トラブルシューター |
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久々に理事長に呼び出されて譲と一緒に行った。 「今日はどんな話?」 実はこの学園、譲みたいないいトコのボンボンもいればヤンキーもいる。 「そいつらが隣町の学校と一触即発状態にあってな、毎日のように追いかけっこしてるらしいと情報が入った」 駅前だの商店街だので顔を合わせればケンカになるってゆーアレだ。 「それで近々集団でのケンカがあるとタレコミが入ったんだ。警察に色々言われるのは面倒だし腹が立つから今のうちにそれを阻止したい。というわけでおまえら決闘の日を調べろ」 やりたい奴らには勝手にやらせときゃいいのに〜。 「高耶、おまえそんなこと言っていいのか?ああこれで大学進学の夢がハイ消えた〜」 譲は断ろうがどうしようが進学もできりゃ就職もできる。つーかこーゆー事件に関わらない方がいいぐらいだけど、オレはそうもいかない。 「やるよ!やりますよ!」 なんて薄情なヤツだ……危険な仕事はパスしやがるんだから始末におえねえ。 「直江は?」 言っておくが、この「心配」ってのはオレの身が心配なわけじゃない。 んなわけでオレはヤンキーたちの動向を探るべく動き出したのだった。
動向を探るにはヤンキーの仲間に入るのが一番いいんだけど、そんなのゴメンだ。 「仰木〜。オメちょっとパン買ってこいや〜」 田中はいつも誰かをパシリにしてパンやらジュースやらを買いに行かせたり、たまにタバコも買ってこさせて自分はラクばっかしてるっつー典型的なヤンキーだ。 「早く行かねーとハムカツパンが売り切れちまうだろ〜。おら、行ってこいや」 オレにんな金あるわけねーだろ!!と怒鳴りたかったけど、仕事になるなら後で理事長に請求できるし、まあいいやと思ってダッシュでパンを買いに行った。 「ふざけんな、バカ」 やっぱダメか。うーん、じゃあやっぱり尾行&盗聴が一番かな〜? 下校の時に田中の後をコッソリ尾行してたら繁華街に着いた。そこで学校のヤンキー仲間と合流して道端で何やら会議をしてる。 中学生をカツアゲなんて最低だ!! 「キミたち、やめたまえ!」 おお〜、オレ、優等生みた〜い。 「ああ?なんだテメエ」 今時番長なんかいるとは思わなかったんだけど、田中のヤンキーグループにはいるらしく、中でも一番偉そうなのがオレに向かって近寄ってきて、胸倉を掴まれた。 「真面目バカは黙ってろよ。いっちょまえに正義感振りかざしやがってアホか」 いったいいつの高校生だよ、オレ。1970年代かっての。 「こいつボコっていい?田中」 殴りかかってきたからやり返した。 「イテテテ……」 ケンカに勝つってなんて爽快なんだろう!! 「……仰木って……おまえ、もしかして仰木高耶か……?」 ぶっ倒れてた中の一人、同じ学年のヒョロいヤツがオレの顔をまじまじと見てから言った。 「あ?そーだけど?」 どうやらそいつのお兄さんがあの鑑別所にいたらしい。んでオレに制されたらしいのだ。 「な……なんでうちの学園で真面目なふりしてんだよ……」 制服についた汚れをパンパンはたいてたら番長らしきやつがオレに土下座をした。 「総長!!」 へ?総長? 「負けたからには総長の座を譲る!こんなに強いなら誰も敵わねえ!今日からアンタが俺たちの総長だ!」 あれやこれやと戸惑ってるうちに、なんでかオレが学園の総長に祭り上げられてしまった。
その日、オレはそのまま喫茶店へ連れて行かれてヤンキーどもからいつ決闘があるかを聞き出せた。 これから女のとこに繰り出してトルエンでもやりましょうと言われたんだけど、生憎オレはこんな連中に興味はないし、女はちょっと気になるけどトルエンなんか絶対にやりたくないから、喫茶店でオムライスだけゴチになって逃げた。 その夜、ウチに来るって約束してた直江が来た。 「こんばんは」 直江が来るのはちょっと久しぶりで、3日と2時間ぶりだ。 「どうしたんです、急に甘えて」 今日起きた出来事を全部話して、上杉学園ヤンキー連中の総長になったと言った。 「そ、総長?あなたが?」 手作りのテーブルとテレビデオしかない部屋でチューした。やっぱ直江はかっこいいし頭もいいな〜。 「総長……ですか……。ねえ、高耶さん?」 直江の手が不穏に動いてオレの服の中に忍び込んできた。 「あ、や……」 言われるままに体を預けて服を脱がされた。股間に直江の手が。 「あ、ああん」 寝室に連れ込まれて、せんべい布団を敷いてエッチ。
で、決闘の日を理事長にチクったおかげで対決場所の空き地を上杉グループの不動産部門が買い取って、有刺鉄線張って入れないようにしちまった。 決闘場所に入れなかったヤンキーたちは場所と日にちを変えようってことになった。 和解の影にオレの働きがあったことは言うまでもない。 そして現在。 「仰木くん」 たまに校内で直江に会うと嬉しくなって話し込むんだけど、最近は何やら視線を感じる。 「見られてるようですね」 チラっと見てみたら、前の総長だった3年生の男の姿が。今でも表面上は総長、でも内情ではオレの右腕ってことになったらしい。 「……あれは……」 気をつけてくださいね、って言いながら肩をポンと叩いた直江。そしたら兵頭が飛び出してきた。 「おう、この用務員!俺の総長に気安く触るな!」 そのままオレは連れ去られ、体育館裏で元総長から「用務員は怪しい男だから気を許すな」と進言された。 「俺が総長を守りますから!」 ……この先、どうなっちゃうんだろう?
直江が理事長から伝言を言付かってきた。 「理事長の意見としてはそのまま総長に納まっておけとのことです。ついでにストリート系の不良も締めて、学園の裏番長になってくれると有難いとの仰せなんですが」 んで今日、体育館裏で兵頭に言われたことを直江に話した。怪しい用務員の話と「俺の大事な総長」の話を。 「やっぱり」 直江が言うにはラブだそうで。尊敬ではなくラブだそうで。 「……なんでオレってホモにモテるんだろ……」 年上たってたった1歳じゃんか。そんなのオレの範囲外だ。確かにハンサムではあるけどさ。 「あなたの貞操は私が守ってみせます!」 ギュギュギュと抱きしめられてチューされて、腰を押し付けられて貞操の危機を感じた。 「ああん、なおえぇ」 仰木高耶、弱冠16歳。もうすぐ17歳。 ああ、これからどうなるんだろ?!
END
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あとがき |
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