シューターやってるせいで地味〜に過ごさないといけないオレにも声をかけてくれる奴らはいる。
直江とか理事長とかじゃなくて、学校の生徒。ちなみに譲でもない。
それはなんと、学内ストリート系不良の両巨頭、宮本くんと佐々木くんだ。
この二人は1年生の時は反目しあってたんだけど、2年になってすぐに喫茶『巌流島』の裏道で決闘的なことをしたらしく、引き分けしてお互いに健闘を讃えあって以来、親友になったそうだ。
不良ってのはそんなもんなのか?単純だなあ。
で、宮本くんとは同じクラスで、地味なオレになぜか構ってくるわけだ。
譲は怪しい行動だっていうけど、オレはそんな感じまったくしない。
たぶん宮本くんとオレの学力が同じぐらいだから追試で一緒になったり、補習で一緒になったりしてるせいで少し話したりするからだと思う。
同朋意識?とか言うやつか?
別に取り立てて面白い話をしたんでもないのに、なんでか友達みたいになってるんだよな〜。
「仰木チャーン、ベビースター食う〜?」
今日も今日とて話しかけられてるし。
「ベビースター?」
「さっき休み時間に抜け出して買ってきたんだ。佐々木のぶんと3個買ったから1個やるよ」
「わ〜、ありがとう」
ベビースターだ!今日のオヤツはこれでまかなえるぞ!
「この前のテストどうよ?」
「あんまり……」
「俺もあんまり〜。また一緒に追試かもな」
「ははは」
学内で1、2を争うストリート系不良の宮本くんと仲がいいのをクラス中が怪しむ。なんであんな真面目っ子の仰木と宮本が?って。
オレにだってわかんねえっての。
「おい、仰木。ちょっと来い」
そこにクラスのヤンキー、田中くんが現れた。
田中はヤンキー系不良グループのメンバーで、不本意だけどオレの子分だ。学内のヤンキーたちは影でオレを総長として崇めてるからな。
「んだよ、田中。仰木チャンに何させる気だよ?」
「宮本には関係ないだろが。いいから来いや」
「み、宮本くん、大丈夫だから。ちょっと行ってくるね」
「田中に何かされたら俺に言えよ、仰木チャン」
適当に笑って誤魔化して田中と一緒に教室を出て廊下を歩き、校舎の端っこの方に連れて行かれた。
そしたらさっきまで横柄だった田中はいきなり口調を変えてペコリと頭を下げた。
「すんません、総長。兵頭さんから総長を守れって言われてるんで」
そこにいたのは兵頭だった。なんで兵頭が2年生の階にいるんだよ……。
それでなんで田中に「もういいぞ」とか言って二人きりになるんだよ……。
「呼び出してしまってすみません、総長。田中からの報告で宮本が総長をストリート系に引き込もうとしてるんじゃないかって聞きました。大丈夫なんですか?俺たちの総長をやめたりしないですよね?」
…………今すぐにでもやめたいんだけど。
「総長を取られたら俺たち壊滅ですから。お願いしますよ」
「……別に壊滅なんかしねーだろ。抗争が勃発するわけじゃないし。このへんの学校のやつらとは和睦したんだし、オレが抜けたってたいした打撃はなさそうだけどな」
「そうはいかないっすよ!総長がいるから和睦できてるんすよ!」
そうか〜?オレには争いごとが面倒になって和睦したようにしか見えなかったけどな〜?
これがヤンキー脳ってやつなのかな〜?
「どうでもいいから、そろそろ引退させてくんねえかな」
「ダメです!俺の総長がもしストリート系のやつらに取られたりしたら俺は!!」
「誰がおまえの総長だ!!百歩譲って総長だと認めたとしてもだ!!『俺の』とか言うんじゃねえよ!!オレにはれっきとした……!!」
彼氏が!と言おうとしてハッと気付いて言葉を飲み込んだ。
「れっきとした……なんですか?もしかして総長には彼女がいるとか……?」
「いいい、いて悪いか」
「硬派のヤンキー軍団の総長に女がいるなんて多大な裏切り行為っす!!」
「ふざけんな!何が硬派だ!おまえら女とトルエンやってただろうが!それにオレに何がいようがオレの勝手だ!おまえに意見される筋合いはねえよ!そもそもおまえらが勝手に総長に祭り上げておいてだな!それで何が裏切り行為なんだ!裏切り上等だ!たった今、総長やめる!もうやってられん!!」
キレたオレにビビッて兵頭が後ずさりした隙に走って教室に戻った。
憤懣やるかたねえ!なんでオレが責めらんなきゃいけねえんだよ!!
