高耶さんは17歳


第19話  直江誕生日とオレ

 
         
 

結婚してから初の直江の誕生日がやってくる。
どうしたらいいのかわかんないから、ここは旦那さんを持っている母さんに聞きに行くことにした。
学校帰りに実家に戻って聞いてみた。

「父さんの誕生日って、新婚の時はどうしてた?」
「そうね〜。学生結婚だったからあんまり豪華なことはできなかったわね。家でいつもより手の込んだ食事を作って、気持ちのこもったプレゼントをあげたわね」
「気持ちのこもった?どんな?」
「……やあね!高耶!お母さんにそんなこと言わせないでよ!!」

そう言って母さんは突然リビングから飛び出していなくなってしまった。
取り残されたオレはどうしていいかわからず、しょうがないから戸棚をあさって食料をチョロまかして家に帰った。

気持ちのこもったプレゼントって何だろう?

 

 

 

「なあなあ、直江。気持ちのこもったプレゼントってなんだと思う?」
「は?」

母さんに言われたことを直江に話すと直江も固まった。

「そ……そうですか……それはそれはお義母さんも大胆なことで……」
「大胆?」
「いえ、なんでもありません。どうしてそんなことをお義母さんに聞いたんですか?」
「もうすぐ直江の誕生日じゃん」
「……そういうことは……本人には黙っておくものなんですが」
「あ!そうか!しまった!!」

オレだってそのつもりだったんだよ〜!だから母さんに聞きに行ったのに、あんな謎の言葉を母さんが残すから!
つい口が滑った!!

「ええと、それで……お祝いをしてくれるんですか?」
「おう。何が欲しい?ただし、オレの小遣いの範囲内だ」

オレの小遣いは月末に父さんから貰うようになってる。オレが学生のうちは生活用品以外の金は父さんが出すことになってんだ。

「じゃあハンカチか靴下で」
「バカにしてんのか……?」

そんな小学生がプレゼントするようなものを旦那さんにあげるわけにいかねーじゃんか!!
アホか、こいつ!!

「もう少し予算ある」
「ではCDか何かを」
「それは……ちょっと予算オーバー」

直江がガックリした。言いたいことはわかってる。
じゃあ何が欲しいと言えばいいんですか、だ。

「う〜ん、困ったな……。あ!そうだ!母さんが言ってた気持ちのこもったプレゼントってやつでどうだ?直江はそれが何かわかったんだろ?言ってみろ」
「いいんですか?」
「男に二言はねえ!」
「では耳を……」

ヒソヒソヒソ。

「げげ!」
「ソッチ方面の話なんですよ」
「か……母さん……」
「そういうわけで、私の希望を高耶さんが叶えてくれるなら、それでお願いしたいんですが」
「どんな希望だよ……?」

聞くのがちょっと怖い。直江はエッチなことを考えると際限なくエッチなことを思いつくから。
この前の『高耶さんの成長記録』の時だって、オレはコトが済んでから恥ずかしくなってデータを全部消させたんだ。
あんな画像を残しておいたら大変だぜ、おい。

「私の希望はですね……」

コソコソコソ。

「えええええ!!!そんなのできるわけないじゃんか!!」
「駄目ですか……そう言うとは思ってましたが……」
「ヘンタイ!!」

ここじゃ言えないようなことだ!!
裏で確認してくれ!
たぶん5月の中旬には出来上がってるはずだから!!

「それじゃいつものエッチでいいです」
「いや、それじゃ気持ちのこもったプレゼントにはなんないから」
「だったらソッチ方面の話は忘れましょう。じゃあ、誕生日に二人で出かけましょうか」
「ん?出かけるのか?」
「それで、私が欲しいものを買ってもらいます」

それなら……その場で予算内かどうかもわかるし、直江の欲しいものも選べるし、いいかも。

「いいよ、そうしよう」
「楽しみですね」
「うん!」

はいどうぞ、って広げられた直江の腕の中に入ってギュウって抱かれて、いい気分。
こんなに優しい旦那さんなんだから、もっと予算取りたかったな。小遣い貯めておけば良かった。
来年はそうしようっと。

 

 

 

誕生日当日。
直江に車を出してもらって誕生日デートだ。

「どこ行くんだ?」
「横浜なんてどうでしょう。中華街で飲茶を食べて、ショッピングモールで買い物をして、港や街を散策して、夕飯は夜景のきれいな展望レストランで美味しいものを」
「うん!」

おっと、待てよ。そうすると直江に飲茶もレストランも出させるわけだろ?
それじゃ誕生日にならないかも?

