トラブルシューター


エピソード16

不良少年の嘆き

 
         
 

受験勉強中のオレの楽しみといえば食い物だ。あと直江に甘えるのと。
でも相変わらずオレは貧乏だからたまに直江が買ってくる美味しいものが一番楽しみだったりする。

今日は行列が出来るシュークリームとエクレアの詰め合わせを直江が買ってきた。

「わー、うまそう!」
「勉強には糖分が欠かせないらしいですから。あとでオヤツの時間を作りましょうね」
「うん!」

家に直江が来て、今日も家庭教師してくれてる。
学校のシューターは今はそんなに忙しくなくて、なぜかというとやる気のないオレが不良どもの総大将だから。
そして勝手にオレの右腕になったつもりの宮本くんと兵頭が率先して学園内部の面倒ごとを引き受けてくれるからだ。
しかも宮本くんと兵頭はお互いに大嫌いな存在らしいから、オレの前から排除したくて「俺が俺が」みたいに片っ端から色々やってる。競争し合ってんじゃないかとたまに思う。
オレとしてはどうでもいいんだが。

「そういえば兵頭が最近高耶さんの前に出てきませんね」
「宮本くんがオレにべったりだからな」
「……私もべったりしたいんですけど」
「直江は家でこうしてべったりなんだからいいじゃん」
「まあそうですが」

今現在の直江のライバルは兵頭と佐々木くんだ。兵頭は「俺の総長」とか言うから直江の癇に障るらしい。
佐々木くんはハンサムで大人っぽいからオレがポヤンとしちゃうんじゃないかって思ってるらしい。

直江にしかポヤンとしないんだけどな〜。なんでそんなに警戒してんだろ。

「高耶さんはちょっと目を離すと何かしら男に言い寄られてるから心配なんですよ」
「そうか〜?」
「無自覚にポヤンとしたりしますしね。私としては気が気じゃないんです」
「それってオレが浮気性みたいだってこと?」
「……浮気性以外考えられませんけど?」

むー。勝手に浮気性にされてる。そんなこと1ミリもないのにな〜。

「さあ、勉強しちゃいましょう」
「うん」

直江が持ってきた参考書やドリルで受験勉強。最近少しできるようになって、このまえの中間テストでは100位以内に入れた。生徒数?学年の?160人だけど何か?
いいじゃん、この前までは150位前後だったんだから!!
こうして勉強すればオレだって出来る子になるんだよ。

「そろそろオヤツにしましょうか」
「やったー!」

現在午後6時。オヤツを食って9時まで勉強、その後で夕飯だ。
今日のオヤツは超うまそうなやつだから楽しみだったんだよな。

「オレ、エクレアとシュークリーム」
「2個も食べるんですか?」
「育ち盛りだから」

直江はシュークリームを1個だけ。甘いものは好きじゃなかったのに、オレと付き合うために克服したんだそうだ。
同じものを食うシアワセとか言ってた。

オヤツを食べながら最近の学園事情を教えてもらった。
まずは不良同士の諍いがなくなってきたらしい。全員がオレの傘下なんだから当然だ。
それと女子生徒も真面目になってきてるそうだ。これは女子にエンコーとかさせるなってオレが佐々木くんと譲に言ったおかげ。モテモテの二人はやり方は違うけど女子をうまく言いくるめてるらしい。
だから最近はみんなおとなしくなっていいこっちゃ。

「でも不安もひとつだけあって」
「なに?」
「他校の生徒が映画の影響で不良というかヤンキーというか、そんな感じでどんどん増えてるらしいんですよね」
「へー。映画の影響か〜」
「学園と他校のケンカは私たちでいったん止めましたが、新しくヤンキーになった生徒たちは和解したってことを知らないでしょう?だから何かあるような気がしてしまって」