「おう、仰木チャン、大丈夫だったか?」
「大丈夫!」
「お、おい、なんでそんなに怒ってるんだよ」
「……別になんでもない。大丈夫だからほっといて」
宮本は不可解な顔をして自分の席に戻った。
せっかく心配してくれたのに悪いことしたな。ベビースターの恩もあるってのに。
あとで謝っておこうっと。
帰りに宮本に謝ろうとして追いかけたら、廊下で佐々木と話してた。
どうしようか迷ったけど、少し謝るだけだしと思って宮本を呼んで謝った。
「さっきはごめん。ちょっとその……文句つけられて」
「いや、いいって。なあ、もしヤンキー軍団にいじめられてるなら俺たちがシメてやるけど。な、佐々木」
「おう、仰木チャンが大人しいからっていい気になってるんなら一回シメとかねえとな」
野生的な宮本と対照的に、佐々木はストリート系の王子様と噂されるほどの美形&オシャレ。
二人揃って話してると女子の視線を一気に集める目立つ存在だ。
そんな宮本&佐々木コンビがオレをこんなに心配してる。なんか申し訳ないようなお門違いなような。
「いや、ホントに大丈夫だから。いじめられてるわけじゃないよ」
「けどさあ、あいつら最近いい気になってねえ?」
「おお、なってるなってる。誰だか知らねえけど総長が入れ替わったとかいう噂が立ってからやけにブイブイ言わせてるよな。ムカつくぜ」
その総長ってのオレなんだけど……。けどさっき引退してきたからもう関係ねえや。
宮本と佐々木にシメられてしまえ!!
「じゃ、オレはもう帰るから。また明日」
「バイバイ、仰木チャン」
「またな〜」
帰ったら直江に総長を引退したって報告しなきゃ。
「こんばんは」
「直江、待ってたぞ」
マンションに帰ってからすぐに直江にメールして、報告があるからウチに来いって命令した。
そしたら夜7時に寿司を買ってやってきた。
おお、久しぶりの寿司だ!やった〜!
「超高級品なのにいいのか?寿司なんか」
「ええ、そんなに高いものではありませんから」
だって寿司って高級なんだろ?この寿司が入ったビニール袋に書いてある『ちよだ寿司』だって高級な店じゃんか。一番安いのだって一人前690円もするし。超高いじゃん。
けどまあいいか。直江を家に入れる代金だと考えておこう。
「んじゃ遠慮なく。いただきまーす」
寿司を食べながら報告。兵頭の勝手な言い草に腹を立てて総長をやめたこと、宮本佐々木コンビがヤンキーたちをシメるかもしれないこと。
「じゃあこれから先、ヤンキー軍団はケンカ三昧になってしまうじゃありませんか。やめたら理事長にこっぴどく叱られるんじゃないですか?」
「そんなのオレの自由だと思うんだけど」
「本来はそうですが、あの理事長ですよ?高耶さんに何をするかわかったもんじゃありません。もしかしたら総長だけじゃなく学園まで引退しないといけないことになるかも……」
「ええ?!まさかそんなそこまで!!」
「そう言い切れますか?」
「……ヤバいかも……」
忘れてた。オレは理事長命令だから我慢して総長を続けてたんだってことを。
もし勝手にやめたら……ヤンキーの統率が取れなくなって奴らは暴走、ケンカ三昧、警察にご厄介。
そんなことになったら警察大嫌いの理事長はオレを逆恨みし……!!
「ヤバいじゃん!!」
「私としても兵頭に高耶さんを近づけるのは大変不愉快ですが、それでも高耶さんの退学の憂いを考えると総長でいた方が得策だとは思います」
「ど、どうしよう……」
「しれっとした顔で明日召集をかけてみては?」
「……でも引退したってみんなに知れてたら誰も来ないかもよ」
「とにかくやってみましょう」
そんなこんなで明日はヤンキーどもを総召集だ。大丈夫かな?
