奥様は高耶さん



第47


クリプレとオレ

 
         
 

 

イエーーーー!!
待ちに待ったザ☆クリスマスだ!!
今年こそは夫婦水入らずでクリスマスを過ごしてみせる!!

でもな〜、直江は休みじゃないんだよな〜。
残業しないで帰ってくるとは言ってるけど、また邪魔が入るかもしれない。
いやいや、絶対邪魔させない!!

そんなわけで24日は帰宅した直江とソッコーでドライブに出た。
携帯電話も電源切ったからもうオレと直江だけの世界。
幸せだ〜。

「先に夕飯食べましょうか」
「うん。ガストがいい。クリスマス限定デザートがあったら食べたいな〜」
「そうですね」

直江はオレのささやかな願い聞いてクスッと笑った。

「なんだよ」
「今日も可愛いなあ、と思って」
「そりゃ旦那さんがいつも大事にしてくれるからだろ」
「はい」

信号待ちでチューしてまだ新婚さんみたいにラブラブなオレと直江。
愛情満載なクリスマスになりそうだな〜、なんて安心してたけどとんでもない。
直江はやっぱりバカだった。

 

 

24日はガストで満腹になるまで食って、その後はクリスマスイルミネーションをやってるところをたくさんドライブして回って夢みたいにロマンチックな夜を過ごした。
もちろん家に帰ってからはラブでメロウな時間を。

今年は本気で邪魔が入らなさそうだから(用心はするけど)思いっきり直江とイチャイチャできる。
そうだよ、こーゆークリスマスをやってみたかったわけだよ!
毎年毎年なんだかんだで邪魔が入ってロマンチックには程遠かったからな!

で、25日の朝だ。
いつもの起きる時間に目覚まし時計が鳴って、少し睡眠不足だったけどどうにか起きた。
その時に枕元にあるモノが目に入った。

プレゼントの包みが。

「もしかして直江から……?」

なんつー優しい旦那さんだ!!クリスマスサイコー!!

「直江っ、直江!起きろ!」
「はい……」
「ありがとな!!」

まだ寝ぼけてる旦那さんのほっぺにたくさんチューした。
直江はオレのサンタクロースだ!

「おはようございます……あ、それ」
「直江からのプレゼント?!」
「ええ、奥さんに」
「開けて見たい!でももう朝飯作んなきゃなんないよな!どーしよう!」
「私が学校に行ってからゆっくり見てください」
「直江〜!!」

朝からスリスリして甘えてチューもたくさん。
これぞザ☆クリスマスだよな〜!

 

 

 

直江を学校に送り出してからプレゼントを……と、思ったけどもったいないから後で見よう。
家事やり終わってからだ。
その方が喜びもひとしおに違いない。

掃除と洗濯を終わらせてからプレゼントを開けようとしたら邪魔が入った。
でも直江との時間の邪魔じゃないからまあいいや。

ピンポンが鳴ったから出たら母さんと俊介だった。
俊介はサンタ服を着てた。朝から可愛いヤツめ。

「どーしたの?」
「サンタ服を見せに来たの」
「なんで?」
「お兄ちゃんに見せるって言うから」
「へー。かっこいいな、俊介!!」

褒めてみたら照れやがった。くそ、なんでこんなに可愛いんだ。

「俊介はサンタさんからプレゼントもらえたのか?」
「もらえたー」

ちょっと前に俊介に聞いたんだ。サンタさんに何をお願いしたのかを。
そしたら「おにぎり」をお願いしたって言った。さすがにおにぎりを枕元に置くわけにはいかないから、俊介のマイブームの黄色いクマのぬいぐるみを母さんに渡して「サンタさんから」とゆーことにして、昨日の夜に枕元に置いてもらった。
それをこんなに喜んでくれるなんて弟ってのは可愛いよな〜。

「何がもらえたんだ?」
「おにぎり!」

……おい。

「ほ、他は?」
「クマたん」
「あとは?」
「???」

おにぎりとクマしか貰ってないのか?いや、まさかそんなことは……。
母さんを見たら目を逸らした。どうやら本当におにぎりにしたっぽい。

「俊介、サンタさんは明日もプレゼントくれるから楽しみにしてろよ」
「やったー!」

薄情な親を睨みつけて目で「絶対買え」と言っておいた。
オレの時と違って俊介は超可愛がられて甘やかしてると思ってたけどどうやら教育方針は変わってないらしい。

「子供には夢を与えろ」
「はいはい」

俊介と母さんはせんべい食ってから帰って行った。
今年は俊介だけじゃなくて父さんにも母さんにも美弥にもクリスマスプレゼントを渡してあるから邪魔はしないと思う。
直江のボーナス使って買ったから、もし邪魔したら直江が鬼と化すってわかってるだろうしな。

