって言って茶封筒を出してきた。 「もう見たのか?」 しばらくして戻ってきた直江は封筒を開けてオレと一緒に見た。 「どれどれ……橘先生の占い結果は、と」 色々あったけど当たってるな〜ってところは、適職が教師ってことと、金運がいいことと、パートナーを大事にするってところだ。 でも気になる占い結果もあって。 「……異性との恋愛は奔放……?」 これはもしや直江の昔の所業のことじゃないのか……? 「何人もの異性と同時に付き合うことも少なくない……?」 異性とか同性とかいう問題じゃないはずだ。下半身がだらしないって意味に違いない。 「うう〜」 直江が次に渡してきたのは日本の武将占いで、結果は「徳川家康」だった。 「フラフラと中身のない異性に吸い寄せられてしまうこともあり……?」 恋愛占いになると絶対って言っていいほどこんな結果になる。 「ひどい〜!!直江の浮気者〜!!」 武将占いの紙をビリビリに破いて資源ゴミのゴミ箱に突っ込んだ。 「高耶さん、こっちはどうですか?!奥さんとの相性占いもしてもらったんです!これです!」 そう言って渡してきた紙に書いてあったのは。 「……相性は最悪です……あなた(直江)からの気持ちは相手(オレ)には伝わりにくく、憎みあって一生を過ごすかもしれません……?」 いくら占いだからってオレと直江を引き裂くつもりか!! 「離婚なんかヤダー!!」 旦那さんとギューして離婚はしないって約束をした。
「それで落ち込んでるのか?」 今日は直江が社会科の先生たちと食事会だってゆーから千秋と門脇先生をウチに呼んで3人で夕飯。 「だってどの占い見てもそんな感じなんだもん……」 門脇先生がなかなか結婚しないのは、本当はしんたろうさんが「相性悪いな」って思ってるからかもしれないじゃん、て言ったら千秋は嬉しそうだったけど門脇先生はショックだったみたいでナヨナヨと床にへたりこんだ。 「そうかも……そうなのかも……あたし、しんたろうさんに心底愛されてないのかも……」 千秋が意地悪そうに笑ったら門脇先生は本気で怒って脇腹にグーパンチした。 「仰木くんの気持ちわかっちゃったわ〜」 パンチされた千秋は腰を抑えて起き上がってからオレと門脇先生に「いい占いだけ信じればいいのに」と文句を垂れた。 「橘先生も大変だな〜、こんなガキっぽい奥さんなんてさ〜」 そうか。橘は相性が悪いけど、直江なら相性いいかもしんない。 「橘先生が帰ってきたら一緒に調べたらいいんじゃねえの?」 門脇先生はまだ落ち込んでるけど、オレは光明が見えたから立ち直れた。
夜遅くになって旦那さんが帰って来た。ちょっと酔っ払ってる。 「ただいま!高耶さん!」 落ち込んで悪酔いした門脇先生は千秋が連れて帰ったから、酔っ払っていつもと違う直江を合わせなくて済んだ。 「やっぱり高耶さんは世界一可愛いです!」 けっこう酔っ払ってるな。千秋たちがいなくてマジで良かった。 「着替えさせてください」 もうパジャマ着せちゃえ。この調子じゃ風呂には入れないだろうからな。 「もー、重たいな〜」 ようやく着替え終わって、なんでそんなに酔っ払ってるのか聞いたら食事会で奥さんのことを聞かれたらしい。 「占い結果を聞いた山田先生が『わたしもそう思いますぅ』って追い討ちをかけたものですから全員でうんうんと頷いて……」 それでみんなからやいのやいの言われて、自分は奥さんと相性が悪いのが世界の定説みたいに思っちゃったそうだ。 「今日な、千秋に言われたんだけど、橘で占うからダメで、直江で占えばいいかもしれないってさ」 安心したのかそのままソファで眠り出した。
次の日、駅前の本屋で姓名判断の本を買って調べてみた。 「高耶さん、ただいま」 帰って来た旦那さんに玄関で抱きついて泣いたら何も言わなくてもわかってくれたっぽかった。 「悪かったんですね……」 抱きついたままリビングでチューして、占いなんかじゃわかりゃしないさ、オレと直江の本気の愛は!と 「私、橘義明は!私の奥さんである仰木高耶さんしか愛せません!」 まだ夕方だけど橘家のご夫婦はリビングの床で燃え上がってる真っ最中。
「美弥が思うに」 翌日、なぜか大人しくお上品にウチにやってきた美弥。ケーキと紅茶でハイソな午後をサンルームで過ごしている。 「美弥は占い信じない方だからお兄ちゃんと義明さんの相性なんか知ったこっちゃねえよと思ってるんだけど」 美弥に1000円渡して教えてもらったところ。 「世間一般の恋愛占いは『オトコとオンナ』だからだよ〜」 そうか!オレと直江はオトコ同士だ!! 「星占いとかで出る相性は性別も関係してくるからね〜。お兄ちゃんが女の子になりきって占うか〜、または霊感占いやタロット占いでやってもらえば本当のことがわかるかもよ〜?」 さすが美弥!!恋愛に関してはマエストロだ!!強い味方がいたもんだ!! 「セッティングもお任せならさらに1000円だよ。い〜い占い師揃えてますぜえ」 いい妹を持ったもんだ。すぐに有名占い師に電話して予約を取ってくれた。 「美弥のオススメの占い師さんはこの人なの!」 男性の占い師で、ちょっと派手な恰好をした手品師のような感じだ。 「当たるのか?」 それで直江と2人で入ってみたら、顔を見ただけで「あら、ご夫婦なのね」と言われた。 「うちはねえ、姓名判断や生年月日なんか関係なく、あなたたちの根っこの部分で相性を占うから、今まで試した占いのことはぜ〜〜〜〜〜んぶ忘れてちょうだいねっ」 タロットカードで占うらしく、カードをまぜまぜしてからサッサッサと配置してそれでもう終了らしい。 「これ!コインのキング!これが旦那さんね!それと〜、これ!カップの女王!こっち奥さん!」 周りにあるカードには「赤ちゃん」だの「直江のお父さん」だの「口煩いけどいい友達」だの「愛情満載の家族」だののカードがオレと直江を取り囲んでるらしい。 「てゆうことは?」 すげー!! 「本やらネットやらの占いってのはね、全部『確率』なの。だから基本的には当たるんだけど、足りないわけ。そこでタロットの出番なのよ。何が足りないのかを補填するの」 なーんだ、やっぱそうかー!! 「相性いいって、直江!!」 5000円で幸せが買えたんだったらアリだよな!直江、出しておいて! 「はい5000円です」 やっと!やっとオレと直江の相性が最高だってゆう占い結果が出た!! 「お祝いのお酒飲んでエッチしましょうね」 美弥にもプラス1000円のお小遣いを渡して帰らせた。 「脱いでいい?」 すんごい楽しい夜になった。占いの先生ありがとう!!
「よしあ……橘先生!これ見て!」
END
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あとがき |
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