「総長!」
「総長〜!!」
「そぉうちょおぉぉぉ〜〜!!」
翌朝一番で田中に「総召集だから帰りに体育館裏に集めろ」と言ったら全員漏れなく集まった。ヒマな奴らだ。
しかもみんな涙目になってオレを見てるし。
「引退なさるって聞いて俺達、この先どうしようってマジで悩んだんすからね!」
「兵頭さんなんかメシもろくに喉を通らねえっつーし!」
「やっぱ俺達の総長は仰木さんしかいないっす〜〜!!」
「引退撤回っすよね?!」
なんだ、この学園マンガみたいな展開わ。
「あ、ああ、引退すんのやめた……色々都合悪いし……じゃなくて、おまえらのこと心配だし」
「良かった〜!総長、ありがとうございます!」
「「「「「ありがとうございます!!」」」」」」
コーラス部かと思うほど全員でハモりやがった。まったくだらしねえヤンキーがいたもんだ。
「まず俺から報告、いいっすか?」
副総長としてみんなへの報告が兵頭からあるらしい。なんだろ?今度は範囲を広げて地区の統一とか言うんじゃねえだろうな。ケンカなんかやんねーぞ。
「長宗我部、草間、俺の3人の留年が決定しました」
「はあぁぁぁ?!留年?!嘘だろ?!」
そーいや今日のホームルームでクラス全員進級できるって先生が喜んでたっけ。
オレがギリギリで進級できるのがついさっき決まったばかりだ。
「マジっす。もう1年間、この学園で番張っていきます」
「……聞いていいか?」
「はい。どうぞ」
「なんで留年したの?」
「長宗我部は出席日数が足りませんでした。草間は停学を3回くらったためです。俺は……その、ええと」
なんでそこで詰まるんだ、兵頭。もしかして……
「バカで留年か?」
「……違います」
じゃあ何だろう?そう思って草間の顔をみたら笑いをかみ殺してた。たぶんバカで留年なんだろうけど、後輩の手前そう言えないだけっぽい。
「俺は、総長を守れる人間がまだ育っていないと思ったから残ることにしたんです」
草間も長宗我部もさらに笑いをかみ殺してた。うまく取り繕ったつもりの立派な嘘だ。
つーかオレを守るって、よく考えて欲しいんだけどオレより強いやつがいないからオレが総長やってるわけだろ?
自分より弱いヤツに守られるのって本末転倒だと思うんだけど、違うか?
「俺からは以上です」
「あ、そう。他に報告は〜?もうそろそろオレ帰らないといけないから報告あるやつはソッコーで言え」
どうやら他にはないらしい。じゃあこれで集会は終わりっと。
今日は駅前の激安スーパーのタイムセールで米が出るらしいから早く帰らないと。
「んじゃ解散。またな」
そんで今日の結果を聞きに直江がまたウチに来た。今日のお土産は出来たてホカホカのハンバーガーセットだ。
ちょっと食うだけで600円もかかるファーストフードはオレにとっては高級品でもある。
みんなよくそんな毎日マックとか行ける金あるよな〜。どんぐらい金持ちなんだ。
「そういうわけで総長は続けることになった」
「青春ドラマみたいですね。少しヒネくれていますが」
「だろ?なんかあいつらってオレよりバカなんじゃないかって思うよ。あ、バカで思い出したけど、草間と長宗我部と兵頭が留年だってさ」
兵頭の名前が出てきたとたんに直江の機嫌が悪くなった。
「留年て……もしかして高耶さんを守るためとか言うんじゃ……」
「本人はそう言ってたけどな。たぶん嘘だ。バカで留年くさいぞ」
「どっちにしろあと1年間は高耶さんを守るつもりでいるってことでしょう?私という者がいるのに余計なことを。しかも高耶さんと同じ学年になるつもりとは。学校行事で高耶さんと色んなことして楽しむのかと思うと私のデリケートな心がどんどん萎んでしまいそうです」
おまえも兵頭なみの嘘つきだな。おまえの心がデリケートだったためしが今まであるか?
どんどん萎むどころか怒りの炎でどんどん対抗意識燃やしてるじゃねえか。
「この私を敵に回したことを後悔させてやる……」
「お、おい……」
「高耶さんも全力で気をつけてくださいよ!あなたはちょっと年上男に優しくされただけでポヤンとなるんですから!」
「兵頭にはならないよ。たぶん」
「たぶんて何ですか!!」
高速で腕が伸びてきて、ハンバーガーを食い終わったオレの体が床に倒された。
ああ、また……なんでこいつは……
「私だけだと誓ってください!」
「誓うってば」
「ポヤンもキスも合体も、私だけとしかしないでくださいよ!」
「しないよ」
「じゃあ証拠を見せて」
証拠ねえ……たぶん直江が言ってる証拠って、合体しましょうってことなんだろうけど。
ま、いいか。オレだって直江と合体するのは好きだからな。
「高耶さん!」
「あ!ダメ、そこっ……すぐ……出そう……!」
「まだ我慢して」
「もう我慢できない〜!」
今日もお花畑が広がった。
「大変です、総長!!」
翌日、合体しすぎてお尻が痛いところに兵頭に呼び出され、一枚の紙を手渡された。
「んだよ、もう……今日は具合悪いってのに……」
「いいからそれを読んでください!」
「あー?」
その紙はなぜか習字の半紙で、達筆な文字でこう書いてあった。
決闘状
おまえらヤンキー軍団ぶっ潰してやる!
