同じ世界で一緒に歩こう

43

怒・寂・好


 
   

 


高耶さんへのプレゼントとしてチョコレートを買った。
その包みのリボンに私の部屋の新しい合鍵をつけて渡した。
そして今から直江の家に行こう、と言い出した高耶さんとたまに手を繋いだりしながら歩いて我が家へ。

ところが。

「……なんだ、この部屋は……」
「すいません……」

高耶さんと別れていた間に散らかり放題になってしまった私の部屋。そしてそのまま放置して高耶さん宅に住んでいたため最悪に汚い。
呆然と見回して私をジロリと睨む。

「つい、その、片付けるのを忘れて……というか、何もかもどうでも良くなってというか……」
「バカじゃねえの?!」

腕に一発パンチをされた。痛かったが声を出さずに耐える。声を上げたら火に油を注いでしまう。
高耶さんの怒りはごもっともです、はい。

「今から掃除だ。直江もやれ」
「はい……」

窓を開けてからそこらじゅうに散らばったものを片付ける。
慌ててゴミ袋を出して高耶さんに渡すと、ゴミは自分でどうにかしろと言われてしまった。
高耶さんは洗濯物や洗い物、棚やクローゼットに仕舞うもの担当らしい。

片付けはほんの20分程度で終わったが、次は掃除機をかけなくてはいけない。
棚やテーブルの細かいホコリは後に回して、高耶さんが掃除機を持ち出した。

「なんで自分で掃除しないくせにサイクロン掃除機なんか持ってんだよ。しかも超いいやつ」

以前、この部屋の掃除をしていた一蔵が「サイクロン掃除機にしましょうよ、タチバナさん」と言ったので買い求めた掃除機。
確かに値段が高かった。だが排気がキレイで吸引力が強く、さらに手入れが簡単だったのでそれにした。
おかげで高耶さんが掃除をしてくれるようになってからも大活躍している。

「邪魔だからどいてろ。……あと、寝室はおまえがやれよな」
「はい」
「変なものが残ってたらタダじゃおかないからな」
「……は?変なもの?」
「……女の……痕跡とか」

そんなものがあるわけがない。第一ここへは連れてきていない。
この部屋の散らかりようを見れば想像できるだろうに。
しかしまあ、妬いてくれてるのだからそんな理論めいたことまで言う必要はないか。

「大丈夫ですよ。そんなものありません。あったとしてもあなたの下着ぐらいですよ」
「し、下着?」
「それを使って、とかね」
「バカすぎる!!いっぺん死んでこい!!」

背中を押されて寝室へ追いやられた。
ライトをつけて部屋を見回す。リビングやダイニングほどの汚さではないからすぐに済みそうだ。

まずはベッド。綾子が替えてくれた時から数えて2週間そのままになっていたシーツとカバーを外して取り替えた。
床に落ちていたシャツやバスローブをまとめて洗濯機へ入れに寝室を出る。
掃除機をかけている高耶さんの姿を見て、やっぱり高耶さんがいてくれるのはいいものだな、などとニヤけて見ていたら、とっととやれと叱られてしまった。

寝室の掃除を終わらせて出て行くと、ダイニングテーブルを拭いている高耶さんが顔を上げて終わったのかと聞いてきた。

「ええ、終わりました」
「じゃあ夕飯の買い物しに行こうか」
「……はい……」

夕飯の買い物!久しぶりだ!
アパートに居候している間は高耶さんが学校帰りに買ってきてしまうから、一緒に出ることもなかった。
だから買い物は1ヶ月以上も久しぶりになる。

「どうした?行くぞ」
「高耶さん」
「ん?」
「……ありがとうございます」
「は?何が?掃除のこと?」
「いえ、それもそうですが。全部に」

そう言うと、高耶さんは困った顔をして私に近付いてきて、少しだけ背伸びをしてキスをした。

「お互い様だからな、今回は」
「はあ……」
「行くぞ」

高耶さんの手にはウサギの形をした財布。ふたりで使う生活費を入れていたものだ。
それを持っているというだけでなんだか気持ちが浮き上がる。これからもウサギの財布は活躍するのだ。
ただそれだけでも嬉しい。

