高耶さんは17歳 |
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もうダメだ!!
「大袈裟すぎます」 さっきオレが聞いたのは直江がこの家から出てくって話だ。 「出て行くわけじゃないでしょう。ただの出張でしょう」 そうなのだ。直江は教育委員会の研修とやらで二週間の長期出張へ行く。 「できませんよ、そんなの」 ほらみろ!!そんでそこで直江はモッテモテでエロい女教師から言い寄られてうっかり……なんてことに! 「私は高耶さんの旦那さんですよ?そんな不埒は真似はしません」 ソファの端っこでクッションを抱えながら半べそになって直江を睨む。 「そんなに私は信用ないんですか」 言っておくけどオレは純情高校生だ。 「魔も差しませんし、ハメも外しません」 そうは言うけど直江はオレと結婚する前はさんざん遊んでたプレイボーイで、オレとデートしてたくせに山本先生ともデートするようなちょっと優柔不断なやつでもある。 「いくら高耶さんがヤダって言っても、仕事なんですから行きますよ。仕方ないでしょう」 しばらくにらみ合って、直江が先に怒り出した。 「あー、もう!!直江のバカ!!」 こうなったら出張までの間で浮気できないようにしてやる!!覚えてろ!!
そこでオレが考えたのは橘学級のエース、譲の知恵を借りること。 「……いい加減にしてよ、高耶。毎回毎回」 譲は大きな大きなそりゃもう月まで届きそうな溜息をついて、いつものように知恵を貸してくれた。 「前に使った手でいいんじゃない?高耶が女の子からモテて、それが心配で浮気どころじゃないって感じにしちゃえば」 今度は銀河系を突っ切りそうなほど盛大に溜息をついた。 「じゃあね、こうして」 ヒソヒソヒソ。
「どうしよう!直江!」 学校から帰ってきた直江を玄関で迎えて抱きついた。 「こんなものが!」 オレが直江に見せたのは一通の白い封筒。中には譲がパソコンで作った手紙と写真が入ってる。 「仰木先輩へ。どうしてもガマンができなくなり、手紙を書いてしまいました。私は同じ学校の2年生です。入学した時から仰木先輩に憧れています。私なんかがお付き合いできる人ではないと知っているので告白はしませんけれど、私はいつもあなたを見守っています。先日、学校で盗み撮りしてしまったのですが、申し訳ないと思い、先輩にお渡ししたくて同封しました」 読み終わった直江は写真を見てビックリした。なんとオレが体育の授業でハミパンしてる写真だからだ。 「……こんなもの、いつ……」 そんな約束はした覚えない。でも直江の中ではそーゆー約束がされたことになってるんだろう。 「だって……動きやすいから……」 直江はさりげなく写真を内ポケットに入れた。どうやらコレクションするつもりらしい。 「ダメ!返せ!」 取り返すとあからさまにガッカリしやがった。このエロ教師め。 「なあ、こんなふうに怪しいショットを狙われてるなんて、すげー怖いんだけど」 心配させる作戦大成功!!だけどまだまだ安心できない!!明日は千秋だ!!
「……で?俺様に何をしろと?」 シスコンをバラされるのが一番嫌だったらしくて、快く(?)承諾してくれた。 「直江が帰ってくるのを見計らって、オレにちょっかい出してるふうにしてくんねえ?」 そんなわけで千秋がオレんちに待機。直江が帰ってきたと同時に千秋はソファでオレの頭を抱えてチョップした。 「うりゃ!参ったか、高耶!降参しろ!」 そこに入って来た旦那さん。ショックからカバンを落としてドカドカ足音を立てながら乱入だ。 「私の高耶さんに何をする!」 直江は力任せにオレと千秋を引き剥がしてギュウウっと抱きしめた。 「ちょっとじゃれてるだけには見えなかったぞ!高耶さんは私のものだ!」 やった♪直江ってばそんなにオレが大事なのか〜。 「なおえ?」 さらにギュウウっとした直江。オレは千秋にブイサインを出して帰ってもらった。
成功したはいいんだけど、なんとオレは新しい危機を発見してしまったのだ。 「来週から研修で2週間いないので、理科の授業は自習になります」 周りからは「やったー!!」って声が聞こえた。だけどオレは違ったんだ。 「そんなあ!!」 だってそしたら山本先生は直江と一緒に研修に行くってことなんだろ?! 「なんだよ、仰木!山本先生がいないのがそんなに寂しいのかよ!」 近くの席の男子生徒がオレをからかった。 そんで休み時間になってからダッシュで直江のいる職員室へ行った。 「た!橘先生!!」 職員室から引っ張り出して、人が少ない廊下へ。 「山本先生も研修なんだって?!」 泣きそうになったオレを慌てて宥めて、直江は頭を撫でてから職員室に戻った。 そりゃさ、オレだって直江が浮気するなんて思ってないよ。だけど山本先生は直江を諦めてないみたいだし、もしも酔ったところで寝込みを襲われたら直江だって男なんだし……。
そんでオレは考えた。ない知恵絞って考えた。週を越えてそりゃもう夜中まで考えた。 ……ソレは裏で話すからまあここはあえてスルーってことで。 で、出かける朝。日曜日だ。 「早かったんですね。ゆっくり寝てても良かったのに」 とは言っても駅や飛行場まで行けるわけじゃない。玄関でお見送りだ。 旦那さんと熱々具だくさんスープを食べながら、熱々のラブラブタイムを過ごす。 「さっき洗面所で見ましたけど、あれじゃ浴衣で人前にも出られませんね」 直江はなんだか嬉しそうに返事をした。嬉しくて当たり前か。 「直江?」 朝食を全部食い終わって、旦那さんはネクタイをキッチリ締めてスーツケースを持った。 「では行ってきます」 長い間のお別れに、長いチューをしてちょっとお尻を触られて。 「高耶さんも。私がいない間は成田くんとご家族以外の人間は入れないでくださいね」 この前のアレを気にしてるみたいだ。帰ったら本当のことを話そう。今はナイショだ。 「あ、高耶さん」 だけどオレはちゃんと二週間分の愛してるを言って、ついでに辛子明太子をたくさんお土産に買って来いって言って送りだした。 「じゃあ2日に一回……夜、電話しますね」 行ったばっかだけど早く帰ってこないかな〜。
END
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あとがき |
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