これからは俺達が学園を仕切る!
2年宮本武蔵・佐々木小次郎
「ええ〜〜〜?!」
「とうとうストリート系との抗争が勃発です!総長!陣頭指揮をお願いします!」
「…………そんな……」
宮本くん!佐々木くん!なんでこんなこと提案しちゃうんだよ〜!!
平和な学園でいいじゃねえか!なんでわざわざ決闘なんかしなきゃいけないんだよ〜!
またオレが理事長に面倒なシューターを押し付けられるだけなんだからやめてくれよ〜!!
「総長!」
「とりあえずおまえはまだみんなに言うな!混乱するから!」
って、オレが一番混乱してんじゃんか!!
落ち着いて考えろ!まずは直江と理事長に報告しなきゃ!!
「いいな!黙ってろよ!オレが判断するまで動くんじゃねえぞ!!」
「オス!!」
走って用務員室に行く途中、オレを混乱させてる張本人どもに鉢合わせした。
こいつらまったく何を考えてるんだ!!
「よう、仰木チャン。仰木チャンが楽しいスクールライフを送れるように、ヤンキー軍団に決闘状出しておいたぜ」
「もう仰木チャンがいじめられることはねーから安心しな」
余計なことしといて何が安心しなだ〜!!ふざけんな〜〜!!
「ぼ、僕急いでるから行くね!」
「仰木チャン?!」
しかしなんと直江は今日は休み、理事長は会社に行ってるらしくて会えなかった。
オレだけで収拾つけられると思わないんだけど、どうしたらいいんだ?!
「あ!そうだ!」
忘れるところだった。決闘の日時を覚えてないから聞かなくちゃ!
戻るのも面倒だから携帯に電話すっか!
「もしもし?!兵頭か?!」
『はい、どうしたんすか、総長』
「決闘はいつだ?!」
『あ、そろそろ行かないと。校舎裏で待ってます!』
「もしもし?!もしもし?!もしもーし!!ああ、もう通話きりやがって〜!」
つーか校舎裏で待ってるって?!もしかして決闘は今日なのか?今からなのか?
だから宮本と佐々木とさっき鉢合わせしたってのか?
くっそー!もうどうとでもなれ!!
急いで校舎裏に行くともう決闘は始まってて、兵頭が孤軍奮闘してた。
このまま兵頭が負けたら宮本たちが学園を仕切ってくれるから放っておこうかと思ったけど、負けたら負けたでヤンキーどもはオレを担ぎ出すに違いない。
そんでヤンキー軍団VSストリート軍団の大抗争になって、オレが表舞台に立っちゃうことに?
立つのは直江のチ×コだけでいいんだっつーの!!
「しょうがねえ!行くか!」
気合を入れて飛び出していった。
「やめろー!」
「お、仰木チャン、危ないからどいてろ!」
「話し合えばいいじゃないか!」
ケンカなんかするつもりなくて、話し合いでどうにかしてもらおうと思ってた矢先。
「総長!頼みます!俺1人じゃどうしようもないんです!」
「はあ?なんだ、総長って?どこにいんだよ」
「総長!仰木総長〜〜!」
「ええ?!」
兵頭のバカ……。
どうしてオレが必死こいて話し合いに持っていこうとしてんのに、ここで正体をバラしちゃうんだよ……。
「仰木総長って……?仰木チャンがヤンキー軍団の総長……なわけないよな?」
「バカどもが!仰木さんが総長だ!おまえらなんぞ瞬殺だ!やっちゃってください、総長!」
もうダメだ〜。誤魔化しようがない〜。
「マジかよ、なあ?」
「……実はそうなんだよ……オレ、いつの間にか総長になってて……あのさ、もしアレだったら引いてくんないかな?」
「いや、いくら仰木チャンの頼みでも引けねえ。つーか仰木チャンを倒さないと俺らが学園ナンバーワンになれねえんだったら、むしろ決闘をお願いしたいね」
うう、宮本くんと佐々木くんの目の色が変わってきた……真性の不良ってどうしてこうも強さにこだわるのか?