 

 

料理の最中、高耶さんが叫んだ。

「ない!!なくなってる!!」
「なんですか?」
「もしかして!!」

高耶さんは料理を放棄してキッチンを隅から隅まで見て周り、それからリビングを見て、風呂場を見て、寝室を見た。

「てめえ、捨てやがったな……?」
「あ!」

忘れていた。鍵を渡すことだけをウキウキ考えていたからすっかり忘れていた!
部屋の中のあちこちにあった高耶さんとの思い出の品をほとんど捨ててしまっていたことを!!

「せっかく作ったクッションも!お揃いの夫婦湯呑も!マグカップも!全部捨てたのか?!」
「すいません!!」

こめかみに血管を浮かせて怒っている。ヤバイ。マジでヤバイ。おっと言葉が高耶さん風になってしまった!
落ち着け、俺!!

「送り返されたものはまたここに持ち込むからいいけど!だからって全部捨てることないだろ〜!」
「ごめんなさい!もうあの時は頭おかしくなってましたから!本当にすいません!」

しまったぁ!先に謝っておけば良かった!気付かなかった自分のバカさ加減に腹が立つ!

「……許せねえ……」
「……う」

取り返しのつかない捨ててしまったもの。それは高耶さんお手製のタイシルクで作ったクッションだけだった。
一昨年のクリスマスに貰った写真は押入れの中に入っていたせいで目につかず無事だった。
二人で写っている写真はデータが残っているのでどうにか無事。
作ってもらったパジャマとアヒルの麻生さんは高耶さんの家に送り返していたため、返してもらえるかは別として無事だ。
だからと言って捨ててしまったのは覆せない現実で、高耶さんが怒るのも仕方ないことで。

「今度の休みに一緒に買いに出かけましょう……?」
「……当然だ」

色々捨ててしまったせいで部屋の中はところどころ不自然な空間があった。
見れば一目瞭然なのに、それに気が付かなかった自分。やり直せた嬉しさのせいで見えていなかったのか。

「だけどさ……直江がそこまでしたってのは、それだけ傷付いてたってことだもんな。今回は許してやるよ」
「すいません……」
「けどもうクッションは作らないから」
「く……」
「とりあえず今からまた買い物行くぞ」
「夕飯の買い物はしたじゃないですか」
「……オレが泊まれるようにしたくないのか……?」
「……したいです!」

そんなわけで二人揃ってまた買い物に出た。まずは薬局へ。歯ブラシと高耶さん専用のボディスポンジを購入。
雑貨屋でお揃いのマグカップを買い、本日二度目のピーコックで高耶さんお気に入りの紅茶を買い……。

そして帰ってきて高耶さんは夕飯の準備を再開した。
その後姿はいつものように色っぽくて可愛らしくてつい後ろから襲いたくなるほどだ。

本当に復縁したんだな〜と実感して幸せを噛み締める。
皿を持って振り向いた高耶さんの顔を見てついニヤけてしまった。ああ、なんてチャーミングなんだろう。

「あ、箸!」

まずい!箸も捨ててしまったのだった!!

高耶さんと私は箸もお揃いにしていた。お揃いというか色違いだ。
銀座の箸屋で買った一膳9000円の高級品で、マンションの近所では売っていない。
おばあちゃんの原宿に行けばあるかもしれないが。

「あの箸、気に入ってたんだけどな……」
「また買っておきます。今日は割箸でガマンしてください……」
「割箸?!」

食器棚から割箸を出した。一応、来客用なのでそれなりに使いやすく、見た目もいいが、高耶さんには気に入らなかったらしくしかめっ面をしている。

「……なんでそう簡単に捨てるんだろうな〜……オレはちゃんと取っておいたのに」
「香水と歯ブラシはありませんでしたよ?」
「……口答えするな」
「はい……」

しばらくの間は全面的に高耶さんの言うことには逆らわない方がいいだろう。
あの別離以来、高耶さんは以前よりも迫力を増した怖さがある。寂しい反面、相当怒っていたのだから。