新しくヤンキーになるやつなんか、グーで1回パンチしちゃえば降参すると思うんだけど。

「高耶さんも情報を集めておいてくださいね」
「まーそういうことなら」

シュークリームを頬張ったらほっぺたにクリームがついたらしい。直江は小さく笑って指でとってくれた。
で、そのクリームを口に入れた。

「……またそーゆーことを……」
「恥ずかしい?」
「あたりまえだ」
「可愛い人だ」

そう言ってオレの隣に移動してきてチューしてきた。予想はついてたけどやっぱり少し恥ずかしい。

「今日はもう勉強やめましょうか」
「……いいのか?カテキョがそんなことで」
「大丈夫ですよ」

根拠のカケラも見つからないが、直江がいいって言うならいいんだろう。

「じゃあもっとチューする」
「キスだけですか?」
「……合体もする」

直江に120%流されて生きている今日この頃。こんなことでいいのかと思いつつ、体はどうしようもないわけで。

「じゃあ私が布団を敷いて待ってますから、高耶さんはお風呂にどうぞ」
「んー」
「お風呂からは裸で出てきてくださいね」
「……わかった」

風呂に入ってついでにトイレも行って準備OK。直江に言われたまま裸で出ていったら、まだ服を着たままの直江がいた。

「高耶さんの体は本当にきれいだ」
「どこが」
「全部です」

そう言ってチューしてきて、オレの下半身がモヤモヤしてきたところで。

「私もお風呂入ってきますね」
「え、そんな……」
「焦らされる方が後でもっといやらしい気持ちになるでしょう?」

なるけど……もうオレの坊やはすっかり元気なんだよ……どうしろってゆーんだ。

「すぐ戻ってきますから。布団の中で今日は何をして欲しいか考えておいて」
「う、うん」

何して欲しいか、か。うーんうーん。まずいつものしつこいチューだろ。あとは口でアレをしてもらって、オレもしなきゃダメか。じゃあお互いにするやつで。それとアレもコレも……

「まだ考え中でしたか」
「うう〜、考えたら全部したくなってきて困った」
「じゃあ全部しましょう」

裸で来た直江はいつも思うけど彫刻みたいなキレイな形をしてる。グッドルッキングガイとかゆーやつだ。
顔も体も「デザイン」がいい、と言われてる……。

「直江」
「なんですか」
「今日、部屋の電気明るくしてしたい」
「どうしたんです」
「直江の体をじっくり見たい」

突拍子もないオレの希望を聞かされて、しばし呆けた直江。でもすぐに立ち直った。

「と、いうことは、高耶さんの体もじっくり見ていいわけですか」
「う、それはちょっと」
「ダメですよ。私も高耶さんにじっくり見られたら恥ずかしいですから。オアイコです」

オアイコなのか……じゃあ仕方ない。見せてやる。

明るい部屋の中で直江の恥ずかしいところも、オレの恥ずかしいところも全部丸見え。
明るいってだけでこんなにエロいシチュエーションになるなんて思ってもみなかったぞ。

「ほら、顔をこっちに向けて。それが高耶さんの気持ちいい顔?」
「うー、あんま見るな」
「あなたから言い出したんですよ。だから見せてもらいますし、見てもらいます」

布団から起こされて直江と正面向いて座った。オレの視線の先には何度もオレの中に入ってくる大きいアレが。
あんな色してたんだ……しかもあんなに太いんだ……。

「高耶さんも私と同じぐらい硬いですね……」
「なお……もう、見ないで……」

目で犯されてるって、こういう感じなのかな〜。何も触られてないのに犯された気分。直江だけかな、こういうの。

「もういいでしょう。入れますよ」
「うん……う、んん、は、ああ」

直江のが入ってきて合体。明るい寝室でいろんなところを見られて、股を広げて直江が入るところを見た。

「はいった……」
「愛してますよ、高耶さん……」
「んんっ、直江……もっと……」
「もっと何して欲しいですか?」

恥ずかしいけどこれやってくれたら天国かも。

「………………握って」
「かしこまりました」

直江に入れられながら坊やもニギニギしてもらう。これサイコーにいい。

「直江、もう、だめ」
「高耶さん……」

正直に言う。直江のセックスは最高級だ。他の女なんかに体験させたくない。
このまま一生直江がオレのものでいてれると最高。直江、大好き。

 

 

 

翌日は恥ずかしすぎた合体のおかげで直江の顔もまともに見られないまま学校に行った。
地味生徒の仰木くんは地味に登校して地味に上履きを履いて地味にクラスに入った。そこですかさず宮本くんが。

「仰木チャン、あの兵頭ってヤツ、頭おかしいんじゃねえの?」
「は?」

宮本くんと佐々木くんは同級生に敬語で話しかけるようなバカな真似はしない。年上のくせに留年して同学年になった兵頭はバカだから敬語で喋りかけてくる。
だから兵頭はバカでおかしいのは当たり前。

「なにかあったのか?」
「昨日なんだけど、あいつが帰るのを見かけたからさ、ちょっと気になって見てたんだよ。そしたら仰木チャンの後をコソコソつけてるんだよな。もしかしてストーカーされてんじゃねえの?」
「……かも」
「俺がシメてやんよ」
「いい、オレがシメるから」

宮本くんと兵頭だったらケンカは五分だろう。でも派手なことされたらオレが理事長に怒られるんだ。

「あと、あいつ、なんでか知らないけど用務員のオッチャンのこともストーカーしてっかも」

え?!直江?!もしかしてバレてるなんてことは……!

