異教の詩 イキョウノウタ 13 |
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直江の行動は素早かった。 翌日には美弥と会って、美弥の誘導尋問にオレとの関係を伏せることもなくすべてを話したそうだ。 あくまでも飛雀鉄鋼は被害者で、騙したのは米軍で、そういう図式を世論に植えつける。ほとんどはそう思ってくれるだろう。残りの懐疑派には言いたいように言わせて、圧倒的な人数での差を見せ付けてしまえばいい。 それがこの日本よりもアメリカ国内での方が反応が大きかった。日本では話題になってもすぐに忘れられてしまうが、戦争をしている当事者であるアメリカの人民は無関心ではいられない。自衛隊なんかじゃなくて、民間企業を開発に、騙すようにして参加させるとは、と。 会議は毎日あった。いくらこっちがほとんど騙されていたとは言え、ミスはミスだし、まだ契約を破棄したわけでもないから。 「商品を寄付ってできるかな?」 社長室で親父と二人きりで話した。 「商品を寄付?」 オレの計画はこうだ。このまえ千秋とばったり会った会社でシルバースターを作ってる。だからうちの会社とも、ミツバとも取引のある会社だ。 「オレが責任を取る。今回の事情を知らない部署が飛雀鉄鋼の宣伝のためにそれを決めてきたってことにすりゃいい。間接的にでも反戦活動をそのまま、親父たちの知らないところで飛雀鉄鋼がやったとなったら、向こうは警戒するんだ。破棄を、向こうにさせればいいんだ」 社長室から出てすぐに、オレはミツバネットに電話を入れた。
オレが直江との会談を取り付けることが出来たのは、仰木という名前のせいなのか、それとも高耶という名前のせいか、すぐだった。翌日の夜8時から、神楽坂の料亭で。もちろん営業部での仕事で、内密に親父がその計画を押してるからってことで営業部長に全権をオレに任せるように差し向けた。 先に料亭に着いていたオレが座敷で待っていると、おかみさんに案内されて直江が来た。 「飛雀鉄鋼営業部の仰木です。このたびは……」 膳越しに腕を伸ばされて、顔を上げたとたんにキスをされた。 「なにすっ……仕事の話をっ」 ダメだった。あの直江の真剣で悲しそうな目を見たらもうダメだった。会いたかった。会いたくて苦しくてそれで憤死してしまいそうなほど会いたかった。 「もう二度と会えないと思ってました……」 最初の食事が運ばれて来るまで直江とキスをして、強く抱き合ってた。
食事の間にオレは寄付の話をした。そうしてオレが責任を全部負うことに関して直江は不安に思っていたようだったけど、オレの会社が戦争を擁護するような真似をするぐらいだったら、オレひとりいなくなる方がマシだって話したらわかってくれた。 「たったひとりで直江と渡り合って、10歳以上も上の男を手玉にとって世界中を巻き込むなんてな」 そうかもしれないけど。 「オレのために、美弥と利用しあったってこと?」 そのことなんだけど、今は言えない。オレはおまえとやり直すつもりはないってことを。 「高耶さん」 料亭で日本酒を飲んだ直江は少しだけ酔ってた。もう仲居さんが来なくなった座敷で、直江はオレを隣に座らせて酌をさせる。 「飲みすぎじゃねえの?」 会食は2時間の予定だ。予約は閉店までが基本の料亭だからこのまま閉店までいてもかまいはしないが、直江の方のスケジュールがキツキツになってるのを知ってた。 「このあと、まだ仕事があるんじゃなかったっけ?」 だって仕事なのに…… 「ホテルを予約してあります。行きましょう?」 行かないと言ったオレに直江は今まで見せた事のない怖い顔をして迫ってきた。 「そんな……だって、オレ、おまえとやり直すつもりなんか」 全部、オレのためか。寄付なんかどうでもよくて。 「解決するまで?」 おまえを傷つけてしまったけじめだ。 「オレにだって呵責ってのがあるんだ。おまえをあんなふうに捨てて、自分の仕事を取って、なのに結局おまえに頼ってる自分がイヤでたまらない。だからきっとやり直したって、つらくなるだけだから」 誰かに聞かれてしまうかもしれない料亭じゃ、深い話は無理だというのがわかったから、大人しく直江に連れられて品川の高層ホテルまで行った。 備え付けの冷蔵庫からウーロン茶を直江が出してきた。応接セットのソファに座って向かい合わせで話した。 「じゃあ……どうしても?」 ソファから立ち上がった直江は窓際に行って外を眺めた。 「済まない……」 いつのまにか窓際からオレの背後に立っていた。立とうとしたオレを押さえつけてキスをする。もがいても直江の腕力にかなうわけがなくて、抱きかかえられてベッドへ。 「やだ!」 2ヶ月前に慣らされた体が直江の愛撫を覚えてる。少し乱暴にされながら感じたのを忘れてない。 「ほら、もう大きくなった」 抜き取ったベルトで手首を縛られて、ズボンと下着を同時に引き下げられた。晒された尻に、直江は自分で引っ張り出して大きくした性器を押し込む。 「いたい!!」 直江が全部入った。ちっとも準備ができてない穴は大きな質量をくわえ込んで引き裂かれてる。 「あなたもわかればいい。こんな痛みなんか、私のあの時の気持ちに比べたらなんてことはないんですよ」 直江が動き出して、オレの痛みは快感に変えられていく。直江がオレの性器をしごいてる。愛情を注ぎ込もうとしてる。 「愛してください、高耶さん」 ダメだとは言えなかった。それがオレの本音だ。 「もっと、犯して……」 もうダメだ。直江がいなきゃ生きていけない。何もできない。 「愛してる……!」 疲れ果てて気を失うまで、直江と繋がっていた。
つづく |
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陥落されるの早すぎ。 |
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