「ま、今日はしょうがないか。箸はおまえが責任を持って買っておけ。またあの同じのがいい」
「わかりました」

ホッと胸を撫で下ろして夕食になった。今日のメニューは和食で、HLLTを過ごすつもりのなさそうな淡白なものばかり。

日曜日にエッチをしたにはしたが、久しぶりすぎて高耶さんの体がついて行かなかった。
それにやっぱり何か考えてしまったらしく、最中に泣かれて宥めるのに苦労した。一日のほとんどを宥めるのに使った気がする。
なので私はたったの一回だけ発射して終わりだ。高耶さんには数回出してもらったが。

だから私は非常に!!もう爆裂に!!欲求不満だ!!

 

 

以前と同じく別々にゆっくり風呂に入り、ホコホコしたところでソファでイチャイチャしていた。
キスをしたら目を潤ませたから、いつものようにシャツの中に手を入れようとしたのだが。

「やめろ」
「……ダメなんですか?」
「ダメ」

両手でドンと押しやられて、高耶さんが立ち上がった。

「あんまり暗い話はしたくないんだけど、やっぱオレ、泣くと思うし」
「泣いていいんですよ」
「うん、それはわかってる。いつもそうしてきたしな。……ちょっと許せないってとこもあってさ」
「……許せない……?」
「そう。全面的におまえを許したわけじゃないってこと。日曜日にエッチした時にそう思ったんだ。直江にされてるのは気持ちいいけど、なんつーか……入ってきた時にぶん殴りたくなったっつーか……浮気したくせにって思ったわけ」

そ……そうだったのか……。あの時にそんなことを……。
だから泣いたのか。殴れない代わりに泣いたわけか。

「このまんまずーっとエッチなしになりそうだなって思ったから、我慢してみたんだけど。でもダメだったんだ。殴りたいのも、泣きたいのも、変わらないみたいだ。自分で思ってたより大人じゃなかったんだな、オレって。さっきだってお揃いにしたもの捨てられたからってあんなに怒る必要なかったんだ。わざわざ買いに出かけることも。もう少し、大人になんないといけないよな」

意外だった。去年からずっと日に日に高耶さんが大人になっていく姿を見ていた。だから自覚があると思っていたんだが。
だけど彼はまだまだ子供なんだと告白をしている。

「直江に嫌な気分ばっかりさせてるよな?」
「そんなことはありませんよ」
「無理しなくていい」

パジャマ姿でペタペタと足音をさせて、彼はキッチンへ行った。
黙って冷蔵庫から牛乳を取り出し、鍋に入れて二人分温める。
出てきたのは来客用に使っているウェッジウッドのティーカップだった。さっき買ったマグカップは取り残されたまま。

「これ飲んだら寝よう」
「……ひとつだけ、いいですか?」
「何?」

カップを持ってコクリと飲んだ彼の顔は、まだ幼くて、不安でいっぱいな気持ちを無理矢理押さえ込んでいるのが手に取るようにわかる。

「あなたが子供だとは思ってません。だけど大人だとも思いません。中途半端で未熟です。だけどこれだけは理解してください。あなたが抱えてる感情は無理のないものです。あなたは私を大人だって言いますけど、大人だってヤキモチは妬くし、泣きたくなるときだってあります。私が泣いてたの、あなたも知ってるでしょう?」
「うん……」
「無理して大人になることはありません。それに相手は私です。もっと何もかもぶつけてもいいんですよ」

指の背で高耶さんの頬を何度も撫でる。目を閉じて猫のように擦り付けてくる仕草が愛らしかった。

「直江にだけは嫌われたくないんだよ」
「嫌いになんてなれません」
「本当に?」
「まだわからないんですか?」
「……わかってるんだけど……」

カップを取り上げてキスをした。

「高耶さんは高耶さんのままでいてください。それ以上は望みません」
「うん……」

偉そうなことを言ってしまった手前、それ以上は何もせずにずっと彼の体を抱いて座っていた。
寝息が聞こえるまでずっと。
こうして高耶さんの保護者でいることもそう悪いものじゃない。

