同じ世界で一緒に歩こう それから |
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こうやって考えると、モデルやってる直江はもっと大変なんじゃないかって思ったりする。 そんで今日は土曜日で、オレが休みなのに直江はレッスンが入って超機嫌悪かった。 「でも3時間もあるんですよ?」 どうも直江はこのレッスンが苦手というか嫌いらしくて、なかなか行きたがらない。 「ああもう……なんでレッスンなんてあるんだ……」 レッスンスタジオの前でモタモタしてたら中からねーさんの登場だ。 「直江!来てたんだったら早く入りなさい!」 それでも嫌がる直江の背中を押して、スタジオへ押し込んだ。これならもう逃げられないはずだ。 「高耶くん、直江が逃げ出さないように見張っててよ」 見学か……モデルのレッスンがどんなのか見たことないからそれも悪くないかも。 「なんで高耶さんに余計なことを!」 ねーさんに怒鳴られて直江はすごすごと更衣室へ。オレはガラス張りのスタジオの廊下の長椅子に座った。 「……見学ですか……」 着替えてきた直江は期待してたレオタードとかじゃなくて、普通のオシャレジャージだった。 「見張ってるから逃げ出すなよ?」 スタジオにはすでに何人か男のモデルがいて、ウォーミングアップしてた。ほとんどオレが知ってる人ばっかり。 「ねーさん、直江ってレッスンやってると機嫌悪くなるタイプ?」 そんで見てたら……確かに機嫌は悪いんだけど、しっかりやってた。 「ね?苦手って言うわりにはすごい出来るから周りが緊張しちゃうのよ。どんなに頑張っても直江には追いつかないってゆう感じなのね」 あれじゃオレがモデルだったとしても直江とのレッスンはやりずらいよな。 「みんなを奮起させるためにも直江がレッスンに出てくれないと困るわけ」 さすがに1時間見てたら飽きてきて、ねーさんと一緒にマンガ喫茶に行こうってことになった。 「オレとねーさんで直江のレッスン用ジャージを買いに行って来る」 嘘だけど。 「そんなものいりませんからここにいてくださいよ」 これで脱出成功だ。直江も真面目にレッスン受けるだろう。 「さ〜、行こうぜ、マンガ喫茶!」 モトハルさんに直江との関係がバレたのをねーさんに話した。あれ以来、バレたらバレたでいいやって思うようになってきて、半分ぐらいは開き直れたんだ、って。 「でもあんまり公言はしない方がいいわよ。まだまだ差別はあるからね」 そんでねーさんとマンガ喫茶の二人用のブースに入ってしばらくしたころ、ねーさんが「いいもの見せてあげる」って封筒から一枚のカラーコピーを出した。 「何?」 しーんとしたマンガ喫茶の中、オレの悲鳴が響いた。 「うるさい!」 カラーコピーに写ってたのはヌードの直江。あの香水の宣伝用のポスターの縮小版だった。 「今朝パリからメールで送られてきたの。完成したからチェックしてって。これをウチの事務所がOKしたら本格的に印刷に入るんですって」 やっぱり全裸だ。セクシーでかっこよくて、だからってエロい感じはあんまりしなくて、直江の魅力最大限て感じ。 「もしこれが好評だったら直江の仕事がまた増えるわよ。現役続けてもらわないと」 直江が現役続行で売れっ子継続なら嬉しい。でもこのヌードはやっぱり……不安だ。 「どうしたの?」 急にねーさんの声が低くなった。もしかして……マジで?捨てられるの予想してたとか? 「あんたがいないと死にそうになるあのバカが?世界があんたで構築されてるあのアホが?誰の話も聞かないくせにあんたの一言で全部決定になるあの最低男が?あんたを捨てる?地球が逆周りしたってそれはないから安心しなさい」 ねーさんの言葉はちょっと不穏だったけど、他人から見て直江がそういう人間だってなら安心かな。 「ちょっと早いけどそろそろ戻る?直江の機嫌が悪くなってたらなだめるの大変だからね、あんたが」 直江のジャージは見つからなかったってことにしてスタジオに戻った。まだレッスンは続いてて、直江が姿勢の矯正をされてるところだった。 しばらくして時間がきて終わった。直江はソッコーでオレんとこに来て話しかける。 「ジャージはありましたか?」 バカだ。騙されてやんの。 「じゃあ着替えてきますから、これからデートしましょう」 ほんの5分程度でジャージが入ったカバンを持って更衣室から出てきた直江。そのカバンを受け取ろうとしたら。 「いいですよ、自分で持ちますから」 渋々オレにカバンを渡した。そんなに重いわけでもないのになんでこんなに気を使われるんだろ。 「さあ、出ましょう」 さっきの封筒だ。まだ直江は見てないのか。 「高耶さんとデートなんだが」
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本当にこういうレッスンしてるかは知りません |
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