「な、なんで用務員のオッチャンを?」
「そこまではわかんねえけど……」
「そっか……とりあえず兵頭をシメとくから宮本くんはいいよ」
「オッス、総大将」
「やめろ……」

宮本くんはちょっとビビりながら行ってしまった。クラスの中で総大将ってゆうなよな!!
3時間目が終わってから田中くんに「昼休みに屋上の階段室の裏に来い」って伝えろと言ったら、兵頭さんをボコるんですか、って聞かれたから、場合によってはそうなるから内密に呼び出しておけって言ってみた。
んで4時目が終わって階段室の裏に行くと、なぜか兵頭がパンとジュースをたくさん持ってきてた。

「総大将!お待ちしてました!オレに相談ってなんでしょうか?!」

相談?なんでそんなことになってんの?
……田中の仕業か。あいつ兵頭なみに頭悪いからな……。

「相談じゃねえ。おまえオレのことストーキングしてるらしいじゃねえか」
「えっ!!」
「どうしてそんなことしてんだよ」
「あれはストーキングじゃなくて護衛ですよ!総大将はなんかわかんないけど狙われやすいから!用務員に、生徒会長に、理事長の秘書に、あと数学の先公とか。だから護衛です!それに最近は他校のヤンキーが増えてますし!」

こいつどこまで知ってやがんだ。直江とオレの関係はまだバレてないようだけど……。
でもけっこうオレを観察してるんだよな……。

「おまえ、オレんちがどこにあるか知ってるのか?」
「え?知ってますよ」

住所とマンション名まで答えやがった。超ストーカーじゃねえか!!

「今後一切護衛はいらない。頼むとしたら佐々木くんに頼むからおまえは二度とオレを護衛するな」
「そんなぁ!総大将!」
「オレの言うことが聞けないならおまえには脱退してもらうが、どうなんだ」

ヤンキー軍団から脱退という屈辱は兵頭にも耐えられないらしく、おとなしく「わかりました」とだけ言った。

「でもなんで佐々木なんすか」
「一番冷静な男だからだ」
「……なるほど」

わかってんのかわかってないのか……もう兵頭とはマジで顔も合わせたくないよ……。
兵頭がオレにって渡したパンやジュースを貰って教室に帰った。今夜の昼飯と夕飯はコレで間に合うな。

 

 

放課後、宮本くんに事の真相を話したら、やっぱストーカーじゃん、だって。戒めとして二度と護衛をするなって言ったら、今度は宮本くんが「俺がする!」と言い出した。

「いらない!」
「でも総大将一人で歩いてたらキケンだよ」
「オレを総大将と知ってんのは学園の中の人間だけだから大丈夫だ」
「そうか……」

そこに橘用務員さんがやってきた。

「仰木くん、玄関にお客さんが来てますよ」

これは用務員室の地下にあるモニタールームに来い、という呼び出しの暗号だ。

「はーい。じゃあね、宮本くん」
「おう、また明日」

誰にも見られてないことを確認してから用務員室に入った。そんで奥の部屋の押入れからモニタールームに。

「なんかあったのか?」
「昼休みに私に内緒で兵頭と会ってましたね?」
「なんで知ってんの……って、モニターか」

学園内に隠しカメラがあって、その全部がモニタールームと繋がってたんだっけ。
昼休みに見てたってことは、直江は常にオレの行動を把握してるってことだな。

「何を言われたんですか?」
「いや、オレが呼び出したんだ。どうやら兵頭がオレのストーカーしてるらしいって宮本くんがチクってきたから」
「ストーカー?兵頭が?……もしや高耶さんを襲うつもりで……!」
「違う!護衛してるつもりなんだってさ。迷惑だな〜」

オレはマジで迷惑だと思ってる。でも直江は疑いの眼差しだ。
なんでオレが疑われないといけないんだ。

「私に隠れて二人で会ってたりしてないでしょうね?」
「するわけねーだろ。バカバカしい。護衛を頼むなら佐々木くんぐらい冷静な人間がいいっつーの」
「佐々木くん……ですか」

あ!ヤバい!!
直江が今一番警戒してるのは佐々木くんだった!!