 

 

あれからベッドまで抱き上げて連れて行って、そのまま一緒に寝た。
朝になって目が覚めると高耶さんはすでに寝室からいなくなっていて、まさかと悪い予感がして飛び起きた。
リビングに彼の姿はなく、その向こうのキッチンにも見当たらない。
ただ唯一不安をかき消したのは朝食のいい匂いだった。

どこかにいるのだろうと客間や和室、洗面所を覗いてみたがいない。
あとは……。

「おはよー。思ってたより遅かったな」

暖かな日差しでいっぱいのバルコニーに彼はいた。テーブルの上にはクロワッサンとスクランブルエッグ。
それと紅茶とミルクがポットに入って用意されていた。

「早めに目が覚めたからパン屋で焼きたてクロワッサン買ってきた」
「……私が寝ている間に?」
「うん」

彼の手がサラダボウルをテーブルに置いた。完璧な朝食だ。

「顔洗ってこい。もう腹減ってガマンできそうもないから」

言われて室内に入る。時計を見ると午前10時。高耶さんのお腹がグーグー鳴り始めてから2時間と言ったところか。
顔を洗って着替えて戻ると、待ちきれなかったのかすでにクロワッサンをバクバク食べていた。

「今日って休み?」
「ええ。高耶さんは?今日は平日ですけど」
「オレは自主的に休み」

3学年のこの時期はそれほど重要ではない授業ばかりになるらしい。
主に課題制作の作業で占められるそうだ。
だからと言ってこれはサボりになるのではないだろうか。

「いいんですか?」
「うん。ちょっとズルすることにした。今日は面接ですって先生に嘘の電話した」

いいのだろうか……?

「今日は直江と一緒にいたかったんだ。どうしても」

昨夜のことが気になっているのだろう。たかがあの程度で私が高耶さんに対する気持ちを変えるわけがないのに。

「だからさ、昼になったら買い物に行こう。また湯呑も、箸も、スリッパも、お揃いのを買いに行こう」
「……そうしましょうか」

まったく可愛らしいことを。そのためだけに学校を休むなんて。
まあ、普段から真面目に学校へ行っているのだから今日ぐらい休んだってなんてことはないのかもしれない。
こんなこと高耶さんが学生でいるうちだけだからな。

 

 

 

それからしばらく経ったころ、高耶さんから携帯に連絡が入った。
仕事中で留守番電話にしていたから、そこには「仕事が終わったらソッコーで帰って来い」というメッセージしか入っていなかったが。

何があったのかは予想がつく。ふたつにひとつだ。
就職試験が合格したか、落ちたか、どちらかだ。
もし受かっていればお祝いのためにケーキに、落ちていればヤケ食いのケーキになるホールのケーキを帰りがけに買い、ドキドキしながら我が家のドアを開けた。

いつもだったら走って出迎えてくれるはずの高耶さんが来ない。
と、いうことは?まさか……。

廊下を進んでリビングへ。いなかった。キッチンにも、洗面所にも、客間にも和室にも。
先日の例もあるからバルコニーへも出てみたがいない。
まさか落ちていたからってマンションから飛び降り……!!

慌てて手すりから下を見てみたがそれらしき痕跡はなかった。

「おい」
「たっ、高耶さん!どこにいたんですか!」
「寝室だ」

そうか、寝室は見てなかったな……。

「ほら、早く入ってこい」

手招きされて室内へ入ると、高耶さんは一通の封筒を出してきた。
予想通り、モトハルのロゴ入りだ。

「それで、どうなったんですか?」
「自分で見ろ」

高耶さんの表情からは合否がまったくわからない。おずおず手を出して受け取り、封筒の中身が薄いことに嫌な予感を催しつつ、中身を取り出した。
カサリと音を立てて紙が開く。
そこには。

