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高耶さんは17歳 第11話 メールとオレ |
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直江の書斎にはパソコンがある。 直江の学校での仕事もこのパソコンでやってるわけだから、ファミリーでログインを分け合えるタイプのパソコンで、オレは直江のメールだとかは当たり前だけど見たことがない。 ところがオレは直江のメールを見てしまったんだ。
それは風呂から出てパジャマに着替えて、チューをしてもらおうと思って書斎で仕事をしてる直江のとこに行った時だった。 そこに現れたのはメールソフトの画面だった。しかも誰かからのメールが表示されてる。 そのメールの内容をオレがみんなに話してやる。 『はじめまして。私は東京在住の30歳です。このたび貴方のアドレスを頂き、お願いしたいことがあってメールをしました。私には現在夫がいますが、夫は生殖能力がなく、子供に恵まれずに5年の夫婦生活を送っておりました。このたびどうしても子供が欲しいという主人のたっての願いで、他の男性から子種を頂いて、自分たちの子供として育てようということになりました。しかし日本では他人の精子を人工授精で受胎してはいけないという法律があり、だからといって海外でそれをするにも私どもにはその資金がありません。主人と話し合った結果、私どもで選んだ男性とだったら妊娠するまで私が他の男性と関係を持つことを許してもらえました。そして私どもが選んだのが貴方だったのです。どうかお願いですから、すべてをご理解した上で私と性的に関係を持ってもらえないでしょうか?もちろん報酬ははずみますし、妊娠後は一切ご迷惑をかけないことをお約束します』 とまあこんな内容だ。 ビックリして読んだ後、もう一件、別の女の人からメールがあった。 『お返事いただけなかったのは私に対して魅力を感じられなかったせいでしょうか?何か失礼がありましたか?もしまだあなたが私に会いたいと思ってくださるのなら、ご連絡を下さい。待っています。こうした不倫についてあなたが不快感や罪悪感を感じるのもわかります。ですが私はどうしてもあなたとお会いしたいのです。不躾なお願いですがどうかお返事をください。貴方の奥様にも秘密にいたします』 ……ふりん? オレは精子メールよりもずっと親しげで、直江が結婚してるのを知ってるそぶりのこのメールが気になってしょうがなかった。 頭の中がそのことでいっぱいになって、見てたパソコン画面がスクリーンセーバーになったころ、直江がコーヒー片手に戻ってきた。 「あ、ここにいたんですか。高耶さん」 ちょっとでも直江と離れた時はチューしてもらいに直江を探すオレの癖を知ってるから、いつもみたいにキュウッと抱いてチューしてくれた。 「もう少しで終わりますから、あったかいリビングで待っててくださいね。コーヒー、高耶さんのぶんもありますから牛乳を入れて飲んだらいいですよ。寝る前なんだから、たくさん牛乳入れないと眠れなくなっちゃいますからね」 もうコーヒーなんか飲まなくても眠れないに決定だよ。 トボトボとリビングに戻って、牛乳を電子レンジであっためてからコーヒーを少しだけ入れて、砂糖はたくさん入れて飲んだ。 「お待たせしました」 オレが座ってるソファに座る直江。こうしてくっついて座るのがいつもオレたちは好きなんだけど……。 「どうしたの?」 門脇先生か……うーん、有り得ない。だって門脇先生には「しんたろうさん」てゆー彼氏がいるって料理部でもっぱらの噂だ。 「なあ、山本先生とデート、したんだよな?」 おかしな質問ばっかりしてるから、直江がどうしたんだって顔でオレの肩を抱いた。 「あのさ……もし、オレのことダメな奥さんだって思ってるなら、そう言っていいから。そしたらしっかり奥さんの仕事するから。なんなら学校退学して奥さん業だけやったっていいんだから」 そう言ってくれるのは嬉しいし、直江の本心かもしれないけど、あのメールはじゃあ、何? 「高耶さん……」 直江はオレをギューッって抱いて、小さな声で、オレを驚かせないように優しく囁いた。 「学校と奥さんと両方やってて疲れたの?たまにはそうなるのも当然ですよね。ゆっくり休んで、何も考えずに、好きなことやっていいですから。私が愛してるのは変わりませんよ。だからもう寝ましょう?」 こんな不安なまま直江と一緒のベッドでなんか眠れないよ。きっと寝顔を見たら、寝顔にチューした女がいるんじゃないかとか、オレみたく腕枕してもらった女のこととか考えちまうから。
「はい、みなさん、座りなさい。授業始めますよ」 今日の橘先生は機嫌が悪い。 「このころの日本では一夫多妻が成立していました。実力のあるものだけがこうやって複数の妻を持てたんですね。 直江も妻は複数必要なのかな? 「黒板消しますよ。いいですか?仰木くん?聞いてましたか?」 あきらかに直江はオレに対して怒ってる。
夕飯を作るのもぶっちぎって自分の部屋に引き篭もりをした。 「話してくれなきゃわからないじゃないですか……いったい何があったんです」 こうやってずーっとひとりでオレに話しかけてるんだ。オレからの返事もないのにさ。 「私が何かしたなら謝りますから。もう怒ってませんから出てきてください」 話したとして、もし直江が不倫したいんだ、って言ったらオレもう絶望しちゃうもん。 「高耶さん……」 少しだけ、直江が涙声になった。 「オレ、もう直江の奥さんやってる自信ないんだ。やっぱ直江はオレみたいな子供と結婚しちゃいけなかったんだよ。なんにも出来なくて、バカで、すぐ嫉妬ばっかりして……もっといい奥さんをみつけて結婚したらいいよ。そうしよう?」 ガン!て、直江がドアを叩いた。すっごい怒ってる。 「間違いなんかないんですよ!私が歴史の教師だってこと忘れてませんか?!人間は間違いなんか犯しません!間違いだと思われているものは人生の一部で、その人にとって必要な経験なんです!そうやって歴史は動いてきた!だから私は歴史の教師になったんです!だからそんなことをいくら言ったって私に効果はありませんからね!」 オレも直江も間違ってないってこと? 「織田信長が光秀に討たれたのは必要なことだったんですよ!光秀が秀吉に討たれたのも!もし信長がいい人だったら私もあなたもこの世にいないんです!」 いや、その、そんなこと聞いてるんじゃないんだけど……。 「私があなたを愛してることも、あなたが私の奥さんになったことも、正しいことなんです。正解なんですよ」 不倫なんか、直江はしないよな。きっとしない。
「なんだ、そんなことですか……」 泣きながらチューして、なんだか盛り上がってオレの部屋でエッチして燃えまくって、ダメな犬みたいに甘えながら昨日のメールのことを正直に話した。 「そんな、って、だってアレ、直江に不倫しようって誘ってるメールだったじゃん。しかも2通も」 そうゆうことか。 「だけどこうしてあなたの愛を再確認できたのは良かったです」 だけど直江もオレをすっごく愛してるってのがわかって良かった。
直江には相変わらず不倫希望のメールが来てるけど、全部無視だ。 世の中の女ども!橘義明先生には愛する奥さんがいるんだからもう何したって無駄だ!
END
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あとがき |
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