「あ、そうだ。直江からのプレゼントがあったんだった」

さて箱を開けようかという時にまた邪魔が。

「こんにちは、高耶くん」
「バ……お、お義母さん……」

うっかりババアと言いそうになったのを危うく止めた。

「お姑さんにお茶も出さないつもり?」
「どうぞ入ってください……お茶いれますから……」

ババア、じゃなかった、お義母さんは何やら包みを持っていた。なんだろう……爆弾かな……。

「お寺の人間がクリスマスなんてちょっとどうかと思ったのだけど、俊ちゃんにはいい夢を見て欲しいですからね。オモチャを買ったのよ」
「あ、そうなんですか、すんません」
「なぜあなたにすみませんと言われなければならないのかしら?」

爆弾かと疑ったから謝っただけだ。でもそれ言ったら離婚離婚と騒ぐに違いない。
どりあえず黙っておこう。

「これは今からあなたのご実家へ行って俊ちゃんに渡すのよ」
「はあ……」

見せにきただけか?
相変わらずめんどくせえババアだ。

「それでこっちが義明のぶんね」
「え?」

もう1個包みを出してきた。こっちは俊介のと違って小さい。

「義明が戻ったら渡しておいてね。あなたも一緒に見るんですよ」
「はい……」
「まったく義明ったらなんでこんな礼儀知らずな子と結婚したのかしら」

やべ!ここはありがとうって言うところだったか!!

「……ありがとうございます……」
「わかればいいのよ」

結局お義母さんは昼飯まで要求して食ってからオレの実家に行った。
たぶん昼飯を食いに来たんだろうな……。

やっと直江のプレゼントが見られると思ったら今度は学校が終わった美弥が来た。
プレゼントは欲しがってたアクセサリーを渡したからこの家に来る必要はないはずなのに。

「お兄ちゃん、昨日は義明さんとラブラブだった?」
「あたりまえだろ。そんな心配しなくていいから受験勉強しろよ」
「今日は彼氏とデートだもん」
「じゃあもう帰ってデート行けよ」
「夕方5時に待ち合わせでさ〜。ヒマなんだよね〜」

受験勉強をしろ!!!

美弥は勝手に冷蔵庫を開けて中身を物色し始めた。
今夜のプチディナーのケーキは直江が帰りに買って来てくれるから冷蔵庫にはなんにもないぞ。

「なんにもないの〜?」
「だからおまえに食わせるオヤツはねえんだよ」

だったら紅茶のおかわりを出せと要求したからキッチンで作ってたらガサガサと音が。
直江からのプレゼントを見つけて包みを開けやがった。

「うわ〜!一番高い@−Podだ〜!!」
「勝手に何してるんだ〜!!」
「何かな〜と思って〜」
「信じられん!こんなのが妹なんて!!泥棒め!!」

直江の愛を美弥に泥棒された!!

「おおげさな」
「これはオレが今朝直江にもらって、嬉しい気持ちを熟成させてから開ける予定だったんだよ!!」
「どっちにしろ開けるんだからいいじゃん」
「よくない!!」

オレたち夫婦のの気持ちを踏みにじりやがって……。おまえら実家のヤツは全員鬼だ!!

「あ、もうなんか録音されてるよ〜?」
「いいから返せよ!!鬼!!」
「ちょっと聞いてみようよ〜」

そう言ってどこかをいじって美弥は勝手に聞いた。でも10秒ぐらいでイヤホンを外してオレに返してきた。
そんで紅茶のおかわりも飲まずにニヤニヤしながら急いで帰った。
なんだよ、まったく。どいつもこいつも。

テーブルに出されっぱなしのプレゼント。可哀想にオレより先に美弥が触るとは……うう。
でもなんで美弥は急いで帰ったのかな。
たぶんこの@−Podに入ってる音楽データのせいだとは思うんだけど……。

小さい画面を見てみたら『01』から『99』までの番号がずらっと並んでた。
美弥が聞いてたのは『01』だったか?

オレも不思議に思って聞いてみたら。

『おはようございます、高耶さん。ゆうべも寝顔が可愛かったですよ。さあ、そろそろ起きて。先生と朝のエッチをしましょう?高耶さんの×××××は今朝も元気ですね……』
『そんなに可愛い顔をされたら我慢できませんよ?いいんですか?もっと欲しいの?先生の太いのが』

……こうゆう内容のエロトークが直江の声で『99』までぎっしり入ってた……。
それを美弥に聞かれたわけで……!!!

「うがー!!」

穴があったら入りたいなんてもんじゃなく、このまま消えてしまいたいぐらいだ。
直江の野郎、オレに恥をかかせやがって!!

