同じ世界で一緒に歩こう 22 |
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翌日は朝食が終わってからすぐにステージの準備になった。設置してあるステージでモデル役はリハーサルがある。 昼飯が終わると自分の作った服を出して小宴会場に行く。そこにはアイロン台がたくさん設置されてて、みんなが最後の仕上げをやってるとこだった。 直江の家のアイロンで一応やってはおいたけど(低温度スチームの高級品だ)持ってくる間にもシワは増える。 時間をかけてアイロンしてたら小島さんが急ぎ足で宴会場に入ってきた。 「仰木くん!もう時間ないよ!」 小島さんはオレが着るスーツを抱えてた。ドレスと交換して急いで自分の部屋に行って着替えて、ホールに行った。すでに他のクラスの発表が始まってて、音楽に合わせて女の子がステージに上がっていく。 「仰木くん」 振り向いたそこには小島さんが立ってた。オレが作ったドレスは小島さんによく似合ってた。ショー用のメイクをして髪をクルクルに巻いてアップにしてる。髪は複雑に編んであって、リボンが絡まってた。自分なりにアレンジして服を良く見せるためにやってくれたんだ。 「どう?変じゃない?」 美弥の方がイメージには合ってるけど、小島さんもこうして見るとなかなかだ。 「あとで一緒に写真撮ろうね」 アナウンスがあって次はオレたちのクラスの発表になった。うわー、緊張する! この中には兵頭の作品も入ってる。兵頭は全身フェイクレザーで作った女バイカーの服だ。編み上げのビスチェに、同じく編み上げのベルボトムのパンツ、布面積よりも編み上げの紐の部分が大半のジャケット。すげーかっこいい。 その次はBガール系のギャル服。矢崎だ。ピタピタのラメ生地で作ったミニスカート、ドレープとラインストーンが利いた長袖のカットソー。あとフェイクファーをダウンベストみたいに段々を付けたベスト。サンバイザー付き。超クールだ。 それからNちん。イギリス風チェックのウール素材をギャザースカートにしてふんわりさせて、どうやったのかわからないギャザーがボタンから照射されるみたいになったストライプの長袖ブラウス。その上にはスカートと共布の丈の短いジャケットで半袖のパフスリーブからブラウスが出るようになってる。襟は黒のベルベット。最高に手が込んでるスーツだった。 で、オレ。 ライトを浴びてビーズが光って、ステージにいた3人の中では一番目立ってた。先生の反応もいい。 「きゃー、もう緊張した!!」 小島さんがオレのとこに戻ってきて、顔を赤くさせて笑いかけた。 「すっげー良かったよ。ウォーキングも完璧だったじゃん」 小島さんが作ったスーツはグレーのサマーウールで、パンツはダブダブしてるけど、ジャケットはウエストが締まってる。 それを着たオレのステージは…直江を思い出しながら。 「お疲れさま!」 さっき小島さんが赤い顔で笑ってた理由がよくわかる。緊張もあるけど、恥ずかしいもんなんだよな。 「写真撮ってもらおうよ」 テンションが高くなってて、腕を組まれて写真を撮られたのもなんとなく嬉しかった。自分の作った服を誰かが喜んで着てくれる。 「このドレスって、やっぱり彼女のために作ったの?」 いつか美弥が喜んで着てくれるように、いろんな作品を作ろう。手間がかかっても、大変でも、たくさん作ろう。
ショーが終わった後は風呂に入ってから打ち上げがあった。ショーをやった会場が片付けられて、その半分のスペースに立食の酒や食事が出されてた。あとの半分はダンススペースにするみたいで、DJブースも出来てた。 矢崎と兵頭と3人でまずは食事に手を付けた。冷めててあんまり美味そうじゃないけど、これを食っておかないと明日の朝まで食事はない。 「仰木くん、日焼けしたけどどこか行ったの?」 直江と。泳がなかったけど、海岸で水遊び程度はしてた。あの直江が水遊びするとは思わなかったな。 「他になんかする予定は?」 小島さんをはじめ、女の子たちに冷やかされて照れた。オレの彼女の話題になると食いつきがいいのはなぜだ? 「兵頭くんは?」 いいなあ。兵頭はバイク持ってるんだよな。オレも売らなきゃ良かった。 「ねえねえ、みんなで海行かない?平日だったら海水浴場も空いてるよ。一泊ぐらいでどうかな」 オレの知らない子が提案してきた。なぜだか小島さんに目配せして。 「どう?仰木くん」 そんなの直江に怒られる。 「彼女と行くから」 それでその話は終わり。あとはみんなガンガン飲んで酔っ払ってた。踊りに行くのもいれば、そのままオレたちと一緒に喋り続けてるのもいるし、後から仲間に入ってきたのもいた。
額にチューされた感触で感覚が戻ってきた。直江に髪を梳かれながらチューされるのが好きだ。気持ちいい。 「んー…」 腕を伸ばして抱きついて、ほっぺにスリスリ。たまに無精ひげが残ってる時はザリザリしてて痛いけど、今日の直江はスベスベしてて気持ちいい。 「仰木…」 なんで直江がそんな呼び方するんだ?高耶さんて呼んでくれなきゃイヤだ。 「なお…」 目を開けて驚いた。直江じゃない。兵頭だ。 「…俺、やっぱり…」 ダメだ。それ以上言うな。 兵頭は覆いかぶさってきて、唇にキスしようとした。絶対イヤだ。直江じゃないヤツとなんかチューできない。 「やめ…ろ」 何度も迫る唇を避けながらもがいた。兵頭をどうにか押しのけようと腕に力を込めてずっともがいた。 「なんで俺がおまえを好きだってわかってるくせに、平気でタチバナの話なんかするんだよ」 だってそれは… 「嫉妬しないとでも思ってたのか?」 服の中に手が忍び込んでくる。直江にしか触らせたことないのに。 「イヤだ…!」
ツヅク
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ああ!高耶さん、どうなってしまうの?! |
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