「浮気でもするつもりなんじゃ……」
「しない!昨日だって直江だから部屋の灯りつけたまま合体したんだぞ!浮気するよーな人間が裸をあんな明るいとこで彼氏に見せるわけないじゃん!!」
「まあ、そうですが……」

直江の疑惑から逃れられたから話を元に戻した。強引に。

「とにかく兵頭にはもう護衛いらないって言ったし、佐々木くんに頼んだりする前に直江に頼むに決まってるし、つってもそのへんのヤンキーなんかオレとケンカしたって勝てるわけねえんだから護衛なんかいらないっての」
「そりゃあ高耶さんは強いですけど……確かに他校の不良については私も心配ですよ」
「あ、でも兵頭のターゲットにおまえも入ってたぞ」
「はい?」

用務員がオレを狙ってるんじゃないかとか、男にやたらモテるとか、そうゆうのを話した。
直江は自分が彼氏なんだから余計なお世話だとか言ってたけど、男にやたらモテるのは直江も納得したようだった。

「そういうことなら理事長に頼んで私が護衛をしますが」
「いや、直江に護衛されるなんて、あの理事長がOKするわけないだろ」
「……そうですね」

シューターがシューターに護衛されてどうすんだって言われちゃうよ。あの理事長だぞ?
そんなんじゃ格闘技を習わせてた意味がないとか言うっつーの。

 

 

 

それから数日後。
田中くんが映画に影響をうけたらしきヤンキーにボコられて学校に来た。同じクラスの宮本くんも佐々木くんも、学園がバカにされたようで悔しいとか言って、目の仇にしてたヤンキー軍団の田中くんに誰にやられたのかしっかり聞き出した。
そんで放課後、オレと田中と宮本くんと佐々木くんで残って、屋上の階段室の裏でどうするか考えようってことになった。

「仇とってやんよ!!」

宮本くんはこう言うし。

「俺が弱いせいで……!」

と、田中くんは悔し涙を流すし。

「仰木チャンが出るまでもねーよ。俺と宮本でやっておく」

なんて佐々木くんは言うし。

総大将のオレが何もしないってわけにいかないんだよな〜。だってもう田中くんがボコられたの理事長や譲や直江に言ってあるから、面倒事をシューターするオレは理事長からもう命令出てるし。
『このへんの学校全部おまえが制覇しろ』って……。そのためなら裏工作もするってことだ。

「えーと、田中をボコったやつはオレも出てシメる。この場にいる3人はオレの命令を待つこと。あと田中、兵頭にも知らせておけ。オレが機会をみつけるから呼び出したら集合してシメに行くぞ」
「「「おう!!」」」

どうやらオレの傘下はこういう熱血なものに弱いらしい。すごい団結してる。
んで解散してからオレはどうしたらいいか直江と理事長と譲の4人で会議した。

「高耶、田中くんをボコったヤツラはもう誰かわかってるのか?」
「あやめ商業高校の3年が4人だって」

名前もわかってたから教えると、理事長はパソコンでその4人の顔写真を出した。

「なんで他校の生徒のデータなんか見られるの?」
「ハッキングで」

うちの理事長はマジでどうかしてる。こんなのハッキングするなんて。

「直江がな」

ええ〜!!直江がハッカーなのか!!なんか超ストーカーっぽいし!!兵頭よりずっとストーカーみたいだ!!
オレの彼氏がこんなヤツだったとは!!
でも超好きだけど……。

「こいつらの出入りしてる店やたまり場を調べておくから、高耶は情報待ちをしてくれ。わかった時点で特攻かけろ。相手は4人だがこっちは高耶も入れて5人だろ。まあ高耶一人でもじゅうぶん勝てるだろうがな。そうじゃないと格闘技を身に付けさせた意味がない」
「……はーい」

気は進まないけどこのへんの不良を制覇することになった。手始めにあやめ商業高校、略してアヤショーからだ。

 

 

んで5日後、理事長からアヤショーの4人のたまり場がメールで送られてきた。
譲はケンカしてるところに警察が来たらソッコーで逃げられるように連絡係。
直江はオレがピンチの時に入ってきて、加勢する係。

オレの制服にマイクが仕込まれてるから譲や直江に聞こえるようになってる。譲からの連絡は、オレの腕時計に仕込んであるアラームがピーピー鳴ると警察が来たってことだそうだ。

そしてオレは鼻息も荒いヤンキー2人とストリート系2人を連れてアヤショーの4人がよくたまってる公園ちかくのたこ焼き屋さんへ。

「総大将!アレっす!!あの4人っす!!」
「じゃー行くかー。怪我しないようにオレの後ろでフォローしろよー」
「「「「オス!!」」」」

たこ焼き屋さんには申し訳ないからできるだけ公園でケンカしよう。まあ4人ぐらいはオレの武術があれば1分しないで終了だろうけど。

「おい、オメーら、この前はよくもボコってくれたなあ」

映画でしか聞いたことがないセリフを田中が言った。ダメだ、笑っちゃダメだ、オレ!!耐えろ!!

