トラブルシューター |
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受験勉強をしながらシューターをやるってのは超大変だ。 で、その日曜日。 「おーっす!」 元気よくオレのマンションに来た譲はちょっと大きめの段ボール箱を持ってきてた。 「なにそれ」 こんなに大きいものをくれるなんて……いいヤツだ!さすが親友だ!譲がオレを親友と思ってるかどうかは別として。 「開けてもいいか?」 好みのやつがなかったらプレゼントはくれないそうだ。やっぱり親友じゃなかったか。 「なんで熟女と巨乳が好きなわけ?マザコン?」 熟女の良さ……? 「若い女にはない匂い立つ色気があるんだよ」 ビデオの場合は可愛い系だ。一番のお気に入りを直江に没収されたけど。 「まあ高耶じゃ熟女の良さはわからないと思うよ。わかっちゃったらこうしてビデオもらえなくなるから一生わからないままでいて欲しいよ」 けど譲の熟女好きな気持ちはなんとなくわかる。年数を重ねた色気、か。直江みたいだ。 「じゃあこれとこれ貰うから」 OKが出たからガムテープを剥がしてダンボールを開けた。中には透明な真空パックのビニール袋に入った白いクッションのようなものが入ってた。 「クッション?」 出して見るとふたつに折られた長いクッションみたいなものだった。 「これなに?」 もうすでに日本中で定番になってるものだそうだ。貧乏で友達いなくて時間ないからテレビも見ないオレの生活で、抱き枕なんてモノがあることをどうしたら知るんだっちゅー話だ。 「寝る時に抱いて寝るんだ。高耶ってよくカバンやクッション抱いて話したりしてたから、たぶん安心してグッスリ眠れるだろうなって思って」 あー、確かにそうかも。直江にも抱きついて寝るし。 「譲……おまえって超いいヤツだな……うう」 もしこれで譲が年上の男だったら恋に落ちてるね、オレ。 「カバー?」 カバーまで用意してくれたのか!!年上じゃなくても恋に落ちそうだ! さっそくカバーを出して広げてみた。 「……なんだこれ……」 枕カバーにはアニメの美少女がほぼ全裸姿でプリントされてた。いかがわしさ100%だ。 「女ッ気ナシの高耶にちょっとした色気をプレゼントだよ」 嫌がらせなのか本気で考えてくれたのかわからない。呆然としてると譲はビデオを早く見たいからって言ってすぐ帰ってしまった。 いい夢見ろよって……。 「そうか。いい夢を見よう」 気持ちを切り替えてカーテンを閉め、ジーンスとパンツを脱いで美少女抱き枕を抱えた。 「ん……」 枕を股に挟んで腰を押し付けて動いて、いい感じになってきたところで自分の手を添えた。 「はぁッ……ん、んん……」 枕の美少女の絵を見ながら、手を動かして、ティッシュを取って。 「んんっ!」 出した。
余韻に浸りながら抱き枕を抱えてたらいつのまにか眠ってしまった。 「ふあ〜、寝ちゃったか……」 体を起こしたら何かがいる影のようなものが見えた。なんだろうと思ってそっちを見たら直江が立ってた。 「勝手に入ってくんなよ」 直江が低〜い声だったから怒ってるのがわかった。そんで直江が指差してるものを素直に見たら抱き枕があった。 「下半身丸出しで寝てたのは、その抱き枕のせいですか……?」 違うんだと嘘をついたとしても地球上の誰も信じてくれないこの現場。 「没収です!廃棄処分します!」 そしていい夢を見られるステキアイテムなのに!! 「没収です!!こんなもので抜くぐらいなら私を呼べばいいでしょう!!」 強引に直江に奪われてしまった。ファスナーが付いてることに気付いた直江はカバーを外して枕だけ返してくれた。 「返せ!」 直江に飛びついて取り返そうとしたら逆に組み敷かれてしまった。 「浮気したようなものですからね。そんな高耶さんにはオシオキが必要だと思うんですが」 押し返しても直江の力には敵わない。そのうち股間をいじられてオレはさっきの夢よりいい夢を見始めた。 「なおえ……」 でも浮気(違うけど)のオシオキですからね、って言って直江は意地悪なことばっかりした。
体力使い切ってグッタリしたところで直江が風呂に入れてくれた。いや違う。 「どうしてあんないやらしいものを譲さんが高耶さんに渡したんですか?」 オレからリクエストしたんじゃないのがわかって直江も安心したらしい。 「もっとリラックスできるような抱き枕カバーにすればいいじゃないですか」 ちょっとオレが拗ねたのがわかって直江は笑いながら「じゃあ私が探します」って言った。 風呂から出て直江が持ってきたデパ地下の超豪華オムライス弁当を食べた。ひとりぶんで1500円だそうだ。 「毎日こういう夕飯なのか?」 へ〜、直江って自炊できるんだ〜。 「自分で言うのもなんですが、けっこう料理は得意です。今度食べに来てください」 やった!タダメシ食える! 「リクエストしてもいいか?」 赤い鯛を食べてみたい!てゆーか鯛を食ったことがない! 「金目鯛の煮付けですか?ええ、魚料理はわりと好きなので作れますよ」 タダメシか〜。直江なら米も魚沼産コシヒカリとかのブランド米なんだろうな〜。 「いつがいいですか?」 そういえば最近、直江んちに行ってないな。 「高耶さん」 引き寄せられてチューされた。