ヤダな〜、せっかく出来た友達なのに決闘なんて〜。
「いくぞ、仰木チャン!」
「うわわ!」
突進してきた宮本くんをかわし、殴りかかってきた佐々木くんをいなし、よろけた佐々木くんにハイキックをして的確に顎に当ててノックダウン。
宮本くんとは少し殴りあいになったけど、隙を見てみぞおちにニーキックをして、それから得意のモンゴル相撲で上手投げ。
兵頭の予言どおり、60秒もかからずに二人をのしてしまった。
「すげー!さすが俺の総長!」
「おまえのじゃねえ!」
「留年する甲斐があります!」
「ねえ!」
苦しそうに呻きながら座りなおした宮本佐々木コンビは、オレを睨みつけてこう言った。
「俺らもおまえの傘下に入る」
「へ?!」
「ここまで強いなら文句はねえよ。仰木チャンなら学園を仕切れるだろうしさ」
ちょ、ちょ、ちょっと、何を言い出すんだよ!!
オレはストリート系を傘下にするつもりはねえし、これからも宮本くんたちとは普通に仲良く……。
「けど俺らはヤンキーどもの傘下に入るつもりはねえから、そこらへん線引きしてくれよ」
「え、あ、う、うん」
「何言ってんすか、総長!ストリート系は俺たちヤンキー軍団に恭順するんすよね?!」
「……しねえよ」
本当だったら今すぐにでも総長をやめたい。けどやめたら理事長がオレを進学させてくんなくなるし、そしたら直江ともなかなか会えなくなるかもしれないし、やめるわけにいかないんだよなあ。
「オレ、一応このまま総長やるけど、宮本くんたちは二人でストリート軍団を仕切ってけばいいと思うよ。こいつらの増長はオレが抑えるから、対抗したりしないでくんねえ?」
「え、うん、仰木チャ……いや、仰木さんがそう言うなら」
お、仰木さん?仰木チャンじゃねえの?
「でも俺たち二人のリーダーは仰木さんだから!これからは何でも命令してくれよ!」
わかってないし……宮本くんも佐々木くんも目ぇキラキラさせちゃって……バカはこれだから……。
「てめえらのリーダーだと?総長は俺の総長だっつってんだろうが!おまえらなんかに渡すか!」
「兵頭、黙れ」
「は、はい……」
「じゃあまあ、適当にこれからも仲良くしよう?な?兵頭も仲良くしろよ?」
「はい……」
「じゃ、解散」
スタコラ逃げ帰った。ああ、もう直江も理事長も役立たずなんだから!
なんでこんな日に限っていないんだ!!
で、直江がその日の夜にきたから報告。理事長にはメールしてある。
「とうとう高耶さんが学園の不良を全員仕切ることになったんですか」
「おおまかに言えばそうなる」
「複雑な気分ですね……シューターとしての私は喜ばしいと思います。でも個人的には……高耶さんが私だけのものではなくなっていくようで……」
「そう言うけど、おまえと理事長がいなかったせいでこんなことになったんだぞ。大いに反省しろ」
「はあ……」
やだな〜。これからまた面倒が増えるんだろうな〜。
不良たちを抑えつつ、シューターの仕事をこなし、夜は直江の合体攻撃か〜。
勉強もしなきゃいけないのに〜。
美弥のためならどんなことでも頑張るけどさあ。
「直江」
「はい、すみませんでした」
「ううん、もういい。えっと、膝、いい?」
「膝?」
色々考えてて落ち込みそうになったから甘えたい。こんなときみなしごハッチなオレは直江しかいないんだよな。
「膝、座っていい?」
「え、ええどうぞ。どうぞというかむしろぜひ」
「ん〜」
直江の膝に乗っかってギューギュー抱きついて甘えた。
チューもしてスリスリもした。
「私の高耶さんでいてください」
「うん。直江のオレでいる」
「じゃあそういうことで」
直江の手がお尻をモニュモニュしてきた。これはもしや合体のサインか?
「疲れてるしダメ〜」
「甘えた声でダメって言ったって無駄ですよ。ふふふ」
今夜もオレは直江に負けた。
なんで不良にはそのつもりなくても勝っちゃうのに、直江にだけは負けるんだろ?
これが惚れた弱味ってやつか〜?
「ダメ……直江……う、ああん」
「本当はイヤじゃないでしょう?」
「……あ、そこ……イヤじゃないから……もっと」
ま、いいか。直江だけには負けてやろうっと。
END |