トラブルシューター |
||||
オレの名前は仰木高耶。 孤児院で育ったオレは中学3年の時にバカをやって鑑別所に入れられた。 学校の友達と深夜の港で遊んでいた時に、駄菓子屋でくすねてきた一束の爆竹に(10発ぐらいか)火をつけて鳴らした。 後から聞いた話によると、麻薬の取引をしてたヤクザと売る側の外国人が爆竹の音を襲撃だと勘違いして、お互いに「裏切ったな!」となって銃撃戦が始まったそうなんだ。 で、そこにパトカーがやってきて、オレは何もしてないのにその場にいたってだけで逮捕された。 そんなオレを呆れずに拾ってくれた(?)のが孤児院のオーナーでこの学園の理事長の上杉さんだ。 上杉さんは 「私の部下になりなさい。その代わり一人暮らしをさせて高校大学就職まで面倒みてやる。ついでに妹も学費を持ってやるぞ」 つってオレに学園のトラブルシューターを押し付けた。 と、ゆーわけでオレはトラブルシューターなのである。
仕事内容は学園内で起きたトラブルを隠密裏に解決して回ることだ。 当然のことながら正体がバレるとトラブルシューターはやっていけないから、普段はエセ優等生として周りからは見られてる。 で、今日から2学年の1学期。オレは理事長室に呼び出された。 「おまえの1年間の働きはまあまあといったところだな。しかし危なっかしくて見てられん。というわけで2年からはアシスタントをつけることにした」 上杉理事長には逆らえない。だって生活のすべてを賄ってるのは理事長なんだもん。 「アシスタントになる男も忙しい身でな。折をみておまえに接触すると言っている。まあ、うまくやりなさい」 アシスタントなんか邪魔なだけなんだけどな〜。
エセ優等生のオレにはトラブルシューターの他にも仕事がある。地味な仕事だ。 「おっちゃ〜ん、3階の廊下の蛍光灯が切れてたぜ〜」 こんな感じで用務員さんにお知らせに行ったりだな。 「ああ、そうかい。じゃあ取替えなきゃいかんなあ。悪いが仰木くん、手伝ってくれないかい?」 用務員のおっちゃんは見た目40歳ぐらい。白髪交じりの頭にタオルを巻いて、黒縁メガネ。 おっちゃんを手伝って新品の蛍光灯を持って3階へ。脚立を立てて蛍光灯を換えたおっちゃんの指示で、古い蛍光灯を箱の中にうんしょうんしょとしまってる時だった。 「仰木くん、これからヒマかい?」 振り向くと、そこにはおっちゃんと同じ格好をした色男が立っていた。 「え?え?え?」 だってだって!白髪もないし、背筋もまっすぐだし、おっちゃんとはまったく正反対の超色男で!! 「白髪は取り外しの簡単なエクステンションです。メガネも伊達です」 誰もいない廊下だからって騒ぐと見つかりますよ、つってオレの口を大きな手で塞いだ。 「よろしくお願いしますね、トラブルシューター高耶さん」 てことはこいつがアシスタント?! 「じゃあ行きましょうか」 そう言ってから数秒で色男は元のおっちゃんに戻った。んで背中を丸めて脚立を担いで歩いて行く。
「私の名前は直江です。上杉理事長のグループ会社の社員なんですが、今は出向という形で学園の用務員をしています。ここまではわかりましたか?」 その後、オレは用務員室でお茶を啜りながらおっちゃんと話していた。姿はおっちゃんだけど話し方は直江だ。 「高耶さんが入学してくるまでは私が学園のトラブルシューターをやっていたんですが、学生の方が動きやすいだろうということでお払い箱になりました。でも影ながら高耶さんを助けるという名目で用務員をしながら活動はしてたんですよ」 そう言って用務員室の奥の和室に連れて行かれた。ここは当直で泊まる部屋らしい。 「なにこれ……」 下への階段を降りて行くと、頑丈な金属のドアがあった。タッチキーになってて液晶パネルをピッピと触ってナンバーを入れるとドアが開いた。 「……なんじゃこりゃ……」 「ここで見ていると何年何組の○○くんと○○さんが放課後の教室でキスしてたとか、何年の○○くんが好きな女生徒のジャージの匂いを嗅いでたとか一目瞭然です」 ためしに、と言って直江はパソコンを使ってオレの教室を大画面に呼び出した。 「あなたがまだまだ未熟なのはこんなところですね」 そこに映りこんできた怪しい影。見たことある髪型だ。クラスでも人気者の男子生徒だった。 「なんだ、あの紙」 カメラがズームして(こんなことも出来るのか!)手元を映した。 「これ、毎日オレの机の中に入ってるやつ!!」 直江はちょっと笑ってこう言った。 「…………こういうの、いじめって言うんですけど、知ってます?」 そうか、これがいじめなのか〜!!気付かなかった!! 「じゃあまずはこの事件を二人で解決しましょうか」 直江は変装をといてオレに向き直った。 「こういう小さい事件は今まで私が行ってお説教してやめさせてたんですよ。用務員でも学校関係者に見つかれば怖くなってやめてしまうものなのでね」 優しい笑顔で頭を撫でられてなんかいい気持ちになった。 「これからは二人で頑張りましょう?高耶さんのアシスタント、一生懸命やりますから」 そっと腰を引き寄せられて、なんだ?と思った瞬間にチューされた。 「うわ!」 パニック状態で直江の腕の中から逃れようとしたんだけど無駄な抵抗だ。 「高耶さん」 耳に囁かれてオレの腰は砕けそう。直江の野郎の手が腰の敏感なところを撫でてるからってのもある。 「これからよろしくお願いしますね」 股間をスリスリされて気持ちよくなっちゃったオレは二回目のチューも許してしまった。 「大好きです」 優しい言葉とエッチな手に翻弄されたオレは思わずコクンと頷いた。
そんな感じで始まったオレと直江のトラブルシューターコンビ。 「ちゅ、チューしたからっておまえと付き合うつもりはないからな!」 余裕で笑ってるとこがムカつく!
END
|
||||
あとがき |
||||
ブラウザでお戻りください |
||||