次の日、オレにステキなプレゼントをしてくれた親友なのか親友じゃないのかわからない譲に抱き枕の感想を求められた。 「いい夢見た?」 オレと直江の関係は譲にも言えないから、下半身丸出しのことや直江が抱き枕になったことは言わずに説明した。 「え〜、直江さん酷いな〜。せっかく高耶にあげたのに〜。あ、でも貰ったビデオは返さないからね」 それで譲は納得してくれたようで、半笑いで可哀想にね、って言った。 「それにしても直江さんもヒマだね〜。休日に高耶んち行って家庭教師やってるんだろ?」 昨日は受験勉強なんか1ミリもしないで布団の中で別のことを勉強させれてたんだけど。 「シューターやりながら用務員やって会社のこともして、もしかしてあの人、彼女いないんじゃないの?」 確かにモテるけど、すぐに飽きられて捨てられるってゆーのは違うかも。 「絶対彼女いないよ。日曜に高耶んち行くぐらいなんだから。今度ビデオコレクション何本かあげたら?」 学園で人気者の成田くんが熟女好きって知ったらファンの女子たちはどう思うんだろうな……。
んで土曜日がやってきた。 「お待たせしました」 昼飯もタダか!社会人の彼氏ってのは便利だよな! 「お昼は洋食にしました。すぐにお肉を焼きますから高耶さんは座ってて」 それで出てきたのはオニオンスープと、見たこともない葉っぱを使ったサラダと、白い魚沼産コシヒカリのご飯。 「すげえ……作りたてのステーキなんか食ったことねえ……」 いつも勉強と仕事で頑張ってるご褒美だと思って食べてくださいって。 ご飯もお肉もスープもサラダもおかわりして食った。最終的には直江のぶんまで食った。 「毎日じゃありませんよ。たまにです。毎日こんなものを食べてたら体を壊しますよ」 満腹になって直江と並んで仲良くテレビを見てたらチューされた。 「食後のデザートで高耶さんを食べてもいいですか?」 直江に弱いところを触られて一瞬でその気になった。食欲も性欲も旺盛な高校生としては自分がデザートになるのも嫌じゃないわけで。 「いいよ」 久しぶりの直江の寝室でオレはデザートになった。
あれから直江んちでケーキ食って鯛食って果物食って、またオレが食後のデザートになって、次の日の日曜日もそんな感じで夜まで過ごした。 楽しい土日を過ごしてまた次の土日に直江んちに行く約束になった。今度は受験勉強もしっかりやらなきゃいけないけど、でも豪華なタダメシが食えるなら勉強もしまっせ! んで直江んちだ。 変態部屋は相変わらず高耶グッズでいっぱいだった。DVDが増えて、アルバムが増えて、なんかもう全部捨てたくなったけど、これを捨てて直江にお仕置きされたり冷たくされたりしたらみなしごハッチなオレは寂しくなるから捨てられない。 そんな感じで高耶グッズを物色してたらクローゼットが5センチくらい開いてるのを発見した。 「なんだ……?抱き枕か?」 オレんちにある抱き枕とほとんど同じ形をしてた。 「……ギャーーーー!!」 なんと抱き枕にプリントされてたのは丸裸のオレの写真。かろうじて股間は隠れてるがお尻丸出しだ。 「どうしたんですか?!」 抱き枕を奪われてしまった。やばい。あの抱き枕を誰かに見られたら……!オレの可愛いお尻が白日の下に晒されたら……!! 「返せ!捨てろ!」 直江は毎日これを抱いて寝てたんだろうなって感じの痕跡があった。 「オレに無体なことしてやがるんだろ!返せよ!」 前回の変態部屋騒動の時と同じく、またもや直江に米俵みたく持ち上げられて寝室に連れ込まれた。 「あなたが出すのを我慢できたら抱き枕を渡しますよ?」 そんなわけで高耶抱き枕は直江の寝室に常備されることに決定……。
ちなみにこの翌日。直江が夜8時にオレのマンションにやってきた。 「高耶さんの抱き枕用にリラックスできそうなカバーを持ってきました」 昨日のことがあったから部屋に入れたくなかったけど、玄関で熱烈なチューをされて愛してますって言われてスリスリされて強く抱きしめられたらもうダメだった。 そんな直江が出した新しい抱き枕カバーには。 「ぅぐっ……!」 そこには全裸の直江がプリントされていて……。 「こんなもんいるか!」 何度も捨てようとしたけど直江に阻止されて、とうとう抱き枕にエロカバーをかけられてしまった。 直江が帰ったらすぐに捨ててしまおう、と思ってたんだけど、いざ直江が帰ってしまうとオレはすごい寂しくなって、あの抱き枕をチラッと見てしまった。 枕の直江に抱きついて、きっと実物の直江が高耶抱き枕でしているであろうことをオレもした。 「ん……、直江……!あ、あ、気持ちいいっ……!直江ぇ!」 どんどん変態が伝染してる気がしてきた。 それから直江抱き枕は毎日オレと一緒に寝てる。本物の直江がいる時は押入れに入ったままだけど。 「直江、今日ウチに泊まってくれない?」
END
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あとがき |
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