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奥様は高耶さん |
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すっかり忘れてたけど、ザ☆母の日だ。 「う~、誰だ、こんな朝早くから~」 ベッドサイドにあるオレのケータイをまだ半分睡眠状態の直江が取ってくれた。 「母さんか……。くそ、オレの睡眠を妨げやがって……」 通話ボタンを押して耳にあてるとテンションの高い母さんの声がした。 「……なんだよ」 あ、そうか。忘れてた。 『あとでプレゼント持って来なさい!』 ブチッ。ツーツーツー。 「誰ですか?」 母さんは誕生日やクリスマスはもちろんのこと、○○の日、みたいな記念日にプレゼントをあげないと嫌味を言ったり嫌がらせをしたりする。 「どうします?」 目が覚めたついでに起きて朝ごはんを食べることにした。 「たまには私がしましょうか?」 確かに。 「じゃあ頼む」 抱きついてチューしてから手を繋いで1階へ。 オレの視線に気が付いた直江が振り返ってちょっと顔を赤くしながら言った。 「そんなに見ないでください」 またに直江の方をチラチラ見ながらテレビ番組を見た。テレビより旦那さんを見てる方が絶対楽しいのに。 そうこうしてるうちに朝ごはんが完成した。 「料理上手くなったな」 食べる前にもチューしてからいただきますだ。 「いただきまーす」 直江はハムエッグに塩と胡椒を少しかける。オレはしょうゆをひとさし。 「前から思ってたんですけど、ハムエッグにしょうゆってしょっぱくないんですか?」 そう言った時の直江の顔が嫌悪感を表したような感じだった。奥さんにそんな顔するってどうなんだ? 「なんだよ。言いたいことがあるならハッキリ言え」 オレの勘違いだったらしい。奥さんが好きなハムエッグしょうゆ味を旦那さんがイヤがるわけがないよな。 「直江のハムエッグ超おいしい♪」 ニコニコしながら朝ごはんを食べた。
満腹になって少し食休みしてから車でジャスコへ。 「どう?これでいいと思う?」 あの姑に贈り物か……オレの点数を上げるためにもこれはいい作戦だ。 「高耶さんのお母さんと色違いのものにしましょうか」 母さんと橘のお母さんはよく会ってるみたいだから、母の日のプレゼントで差がついたらオレにまた意地悪をするかもしれないからな!いや、かもしれないじゃなく、絶対するに決まってる! 「じゃあ母さんに渡したらそのまま直江の実家に行こう」 一緒にレジに並ぼうとしたら直江がトイレに行きたいから駐車場で待ち合わせしようって言ってきた。 インターフォンで開けてもらって玄関に入ると俊介が飛び出してきた。 「にーにもいく?」 それでおめかししてるのか。 「兄ちゃんは行かないよ」 母さんの待つリビングに行って直江と一緒にプレゼントを渡した。 「これから動物園なんだろ?それ持って行けば帰りに寒くなっても平気だと思うけど」 出かける準備が整ったから一緒に玄関を出て、動物園まで送って行くことにした。30分もあれば到着するんだからこのぐらいの孝行はしてやってもいい。 「母の日に家族で行くとお母さんのぶんの入場料がタダなんですってよ」 一瞬空気が凍り付いてから父さんと母さんで大爆笑した。 「俊介、象さんのお鼻はどれぐらいあるんだっけ?」 さらに大爆笑だ。オレと直江は耳まで真っ赤になってるっつーのに! 「その話はやめろ!やめないとここで降ろすぞ!!」 全然すまんなんて思ってないくせに!!ムキー!! 「じゃあ象さん見てくるからな!見送りありがとうな!」 二人きりになった車内で直江は情けない顔をして泣きそうになってた。 「気にしちゃいけませんよね……」 気を取り直せないまま今度は橘家に。 「おかえりなさい、義明!」 またこれだ!!このババアは毎回これ言わなきゃ気が済まないのか!! 「当たり前です。私と高耶さんは夫婦なんですから」 お義母さんの嫌味を普通に返した旦那さん。たぶんこれが嫌味だってのがわかってないから普通に返事するんだろうが、オレにとっては大問題だってことを少しは頭に浮かべて欲しい。 「入ってちょうだい」 オレもお邪魔しますって言ってから入ったんだけど、直江に聞かれないように「本当に邪魔ね!」って耳元で囁かれた。 法事が終わって休憩してるお義父さんのいる居間に入って挨拶をしてからプレゼントを渡した。 「私と高耶さんからです。母の日の贈り物ですよ」 オレにもありがとうって言えよ!! 開けて出てきた薄紫のストールを嬉しそうに肩にかけて「似合うかしら?」と言った。 「似合いますよ。ね、高耶さん」 だからオレにも言えっつーの!! 上辺だけ和やかに話してたら直江が、 「俊介さんのもう一人のお母さんということで、今日は高耶さんにも母の日を味わってもらってるんですよ」 と、言った。 「朝は私がハムエッグ作ったんです。けっこう上手く焼けました」 お義父さんはこう言ってくれるけど、その横にいるババ……お義母さんは苦虫を噛み潰したような顔をしてる。 「毎日外で働いている旦那様に作らせるなんて嫁として失格ですよ、高耶くん。いくら旦那様がそれでいいと言ってもやらせるものではありません」 じゃあどうゆうことだ!! 「高耶さんにもたまには家事を休んでもらいたいんですよ」 それからお義父さんがハムエッグ論を話し出した。 「オレもしょうゆかけます」 お義父さんとは気が合うな~って嬉しくなったら…… 「わたくしはおしょうゆのハムエッグなんて嫌いだわ。せっかくの卵の味が消えてしまうじゃないの」 ……おいおいおいおい。 「幼稚園のころだったわよね。お父さんが義明のハムエッグにおしょうゆかけたら嫌いって言って泣いたぐらいですものねえ」 泣くほど嫌いだったのか……じゃあオレがしょうゆで食ってたのを気持ち悪いと思ってたんだな……? 「お、お母さん!!」 それを言うなら自分はどうなんだ!お義父さんはしょうゆで食うって言ってるのに! 「うう……」 やっと直江も気が付いて、お義父さんに送り出されて車に乗った。お義父さんはオレに何度も謝ってたけどババアはまったく反省の色なしだ。 「うあ~!」 半泣きのオレを宥めながら運転して家に。 「直江だってしょうゆハムエッグのオレをダメって思ってたくせに~!」 しばらくそんな感じで泣いたり怒ったりしてた。その間も直江はチューしたり愛してますからって言ってくれたりして、どうにかオレも泣きやんだ。 「本当にしょうゆでもいい?」 リビングでギューして落ち着いたら直江がポケットから何か出した。 「うちの可愛い奥さんへ母の日のプレゼントです」 小さい包み。ストールを包んだのと同じのジャスコの包装紙だ。 「なに?」 開けてみるとオレが欲しがってた銀製ストラップ。ジャスコの映画館で売ってる限定グッズだ。 「なんで2個?」 嬉しくてまた抱きついてチューした。 「直江、超大好き!!」 一緒に携帯電話につけてラブラブな時間を過ごした。 でも夕飯にもハムエッグが出てきた。朝も夜もハムエッグって……? 「しょうゆで食べます!」
END
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あとがき |
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