「……合格じゃないですか!」
「イエース!!」

親指を立てて突き出した高耶さんの腕を取り、そのまましっかり抱きしめた。

「おめでとうございます!これで東京にいられますね!美弥さんも大学へ行けますね!」
「おう!」

高耶さんを抱きながら読んだ紙面には、内定の通知と、後日説明会を開くが時期はまだ未定という内容の文章が書かれていた。

「ああ、本当に良かった!」
「あと半年したら同居だからな!覚悟しとけよ!」
「はい!」
「じゃあ今から合格祝い!なんか美味いもの食いに連れてけ!」
「そうしましょう!」

キスをしながら何が食べたいかを話し合って、抱き寄せたまま買ってきたケーキを冷蔵庫に入れて、肩を組んで玄関まで行き、タクシーに乗って銀座まで。
予約を入れたいきつけの高級寿司屋にエスコートをして入り、カウンターに座った。
上品なイメージの寿司職人と店内にいささか驚いた高耶さんだったが、私を覚えていてくれた店長が高耶さんに気を使ってお品書きを私にではなく高耶さんに渡したことで少し緊張が取れたようだった。

「酒飲んでいい?」
「もちろん、祝杯ですからいくらでも。明日は日曜ですしね」
「んじゃ直江が選べ」

寿司に合う白ワインを一本頼んで、それから寿司を注文する。
お品書きに値段が書いていないことに気が付いた高耶さんが目を丸くして私を見たが、今日はお祝いだからと何度も言って好きなものを食べさせた。

「タチバナさん、なんのお祝いなんですか?」
「今日は彼の就職祝いなんですよ」
「そうなんですか。おめでとうございます」

顔を赤くして、嬉しそうに「ありがとう」と言った高耶さんの表情の美しいことったらなかった。
他人に見せるのももったいない。

店からのお祝いです、と言われて一本お銚子を貰った。
日本酒だから高耶さんは飲めないかと思ったが、極上のワインに似てフルーティで、高耶さんは美味しそうに飲んだ。

ほろ酔いで満腹の高耶さんが甘えた口調でそろそろ帰ろうと言い出した。

「もう満腹ですか?」
「うん。もう食えない」
「じゃあ帰りましょうか」

カードで支払って(現金の持ち合わせでは足りないほどの値段だ)外へ出て、すぐにタクシーに乗ろうとしたが高耶さんは少し歩きたいと言った。

「千鳥足で散歩なんて嫌ですよ?」
「しっかり歩けるっつーの!」

銀座から皇居に向かって歩き出す。少しだけフラついているが大丈夫のようだ。
お堀端をテクテク歩いて公園へ。よく撮影で使われる噴水がキレイな公園で、高耶さんはウキウキと中へ入る。
噴水のライトアップに見蕩れてから、足元の水路に掛かる橋から浮かぶ小さなふんわりした灯りに笑顔を零す。

「天の川を歩いてるみたい」
「うまいこと言いますね」
「だろ?」

浮かれているのは合格のせいなのか、酒のせいなのか。

「直江、こっち」

大きな滝の噴水の前、高耶さんは立ち止まり、その顔を私に向けた。
相変わらず頬は緩んだままだ。

「あなたがそんなに浮かれてるところを見るのは初めてですね」
「だって嬉しいもん。合格したのも、美弥が大学に行けるのも嬉しい。だけど」

何組かカップルがいる公園で、彼は私の腕の中に入ってきた。こんなこと恥ずかしがる彼が。

「直江と離れないでいられるのが一番嬉しい」
「…………」
「直江もだろ?」
「はい……」

誰に見られてるかもわからない。でもそれでもかまわないと思った。
ゆっくり唇を寄せると、高耶さんも目を閉じた。

 

 

その夜はそのムードのままタクシーに乗り込み、マンションへ戻り、寝室に入った。
なんと解禁になったのだ!!
解禁どころか高耶さんは甘えて甘えまくって、可愛らしいことこの上なかった!!
しかも独占欲も丸出しで少しでも離れるとピッタリくっついてきて離さない!!
こんなに幸せだと感じた夜は久しぶりだ!!

高耶さん!!合格してくれてありがとうございます!!

 

 

END



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あとがき

これで後処理は終わったかしら?
直江の財布は高耶さんの
ためにあるのです。
いや、高耶さんの胃袋の
ためでした。