奥様は高耶さん |
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正月もバレンタインもホワイトデーも素っ飛ばして春になった。 そんなオレに春ならではの連絡が来た! 『俺と森野さんで高校んときの友達だけでお花見しようって話になったんだけど高耶も来ない?』 オレの親友、ザ☆成田譲から電話でお花見に誘われた。行くに決まってんじゃん! 「他に誰が来るんだ?」 仲が良かった男子6人と女子4人だそうだ。詳しく聞いてみたら森野が譲にメールして企画したそうだ。 『さくら公園の桜並木だからね。着いたら俺に電話して。森野さんと場所取りしておくから』 そんなわけで今度の日曜日は朝からお花見になった。 「日曜日、どこか行くんですか?」 直江はオレの外出にすぐ着いてきたがる。それが学校がらみだと元担任なんだからいいじゃないか、ってしつこく食い下がる。 「去年譲にハッキリ言われただろ。橘先生と出かけるのは嫌だって」 そう言われるのは嬉しいけど、だからって同級生とのお花見に直江を連れて行けるわけがない。 「とにかくダメ。もう人数も決まってるし」 素直に諦めたかと思ったら、顔が悪人みたいになってた。 「乱入するつもりじゃないだろうな……?そんなことしたら家庭内別居だからな」 オレの旦那さんは奥さん大好きでいい旦那さんなんだけど、変なところが子供で困る。
お花見当日、持ち寄りのお弁当を作ってバスに乗って桜の名所、さくら公園まで。 「あれ?高耶くんじゃないか!」 森野の背後に照弘お義兄さんが。 「……な、なんで?」 みんながオレに「誰?」と聞いてくる。誰ってオレの旦那さんのお兄さんだけど……。 「親の知り合いなんだ。ね、おに……照弘さん!」 なんで3回も言うのかわからないけど合わせてくれてるらしいから大丈夫。たぶん。 「照弘さん、ええと、あの、お、おばさんは?」 とりあえず同級生には何も聞かれなくて、お兄さんも気遣ってくれて挨拶しただけで済んだんだけど、みんなで楽しく食ったり飲んだり喋ったりしてるとたまに会話が止まったりする。 「あの人の声さ、橘先生にそっくりじゃないか?」 そうか!!そうだった!! 「もしかして橘先生の家族?」 まだバレそうにないし、お兄さんもこっちに割り込んで来ないから大丈夫なんだけど……なんか怖い。 「知らん振りしてなよ」 みんながちょっと酔ってきたら会話が止まることも少なくなってやっと安心した。 「にーに!」 オレに抱きついてきたからどうしたのか顔を上げると実家の母さんと父さんがいた。背後のお兄さんに挨拶してるとこだった。 「もしかして仰木くんの弟さん?!」 みんなが興味津々で俊介を見てる。特に女子が。 「う、うん」 女の子大好きな俊介は可愛い可愛いって言われてデレデレしてる。 「ほら、俊介。母さんとこに戻れよ」 まだお兄さんと立ち話してる母さんに俊介を押し付けた。お兄さんが直江と兄弟なのがバレない限りはオレの家族がいても大丈夫なんだけど、うっかりってこともあるだろ? 「兄ちゃんはお友達と一緒だから俊介はまた今度な?」 両親と俊介が去って安心したけど、こういう時は偶然が重なるもので……。 ドキドキしてたら新発田がほっぺをほんのりピンクにしてオレの隣りに来た。 「仰木くんはお酒飲まないの?」 缶のチューハイを渡されて少しだけ飲んだ。まあこのぐらいなら酔わないからいいかな。 「じゃあちょっとだけ」 直江に『お兄さんと席が隣りだから絶対来るな』ってメールをしてから飲んだ。返事は『わかりました』だったから、ピンチと紙一重なのを理解してくれたらしかった。
「た……高耶、もうやめなよ」 2缶目のチューハイで気持ちよくなって、それからなんとなーく歯止めが利かなくなってきて、今は日本酒が目の前にある。 「だから脱ぐなっての!」 せっかく楽しくなってきたっていうのに!!譲め!! 「ごめん、仰木くん、本当にお酒ダメだったんだね。ごめん!」 何がどうしようなんだ?オレは酔ってないぞ!!チクショウめ!! 「仰木くん、大丈夫ですか?」 目の前にいたのは愛しい旦那さんだった。 「……なんで先生がいんの?」 えーと、今日は友達とお花見で、隣りの場所にはお兄さんがいて、直江はいないはずで……。 「さあさあ、帰りましょう」 なんだかわからないうちに公園の外に停まってた直江の車に乗せられて家に到着した。 「人前ではお酒はほどほどにって言ったでしょう」 寝室に連れて行かれて寝かされた。なんで寝なくちゃいけないんだ。 「眠くない!」 直江に抱きついてチューしたら、なんかホンワカしてきてシャツが邪魔で脱いだ。ジーンズも邪魔だ。 「なんで外で裸になっちゃいけないんだよ?」 股間がホンワカしちゃったオレとベッドでムニャムニャなことになった。
目が覚めると家の寝室だった。 「なんで裸なんだ……?それにこのお尻の異物感は……」 エッチした後としか思えないこの感覚。いつ帰ってきていつ直江とエッチになったんだか憶えてない。 「お邪魔してるよ」 確かお義兄さんは公園のお花見でオレたちの隣りにいて……。 「お花見は?もう終わったんですか?」 あんなに酔ってた、ってどのぐらい酔ってたんだかわからないけど、直江とエッチできるぐらいなんだから大丈夫だったに違いない。 「でももう人前で飲まない方がいいよ」 隣りに座ってる直江の視線が痛い。ヤバイよ、マジで。後で超怒られるよ。 「今度からは義明がいる時だけ飲むようにね」 見られてたのか……なんでオレはお酒飲むと脱いじゃうんだろう? お義兄さんはオレにウコンのサプリをくれてから帰って行った。 「高耶さん?」 いつもだったらオレが直江に正座させて叱るんだけど、今日は逆だ。二人で床に正座してお説教だ。 「外でのお酒はほどほどに、って前から言ってますよね?自分に脱ぎ癖があるのも知ってますよね?それなのになんで記憶がなくなるまで飲むんですか」 だってオレは直江一筋なんだから。旦那さんしかラブじゃないし、エッチだってしたくないし。 「私が酔って山本先生と肩組んでたらどう思いますか?」 やっとお説教が終わってチューしてくれた。 「直江〜」 甘えて抱きついたらギューしてくれて、オレたちがラブなのを確かめあった。 「あのさ、オレ、みんなの前で脱いだってどのぐらい脱いだのかな?」 もう一回チューして言ってやった。 「夕飯の後で一緒に飲む?」 今日は酔って記憶がないままエッチになったみたいだからなんかもったいなくて、もう一回したい。 「直江、大好き」 今日は色々あったけど最終的にはいい日だな♪
それからエッチが終わった後で、お花見したメンバーの友達からオレと新発田が肩組んで仲良く写ってる写メが送られてきて、直江がそれを見ちゃったもんだから大変だった。
END
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あとがき |
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