「あー?なんだ、ダチ連れて仕返しか?」
「ダチなんかじゃねえよ。うちの学園のトップ5だ」

田中!!おまえはトップ入りしてねーじゃんか!!笑わせるなよなー!!ブフー!!

「へー、おまえあんなに弱かったのにトップ5?じゃあ俺ら余裕で勝てるな。来いや」

向こうさんから公園に誘導してくれた。たこ焼き屋のおじさん、迷惑かけないようにするからね!!

「おらぁぁぁぁ!!」

まさに映画のようなケンカシーンの始まり。ああもう!笑っちゃって力がでない!!

「あっははははは!」
「なに笑ってんだよ、テメーはぁぁ!!」
「だって!ぶはははは!」

4人一斉にオレに向かってかかってきた。ダメだよ、キミたち面白すぎる!!
オレは笑いながら4人を1分以内で倒した。力が入らなかったわりには1分で終わるなんて、よっぽどこいつらケンカ慣れしてないんだろうな〜。

「そ……総大将……やっぱすげえ……」
「さすが総大将になるだけあるな……」
「仰木チャンこええ……」

うちのメンバーがちょっと引き気味の中、アヤショーの4人の中の1人が立てないまま聞いてきた。

「お、仰木チャンて……あの伝説の……鑑別所の帝王か?」

鑑別所の帝王?なにそれ?聞いたことないけど。

「鑑別所のやつら全員を仕切ってた伝説の……」

ちょっと合ってるけど正しくはない。仕切ってないし、全員倒したわけじゃないし。
どこかで間違って都市伝説になってるのかも。
訂正しようとしたら兵頭が。

「その仰木さんだよ!!おまえらアヤショーとは仰木さんの存在があったから和睦してんだよ!!ぽっと出のエセヤンキーが勝てるわけないだろうが!!それでもやる気ならアヤショーの本物のヤンキーどもに聞いてみろ!!」

やめてくれー!!そんなもっと伝説になりそうな話を捏造すんなー!!
と、叫びだそうとしたら宮本くんが前に出て、兵頭の援護をした。

「仰木チャンがこのへんの学校全部仕切るからな!!帰ってそう伝えろ!!」

ええ〜〜〜!!そりゃ理事長にはそう言われたけど、仕切るなんて無理無理無理無理!!
だってオレ受験生だもん!!

「さ、行きましょう、総大将!!」
「おう、行こうぜ。帰りに缶ジュースで祝杯だな!!」

兵頭と宮本くんはなぜか意気投合。すげー楽しそうだ。これだからバカって……。

「仰木チャン、どうすんの?受験勉強してる暇なくなるよ?」
「……佐々木くん、総大将にならないかい?」
「イヤです」

佐々木くんはやっぱり冷静だ。自分だって受験勉強してるから総大将なんかやる余裕ねーもんな……。
とりあえず缶ジュースでも飲むか……。直江、譲、オレもう受験できないかも……。

佐々木くんが缶ジュースおごってくれて、飲んだらすぐに家庭教師の時間だからって言って4人と別れた。
そんで今日も受験勉強のために直江がマンションにやって来た。

「相変わらず高耶さんは強いですね……」
「好きで強くなったんじゃない!!強制的に強くなっただけで!!でもまさか学園の総大将になるなんて思ってなかったよ〜!」
「まあいつも最小限の怪我人だけで済んでるんですから、それでヨシとしましょうよ」
「うう〜、直江まで〜」

自分の生活設計が崩れたことに泣きそうになったら、直江が抱きしめてくれた。
やっぱ直江はいいな。あったかくていい匂いで。みなしごハッチなオレをこんなに優しく包んでくれる……。

「でも笑いながら戦う高耶さんはちょっと怖かったですが……」
「うっ」
「私が浮気したらあんな目に遭うんですね……やっぱり浮気は出来ませんよ」
「直江が浮気したら泣きながら戦ってやるからな」
「はい」

今日も受験勉強は2時間でやめて、直江と一緒に布団に入って合体した。
受験どうなるんだろうとか、学校生活どうなるんだろうとか、さっきまですごい不安だったのに、直江と布団に入るとそんなこと忘れて夢中でエロいことしまくった。もう直江のことしか考えられない。




「明日も家庭教師に来ますからね」
「……うん」

ああ、どうなっちゃうんだろう、オレのスクールライフ!!

 

 

END

 

 
   

あとがき

とうとう近隣高校も
高耶さんがシメてしまうことに。
イコール理事長が近隣高校の
不良の総大将になるわけだ。

   
         
   
   
         
   
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