声だけかと思って他のところも説明書を読みながら見たら写真が入ってるものを発見!!
エロ画像でないことを願う……。

1枚目は直江がシャツを肌蹴て香水をつけてるシーン。2枚目は昼間の寝室に寝そべっているシーン。
直江が近所のニャンコとスリスリして笑ってる写真。オレとムチュ〜なチューをしてる写真。
それほどエロい写真じゃないのが救いなんだけど、写真を見るとBGMのようなものが流れる。さらに直江のナレーションも入ってる。

例えば香水の写真にはBGMはムード音楽、それと『この香水よりも高耶さんの匂いの方がセクシーですよ。もっと嗅がせて?』とか。

全部の写真にそんなBGMと直江のエロボイスが。
写真は5枚ぐらいしかないからいいけど、直江のエロボイスは99種類もある。

そーいや誕生日のときに旦那さんのイメージビデオを作ろうとしてたっけか。
オレにさんざん拒否されたからってエロボイスなら許されるとでも思ったのか。

「帰ってきたらコロス……!!」

クリスマス?そんなもん、もうどうでもいい!!
今日は絶対許さない!!

 

 

「ただいま、高耶さん!」

帰ってきた!!

ドドドって音をさせてオレが玄関に走ったもんだから、直江は奥さんが甘えてくると思って両腕を広げた。
んなわけあるか!!

「バカ!!」

必殺チョップで直江の脳天を一撃。
思いがけない攻撃に旦那さんは……いや、ウチのバカは玄関にうずくまった。

「なんなんですか?!」
「手を胸にあてて考えろ〜!!」
「???」

わからないようだ。直江はたまに人としてどうなんだって思うような行動を取るが今日はまさにそれだ。
いったい何を怒ってるのかって重ねて聞くからバカにでもわかるように教えてやった。

「あんなプレゼント渡しやがって!!」
「あ、もう聞いたんですね。どうでしたか?」
「今のオレを見てそれを言うのか!!」

やっと自分が仕出かしたことが奥さんを怒らせるものだったのに気がついたようだけど。

「すみませんでした……でもそんなに怒るほどのものでは……」
「美弥に聞かれたんだ〜!!」
「えっ?!」

今度こそ本当にマズイと思ったのか額に汗を浮かべた。

「わかったか!!」
「ごめんなさい!高耶さん!!」

玄関で土下座したから一応は許したけど、アレを美弥に聞かれたのかと思うと……。

「また仰木家では大爆笑なんでしょうね……」
「あたりまえだろッ!なんで親や妹に笑われなきゃなんねえんだ!」
「ごめんなさい……」

玄関で正座してる直江の脇には転がったケーキの箱があった。
おいしいって評判のケーキ屋さんで1ヶ月も前から予約してたのに。
可哀想なケーキと可哀想なオレ。
直江にあげるプレゼントもちゃんと用意してあったのに。

「とりあえず着替えてこい」
「はい……」

しょんぼりして寝室に行ってしまった。うーん、言い過ぎたかな。
バカなことをしたのは直江だけど、美弥に聞かれたのは事故なんだよな。
せっかくのクリスマスなのに直江も可哀想だよな。

ケーキの箱を開けてみたら少し崩れてるけどギリギリセーフな状態だった。
しょうがない、クリスマスをやり直そう。

直江が戻ってくる前にケーキを箱から出して、シャンパンを冷蔵庫から出した。
プチディナーは作らなかったけど雰囲気はこれでいいような気がする。あとでプレゼントも渡そう。
エロボイスは……どこか別なものに保存しておいてもらっとけば直江も落ち込まないで済むかな。

「……高耶さん」
「一応形だけクリスマスしよう。ケーキとシャンパンな。夕飯は……またガストで」
「……はい」

怒りすぎてごめんなって言ってチューしてやったら無言でギューされた。
いつもみたいに愛してるとか言わないのはたぶん泣いちゃいそうだからだろーな。

「直江大好き」

エロボイスじゃなくて普段の愛情表現を録音してくれればよかったのになー。
しょうがない、直江はやっぱりバカだからな。

 

 

ガストから戻ってから直江にプレゼントを渡した。
今年のプレゼントは『武将毛布』だ。家紋と名前が入ってるやつ。

「ありがとうございます、高耶さん!!やっぱり高耶さんが奥さんで幸せです!!」

またギューギューされてチューもした。旦那さんはオレに夢中なんだな。

「あ、そうだ。お義母さんから直江にプレゼントだって」
「母から?なんでしょうね?」
「さあ?一緒に開けろってさ」

小さめの箱を直江が開けたらメカ的なものが出てきた。何かを測るような感じの。

「塩分濃度チェック計……?」
「…………」

あのババア〜!!
クリスマスの日にも嫌がらせしないと気が済まないのかよ!!

「なんで毎年こうなんだ〜!」

オレたち夫婦にステキなクリスマスが来るのはいつなんだろう……!!
うわーん!



END

 

 
   

あとがき

短いですが・・・
全然思いつかなくて・・・
エロボイスネタを頂いていたので
クリスマスでやってみました。

   
   
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