「いいんですよ、気にしないで。たまには高耶さんと夫婦として出かけたいのは私なんですから。飲茶を食べたいのも、レストランに行きたいのも私です。高耶さんはプレゼントを買ってください」
「いいの?」
「ええ。家族サービスと一緒に、です」

だったらいいや。たくさん食おうっと。

んで横浜の中華街でやけに豪華な飲茶を食ってから、ショッピングモールへ。
外観がやけに派手な本屋というか雑貨屋というか、そんな店があった。ワニの作り物が床に埋まってたり。
売ってるものも変わったものが多かった。

「面白いですね、ここ」
「ゴミゴミしてるけど、楽しいな」

バラエティ雑貨とでも言うのかな?そういうのをいじったり、マニアックな本を立ち読みしたり。
そこで直江は一冊の本を手に取った。

「こ、これは……」
「なになに?」
「近所の本屋に売っていなくて、ネット注文しようと思っていた本です……」

それは直江の性格がとっても良く出てる本だった。
『彼の歩いた坂道・東京編』(この話はフィクションです、念のため)。

「どんな本なわけ?」
「たとえばですね!坂本竜馬などの幕末の英雄から、夏目漱石などの作家が作中に描いた人物が歩いた由緒ある坂道を調べて、写真と解説を載せてまとめた本なわけです!マニア垂涎の本なんです!」
「あ……そ、そうなんだ……」

歴史を熱く語る直江にはどういうわけか付いていけないんだよな、オレ。

「高耶さん!!」
「はいッ」
「これを!これを買ってください!」

その本は1500円。予算バッチリだ。

「い、いいけど」
「ありがとうございます!大切にします!歴史の本を高耶さんから誕生日に貰えるなんて!!最高の誕生日ですね!」

何気にたくさん人がいるこの店の中で、直江は大きい声で喜び出した。
恥ずかしいから静かにしろ!

「来て良かった!!わざわざ横浜まで来た甲斐がありました!!」
「シー!!おまえ、うるさい!」
「ああ、すいません、高耶さん!!」
「だからうるさいっての!!」

歓喜に震える(?)直江からその本を取り上げて、レジに持って行って会計した。
もちろん店員は直江がバカみたいにうるさいのを見てたから、オレのこともジロジロ見た。
ああ、恥ずかしい!!

「行くぞ!」

こんなふうに誕生日を祝いたかったわけじゃないのに〜!!!

 

 

ニッコニコの直江を連れて横浜散策。直江の手には車に置いときゃいいのにずーっとさっきの本を持ってる。
山下公園でロマンチックな散歩してるってのに、だ。

「それ持ったまま散歩すんのか?」
「ええ。高耶さんに買ってもらった大事な本ですから」

なんだかな……そこまで喜んでくれて嬉しいっちゃ嬉しいんだけど……ちょっと桁外れに喜ばれすぎてキモイ。
そりゃ直江は歴史の先生だから、ああいう本が好きなのはわかるんだけど。
てゆーか……。

「直江」
「はい?」
「もし、直江が行きたい歴史の舞台にいけるとしたら、どうする?」
「喜んで行きますよ!明治、大正、昭和初期なんかいいですね。いや、江戸時代もなかなか……戦国時代は怖いですけど、実物の織田信長を見たいです!」

ちょっとだけ顔を紅潮させて興奮しながら喋ってる。マニアめ。

「それで戻って来れなかったら?」
「……戻って来れないんですか……それは困りますね」
「なんで?」
「高耶さんと一緒だったら、戻って来れなくてもかまいませんけど、あなたがいないならどんな歴史の舞台も楽しくなんかありませんよ」

……そう、そうだよ!!これだよ!!直江!!
オレ、いっつも思ってたんだ!直江は歴史とオレとどっちが大切なんだろうって!!
いっつも気になってたんだよ!!

「直江!!」
「はい?」
「オレも直江がいなきゃ何にも楽しくないから!!」
「ええ、高耶さん。私たちは夫婦ですから」
「直江!」

夕方のキレイな赤い海を背景に、オレと直江は抱き合った。
……それを見てた人間、推定50人。

 

 

その後は夜景のキレイなレストランでお食事だ。
うまい!って言ったら直江は「高耶さんのご飯の方がずっとおいしいです」だって。
言ってくれるじゃねえか、この旦那さんは!!

ラブラブモードのまんま食事を終えて、また車に乗って帰宅。

「なおえ、なおえ」

玄関でたくさんチューをしてもらって、抱っこされてリビングへ。

「もう一個、プレゼントあるぞ」
「なんでしょう?」
「わかってるくせに」
「……楽しみにしてますよ。奥さん」

あとは裏で直江から話してもらってくれ。
5月中旬にはアップされてるはずだ。(がんばります)

「直江、誕生日、おめでとう」
「ありがとうございます」
「旦那さんになってくれてありがとな」
「こちらこそ。あなたのために生まれてきたんですよ、私は」

う〜!やっぱ最高の旦那さんだ!!
どうだ、羨ましいか!!直江はオレのもんだからな!!ザマアミロ!!アッハッハ!!

 

END

 

 
   

あとがき

直江の誕生日を忘れてて
1時間で書きました。
短い&つまらない。
ごめんなさい。
義明さん、誕生日おめでと。

   
         
       
         
   
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